読書「水なき雲」 三浦綾子 中央公論社 昭和58年発行
二人の姉妹がそれぞれ結婚して築いた家庭の家族が繰り広げる悲劇である。 桜田亜由子は会社員の夫の和朗が浮気をしていることを苦々しく思い、代わりに長男の純一の教育に熱中する。
亜由子の姉の遠野木佐喜子も長男の俊麿の出世に自分の人生の希望の全てを託す生き方をしている。亜由子は全てに渡って姉の佐喜子の生活レベルに負けまいと競争心を燃やしており、俊麿が東大入学を目指しているのを知り、純一にも同じ目標を強いる。
そんなおり、次男5才の真二は母の亜由子が愛人宅に泊まって帰宅せぬ夫への怒りから、け飛ばした枕に当たって庭石の上に転倒落下し頭を強打し、以後、記憶力が弱まり愚鈍な性格になってしまう。
だが、それに反して真二は一層天真爛漫な心の持ち主に成長する。
月日は経ち、俊麿は東大入学を果たすが、合格発表のその日に自らの命を絶ってしまう。その裏には、自分と母とのあってはならない母子相姦の地獄に墜落した苦悩に縛られていた自分があった。
それを図らずも現場に遭遇して見てしまった純一は従兄弟と叔母の浅ましい姿に衝撃を受けるも、誰にも語れず悩んでいたが、従兄弟の自殺を知りその日記を読んで俊麿の深い悩みに同情する。
真二の頭痛原因も新しい医療で治療回復する期待が込められ物語は終わる。
本作品では、教育ママといわれる母親たちの尋常でない息子への熱の入れようや、夫婦間の冷えた関係、父親あるいは母親の不倫がどれだけ子供たちに不幸な影を落とすか、母たるるもの、あるいは父たるもののあり様はいかにあるべきかなどなど今の社会の根深い問題点が提起されている。
作者が女性であるためか、母子相姦すなわち息子との姦通が生々しく扱われていた点に注目させられる。少年期の異性との自然な交際を封じられ、ただ母のみにその肉欲のはけ口をいわば強制させられ、一切の目標を唯一東大合格に絞らされた息子は母に恨みと怒りを抱き自分自身にも赦せない悔悟を抱いていたに違いない。
その複雑な心はいつしか母への報復の決意と変わり、母親の目標達成を果たしたのと差し替えの自殺へと至ってしまった。
本作品で扱われているテーマは幾つかあり、全てを論ずる気はない。
やはり、息子への歪んだ愛ゆえの狂った愛情のあり方に尽きると思う。作者が母子相姦あるいは父子相姦を、母が息子へ、父が娘への独占欲の極致として取り上げ、そしてその欲情を果たそうとした結果、息子や娘を死に追いやってしまうという結末はなんなのか。
三浦綾子がこのテーマを取りあげざるを得なかったのはなぜであろうか。常軌を逸した愛憎ゆえに狂って鬼女になってしまった姿、あるいは鬼の姿に、人間の性「罪」の悲しく妖しい本性をみる。決して特殊な例外的人間の話ではなく、誰にでも起こり得る人生の闇に落ち込む亀裂である。どうすればこのような人生の落とし穴から救われるのであろうか。
そんなおり、次男5才の真二が母の佐喜子が愛人宅に泊まって帰宅せぬ夫への怒りから、け飛ばした枕に当たって庭石の上に転倒落下し…
正…
そんなおり、母の亜由子は、愛人宅に泊まって帰宅せぬ夫への怒りから、枕を蹴飛ばし、それが五才の次男・真二に当たってしまい、真二は庭石の上に転倒落下し…
失礼致しました
名前が違っていたのですね
正しく文章を直しました
これからもご指摘、コメントお願いします