(童話)万華響の日々

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クラリモンド  テオフィール・ゴーチェ作 芥川龍之介訳

2013-12-08 20:00:15 | 生と死を想う

「怪奇小説精華」東 雅夫 編より 「クラリモンド」
筑摩書房 ちくま文庫 2012年発行

クラリモンド テオフィール・ゴーチェ(1811-1872) 芥川龍之介訳

六十六歳の牧師である一人の男の不思議な体験談
生まれながらに教会の中だけで生きてきた僧侶の卵が、よりによって正牧師となる式の最中に、周りにきていた群衆の中に一人の若い女と目と目があってしまい、瞬間的にその女の虜になってしまった


、その美しさ艶やかさは尋常ではなかった
その眼の輝きは天使か悪魔かどちらかである、彼女は男を誘惑し、聖職から離れるようにと言うのである、その代わりに美と若さと生命をあげようと言う、彼は神を捨てようとしている自分を感じた、女の名前はクラリモンドといった

それからしばらくたって、ある教会の牧師となった男のところへある知らせがきた、ある女の葬式をあげてほしいという、男はその屋敷に行った、そこで見た死んだ女は紛れもなくクラリモンドであった、死んでいるのに生きているかのごとくである、男はたまらずその唇に接吻する、

そして奇跡が起こった、クラリモンドは生き返ったのである、そして男が夜の眠りにつくたびにクラリモンドは現れ、騎士となった男と美食を楽しんだり、旅をしたり、その生命の喜びをともに味わうのである、しかし朝となると男は眠りから覚め僧職に戻るのであった

そのうち、クラリモンドは次第に弱ってゆくが男が彼の血を与えると再び蘇り若さと艶やかさにあふれるのである
だが、僧院長は知っていた、この危険な男の二重生活を、
彼は男を連れてクラリモンドの墓にゆき屍を暴き聖水をかけてしまう、すると彼女の屍は灰と骨になってしまうのである

その後、彼女は一度だけ男の前に現れた、そして「もうこれでわたしたちは終わりね、さようなら、きっとわたしを惜しむでしょう」といって消え去り二度と現れることはなかったという、男はその後クラリモンドを惜しみ、懐かしがったという

芥川龍之介の流麗な訳文である
この世とあの世にまたがる霊魂と肉体の交流を描いた悲しいというか怪奇な恋の物語である、
吸血鬼伝説に基づき作られた小説だ、怪談「牡丹灯籠」に似たところもあるが男はこの世的には救われた結果となった、クラリモンドとの恋がこのまま続いたのならどうなったのかと思いその筋書きでの成り行きもおもしろかったであろう、夢とうつつ、どちらが本当の世界かはわからない


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