”農”と言える!?

元・食推おばさんのソムリエ日記

エム氏のこと 始まりは茎レタス

2016-05-20 15:22:22 | ブログ

2007年の6月、

「友達が変な野菜作っちゃって。

食べ方がわからないんだけど、何とかして。」と言われ、

私のもとにこの野菜が大量に届けられた。

 

   

茎レタス(山くらげ)だった。

その2日後に、ちょうどレタスの講座が控えていた私にとって

願ってもいない食材!!

珍しい茎レタスのおかげで、講座は大いに盛り上がった。

  

数日後、私はお礼を申し上げるために、畑を訪れた。

その畑は、60代の男性数人が自分たちの楽しみのためにやっていた。

無口な人が多い中で、一人の男性が畑を案内してくださり、

実をつけ始めたとうもろこしの説明をしてくださった。

それがエム氏だった。

とても優しくておもしろい人だった。

  

しかし、ここは小さな田舎町。

やがて私は、エム氏が大きな病気を抱えていて、

入退院を繰り返していることを知った。

でも、エム氏は私に自分の病気の話は一切しなかった。

だから、私も彼を病人扱いしたことはなかった。

それが、エム氏に対する礼儀だと思ったのだ。

  

だから遠慮なく、

「冬には大根の講座をやりたいから、

赤大根と黒大根、作ってくださいよ。」などと頼んでいた。

  

年が明け、寒さが増した頃、約束通りエム氏は

赤大根と黒大根を届けに来てくれた。

お友達が運転する車に乗って・・・。

シートに体を埋めるエム氏は、

シートと一体化してしまうのではないかというくらい弱々しく見えた。

  

そして、その年の5月、エム氏は旅立ってしまった。

お通夜に伺って、エム氏の顔を見た時、

「こんな元気そうな顔、初めて見た!!」と思った。

もちろん、お化粧は施されていたのだろうけど・・・。

 

 

それから、毎年エム氏のご命日には、お墓参りに伺っていた。

ある年に、「毎年、きれいなお花をありがとうございます。

お名前とご住所を教えてください。」と書かれた紙が置いてあったが、

私は名乗るつもりもなかった。

  

そして昨日、今年もエム氏の命日が来た。

いつもお花を買う時は、「60代の男性のお見舞いに使いたいので」と言って

ブーケを作ってもらっていたのだが、

昨日はなぜかすらっと「ご命日なのでお花を・・・」

という言葉が出てきた。

  

そして、お墓参りを済ませると、そこにはエム氏の奥様が。

「あなただったの?毎年、本当にありがとう。

 お墓参りをしたら、このお花、仏壇に飾らせてもらってもいい?」

そうおっしゃって、奥様はそのブーケをお家に持って帰られた。

 

  

ずっと書けずにいたエム氏のこと。

もう、書いてもいいかな・・・と思った。

 

コメント
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