透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 2021.07

2021-07-31 | A ブックレビュー

  

 7月も今日で終わり。明日から8月。で、7月のブックレビュー。読了本は4冊と少ないが、島崎藤村の『夜明け前 第二部上』(新潮文庫)を読むのに時間がかかったことがその理由。全4巻の長編小説はようやくこの巻の後半あたりになって、世情描写から主人公の半蔵及びその家族、周辺の人たちにズームインした描写になっていく。そして第4巻、第二部下の序盤で物語は大きく動き出す。**暗い土蔵の二階、二つ並べた古い長持の側に倒れていたのは他のものでもなかった。自害を企てた娘お粂がそこに見出された。**(89頁)8月には休みが多いから、この長編小説を読み終えることができるだろう。読み終えたという満足感を味わいたい。

『弥勒の月』あさのあつこ(光文社文庫)人気作家の作品を初めて読んだ。遠野屋のお内儀の投身自殺に事件性を感じた同心・小暮信次郎が岡っ引・伊佐治とともに、夫である遠野屋の主人・清之介の闇に迫る・・・。明かされる驚きの過去。意外な結末。サイコサスペンスともいえる作品。

『リニア新幹線と南海トラフ巨大地震』石橋克彦(集英社新書)**時速500キロの超特急は「活断層密集地帯」を疾走する。本当に大丈夫?**(帯からの引用文)全く必要のないリニア新幹線、でももう止められない・・・。

『「本の寺子屋」新時代へ』「信州しおじり 本の寺子屋」研究会編(東洋出版)塩尻のえんぱーくで2012年7月に開講した「本の寺子屋」で講演を行った講師(多くは作家)のエッセイを収録した本。7月25日に行われた森まゆみさんの講演会で買い求めた。


 

 


「3 男はつらいよ フーテンの寅」

2021-07-31 | E 週末には映画を観よう

 オリンピックのあまり興味のない競技を漫然と観る気はしない。で、昨日(30日)、寅さんシリーズ第3作「フーテンの寅」を観た。

全作品のうち、この第3作と次の第4作だけは山田洋次監督の作品ではない。監督が違うと作品の雰囲気も当然違う。ちなみに第3作は森崎 東監督、第4作は小林俊一監督。

寅さん、タコ社長の紹介で見合いをする。緊張して待つ寅さんの前に現れた見合いの相手は、なんと寅さんの仙台の知り合いの駒子という女性だった。

駒子の身の上話を延々と聞かされる寅さん。駒子には所帯を持った男がいたが、浮気をして・・・。寅さん、ふたりのよりを戻し、とらやで大宴会。その後ハイヤーでふたりを新婚旅行に送り出す。

寅さんらしい人の好さ。だが、支払いをとらやに回してしまうから、さあ大変。とらや一家で大喧嘩。「そんなら自分で払ってみろってんだ!」と寅さんに向かっておばちゃん。こんなせりふ、優しいいおばちゃんに言わせて欲しくなかったな。「表へ出ろ!」と博。この言葉にもぼくはびっくり。こんな荒々しい博を初めて見た。山田監督ならこんなシーンは撮らないと思う。「このやろう上等だよ、やってやろうじゃねえか!」と寅さん。とらやの庭での出来事は省略。

寅さん旅に出る。それからひと月後。

おいちゃんとおばちゃんが旅行に出かける。色々あったから、心を休めたいのだろう・・・。

ふたりが向かった先は湯の山温泉。湯の山温泉ってどこ? 調べると三重県にある温泉だった。ふたりが泊まったのは「もみじ荘」という古い旅館。

このシリーズに「欠かせない」偶然、なんとその旅館で寅さんが番頭をしていた。で、美人の女将・志津(新珠三千代)が今回のマドンナ。

今まで観てきた作品ではマドンナも寅さんに惹かれるけれど、どうもこの作品ではそんな感じがしない。ふたりの間にほんわかとした雰囲気を感じない。

女将には信夫という弟がいて、染奴(染子・香山美子)という芸者に惚れている。染奴も信夫が好きなのだが・・・。

その後の展開省略。

染奴の父親が暮らすみすぼらしい家を訪ねた寅さんと信夫、染奴。そこでのやり取りは省略。

寅さんに諭されて駆落ちするふたり、オートバイで父親の家を去っていく。その後、寅さんが父親に仁義を切る姿が描かれる。

女将は大学教授との結婚を決意して旅館をたたむことに・・・。女将不在とは気がつかず、部屋の外から別れを告げる寅さん。なんだか可哀そうというか惨め。失意の寅さんが歩いているところに偶々女将の志津さんの乗った車が通りかかり、車を停めてもらう。でも降りて声をかけるでもなく、そのまま去ってしまう。

この作品にはとらや一家の団らんのシーンはほとんどないし、さくらもあまり出てこない。寅さんのことを心配する優しいさくらを観たいのに・・・。生々しすぎるシーンも出てきてなんだかあまり好きになれなかった。


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「2 続・男はつらいよ」

2021-07-29 | E 週末には映画を観よう

 寅さんシリーズ第2作の「続・男はつらいよ」を観た。寅さんはまだ若く、気も荒い。柴又に帰って来た寅さんは、とらや一家と喧嘩したわけでもないのに、すぐ出て行ってしまう。そのまま旅に出るのかと思いきや、寅さんが通った葛飾商業の恩師を訪ねる。

恩師の名前は坪内散歩(東野英治郎)。この名前の表札が映ったとき坪内逍遥をもじった名前だとすぐわかった。で、今回のマドンナは散歩先生の娘さん・夏子(佐藤オリエ)。

寅さん、散歩先生と懐かしの再会。先生の家でもてなし料理をご馳走になる。上等な料理に寅さんの胃がビックリ、胃けいれんを起こして救急車で病院へ。病院でじっとしていられない寅さん、病院を抜け出し、無銭飲食と店主への暴力沙汰(寅さんは否定するが)で警察のやっかいに。手錠姿の寅さん、なんとシリアスな。

朝、寅さん、散歩先生と江戸川の土手を散歩してから、 先生にお詫びして立ち去る。

1か月後・・・。

寅さん京都で散歩先生と夏子に偶然再会。寅さん映画に偶然は付き物。寅さんはなぜ京都に? 京都に母親がいると聞いたから。先生に是非会うようにと言われた寅さん、夏子と母親に会いに出かける。行った先は母親が営むラブホテル。寅さんホテルで産みの母(ミヤコ蝶々)と会う。ふたりは派手な大喧嘩。

旅行から柴又に帰って(寅さん一緒に帰りましょうと、夏子に優しい言葉をかけてもらっているので、たぶん3人一緒に帰ったのだと思う)・・・、散歩先生の突然の死。寅さんを診察・治療した医者と夏子が恋仲であることが葬儀中に判明。寅さんガックリ、再び京都へ。ちょうど京都へ新婚旅行に来ていた夏子、寅さんが母親と歩いているところを見かける・・・。これもすごい偶然。でも、この場面を見て、ぼくも良かったなと思った。親子の絆。

寅さんの様子を見る夏子の優しそうな眼差しが印象に残った。北海道から出てきたランちゃん(過去ログ)はじめ多くのマドンナと寅さんとの関係、夏子は違う。夏子は自分のことのように寅さんのことを気にかけている。ぼくは夏子に母親のような優しさを感じた。

寅さんと恩師・坪内散歩先生との心の交流。やはり心を通わせることの尊さを描くことがこのシリーズの基底にあるテーマだろうなぁ。


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卓球混合ダブルス 順々決勝は凄かった。

2021-07-27 | A あれこれ

 コロナ禍の中で東京オリンピックがほぼ無観客で行われている。

卓球混合ダブルスで日本の卓球界に初の金メダルをもたらした水谷 隼・伊藤美誠ペアの準々決勝、ドイツペアとの試合は凄かった。

最終第7ゲームは0-5と序盤の劣勢のままスコアは2-9に。ドイツのペアにあと2点取られたら終わり、試合終了。絶体絶命のピンチ。その後、6-10。ドイツのマッチポイント。ひとつのレシーブミスでもドイツに負ける・・・。

そこから水谷選手の強気な攻撃で10-10! で、結果は16-14で勝利! マッチポイントで伊藤がこの試合で初めて使ったというサービスを相手の女子選手が返せず、試合が決まった。思わず「勝った!」と大声を出してしまった。

試合後のインタビューで水谷選手とのペアだから勝てたという伊藤選手のコメントにぼくは涙。

その後の準決勝。相手の台湾のペアは世界ランキング1位。でも、このゲームはドイツ戦ほどのドキドキ感なくテレビ観戦ができた。伊藤美誠選手にどんな球がきても攻撃できるという自信を感じた。

昨晩(26日)の決勝戦。相手は中国ペア。一度も勝ったことがないという中国ペアとの試合。第1ゲーム5-11、第2ゲーム7-11。2ゲーム連取されてやはり中国には勝てないのか・・・、そう思った。

だが、その後、3ゲーム連取。水谷選手も伊藤選手も自信を取り戻したように見えた。動きが良くなったことはテレビを見ていて分かった。最終第7ゲーム。水谷・伊藤ペアリード。ドイツ戦での大逆転を今度は中国ペアが果たすのか・・・。マッチポイント、ドイツ戦と同じく伊藤のサービスエースで勝利!! 

すばらしい試合をした各選手に拍手!


 


「リニア新幹線と南海トラフ巨大地震」

2021-07-25 | A 読書日記

 既に着工してしまったが、私はリニア新幹線は全く必要ないと思っている。このことについては既に書いた。過去ログ 過去ログ2

その中のある記事を私は次のように結んだ。 **もっと速く社会からもっとゆっくり社会への転換。「狭い日本 そんなに急いでどこへ行く」 20年後、リニア中央新幹線は時代のニーズに全く合わなくなってしまっているかもしれない。** 



『リニア新幹線と南海トラフ巨大地震 「超広域大震災」にどう備えるか』石橋克彦(集英社新書2021年)を読んだ。リニア新幹線は、要するに今現在2時間半で結んでいる東京・大阪間を1時間で結ぼうというプロジェクト。

著者は「はじめに」で**経済成長を至上とする集中・大規模・高率・高速などの論理から脱却し、分散・小規模・ゆとりなどを大事にする社会**(10頁)がこれから(ポストコロナ)の望ましい社会だとし、リニア中央新幹線を「時代錯誤」だと断じている。我が意を得たり、全くその通りだと思う。

このことについて著者は**今回のパンデミックは後述のように現代文明が必然的に招いた厄災であり、ポストコロナでは私たちの暮らしや社会のあり方を根本的に変えなければいけない。**(173頁)と指摘した後、もう一度繰り返し書いている。

地球の有限な資源による無限な経済成長などあり得ないと、多くの人がとうに気がついていたと思う。それを無視してひたすら右肩上がりの経済成長を目指してきた結果が招いた地球温暖化、地球環境破壊。それが例えば集中豪雨となって日本だけでなく、世界の都市(中国やドイツで発生した大規模な水害が報じられたばかり)を襲っている。新型コロナウイルス禍も自然環境破壊(具体的には森林破壊)などによって未知のウイルスが人間社会に引き出されたことによる厄災だろう。

私はリニア新幹線に社会的な必要性など全くない、という認識はずっとあったが、地震に対する安全性についての懸念はいままでそれ程強く抱いてはいなかった。本書の第1部で、著者(石橋克彦氏は地震学が専門)はリニア新幹線が地震に対していかに危険であるかを詳細に論じている。第1部を読んでリニア新幹線の危険性を認識した。

第1部の章立ては次の通り。
第一章 リニア新幹線とは何か
第二章 地震危険性を検討しなかったリニア計画
第三章 活断層が動けばリニアは破壊する
第四章 南海トラフ巨大地震から復旧できるか

「黒部の太陽」という映画では黒四ダムの建設資材を運ぶための大町トンネル掘削でぶつかった破砕帯との苦闘が描かれている。大量出水のシーンで主演の石原裕次郎は本当におぼれそうになったそうだ。リニア新幹線は活断層の密集地帯のトンネルを走る(*1)。巨大地震、トンネル内で緊急停止したリニア新幹線を大量出水が襲う・・・、こんなシーンをイメージするのは容易だ。

真っ暗な避難路を何キロも歩いて、やっと地上に出られた、と思ったら厳寒の南アルプスだったら・・・。夜の雪山を濡れた軽装で下る・・・、崖崩れ、落石・・・。

たった1時間半の短縮のために・・・。こんなことはパニック映画の世界、現実には起こり得ない、という認識は改めなくてよいだろうか。


*1 **リニア中央新幹線は南海トラフ巨大地震の強震動域および地殻変動域を通り、何本もの第一級活断層をトンネルで横切っていて、地球上で一番危険度の高い地帯に建設されているといっても過言ではない。**(205頁)



「26 男はつらいよ 寅次郎かもめ歌」

2021-07-23 | E 週末には映画を観よう

「幸せになれるんだろうな、おめえ」 

 寅さんシリーズ第26作「寅次郎かもめ歌」を観た。マドンナは憧れの女性という意味だが、今回のマドンナのすみれ(伊藤 蘭 *1)に寅さんが憧れるというか惚れるわけではない。

寅さんシリーズも第26作目。博とさくらが一軒家を購入する。寅さん博にご祝儀を渡すも、2万円と高額だったことが原因となって大喧嘩になってしまう。例によってとらやを飛びだした寅さんが向かった先は北海道の江差。江差でテキヤ仲間が亡くなったことを知った寅さんは、線香をあげるために奥尻島へ。寅さんは実に義理堅い。奥尻島でテキヤ仲間の娘・すみれと出会い、ふたりで墓参りをする。すみれが幼い時、母親が家を出ていってしまって、父親とふたりで暮らしてきたすみれ。東京に出て定時制高校に通いながら働きたい、というすみれの願いを聞いて、寅さんはすみれを連れてとらやに帰ってくる。このときひと騒動あるが、省略。

すみれは満足に学校に通うことができなかったために学力が無い。試験もできなかったし面接でも下を向くばかり・・・。

「試験の成績で落としたりはしないと思うけどなぁ。そんなことで人間を評価しないのが定時制高校なんだ」結果を心配するさくらに向かって博がこう言う。さすが博、いいこと言う。

すみれは入学試験に受かって定時制高校に通うようになる。合格したことをすみれから聞いたときの寅さん、嬉しそうだった。小躍りして喜び合うふたりにぼくは涙。寅さん映画、涙が出ること度々。タコ社長の世話でセブンイレブンで働くことにもなって、よかったよかった。夜、とらや一家で祝宴、みんないい人たち、みんな幸せ。おばちゃんは寅さんに頼まれてお百度参りしていたっけ。

ある日、とらやをひとりの女性が訪ねてくる。「私、だれだかわかる?」「母ちゃん?」この後、すみれは母親にきつい言葉。母親は泣きながらとらやを出ていく・・・。この後さくらがしぶるすみれを連れて外に飛び出すと、母親は電柱の陰で泣いていた。「母ちゃん」母親の背中に優しく声をかけるすみれ。すみれを抱きしめて「いいわね、お前は幸せになんのよ」と母親。この場面でもぼくは涙。

寅さん、すみれについて高校に行き、生徒たちとも先生たちともすっかり仲良くなって(このあたりも寅さんらしい)、英語の先生に「たまには英語の授業聞きませんか?」と誘われるほどに。

その後、函館からすみれの彼氏が上京してきて・・・。喧嘩別れをしていたふたり、今でも好きだとお互い告白。

朝帰りしたすみれを怒ろうとする寅さんだが、その人と結婚すると聞かされて・・・。寅さん旅支度はいつものパターン。

「幸せになれるんだろうな、おめえ」「もしなれなかったら、オレは承知しねえぞ」続けて、寅さん優しく「いいな」 

テキヤ仲間の娘さんを父親代わりになって支え、幸せを願っていた寅さんのことばにまた涙。

この作品は涙映画だ。

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*1 「普通の女の子に戻りたい!」1978年4月にキャンディーズ解散、この時のメンバーだったランちゃんが2年後、1980年にマドンナ役でこの作品に出演した。過去ログ



夏の陣 相手は雑草

2021-07-23 | A あれこれ

 この時季は家の周りの草むしりをしないわけにはいかない。

今月は3日、10日、11日、18日と続けてきたが、相手の勢力は一向に衰えない、むしろ増すばかりだ。昨日(22日)は朝7時過ぎに草むしりを始めた。時々野鳥の鳴き声と微風が私を応援してくれる。だが炎天下の作業はきつい。雑草を根こそぎ引き抜くことが望ましい。だが、敵も根を深く伸ばしているし、少しの剪断力でぷっつり切れるようにして生き残る戦略を採っている。だから、根こそぎ、というわけにはなかなかいかない。

西 南1 南2 東1 東2 北 このようにエリア分けをして順番に草むしりをしている。昨日は南2 東1 東2 この3つのエリアで雑草と夏の陣。

開始から4時間(我ながらよく頑張った)、11時過ぎに東2の途中で止めた。草むしりに熱中して熱中症なんて、洒落にもならない。予定していたエリアのうち、東2の残りと北は明日(24日)する予定。天気予報だと明日の午前中はどうやら曇、天気は私に味方してくれるようだ。

雑草との夏の陣、明日で何回目かな? この戦いに除草剤を使うつもりはない。


追記:24日 朝8時ころから、予定通りエリア東2と北の草むしりをした。天気は予報に反して晴れ。エリア面積が小さく、10時半ころ終わった。次回は今月31日、エリアは西、南1、南2の予定。

 


キミの名はハクセキレイ?

2021-07-23 | D キミの名は?


東筑摩郡朝日村にて 撮影日2021.07.21

 所用で朝日村役場に出かけた際、隣接するコンビニ前で見つけて、停めていた車の中から撮った1枚。何枚か撮ったがピンボケ、手ぶれ、鳥の向きがNGな写真ばかり。

形からセキレイだと思うが、何セキレイ?手元の野鳥図鑑に掲載されているハクセキレイとよく似ているが・・・。 

『野鳥 日本で見られる287種類判別のポイント』真木広造(永岡書店2002年)68頁にハクセキレイの写真と次のような説明文が載っている。**主に北日本で繁殖し、本州中部以南で越冬する。繁殖地は年々南下していて、現在では関東地方でも普通に繁殖している。海岸や川岸、農耕地など、水辺に近いところで昆虫類を捕らえて食べる。** 周りは農耕地、数百メートル離れたところに鎖川という場所だから、上の条件に合致していると思う。


 


「19 男はつらいよ 寅次郎と殿様」

2021-07-22 | E 週末には映画を観よう

さくらの涙

 寅さんシリーズ第19作を観た。

「寅次郎と殿様」というサブタイトル通り、寅さんと伊予大洲16代目の当主、藤堂久宗(嵐寛寿郎)という世が世なら殿様との交流をメインに描いた作品。

藤堂久宗を演じるアラカンさんは振舞いもセリフも鞍馬天狗、いや殿様調。これが少しぎこちなく感じて面白い。演技ならすばらしい(演技だろうな)。今回のマドンナはこの藤堂久宗の息子の嫁、鞠子(真野響子)。この作品では優しく美しいマドンナと寅さんとの恋愛話にはあまり時間を割いていない。

四国は大洲(大洲にははるか昔に行ったことがあるが、なかなか風情のある街だった。*1)で殿様・久宗と知り合いになった寅さん。殿様に気に入られ、家に招かれて歓待される。殿様は末の息子と鞠子の結婚に「身分の違い」を理由に反対したことを寅さんに告白する。勘当した息子は亡くなってしまったが嫁に一目会いたい、会ったこともない嫁の鞠子を探して欲しいと寅さんに頼む。

寅さん、殿様と出会う前の日に、大洲の旅館でひとりの若い女性を見かけて、その寂しそうな様子が気になり、元気を出してもらおうと彼女の部屋に鮎料理を届けさせたことから知り合いになっていた。

とらやに帰って来た寅さん、殿様との約束を果たすべく、東京にいるという情報だけを頼りに鞠子を探そうとする。手始めに柴又で一軒一軒訪ね歩くが、徒労に終わる。寅さん疲労困憊。

寅さん映画に偶然は付き物。大洲で出会った女性がとらやを訪ねてくる。寅さん、大洲の旅館で名前を聞いていなかった、と改めて訊くと「まりこ」。殿さまに探して欲しいと頼まれていた鞠子その人だった。夫(殿様の息子)を亡くした鞠子は葛飾区の堀切、柴又の近くでひとり暮らし。

鞠子と会えることを期待して、田園調布(23作「翔んでる寅次郎」で寅さんはマドンナのひとみ(桃井かおり)が住むこの街を田園地帯だと思い込んでいた)の長男のところに来ていた殿様、とらやで鞠子と対面。このとき初めて会ったふたりが交わすことばにとらやのみんなが涙。寅さんもさくらのハンカチで涙を拭う。このシーンにぼくも涙。

大洲に帰った殿様の寅さん宛ての手紙を携えて執事の吉田(三木のり平)がとらやを訪ねてくる。まるで古文書のような文章をすらすら読む博はさすが。そこに書かれた殿様の願いは、寅さんに鞠子と結婚して欲しいというものだった。ところが鞠子は職場の同僚に結婚したい相手がいて・・・。で、寅さんお決まりの失恋。

ラスト、旅に出る寅さんが柴又駅で語ったことをさくらはとらやの家族に話す。この時、さくらの目に涙・・・。本当にさくらは兄想い。

とらやで本当の家族、いやそれ以上に心通わせて暮らす人たち。裏手の印刷工場のタコ社長だって家族の一員のようなもの。

山田洋次監督はこの作品で人と人とが心通わせることの大切さ、尊さを描いている。



大洲を流れる肱川 


おはなはん通りにて *1 撮影日1980.03.28(2枚とも)

鞠子は大洲まで夫の墓参りにきて、このおはなはん通りを散歩する。テレビドラマ「おはなはん」の主題歌はさくらを演じる倍賞千恵子が歌った。

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2021-07-20 | A 読書日記

 『弥勒の月』あさのあつこ(光文社文庫2008年)を読み終えた。

物語はひとりの女が橋から身投げするところから始まる。この橋は『本所おけら長屋』畠山健二(PHP文芸文庫)のおけら長屋のすぐ近く、竪川に架かる二ッ目之橋。おそらく長屋から歩いて1,2分。また、藤沢周平の『橋ものがたり』に収録されている「約束」で、幼なじみのふたりが再会を約束する場所の萬年橋は竪川のおよそ1キロ南を流れる小名木川に架かっている。これは余談。

身投げしたのは小間物問屋遠野屋主人・清之介の妻・おりんだった。ただの身投げではない・・・。背後の闇を追い始める同心・小暮信次郎と岡っ引き・伊佐治。作者はこの3人の主要人物の心理描写に力点を置きながら物語を展開させていく。続けざまに起こる殺人事件。執念ともいえる信次郎の追求によって暴かれる清之介の驚きの過去。意外な結末。

極端に思える人物造形、漂うサイコな雰囲気、ラストの性急な種明かし。ただしこれは好みも関係する、あくまでも個人的な感想。人気作家初めての時代小説だという本作は人気が高く、『夜叉桜』『木練柿』『東雲の途』・・・、とシリーズ化されている。

さて、『夜明け前』の4巻。いや一旦小説から離れて『リニア新幹線と南海トラフ巨大地震』石橋克彦(集英社新書2021年)を読む。


 


「17 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」

2021-07-18 | E 週末には映画を観よう

人生に後悔はつきものなんじゃないかしら・・・

 寅さんシリーズ第17作「寅次郎夕焼け小焼け」を観た。この作品はシリーズの中でも評価が高い。

マドンナは播州龍野(*1)の芸者・ぼたん(大地喜和子)。寅さんとぼたんとの距離感は寅さんとリリー(浅丘ルリ子)のそれに負けず劣らず近い。ふたりとも寅さんと境遇が似ている。それからふたりとも役を演じているというより、役になりきっている。

この作品で印象に残るのは画家・池之内青観(宇野重吉)が龍野で、昔恋仲だった志乃(岡田嘉子)を訪ね、静かに語り合うシーン。

志乃は華道を教えながらひとりで暮らしている。

ふたりが対面している部屋は落ち着いた和室。

「僕はあなたの人生に責任がある」「僕は後悔してるんだ」と青観。

志乃は青観に言う。

「じゃあ、仮にですよ、あなたがもう一つの生き方をなすっとたら、ちっとも後悔しないですんだと言い切れますか?」

「私、このごろよく思うの、人生に後悔はつきものなんじゃないかしら、って。あ~すりゃよかったなあ、という後悔と、もう一つは、どうしてあんなことして(*2)しまったんだろう、という後悔」

志乃は昔の想い出を胸に秘め、想い出を糧に龍野でひっそりとひとりで生きてきたのだろう。

翌朝、青観が乗ったタクシーが志乃の家の前を通りかかる。道に出ていて静かに見送る志乃、それに気がつく青観・・・。後部座席から振り返り志乃を見つめる青観。遠ざかるタクシーにそっと手を振る志乃。名場面だ。

*****

ある日、ぼたんがとらやを訪ねてくる。200万円もの大金をお客に騙し取られていたぼたん。その男が東京にいることが分かって少しでも取り戻そうと、上京してきたのだった。事情を知った寅さん、親身になってぼたんのために奔走。

お金をとり戻すことはできなかった・・・。だが、ぼたんは「私、幸せや」「私、生まれてはじめてや、男のあんな気持ち知ったん」と泣きじゃくる。この場面に涙。

映画のラスト、上野駅まで見送りに来ていたさくらが「ぼたんさんね・・・、好きなんじゃないかしら、お兄ちゃんのこと」と言う。寅さん例によってそれを冗談と断じてしまう・・・。

龍野にぼたんを訪ねた寅さん、驚きのラスト・・・。

人を想う心の大切さがこの作品の、いや、このシリーズに共通するテーマ。


*1 童謡「赤とんぼ」の作者・三木露風の出身地、風情があって良いところ。どの作品も、ザ・ふるさとなところが舞台になっている。
*2 「どうしてあんなこと言って」と聞き取れるが、話しの流れから。

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ポチ袋

2021-07-18 | A あれこれ



■ スタバで朝カフェ読書をする時、支払いにスターバックスのカードを使う。で、毎月「ホットのショート」8回分として2,600円をチャージしている。月8回を超える場合には現金払い、追加のチャージはしない。なぜ? こづかいの支出抑制効果を期待して。

現金払いをする時はピッタリ319円をポチ袋に入れておき、カウンターで袋から出して、小さなトレーに載せる。

昨日(17日)の土曜日、朝カフェ読書をした。土曜日に朝カフェ読書をすることはあまり無い。対応の店員さんは初めてではないような気がしたが、「ホットのショートをマグカップで」と注文した。で、ポチ袋をから現金を出してトレーへ。

店員さんから「ぴったり入っているんですか?」と声をかけられた。「あ、そうです」。

1,2分後、レシートと1円、トレーに載せて私の前に出された。「1円多かったです」ポチ袋に1円玉を5個入れていたようだ、4個なのに・・・。

このことが印象に残って、この店員さん、次回は「 ホットのショート、マグカップでしたね」と対応してくれるかも知れない。


 


松本城のカモ

2021-07-17 | D キミの名は?

 
撮影日2021.07.16

 松本城の濠で見かけたカモの幼鳥。カモだということは分かるけれど、これは何カモ?

松本市立博物館の「松本まるごと博物館」というサイトに松本城にやってくるカモたちが紹介されている。それを見ると、常連のカモとして、マガモ、カルガモ、コガモ、オカヨシガモ、ヨシガモの5種類の写真が掲載されている。どれもよく似ていて、何カモなのか分からない。

キミ、名前は? お母さんは何処? 大丈夫?。


 


「16 男はつらいよ 葛飾立志篇」

2021-07-16 | E 週末には映画を観よう

俺がはじめてお雪さんと会ったのは、忘れもしねぇ 雪の降ってる晩だった。俺は寒河江という町を無一文で歩いていたんだ。(中略)

駅前の食堂に飛び込んだんだ。そこがお雪さんの店よ。(中略)

俺は手に持ってるカバンと腕時計を出して、「これで何か食わしてくれ」って、そう言ったんだ。

そうしたら、「いいんですよ。困っている時はみんなお互いですからね」  どんぶりに山盛りの飯と湯気の立った豚汁とお新香をそっと置いてってくれたっけ。

俺はもう無我夢中でその飯をかき込んでいるうちに、なんだかぽろぽろぽろぽろぽろぽろ・・・、涙がこぼれて仕方がなかったよ。

その時、俺には、あのお雪さんが観音さまに見えたよ。その名の通り、雪のように白い肌の、そりぁ、きれいな人だった・・・。(*1)

寅さんはその後何年も正月にお雪さんに手紙を送り続け、娘さんの学費の足しにと、お金も同封していたのだった。

*****

ある日、とらやにひとりの女子高生(桜田淳子)が訪ねてくる。順子という名前で、寒河江の駅前の食堂でお雪さんは赤ん坊を背中に負ぶって働いでいたが、その時の赤ん坊だった。

順子が寅さんを会ったことのない実の父親だとずっと思っていたことから、この後ひと騒動あるのだが、事情が分かる。順子が帰ったあと(順子は修学旅行で東京に出て来ていて、友だちと柴又まで来たのだった)、とらやの人たちは茶の間で寅さんからお雪さんとの出会いの様子を聞く。それが上掲部分。

今回のマドンナはこの話とは無関係の女性で、考古学を研究する大学助手の礼子(樫山文枝)。礼子は御前様の親戚で、とらやの2階に下宿していた。そこへ旅先から寅さんが帰ってきて・・・。礼子の師匠である大学教授の田所(小林桂樹 *2)も独身、礼子に惚れている。で、ああなって、こうなって・・・。

僕はこの作品では順子の母親のお雪という女性がマドンナだと思う。寅さんは順子がとらやに来た時、お雪さんが亡くなったことを聞かされ、山形県の寒河江まで出かけて墓参りをする。スクリーンには登場しないお雪さん、もし背中に赤ちゃんの負ぶって登場するシーンがあるとすれば、演ずるのは誰? 誰が相応しいだろう・・・。


*1 DVDの再生と一時停止を繰り返して寅さんのせりふの文字起こしをした。
*2 小林桂樹は「日本沈没」でも田所という名前の地球物理学者(元大学教授)を演じている。調べるとどちらも名前が雄介で同じ。公開は「日本沈没」が1973年で寅さんより2年早い。名前の一致は偶然ではないだろう。

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