■ 再開した「ぼくはこんな本を読んできた」の2回目は理系本を並べてある書棚(*)からで、『情報列島日本の将来』黒川紀章(第三文明社1972年初版発行)。
『情報列島日本の将来』は黒川紀章が30代のときに書いた本だが、既にこの本の第一章「二元論からの脱出」で「共生」という概念について触れている。
日本の伝統的な住宅にみられる縁側、内でも外でもない空間。建築と自然とを繋ぐ役割を果たす「縁」。建築と自然、あるいは都市との共生はこの「縁」空間、「中間領域」を設けることで可能となる。「共生」という概念の肝は要するにこういう考え方だと私は理解している。
この考え方を最も明快に具体化したのが福岡銀行本店だと、私は思う。アーバンルーフという屋根のついた「中間領域」を都市に開放している。学生時代に見学に出かけてこの空間に設えてある黒御影石のベンチに座ったことを今でも憶えている。
黒川紀章は建築のみならず中国やロシアの地方都市の計画なども手掛けて国際的に活躍した建築家だがその実績に相応しい評価を必ずしも得ていないように思う。何故だろう。
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過去ログ3
2007.10.13の記事再掲
* 小説やエッセイなど文系本を納めた書棚を「書棚1」、理系本を納めた書棚を「書棚2」とする。