透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「風土」

2009-04-29 | A 読書日記
■ このブログは本と建築にテーマ限定、のはず。夜中にバーで飲んだことなど別に書かなくてもいいものを。



和辻哲郎の『風土 人間学的考察』岩波文庫をようやく読み終えた。

少し長くなるが引用文を載せる。**さて以上のごとく規則にかなうことを特徴とするヨーロッパの芸術に対して、我々は、合理的な規則をそこに見いだし得ぬような作品を東洋の芸術の内に見いだす。もとよりそこにもまとまり(注:原文は傍点)はある。そうしてそのまとまりは何らかの規則に基づいているであろう。しかしその規則は数量的関係というごとき明らかな合理的なものではない。ではそれはいかなる性質のものであろうか。**

これは、可視的な秩序に基づく「繰り返しの美学」と日本庭園に代表されるような不可視な秩序の「繰り返さない美学」について考えている私と問題意識としては極めて近いのではないか・・・。

次のような具体的な指摘もしている。

**ギリシアの彫刻はすでにフィディアス以前からピタゴラス学派の数の論と密接な関係を持っていた。比例は彫刻家の重大な関心事の一つである。すなわち自然の秩序正しさは芸術家の観る立場の中で発展した。ここにギリシャ芸術の合理性がある。(中略)ギリシャにおいては、幾何学の知識が芸術を幾何学的な規則正しさに導いたのではなく、幾何学が成立する以前にすでに芸術家が幾何学的な比例を見出していたのであった。**

和辻哲郎は年に亘ってこの問題について論考を重ねていたのだ。それも今から80年近く前・・・。

和辻哲郎はこの問題を風土との関わりによって解き明かそうとしていた。芸術、文化という広汎な領域に、「風土」というこれまた壮大な概念を導入し得たところに和辻の優れた洞察力が表れていると思う。


ブルームーンの意味・・・

2009-04-29 | A あれこれ


 夜遅く松本市内のバー。

「ブルームーン」はジンをベースにしたポピュラーなカクテル。カクテルの名前など知らないカールおじさんな私でも知っている。色は淡い紫色と記憶しているが、昨晩は淡いミントグリーンだった。上品な香り、後味すっきり。

***

月の満ち欠けの周期を28日だと思っている人が案外多いが、実際には29.5日。だから1ヶ月に2度満月を見ることは珍しく、3~5年に1度見られるかどうか。この極めて稀な満月を「ブルームーン」と呼ぶ。実際、条件が整えば稀に月が青く見えることがあるそうだ。

カクテルのブルームーンにも、なかなか起こらないハッピーな瞬間という意味があるらしい。それとは全く別の「できない相談」とい意味もあるという。その相談はできない、つまり「お断り」のサイン。だから、このブルームーンというカクテルをオーダーするのには注意が必要、なんだとか。

 次にオーダーした「ブルーハワイ」、これもポピュラーなカクテル。ストローが2本添えられているのは、ふたり寄り添って飲むということではなくて、クラッシュドアイスが詰まってしまったときのためのものだそうだ。フェイルセイフな配慮、というわけか・・・。
ストローは1本でいいのに。

●(女性とふたりきりで行ったわけではありません、念のため)

阿弥陀三尊立像

2009-04-27 | A あれこれ


善光寺御開帳記念“いのり”のかたち 善光寺信仰展チケット(部分)

 この展覧会の目玉はドイツ・リンデン民族学博物館から里帰りした阿弥陀三尊像。善光寺の前立本尊像(一光三尊阿弥陀如来)とよく似ているという。パンフレットに載っている写真を見比べると、なるほどよく似ている。

中央の阿弥陀如来は身丈約42cm、向かって右側の観音菩薩と左側の勢至菩薩は約30cm。小さいけれど存在感のある仏像だ。ガラスケースに収められた仏像の表情をしばらく見つめていた。鎌倉時代につくられたこの祈りの対象としての仏像、一体誰がどのような想いでつくったのだろう・・・。

『風土』をようやく読了。『仏像 心とかたち』NHKブックスを読み始める。今まで全く関心の無かった仏像、鑑賞眼を養なわなくては。


 


新緑の季節は抹茶でも

2009-04-25 | A あれこれ

「もうすっかり新緑の季節ですね。緑が輝いてますよ」
「そうだね。ボクが一番好きな季節」
「あのつくばいオシャレですね。竹じゃなくってステンレス、ですか」
「そうか、Kちゃんってお茶を習っているから、つくばいって知ってるんだ。そうだねステンレス管を使ってるね」

「つくばいくらい知ってますよ。本格的なお茶室ですね、お茶会もするんでしょうね」
「あそこがにじり口、たぶんあそこは貴人口。そのスカートだとにじって入るのは無理かな」
「スカートだと、無理です」
「今日はスタバでコーヒーでも、って思ってたけど、抹茶もいいね」


 開運堂松風庵にて

「でしょう?静かで。ところでSMAPの草君、逮捕されちゃいましたね」

「まあ、よく分からないけれどストレス溜まるんだろうね、有名人って。でもマスコミ、騒ぎすぎだと思うよ。もっと伝えるべきことが他にあるだろうに、ね」
「ですよね。もちろん社会的影響も少なくないとは思いますけど・・・」
「真夜中に公園で裸になって騒いだからといって、逮捕ってありかなって、保護という対応でよかったんじゃないかなと思うね。公然わいせつの疑いといったって、周りに人がいたのかな。銀座の真ん中なら事件だろうけど。ケータイで写真も撮られただろうし、それがネット上に流れたりして大騒ぎになったかもね」
「やだ」

「逮捕の妥当性や家宅捜索まで必要だったのかということについても検証するような記事が欲しい、と思うけど。どうもマスコミって通俗的な話題に流れるね。同じ酔っ払いなら、中川さんの例のもうろう会見をもっと厳しく追及して欲しかったよね」

「そうか、そうですよね。ところでU1さん、ブログを始めてどのくらいになるんですか」
「もう3年、早いね。ブログっておそらく1000万以上開設されていると思うけど、その中でライブなものというか定期的に更新されているのって300~400万くらいじゃないかな」
「でもすごく多いですよね」

「僕はgooブログだけど、120万くらいあるからね」
「gooブログだけで120万ですか、すごい数ですね」
「アクセス件数が上位1万以内になると順位が表示されるんだけど、この頃アクセス件数が増えて、時々順位が表示されるようになった」
「そうなんだ、すごいですね」
「そんなに読んでもらえるような内容じゃないと思うけど、頻繁に更新するとやはり増えるみたい」
「継続は力なりですね、やはり。私も時々読んでますけど、ちょっとこの頃写真に頼ってません?」

「そうなんだよ。10行の文章より1枚の写真ってところがあるね、確かに。もともときちんとした文章なんて書けないし・・・」
「そんなことないと思いますよ、それにブログの文章って少しくだけた、というかいいかげんなというか、あまりきちんと書かなくてもいいと思いますけど。写真もきれいだなって思います。でもやはり文章が読みたいんですよね。一体このカールおじさん、何を考えているんだろうって・・・ね」
「何?カールおじさん?」
「私、あのCM見るたびに、似てるなって思うんですよ」
「そうか、凹むな・・・」

このお店は私が紹介しましたから、今度は私をバーに連れてってください」
「スキーじゃなくてバーね」
「え、スキー? この間、ブログに書いてたバーです」
「Kちゃんに似合うかな、あのバー・・・」
「カールおじさんが大丈夫なら、私なんかバッチリじゃないですか」
「・・・」

 


アプローチの演出

2009-04-25 | A あれこれ

 信州といえばそば。田舎のごく普通の民家の座敷のようなところで野沢菜とともに供されるそばが美味い、という勝手なイメージが私にはありますが・・・。

 ここは木曽。主要道路沿いの駐車場からまずこのアプローチを進み、突当たりを右折。右側は板張りのスクリーン、この先どんなシーンが展開しているのか・・・、という興味。



 正面に片流れの屋根、黒い鋼板で仕上げた外壁の別荘のような雰囲気の建物が見えます。ウッドデッキを進んで正面をもう一度右折。



 更に進んで屋根の下へ。突当たりを左折するとようやく店の入口。アプローチをこれだけ長く取って演出されたら、そば屋という私のイメージからは遠く、別の食べ物のようなイメージを抱いてしまいます。で、少しくらい高くてもいいかなと。





店内は現代和風とでも評したらいいのか、上品で落ち着いたギャラリーのような空間。

 田舎で食べるそばの盛り方とは違う、器も違う・・・。


「ZCOBO 時香忘」


路上観察 開田の板倉

2009-04-23 | A あれこれ



 御嶽山の麓に広がる木曽町の開田(旧開田村)には今でも板倉が点在している。棟木に注目。羽子板のような形をした板、懸魚(げぎょ)が付けられている。水という文字が見える。懸魚は水を吸って腐りやすい小口を保護する役目を果たすものだが、次第に飾りの意味合いが強くなったものと思われる。



こちらも開田の板倉。棟木を重ねている。上の棟木は破風板によって小口が塞がれているが、下の木がらの大きい棟木は小口がトタン(亜鉛めっき鋼板)によって包まれている。ここにもやはり水という文字が書かれている。

柿板(こけら板)葺きの石置き屋根が、現在はほとんどがトタン(亜鉛めっき鋼板)葺きに替わってしまっているのは残念。



「松本清張を推理する」

2009-04-21 | A 読書日記



■ 松本清張ほど多くの作品がドラマ化、映画化された作家は他にいないだろう。今秋公開予定で『ゼロの焦点』の制作が進んでいるという。主演は広末涼子。この作品も既にドラマ化も、映画化もされている。

和辻哲郎の『風土』岩波文庫を読んでいるが、ちょっと寄り道。先日書店で阿刀田 高の『松本清張を推理する』朝日新書を見つけてつい買い求めてしまった。以前この作家の『松本清張あらかると』中央公論社を読んだが、同じような内容のエッセイ集だ。この本なら隙間時間で読了できそうだ。


残雪の爺ヶ岳

2009-04-21 | A あれこれ



 

 

 

 

 

 

 


春のフォトアルバム 大町市美麻にて 090419

緑の森が幾重も重なる
一番手前の唐松林、緑に色付き始めている
後方に残雪の北アルプス
ピークが3つあるこの山容は爺ヶ岳
山の名前の由来にもなっている雪形の出現はまだしばらく先のようだ

信濃の山里の春の風景


バー

2009-04-20 | A あれこれ

「あの、私 いいバーを知ってますけど行きます?」
バー・・・、大人だね」と会話をしていたがその後・・・

駅から徒歩で5分足らず、パルコの近のバーへ案内してもらった。照明を落とした暗い店内、大人の雰囲気が漂っている。濃密な空間。

ところでバーといえばカウンター。この店のカウンターは厚さが優に10cmを超え長さが10mもあろうかという一枚板。店舗の工事が完成してからではおそらく運び込むことが出来なかっただろう。

長いカウンターに据えられた椅子が15脚ほど。客のほとんどがカップル。交わした会話・・・ここに再録するのは野暮というもの。


多様性

2009-04-19 | A 読書日記

 

■ 左の白川郷で見かけた蔵(本当は外壁の仕様や収納物を勘案すると倉という漢字をあてるべきだろう)と右の高山で見かけた蔵とでは、全体の「形」はほぼ同じだが、外壁の構法や開口部のデザインが全く異なっている。

デザインの多様性を実感する。

そう、かつてはこのように地方によって民家のデザインは異なり、それぞれ特徴があった。が、今では全国どこでも同じようなデザインになっている。

それでも全国一律全てが同じというわけではないだろう。よく観察して違いを見つけたい。そしてその理由についても考えたい、と思う。


連鎖

2009-04-19 | A あれこれ


金沢21世紀美術館のカフェにて

■ 早いもので4月も後半。毎年恒例、花咲爺さんの春の全国ツアーもあと北海道を残すのみとなった。もう津軽海峡も冬景色から春景色に変わり始めていることだろう。

爺さんはこのあと梅雨のない北海道でのんびり過ごし、秋になると紅葉爺さんになってゆっくり沖縄めざして全国ツアーを続ける・・・。そして春になるまで暖かい沖縄で過ごす。理想的な生活ではないか、うらやましい。

■ 和辻哲郎の『風土』岩波文庫を再読しているがなかなか進まない。興味深い内容だが、速読はできない。 

「繰り返しの美学」がいつのまにか『風土』にまでつながり、また「繰り返さない美学」から日本庭園について少し勉強しようと思い、それが方丈庭園、そして仏像へと連鎖してきた。

『風土』を読み終えたら『仏像』NHKブックスを読もう・・・。


竹簀巻き

2009-04-17 | A あれこれ





■ 民家 昔の記録 常陸幸田(当時)の民家の屋根 7910

「包む」というテーマを設けてはいるがなかなか書くことが出来ない。今回は包むに含まれる「巻く」。

この地方の屋根はほとんどが寄棟。棟仕舞に注目。竹の簀子(すのこ)で巻き、さらに葦(よし)を束ねてくらがけし(このエビのような形の葦の束を針目覆という)、丸竹で止めてある。この針目覆は竹の簀子を縛る縄を保護するためのカバー。棟にやや太い丸竹を据えている。

30年前の8月に白川郷を訪ねたが、その2ヶ月後にここに出かけている。


美味

2009-04-17 | A あれこれ
 本稿で春の北陸旅行の記録を終わりにする。

11日の土曜日、兼六園から車で15分ほどのところにある小さな旅館に泊まった。夕食を部屋で済ませたあと、ふらっと出かけて旅館の近くの「森忠」という味処に入った。

割烹着姿の女将が切り盛りしている姿を外からそっとのぞいて決めた。きっと美味い料理を出してもらえる・・・。直感。

酒の肴にまず鯵の刺身と竹の子の天ぷらを注文。金沢という町は食文化のレベルが高いのだろう。



絶品などという言葉を軽々しく使いたくはないが、竹の子の天ぷらは絶品だった。と、ここまで書いて、このブログは本と建築にテーマを限定している・・・、ふとそう思ったが、続ける。

竹の子の天ぷらのさくさくとした歯ごたえ、ほのかな甘み。

冷酒を飲んで、最後に雑炊を注文。飲んだあとは何を食べても美味いものだが、この雑炊がまた絶品だった。悲しいかな料理の味について表現する能力が無く・・・。何を食べても「うまい!」としかコメントしない食べ歩き番組のタレントと一緒だ。



金沢再訪の機会があれば同じ宿に泊まろう、そしてまたこの店で飲もう。

理由 

2009-04-15 | A あれこれ



 白川郷の全景、合掌造りの民家がどれも同じ方向を向いていることが分かります(この写真には写っていませんが一軒だけ例外がありましたが)。棟は南北に向いていて、屋根面が東西を向いています。それは何故?

仮に棟が東西に向いているとすれば屋根面は南北になります。この場合には冬期、屋根雪が南面では融け、北面では融けないので雪の荷重条件が均等になりません。屋根が東西に向いていると、午前は東面に、午後は西面に日があたるので雪がどちらの面でもほぼ同じに融けるため、雪の荷重が均等にかかるので安定します。



障子窓が少し前傾しています。この理由も逆の状態を考えれば分かります。逆、つまり少し障子が後傾していると雨や雪がかかりやすくなります。そう、障子を前傾させるのは雨や雪をかかりにくくする工夫なんです(これ、ホント)。 

下の写真に写っている障子も前傾していますね。これも同じ理由です。それと積雪しても障子との間に空隙ができやすく、雪の側圧がかかりにくくなることも理由に挙げることができるでしょう。


鶴岡(山形県)のはっぽうづくりの民家

昔の人たちの知恵ってすごいなって民家を観察するたびに感心します。