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透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 2023.07

2023-07-31 | g ブックレビュー〇


 時の経つのは早い。7月が終る。

7月の読了本は5冊。小説は読まなかった。

『カラー版 名画を見る眼 Ⅱ』高階秀爾(岩波新書1971年、2023年カラー版)
西洋の近代絵画の大きな流れ、その概観を解く教科書的な新書。
**累計82万部、50年以上読み継がれてきた美術史入門の大定番**(帯のことば)

『言語の本質 言葉はどう生まれ、進化したか』今井むつみ・秋田喜美(中公新書2023年)
言語はどのようにして生まれ、どのように進化してきたのか・・・。ふたりの著者が実証的に解き明かす。そのロジカルな展開は推理小説よりおもしろい。

『堤 未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法』堤 未果(幻冬舎新書2023年)
本書に取り上げられているのはマイナンバー、コロナ、脱炭素。今一番気になるのはマイナンバーカードのトラブル。続出する個人情報のひも付けミス。任意だったはずのカードの取得がいつのまにか強制にすり替えられ・・・。マイナンバー、政府の本当の狙いは何か。本書に書かれていることが真実だとは思いたくない。

『データサイエンスが解く邪馬台国 北部九州説はゆるがない』安本美典(朝日新書2021年)
邪馬台国はどこにあったのか、古代史最大の謎にデータサイエンスで迫る。示されたデータに畿内説を唱える研究者は反論できるのだろうか。実に説得力のある論説。

ひとつだけ、残念に思うことは「魏志倭人伝」に書かれていて、何通りにも解釈できるる邪馬台国の所在地への方向、旅程に関する考察が示されていないこと。別にこのことに触れなくても、充分実証できるということだろうが、やはり読者のごく基本的な関心事だと思うのに。

『槍・穂高・上高地 地学ノート 地形を知れば山の見え方が変わる』竹下光士・原山 智(山と渓谷社2023年)
なぜ槍の穂先が傾いているか? なぜ常念岳は三角形に尖っているのか・・・。本書は北アルプスの槍ヶ岳、穂高連峰、そして上高地の地形がどのようにできたのか、解き明かしている。


撮影日2017.05.29 松本市内から見た常念岳 

常念岳をつくっている花崗岩は約6,400万年前にできた、と書かれている。イメージすらできない遠い遠い過去。なぜ、あの三角形ができたのかなどと考えたこともなかった。本書ではこのことについても解き明かしている。

槍の穂先が傾いているということを本書で知った。槍・穂高連峰は少し東に倒れるように隆起したという。「傾動」というこの隆起のメカニズムが分かりやすく図解されている。なるほど! こういうことか。

7月20日、21日と上高地に出かけたが、その前に本書を読んでいたら、上高地の風景が違って見えたと思う。


8月、夏休み、読書感想文。8月は小説を読もう。

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松本市今井の火の見櫓

2023-07-28 | g 火の見櫓観察記




まさにランドマーク。


(再)松本市今井 3柱66型トラス脚 2023.07.26

 朝焼けの空を背景にこの火の見櫓を何回も撮った。いつの間にか防災行政無線柱がすぐ近くに立って、写真がさまにならなくなってしまった。


設置されている銘板に昭和30年9月10日竣工、製作 坂本鉄工所と記されている。南信地域の火の見櫓でこの銘板をよく目にする。櫓のフォルムも脚も美しいし、屋根と見張り台の大きさのバランスもよい。この火の見櫓をなぜ遠方の鉄工所で製作したのか分からないが、何か縁があったのだろう。

南信地域では柱4本の火の見櫓がおよそ8割と圧倒的に多く、中信地域では柱3本のものが8割という比率だ。鉄工所の事情でそうなっているのではないか、と思ってしまう。だが、坂本鉄工所でも南信では柱4本の火の見櫓を製作しているが、この火の見櫓は柱3本だから、何か他の事情があるのだろう。別の鉄工所でも同様に南信では柱4本、中信では柱3本の火の見櫓を製作していることを確認している。一体何が柱の本数(櫓の平面形と言い換えてもよい)を決めているのだろう・・・。


この火の見櫓を遠くからスケッチしていて、どうなっているのかよく分からいのは見張り台直下の様子と、踊り場とその直上の様子。近くまで来て、確認する。「こうなっているのか」




やはり脚はトラスが美しい。


 

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「槍・穂高・上高地 地学ノート」

2023-07-27 | g 読書日記

420
『槍・穂高・上高地 地学ノート』竹下光士・原山 智(山と渓谷社2023年)

 大学の同じ研究室で同時期に研究に励んだ仲間3人(夏合宿で伊豆七島に出かけたり、冬合宿でスキーにでかけたりもして楽しい思い出もいっぱいある。合宿には女子大の学生も参加してなんてこともあったらしい。らしい、などと当事者でないような書き方をする)と一緒に上高地に出かけたのは今月(7月)の20日,21日のことだった(過去ログ)。

泊まった宿・明神館であれこれ話したけれど、上高地がカルデラ地形であることや、太古、梓川は今のように松本に流れ下ってはおらず、岐阜方面に流れていたことなども話題になった。ぼくは梓川の流路のことは知っていたが、上高地が陥没地形だということは知らなかった。このような地形に関することはKRさんが詳しく、地学の本を読みたいと言っていた。

翌22日の信濃毎日新聞朝刊の読書面に『槍・穂高・上高地 地学ノート』が載っていた。
**普段の山登りではあまり気に留めない「地学的な山の眺め方」を手にすれば、山の見え方は大きく変わる、と本書は言う。**
**槍ヶ岳の穂先がわずかに東側に傾いてるのはなぜか。(中略)さまざまな疑問も、地学的な知見によって次々と解明されていく。**
本書がこのように紹介されている。

これはおもしろそう。KRさんに伝えようと思って、グループラインした。すると・・・。
   
3人からこのようなコメントがあった。 衰えぬ知識欲、知的好奇心。3人ともすばらしい!

ぼくも、読み始めていた小説を中断して、読み始めた。

豊富なカラー写真、分かりやすい説明図。01から22までの項目立てで、いろんなテーマについて書かれている。03「穂高を作る岩石 溶結凝灰岩を知る」07「なぜ常念岳は三角形に尖っているのか」、これはおもしろい。

とぼくが書くと
とKBさん。

健康で8キロ、10キロ歩ける体を維持しなければ・・・。


 

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火の見櫓のある風景を描く

2023-07-26 | g 火の見櫓のある風景を描く〇


長野県朝日村 2023.07.25

 日中は暑い。ならばと早朝に出かけて現地で線描した。線描時間40分。

いつもの道路山水的構図。火の見櫓の存在を際立たせようと奥の高木を意識的に低く抑えた。左側に山が重なっているが手前の山の緑はミントグリーンと明るいモスグリーンの中間くらいの好きな色。ようやくこの色が出せた。着色時間75分。


昨年(2022年)の10月に描いたスケッチ②と比べると線が全く違う。ずいぶんおとなしくなっているのは歳のせい? 線で風景構成要素の形をきっちり捉えるという意識が少し下がったのかも。大胆さが無くなっている。でも、色は彩度が上がって、きれいになった。どっちも好き。①の方が静かで落ち着いていて好いかな。


 

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松本市奈川(旧奈川村)の火の見櫓

2023-07-25 | g 火の見櫓観察記


 この急な坂道の先に本当に火の見櫓が立っているのだろうか・・・。


眼下に奈川度ダムの梓湖を望む。ダム堤頂を通る国道158号からこの高さまで登ってきた。


「あった、あれだ!」


 1484 松本市奈川入山 3柱66型ショートトラス脚 2023.07.25

山の中腹にこんな本格的な火の見櫓が立っているなんて、驚き。見張り台の床面の高さはおよそ9m(梯子桟のピッチと数で求めた)、屋根のてっぺんまでは12mくらいありそうだ。柱脚間の長さ2m(1辺の長さが2mの正三角形)。




屋根下に半鐘を吊り下げていたフックがある。今は半鐘の代わりにサイレンが設置されている。




脚の上部に床をつくり半鐘を吊り下げている。交叉ブレースの下側の片方を撤去して、櫓内に出入りできるようにしている。


トラスが脚元まで達していないショートトラス。このタイプはそれ程多くない。オイルタンクの設置スペースとしてちょうどよいのだろう。


 

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松本市新村の火の見櫓

2023-07-25 | g 火の見櫓観察記


 1483 松本市新村 3柱無無ロング3角脚 2023.07.25




■ これだけ細身でリング付き交叉ブレースを設置した櫓は珍しいのではないか。そして脚もちゃんとつくられている。半鐘が取り外され、切妻屋根だけが残されている。半鐘があれば良かったのに・・・、残念。




半鐘が吊り下げてあった櫓中間まで外付け梯子が設置されている。消防信号板が残っている。


 

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「データサイエンスが解く邪馬台国」

2023-07-23 | g 読書日記

420
『データサイエンスが解く邪馬台国 北部九州説はゆるがない』安本美典(朝日新書2021年)

 今月の4冊目も新書。

畿内か北部九州か・・・。邪馬台国所在地論争。本書で著者・安本氏んは北部九州が圧倒的に有利であることを理詰めで説明する。データサイエンスによってこれだけ緻密に、明快に論じられてしまうと、畿内説を支持する論者は反論できないのでは。完璧なる詰将棋、と言う印象。安本氏は権威主義的な考古学界に対し、厳しい批判もしている。次のような指摘も。

**従来の方法を発展させて行くという進み方は、限界にきているのではないか。古代史像をつかもうとするばあいに、不正確で恣意的な「解釈」と、大幅な「空想」をともなうようになってきているようにみえる。**(224頁)

ところで一般人が邪馬台国と聞いてまず思い浮かべるのは「魏志倭人伝」だろう。何通りにも解釈できる所在地への方向、旅程に関する記述ついて、本書では触れていない。たったひとつの記述についてデータサイエンス的に扱うのは無理、ということは分かる。でも、と言いたい。この問題について、安本氏がどのように解釈しているのか、示して欲しかった。

この問題について松本清張が『陸行 水行』という短編で書いていたと思う。清張作品の文庫は全て古書店に引き取ってもらったので、確認できないが・・・。

****

『データサイエンスが解く邪馬台国』の第1章「データサイエンスとの出合い」の第1節「私の研究歴」に著者が文学作品の文体を統計学的に研究していたことが紹介されている。この節は実に興味深い内容だ。

谷崎潤一郎と志賀直哉の文章の相違を複数の観点から統計的に分析すると、両者の違いが明快になることが示される。現代作家100人の作品を統計学的に分類し、各作家を作品の文体的な特徴を3次元の座標上にプロットした図は興味深い。

また、安本氏はこの節で源氏物語の「宇治十帖」の作者問題について、検定した結果についても取り上げている。「宇治十帖」については文体がそれまでの帖とは異なる印象を受けること、和歌の数が少ないことなどから作者が違うのではないか、という見解が昔からある。

邪馬台国について書かれた本に源氏物語のことが書かれているなどとは思いも寄らなく、びっくりした。安本氏は単なる印象論ではなく、直喩、色彩語、助詞など文体に関するいくつかの項目について計量分析を行い、「宇治十帖」には他の四十四帖と偶然とはいえない違いがあることを示している。

この本の購入動機については敢えてふれないが、結果オーライだったことを記しておきたい。


 

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晴れ男四人組 夏の上高地をゆく 

2023-07-23 | g 旅行記〇

2023.07.20

 午前11時ころ、真っ赤なスポーツカーがぼくの待つ上高地線の新島々駅に向かって滑るように走行してきた。運転してきたKBさんとは2020年10月以来の再会(過去ログ)。助手席のMRさんとは昨年の10月、都内で行われた大学の研究室のOB会で会っている。狭そうな後部席(何しろスポーツカーだから)のKRさんとは何年振りだろう。集まったのは大学で同じ研究室に同時期に所属していた4人。


今年の4月ころだったかと思う。長野に行きたい、と言われていた。さて、誰から言われたっけ、KBさんだったかな。長野か、どこがいいだろう・・・。浮かんだのは上高地。河童橋から奥へ4キロ近く入ったところに高校の同級生がオーナーの明神館がある。そこに1泊しよう。しばらく前からグループラインで旅行について、あれこれ情報交換していた。

新島々駅を11時30分発のバスで上高地に向かう。上高地バスターミナルの3キロほど手前の大正池に12時30分少し前に到着、下車。大正池ホテルで食事をしてから、河童橋めざして歩く(① 正面は焼岳)。ゆっくり歩いて約1時間。バスターミナルで帰りのバスの予約をする(⑬)。 




上高地と言えば河童橋。写真の撮り方によって風景の印象がだいぶ違う(②、③)。


河童橋。KRさんは上高地2回目、KBさんとMRさんは初めて、と聞いた。私は3回目。晴天なのは晴れ男4人の相乗効果か。


明神岳 明神館まであと少し。

私が予約していた宿は河童橋から4キロ近く奥にある明神館。野鳥のさえずり、清流のせせらぎを聞きながら梓川左岸の林間歩道を歩く。宿には午後4時過ぎに着いた。

この日の歩数は約13,000歩。よく歩いた。ぼくと高校で同級だった宿のオーナーが笑顔で迎えてくれた。2018年の8月に同級生8人がこの宿で旧交を温めた。その時の記事に宿の外観その他、写真を載せている(過去ログ)。

さっそく風呂に入って汗を流し、浴衣に着替えて食堂へ。カンパ~イ!! あ~~ ビールが美味い。

ゆっくり食事をして、部屋でのんびり。建設業界の表話に裏話、それからMRさんのクラシック音楽のレクチャー。フルトヴェングラーとかカール・ベーム、ずいぶん昔の指揮者にも話が及び・・・。

あっという間に9時半、館内消灯。熟睡、のはずが大きなBGMが始まって・・・。


2023.07.21


朝5時ころ 明神館2階のバルコニーから明神岳を望む。


梓川に架かる明神橋と明神岳




早朝、肌寒くて薄手のセーターを着る。外に出て、梓川に架かる明神橋(⑦)を渡って明神池へ。池のほとりに穂高神社奥宮(⑧)がある。

ここは神域。ご神体の明神岳に向かって2礼2拍手1礼する3人(⑨)。ぼくが持っていった3脚を使って4人並んで写真を撮ったが、掲載は控える。


宿に戻って朝食。9時ころ宿を出発。明神橋を渡り、梓川右岸の歩道を歩く(⑩)。KBさんは富士山登山10回という健脚。5年前にもここを歩いているが、記憶なし。


さわやか上高地


*****


20日に買い求めた乗車券 発行日に14時52分とプリントされている。

ほぼ定刻、12時30分ころ新島々に着いた。さて、昼食。信州と言えばそば、ということで新島々駅から車で10分くらいのところにある山形村のそば集落、唐沢へ。一押しのそば屋で天ざる、美味い。その後、松本で観光するという選択枝もあったと思うけれど3人は鄙里の拙宅経由の帰路を希望とのこと。で、案内。

(小一時間経過) 

近くの道の駅に立ち寄るも、残念なことにこの時季は果物がない。長野道のIC近くまで案内して、お別れ。高速道路を覆面パトに追いかけられない速度で走行した、と信じる。

この日の歩数は約11,400歩。


2日間、天気に恵まれてホッとしている。

ラインで早くもこんなリクエストが。

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松本市島内の火の見櫓

2023-07-19 | g 火の見櫓観察記


(再)松本市島内 小宮公民館前 3柱8〇型ショートアーチ 2023.07.19

 この火の見櫓は既に一度見ている(過去ログ)が、今日改めて見てきた。前回、2018年に見た時は、上の写真のような「火の見櫓のある風景」を撮ることはなかった。また火の見櫓のタイプ分けに脚部の形を入れていなかった。


見張り台床面の高さ 約11.5m 屋根のてっぺんまでの高さ 約14m(=11.5+2.5)と推測した。柱間隔3.6m


前回は踊り場の写真を載せていなかった。3角形の櫓の中に納めている。スペース的にはこれで充分。

 
 左:部材接合部        右:柱脚部

部材接合部:部材をリベット接合している。丸鋼ブレースの端部はガセットプレートにボルト留め。
柱脚部:コンクリート基礎から突き出した等辺山形鋼と柱の等辺山形鋼(75×75×*)の間に平鋼のピースを挟み込んでボルト留めしている。平鋼ピースの挟み込みはせん断耐力を増すためだろう。


なぜか消防信号板が隣りの墓地を囲むフェンスに取り付けられている。


 

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テイク6

2023-07-17 | g 火の見櫓のある風景を描く〇


長野県朝日村にて 2023.07.15

 いつの間にか火の見櫓の左後方の倉庫の後ろにあった大きな木が切り倒されていた。風景の雰囲気がだいぶ変わってしまった。スケッチにはその無くなった高木、ハクモクレンを描き入れた。このスケッチでは他にも白いアジサイ(写真には写っていない)の色を青に変え、道路左側の家の前に青いアサガオを咲かせた。アサガオはようやく咲き始めたところで、やはり写真では判然としない。

この風景を描くのは今回が6回目。道路の両側の敷地の高さに差があって、建物の様子が一見不自然に見える(写真参照)。敷地の高さを揃えれば、もっと自然に、リアルに見えると思うが、そのような調整はしないで、そのまま描いた。火の見櫓の左側の大きな倉庫が遠近感に不自然な感じを与えているが、やはりそのまま描いた。屋根の勾配が実際よりちょっと急だったことに写真と見比べて気が付いた。

この風景で悩むのは後方の山並みの表現。稜線、山の端を1本の線を引いて終りにするかどうか・・・。1本の線だけで表現するほど遠くにないので、少しノイズの線を描き入れた。

山の色もどうしようか、考えた。遠くの山は青みを帯びて見える。レイリー散乱と呼ばれる現象だという。だが、この場所から見える山は青みを帯びるほど遠くにない。画面全体の緑のトーンを合わせた方がまとまるだろう、と今回は木々と同系色にした。夏の緑のイメージ。

この風景は、納得いくまで描きたかった。いや、理由は敢えて書かないが、どうしても描かなくてはならなかった。構図、色の調子、共にまとまったと自己判断して、ここのスケッチを終わりにする。



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「堤未果のショック・ドクトリン」

2023-07-16 | g 読書日記

420
『堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法』堤 未果(幻冬舎新書2023年)

 今最も読まれている新書(7月3日~9日 福岡・丸善博多店でランキング1位)。この本がしばらく前から気になっていて、『言語の本質』(過去ログ)を読み終える前に買い求めていた。

書名になっているショックド・クトリンという言葉について、カバーの裏面に次のように説明されている。**テロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法**

本書は次のような章立てになっている。第1章 マイナンバーという国民監視テク、第2章 命につけられる値札――コロナショック・ドクトリン、第3章 脱炭素ユートピアの先にあるディストピア。

マイナンバー、コロナ、脱炭素。この中で特に気になるのはやはりマイナンバーだ。著者の堤さんが信濃毎日新聞に寄稿した記事を読んだ(2023.06.09)。堤さんは「運用トラブル続出のマイナカード 立ち止まってシステム改善を」と題した記事に**ここで一度立ち止まり、他国の失敗と成功を吟味しつつ、丁寧にシステムをつくり直すことだ。便利なだけでなく、誰もが安心できる制度設計への誠意ある尽力は、幸せなデジタル大国を目指す国への信頼を高めるだろう。**と書いている。

国は「あれば便利マイナンバーカード」を「無いと生活できないマイナンバーカード」に変えようとしている。ここで注意しなくてはならないのば、このカードは国にとっては便利だけれど、国民にとって特に便利なことはない、ということ。紙の保険証のどこが不便だろう。今の運転免許証に何か不便なことでも? 

本書に情報システム学会の八木晃二常務理事の言葉が紹介されている。**「銀行通帳、銀行印、運転免許証、保険証が入った手提げ金庫の外側には、氏名、誕生日、マイナンバーが貼ってある。金庫は4桁数字のみで開錠可能、つまりこれを常に持ち歩く発想に近いのがなんとも・・・」**(100頁) 高齢者は4桁数字が無くてもOK、などと言い出した国。国民の情報を集めるだけ集めて、その漏洩に関しては、そんなの関係ねぇという姿勢。

アメリカにも社会保障番号という一生変わらない個人番号があるそうだが、本に掲載されているそのカードにはDO NOT CARRY IT WITH YOU.と表記されている(82頁)。そう、持ち歩いちゃいけないという注意喚起。それをこの国は国民が常に持ち歩くようにしようとしている。

もちろん紛失や盗難によるトラブルの責任は国民にあるとしているし、情報漏洩があったとしても国は責任を取らないだろう。本書には「日本のマイナンバー情報は何回も漏れてます」という見出しの節がある(101頁~)。既に某国に漏洩していると指摘され、国会でも取り上げられているし、週刊誌にもこのことに関する記事が載った。

セキュリティの脆弱性と必要性のなさが指摘されるマイナンバーカードを全国民に作らせる本当の理由、堤さんの説明(114頁)はここには載せない。

国は今後更にこのカードへの紐づけ情報も、その情報の利用範囲(もちろん国の)も広げるかもしれない・・・。


 

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「言語の本質」

2023-07-15 | g 読書日記

420
『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』今井むつみ・秋田喜美(中公新書2023年)

 この新書を書店で手にして、迷うことなく即買いした。時々こんなことがある。このように買い求めた本は大概おもしろい。この本も実に興味深く、おもしろかった。奥付をみると初版が2023年の5月25日で、そのわずか1か月後、6月20日には3版となっている。今、話題の本のようで、7月15日付 信濃毎日新聞の読書面に掲載されている「売れている10冊(12日・紀伊国屋書店新宿店)」をみると、第3位になっている。研究をベースにした専門的な論考がベストセラーとは・・・。

ヒトはどのように言語を獲得していったのか、そのプロセスに関する論考。オノマトペを出発点として、言語の本質にまで迫っていくロジカルな展開はおもしろく、また小さな子どもたちに実施した実験も示され、実証的で出来の悪い推理小説よりよほどスリリングで先が気になってワクワクしながら読み進んだ。新書でこんなに密度の濃い内容が読めるとは驚き。やはり新書は中公だ。ちなみに文庫は新潮(過去ログ)。

この本で展開される論考のキーワードは「記号接地論」「ブーストラッピング・サイクル *1」「アブダクション推論」。

終章にこの本で展開された論考の論旨がまとめられている。そこからぼくは次の一文を引用する。**私たちの祖先も、発声でアナログ的に外界のモノや出来事を模写していたのが、徐々にオノマトペに変わり、オノマトペが文法化され、体系化されて、現在の記号の体系としての言語に進化していったのではないかという仮説、いわば「オノマトペ言語起源説」を真剣に考えてみたいと思うようになった。**(252頁)


*1 知覚経験から知識を創造し、作った知識を使ってさらに知識を急速に成長させていく学習力(253頁)

このところ火の見櫓のある風景を毎日のようにスケッチしていて、読書にあまり時間を割いていない。『カラー版 名画を見る眼 Ⅱ』高階秀爾(岩波新書2023年)に次いでこの本が今月2冊目と少ない。だが、2冊とも良書。


 

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火の見櫓のある風景

2023-07-14 | g 火の見櫓のある風景を描く〇




 視点の高さを変えると道路の見え方が違う。そして風景の印象も随分違う。①は簡易な折りたたみ椅子に腰かけて、②は立って撮った写真。2連の蔵の前の石積み塀の天端が①では手前下がりになり、②は手前が上がる。今回は立って、②の視点でスケッチした。





蔵の屋根の構造材がどうなっているのか、理解していてもいなくても、スケッチが変わるわけではないけれど、やはり理解していないと描けない。

火の見櫓の右横の住宅は屋根の向きが中間で変わっているけれど、外壁は同面。だが、縦線を引いて、右側が奥に入っているように描いた。2020年に描いた時もそうしていた。ウソの方が本当に見えるということの実例。道路の奥に実際にはない山を描いた。蔵の牛鼻は見えていないけれど描き入れた。

この風景はこのスケッチを可として、終りにしたい。


 

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火の見櫓のある風景

2023-07-13 | g 火の見櫓のある風景を描く〇


長野県朝日村古見 2023.07.12

 長野県朝日村に現在立っている火の見櫓、全15基のスケッチをするというミッション。このスケッチが12基目。描きやすい所から描いているので、残っているのは描きにくい所だ。そう、絵にならない風景。

集落内の生活道路の交差点の角に3柱1構面梯子型の火の見櫓が立っている。朝日村にはこのタイプが多い。で、火の見櫓の対角には電柱が立っている。


現地を訪れる前は、写真①のような縦フレのアングルを想定していた。道路の左側はともかく、右側の構成要素(建物や工作物、庭木など)が少なくて物足りない。それにこれはいつもの道路山水的構図だ。他の方向からも見て、写真②の構図で描くことにした。


現場でこの風景を見た時、一番手前の電柱は描かないでおこう、と思った。一通り線描してみると、風景構成要素がバラバラ、離散的でまとまりがない・・・。最後に電柱を描き加えた。すると、あら不思議。電柱によって奥行き感が強調され、交差点の雰囲気が落ち着いて構図がまとまった。

太い筆を使ってラフに着色した。ラフな線描にラフな着色で調子が整った、かな。緑色はもっと、鮮やかな色にしたい。彩度が高いのに落ち着いた色、ってどんな色だろう・・・。




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ウソでもいいから本当のことを描いて

2023-07-13 | g 火の見櫓のある風景を描く〇


松本市神林 2023.07.11



 この火の見櫓のある風景は2020年に既に描いている。その時は左端の住宅は画面に入れていない。その方が構図が整うから。もう一度ここを描こうと思う。


この風景を特徴づけているのは2連の蔵だ。庭木に隠されていて手前の蔵の妻壁は見えないが、写真②の様になっている。棟梁の木口を包む牛鼻の下側が窓枠(?)と取り合って、欠けている。このような牛鼻を初めて見た。2020年にスケッチした時は、関心が及ばず気が付かなかった。ごく一般的なのは下の写真③、④のように満月状態だ。


松本市里山辺の蔵の牛鼻 2012.03.11


茅野市 2015.09.27

仮に写真②のように描かれたスケッチをぼくが見たとしたら、どうだろう・・・。描き損じたのかな、と思うに違いない。ぼくはウソでも写真⑤のように牛鼻と窓を離して描くだろう。幸いにも、庭木に隠されて見えないが。ただし、蔵に対象を絞って描くなら②のように描く。


茅野市 2010.07.24

時にウソを描く、ということも必要だ。そうしないとリアルに見えないことがあるから。


 

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