透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「16 男はつらいよ 葛飾立志篇」

2021-07-16 | E 週末には映画を観よう

俺がはじめてお雪さんと会ったのは、忘れもしねぇ 雪の降ってる晩だった。俺は寒河江という町を無一文で歩いていたんだ。(中略)

駅前の食堂に飛び込んだんだ。そこがお雪さんの店よ。(中略)

俺は手に持ってるカバンと腕時計を出して、「これで何か食わしてくれ」って、そう言ったんだ。

そうしたら、「いいんですよ。困っている時はみんなお互いですからね」  どんぶりに山盛りの飯と湯気の立った豚汁とお新香をそっと置いてってくれたっけ。

俺はもう無我夢中でその飯をかき込んでいるうちに、なんだかぽろぽろぽろぽろぽろぽろ・・・、涙がこぼれて仕方がなかったよ。

その時、俺には、あのお雪さんが観音さまに見えたよ。その名の通り、雪のように白い肌の、そりぁ、きれいな人だった・・・。(*1)

寅さんはその後何年も正月にお雪さんに手紙を送り続け、娘さんの学費の足しにと、お金も同封していたのだった。

*****

ある日、とらやにひとりの女子高生(桜田淳子)が訪ねてくる。順子という名前で、寒河江の駅前の食堂でお雪さんは赤ん坊を背中に負ぶって働いでいたが、その時の赤ん坊だった。

順子が寅さんを会ったことのない実の父親だとずっと思っていたことから、この後ひと騒動あるのだが、事情が分かる。順子が帰ったあと(順子は修学旅行で東京に出て来ていて、友だちと柴又まで来たのだった)、とらやの人たちは茶の間で寅さんからお雪さんとの出会いの様子を聞く。それが上掲部分。

今回のマドンナはこの話とは無関係の女性で、考古学を研究する大学助手の礼子(樫山文枝)。礼子は御前様の親戚で、とらやの2階に下宿していた。そこへ旅先から寅さんが帰ってきて・・・。礼子の師匠である大学教授の田所(小林桂樹 *2)も独身、礼子に惚れている。で、ああなって、こうなって・・・。

僕はこの作品では順子の母親のお雪という女性がマドンナだと思う。寅さんは順子がとらやに来た時、お雪さんが亡くなったことを聞かされ、山形県の寒河江まで出かけて墓参りをする。スクリーンには登場しないお雪さん、もし背中に赤ちゃんの負ぶって登場するシーンがあるとすれば、演ずるのは誰? 誰が相応しいだろう・・・。


*1 DVDの再生と一時停止を繰り返して寅さんのせりふの文字起こしをした。
*2 小林桂樹は「日本沈没」でも田所という名前の地球物理学者(元大学教授)を演じている。調べるとどちらも名前が雄介で同じ。公開は「日本沈没」が1973年で寅さんより2年早い。名前の一致は偶然ではないだろう。

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