透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 2021.07

2021-07-31 | A ブックレビュー

  

 7月も今日で終わり。明日から8月。で、7月のブックレビュー。読了本は4冊と少ないが、島崎藤村の『夜明け前 第二部上』(新潮文庫)を読むのに時間がかかったことがその理由。全4巻の長編小説はようやくこの巻の後半あたりになって、世情描写から主人公の半蔵及びその家族、周辺の人たちにズームインした描写になっていく。そして第4巻、第二部下の序盤で物語は大きく動き出す。**暗い土蔵の二階、二つ並べた古い長持の側に倒れていたのは他のものでもなかった。自害を企てた娘お粂がそこに見出された。**(89頁)8月には休みが多いから、この長編小説を読み終えることができるだろう。読み終えたという満足感を味わいたい。

『弥勒の月』あさのあつこ(光文社文庫)人気作家の作品を初めて読んだ。遠野屋のお内儀の投身自殺に事件性を感じた同心・小暮信次郎が岡っ引・伊佐治とともに、夫である遠野屋の主人・清之介の闇に迫る・・・。明かされる驚きの過去。意外な結末。サイコサスペンスともいえる作品。

『リニア新幹線と南海トラフ巨大地震』石橋克彦(集英社新書)**時速500キロの超特急は「活断層密集地帯」を疾走する。本当に大丈夫?**(帯からの引用文)全く必要のないリニア新幹線、でももう止められない・・・。

『「本の寺子屋」新時代へ』「信州しおじり 本の寺子屋」研究会編(東洋出版)塩尻のえんぱーくで2012年7月に開講した「本の寺子屋」で講演を行った講師(多くは作家)のエッセイを収録した本。7月25日に行われた森まゆみさんの講演会で買い求めた。


 

 


「3 男はつらいよ フーテンの寅」

2021-07-31 | E 週末には映画を観よう

 オリンピックのあまり興味のない競技を漫然と観る気はしない。で、昨日(30日)、寅さんシリーズ第3作「フーテンの寅」を観た。

全作品のうち、この第3作と次の第4作だけは山田洋次監督の作品ではない。監督が違うと作品の雰囲気も当然違う。ちなみに第3作は森崎 東監督、第4作は小林俊一監督。

寅さん、タコ社長の紹介で見合いをする。緊張して待つ寅さんの前に現れた見合いの相手は、なんと寅さんの仙台の知り合いの駒子という女性だった。

駒子の身の上話を延々と聞かされる寅さん。駒子には所帯を持った男がいたが、浮気をして・・・。寅さん、ふたりのよりを戻し、とらやで大宴会。その後ハイヤーでふたりを新婚旅行に送り出す。

寅さんらしい人の好さ。だが、支払いをとらやに回してしまうから、さあ大変。とらや一家で大喧嘩。「そんなら自分で払ってみろってんだ!」と寅さんに向かっておばちゃん。こんなせりふ、優しいいおばちゃんに言わせて欲しくなかったな。「表へ出ろ!」と博。この言葉にもぼくはびっくり。こんな荒々しい博を初めて見た。山田監督ならこんなシーンは撮らないと思う。「このやろう上等だよ、やってやろうじゃねえか!」と寅さん。とらやの庭での出来事は省略。

寅さん旅に出る。それからひと月後。

おいちゃんとおばちゃんが旅行に出かける。色々あったから、心を休めたいのだろう・・・。

ふたりが向かった先は湯の山温泉。湯の山温泉ってどこ? 調べると三重県にある温泉だった。ふたりが泊まったのは「もみじ荘」という古い旅館。

このシリーズに「欠かせない」偶然、なんとその旅館で寅さんが番頭をしていた。で、美人の女将・志津(新珠三千代)が今回のマドンナ。

今まで観てきた作品ではマドンナも寅さんに惹かれるけれど、どうもこの作品ではそんな感じがしない。ふたりの間にほんわかとした雰囲気を感じない。

女将には信夫という弟がいて、染奴(染子・香山美子)という芸者に惚れている。染奴も信夫が好きなのだが・・・。

その後の展開省略。

染奴の父親が暮らすみすぼらしい家を訪ねた寅さんと信夫、染奴。そこでのやり取りは省略。

寅さんに諭されて駆落ちするふたり、オートバイで父親の家を去っていく。その後、寅さんが父親に仁義を切る姿が描かれる。

女将は大学教授との結婚を決意して旅館をたたむことに・・・。女将不在とは気がつかず、部屋の外から別れを告げる寅さん。なんだか可哀そうというか惨め。失意の寅さんが歩いているところに偶々女将の志津さんの乗った車が通りかかり、車を停めてもらう。でも降りて声をかけるでもなく、そのまま去ってしまう。

この作品にはとらや一家の団らんのシーンはほとんどないし、さくらもあまり出てこない。寅さんのことを心配する優しいさくらを観たいのに・・・。生々しすぎるシーンも出てきてなんだかあまり好きになれなかった。


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