透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 1109

2011-09-30 | A ブックレビュー

  

 9月の読了本5冊。

『安曇野 道祖の神と石神様たち』西川久寿男/穂高神社  
安曇野には二十三夜塔、庚申塔、馬頭観世音などが道祖神とともに祀られている。これらの石神・石仏がどういうものなのかを説いた本。 今後の道祖神巡りの資料にしたい。今年開業した長野の古書店で買い求めた。

『製本工房から』栃折久美子/冬樹社  
昭和53(1978)年発行の古い本。  著者の栃折さんはブックデザイナー。 1960年から1977年までに書かれたエッセイをまとめたもの。 このくらいの年代に書かれた、少しかたい文章をもっと読みたいとこの頃思う。

松本のカフェ マトカで行われた古本市で買い求めた。本の天の変色が他の部分より進んでいることから長い間きちんと書棚に並べられていたと思われる。どんな人が所有していたのだろう・・・。

『龍宮』川上弘美/文春文庫  
先日の日帰り東京に持っていった本。都内を移動する地下鉄と帰りの「あずさ」で読んだ。昔蛸だったと称する男の自慢話。海から出てきて人間と交わった「生き物」。ほんとうはここにはいないもの、別の世界から訪れたものとの交情。

『此処 彼処』川上弘美/新潮文庫  
「私の場所」の想い出を綴ったエッセイ集。

『「想定外」の罠 大震災と原発』柳田邦男/文藝春秋  
柳田氏はこの本の中でもヒューマンエラー、まさかと思うような人間のミスがシステム(航空機も複雑なシステムだ)全体を破局に陥れるような大事故を招くことを指摘している。

9月6日に那覇から羽田に向かっていた全日空機が浜松市沖で一時背面飛行をしていた、と報ずる新聞記事を読んで、柳田氏が指摘していたヒューマンエラーのことを思い出した。

副操縦士が操縦室のドアの解錠スイッチ操作するところを、間違えて方向舵の調整スイッチを操作したために機体が大きく傾き、一時ほぼ背面状態になったのだという。ふたつのスイッチは十数センチ離れていると記事にある。が、この配置が「ヒューマンエラー」を誘発したと言えるのかもしれない。ふたつのスイッチは十数センチしか離れていなかった、こう捉える方が認識としては正しいのではないか。 

人は時にミスをする、間違える、誤った操作をする。このことを前提とした設計、そこには想定範囲をより広げる設計者の優れた想像力とそれをどこまで設計に反映させるかということに関する優れた判断力が必要、ということだろう。


9月29日付信濃毎日新聞朝刊の記事

さて、10月はどんな本と出会うことができるだろう・・・。



初音ミク

2011-09-29 | A あれこれ



 今月(9月)26日付朝刊(信濃毎日新聞)に変わる「リアル」の在り方 バーチャル歌手生んだ「ボーカロイド」という見出しの記事が載っていました。ヤマハが開発した「ボーカロイド」、通称「ボカロ」に関する内容の記事です。

この記事によると、「ボカロ」という歌声合成技術によって、入力した歌詞とメロディーの通りに歌わせることができるそうで、この技術を用いたバーチャルな歌手が歌を歌うんだとか。アキバ系情報には全く疎いので「初音ミク」とか「あきこロイドちゃん」というバーチャル歌手の名前をこの記事で初めて知りました。

すごくかわいい女の子が歌を歌う映像が話題になって、あの女の子は誰?となったことがありましたが、実在しないバーチャルな女の子だった・・・、ということが確かありました(曖昧な記憶ですが)。

映画「ジュラシック・パーク」を観て、バーチャルな恐竜が映画の中ではリアルな俳優と全く同じ存在感なことに驚きましたが、AKB48のメンバーにバーチャルな女の子を加えるなんてことも映像技術的には可能なんですね。そのうちバーチャル歌手がテレビの歌番組に出演して司会者のインタビューに答えるなんてことになるかもしれません。

この新聞記事に載っている初音ミクやあきこロイドちゃんはアニメキャラですが、すごく歌の上手いリアルな、いやバーチャルな美人歌手だってつくることができるわけで、そんな歌手が出演したらすごく人気が出たりして・・・。

変わる「リアル」の在り方という見出しの通り、確かに「リアル」の概念が変わりつつあるのかもしれません。


突き上げ屋根

2011-09-28 | A あれこれ


民家 昔の記録 791021撮影

 先日東京した時、電車の窓から火の見櫓をさがしていたことは既に書きました。数年前までは諏訪から茅野にかけては「たてぐるみ」と呼ばれる、土蔵とすまいが一体になった民家や「つまだれ」をさがし、甲府駅を過ぎ、塩山辺りになると「櫓造り」と呼ばれる民家をさがしたものでした。

1979年ですから、もう30年以上も前のこと、塩山駅で途中下車をして櫓造りの民家を見てまわったことがありました。当時でも茅葺きの民家は既に少なく、トタン(着色亜鉛鉄板)葺きの民家が大半でした。日帰り東京記2に載せた写真がベストですが、今回は別の写真を載せます。

この民家は突き上げ棟の原形を思わせる小屋根と瓦葺きの「突き上げ屋根」を組み合わせています。棟はトタンで包んでありますが、昔は芝棟だったことを示す資料(下)があります。


木版画(甲斐桃源/山高 登)  2008年のカレンダー

これはいつ頃の風景を描いた作品でしょう。火の見櫓も立っています! こんな風景が今も残っていたら・・・。ああ、消えゆく民家、消えゆく火の見櫓・・・。



「たてぐるみ」の民家  7905撮影




群馬県水上町(現 みなかみ町)の突き上げ屋根の民家 7910撮影

塩山の民家は切妻屋根ですが、水上の屋根の妻側はかぶと造りです。突き上げ屋根を支える構造などは両者よく似ています。 


196 消防信号

2011-09-27 | A 火の見櫓っておもしろい

松本市里山辺湯の原(美ヶ原温泉)の火の見櫓


196



 半鐘のたたき方やサイレンのならし方は消防法施行規則によって決められていて、例えば近火の場合は連打(右端に表示されている)する。

ところで、美空ひばりの「お祭りマンボ」という歌に ♪どこかで半鐘がなっている 火事は近いよ スリバンだ という歌詞がある。「スリバンって何?」  しばらく前のミニミニ講座で訊かれたが知らなかった。 ネット検索で分かった。スリバンは擦半鐘の略で連打という意味だった。



この火の見櫓、消防信号板の下に防災無線用の盤が設置されている。盤には「湯の原町 町内会無線放送システム」と表示されている。既に火の見櫓としての役目を終えて、今は防災無線塔として立ち続けているのだ。

盤も見張り台のスピーカーも火の見櫓には似合わないけれど、これも時代の流れ。新しい役目を得て立ち続けるならいい・・・。


 


「龍宮」と「此処 彼処」

2011-09-26 | A 読書日記



 川上弘美の初期の短篇集『龍宮』文春文庫を一昨日(24日)都内の地下鉄と帰りのあずさで再読した。どの作品にもアラーキーの写真のような淫靡(そう、エロティックより淫靡が相応しい)な雰囲気が漂っている。あまり好きな作品じゃないけれど、もう川上弘美の作品ならあばただろうがなんだろうがみんなえくぼ、なのだ。




しばらく前に再読した川上弘美のエッセイ集。実際にある場所のことについて書いたエッセイ。

**名前は不思議だ。「弘美」という名で育ったことが、自分の性格その他に何か影響を及ぼしているのだろうかと、ときおり考えることがある。もしわたしが「さおり」や「ゆりえ」だったら、もっと明るい性格に育ったかもしれない。**浅草(17頁)  同感。 でもそういう名前の作家だったら私は読むことになっただろうか・・・。

**海岸に出て、うみねこを見た。うみねこはうじゃうじゃいて、近くに寄ると、じゅうたんが少しずつはがれるように、何羽かがまとまって飛びたつ。**出雲(19頁) 川上弘美はこういう表現が上手い。決して教科書向きではないけれど。

**いつもわたしは訊ねてみる。ひとめぼれって、どこを見たらできるの。**
**まずは顔と体ね。声も。何より大事なのは、全体からかもしだされる雰囲気、かな。**ボストン(102頁) 火の見櫓も同じだ、と思う。まずは全体の雰囲気。


 


日帰り東京記 5

2011-09-25 | A あれこれ



■ TOTOギャラリー・間から徒歩で10分とかからない東京ミッドタウン。富士フィルムフォトサロンで写真展を観る。スターバックスでしばしコーヒータイム。地下鉄大江戸線で新宿へ。東京の友人と新宿駅で待ち合わせ、1年ぶりの再会。

すこし早目の食事。
会話。本のことに話題が及ぶ。
最近、記憶に残るような読書をしていない、というかそのような本がなかなかない、と友人。
同感。未読の名著を読みたい、SFの古典もいいかもしれないと話す。

加藤周一の全集のこと。
「自由からの逃走」って・・・、と振られて、著者のE・フロムをかろうじて思い出す。
最近読んだ漱石の「吾輩は猫である」のラストについて、酔っぱらって水甕に落ちた猫は生きることをあっさりとあきらめてしまうが、そこに漱石の願望に近い意識の反映があるのでは、と感じたことを話す。

川上弘美の「真鶴」に関して、長く会っていない知人・友人は「こちら側」にいても「あちら側」にいてもボクの場合、同じ存在感を持っていると話す。
倉橋由美子。この作家の作品として「パルタイ」がまず浮かぶ。が、友人は「大人のための残酷童話」にひかれているのでは、と思う。
松岡正剛。丸善で新刊を目にしたと話す。「松丸本舗」の書棚の魅力を今回も体験した。


20時発のスーパーあずさ33号に乗る。「龍宮」を鞄から取り出して、読み始める。川上弘美は昭和33年生まれ。「33」は共通する数字だ、と気がつく。
22時半過ぎ、あずさが松本駅に着いた。帰路を急ぐ。日帰り東京が終わった・・・。


日帰り東京記 4

2011-09-25 | A あれこれ

 東京駅のドーム屋根を眺めてから丸の内オアゾの丸善へ。4階のエムシー・カフェで遅くなった昼食にカレーを食す。食後のコーヒーをゆっくり味わってから、地下鉄で乃木坂へ。





TOTOギャラリー・間で「アラヴェナ展」をみる。

よく分からないプレゼンだった。


メモ)
アラヴェナはチリ出身の若手建築家。パンフレットによると2008年第11回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展銀獅子賞、2009年マーカス建築賞、アヴォニ賞などの受賞歴があり、2008年には「icon」誌による20人の優秀な若手建築家に選出されている。2009年からプリツカー賞(建築界のノーベル賞といわれる)の審査員。

16,300歩


日帰り東京記 3

2011-09-25 | A あれこれ

■ 森美術館を出て地下鉄を乗り継いで東京駅へ。東京駅は現在復元工事中。仮囲いで全体の様子が分からない。駅舎両端の大きなドーム屋根が仮囲いの上に姿を現していた。



東京駅舎は壊されてしまうところだった・・・。

藤森さんがこのことについて『建築探偵 雨天決行』/朝日新聞社に書いている。**中曽根政権の末期に、東京大改造のかけ声のもと、赤煉瓦の駅舎を壊して跡に超高層のオフィスビルを建てて貸しビル経営をやろうという計画が出されました。しかし、あれだけの建物を何の討議もしないまま地上から消失させたとあっては後世から笑われるから、いったいどうするのがいいかについて考える学識経験者の委員会が結成されました。**



引用ついでに**今の東京駅が昔のままだと思っている人がいるみたいだが、まちがいです。東京大空襲で屋根とインテリアを焼き尽くされてしまい、三階建てを二階建てにし、大ドーム屋根を簡単なトンガリ屋根に縮小して復旧されました。**

東京駅舎には周囲のガラスの超高層ビルに「時間が堆積した建築だけが醸し出す魅力」があることを知らしめて欲しい。


 


― 日帰り東京記 2

2011-09-25 | A 火の見櫓っておもしろい

特急あずさの窓外に火の見櫓をさがす

■ 東京するとき、あずさの車内ではいつも本を読むが、昨日(24日)はずっと窓の外を見て、風景の中に火の見櫓をさがしていた。塩尻駅を過ぎて、姿のいい火の見櫓を見つけた。岡谷駅の手前でも1基。茅野駅の前後にもいい火の見櫓が立っていた。


山梨県も火の見櫓が多い。長坂駅の近くにも見つけた。日野春駅の手前にも立っていた。韮崎駅を過ぎたところにも。この辺りまでは富士山をバックに写真が撮れそうなロケーションだ。いつか出かけたい・・・。

塩山駅の前後にも立っていた。この辺りで昔、櫓造りの民家を見て歩いた。それが今では同じ櫓でも火の見櫓か・・・。


何回も載せた櫓造りの民家の写真 1979年10月撮影

勝沼、笹子、大月、上野原の各駅の近くにも火の見櫓が立っていた。東京都に入る。八王子駅を過ぎて、浅川を渡って・・・、この辺りにも立っていることは分かっていた。まだあった。良かった。

高架になった国立駅を過ぎる。都内にはないだろうな、と思っていると・・・。西荻窪駅の手前(だったと思う)、ホースタワーに半鐘が付いていた、ということは火の見櫓! 近くで観察しなくては。次回、東京するとき立川駅であずさから快速電車に乗り換えよう。




森美術館のある森タワーの屋上から見た東京タワー  火の見櫓の理想的な形を示している。なめらかな曲線のフォルムが美しい。



遠くに東京スカイツリーも見えた。東京タワーの方が好きだな・・・。



日帰り東京記 1

2011-09-25 | A あれこれ

メタボリズムの未来都市展 戦後日本・今蘇る復興の夢とビジョン

■ 「メタボリズム」は1960年代に日本の建築界を中心に展開された建築理念、建築思想だった。今、東京六本木の森美術館で「メタボリズム」を総括する大規模な展覧会が開かれている。



昨日(24日)1年ぶりに東京した。松本を朝7時前に出る(ここは松本発6時51分のと書いた方がいいのかな・・・)あずさで新宿へ。六本木には新宿から地下鉄大江戸線で行った。六本木ヒルズ森タワーの53階にある森美術館、迷路のようなアクセスだ。


4つのセクションで構成されている展覧会

1 メタボリズムの誕生:広島ピースセンター
2 メタボリズムの時代:丹下健三の東京計画1960、菊竹清訓の海上都市計画 黒川紀章の中銀カプセルタワービル、磯崎 新の空中都市
3 空間から環境へ:大阪万博
4 グローバル・メタボリズム:丹下健三のスコピエ計画の模型 


スコピエ計画 最終段階の模型写真  『建築と都市 デザインおぼえがき』丹下健三/彰国社より

充実した展示で2時間半、手描きの図面や模型、展覧会のために新たに制作したというCG、インタビュー映像などを興味深く観た。

黒川紀章のプレゼン映像 30代の黒川さん、当然だけど若い!
槇 文彦の大型プロジェクトのコンセプト説明映像
菊竹清訓の英語によるプレゼン映像

この展覧会で存在感のある建築家は丹下健三と黒川紀章、菊竹清訓の3人。




東京計画―1960 有名な模型の鳥瞰写真(六本木ヒルズの建物の外壁)

左上の既存の都心から都市軸(丹下健三のプロジェクトに共通する基本概念)が東京湾に伸びている。



干支

2011-09-24 | B 石神・石仏

 
ここは安曇野市三郷、かな・・・。

■ 前稿に続き二十三夜塔を取り上げます。今回は全景写真も載せます。左が道祖神、中が馬頭観音、そして右が二十三夜塔です。このように道祖神と二十三夜塔は並べて祀られていることが多いです。



碑の右側に、嘉永五年壬子六月とあります(写真下)。



嘉永五年の下は王子(おうじ)と読んでしまいそうですが、これは干支(えと)で壬子(みずのえね)ですね。干が壬(じん、みずのえ)で、支が子(ね)。

干の方は資料を見ないと書けません。甲(きのえ)、乙(きのと)、丙(ひのえ)、丁(ひのと)、戊(つちのえ)、己(つちのと)、庚(かのえ)、・・・。続けて書いておきます。辛(かのと)、壬(みずのえ)、癸(みずのと)。これで十干。

支は子(ね)、丑(うし)、寅(とら)、卯(う)、辰(たつ)、巳(み)、・・・と十二支すべて覚えています。

還暦って、干支の干が10あって、支が12ですから、10と12の最小公倍数が60、だから60年で暦が元に還るってことなんだって気がついたのは実はそれほど前のことではないんです。 (^^ゞ

この二十三夜塔が建てられた嘉永五年を調べてみると、西暦で1852年です。この年に建築家のジョサイア・コンドルが生まれています。翌年、1853年は黒船来航の年です。調べてみると、いろんなことが分かっておもしろいです、ね。(このくらいのことは常識でしょ、なんて言わないでください、歴史にはうといので。黒船来航の年は覚えていました。)


ジョサイア・コンドルの指導を受けた辰野金吾が設計した東京駅は現在復元工事中です。今日(24日)東京して、現在の様子を見てきます。

 


二十三夜塔

2011-09-23 | B 石神・石仏


松本市里山辺にて 110923

 月は古来から日々の暮らしと密接なつながりがあった。立ち待ち月、居待ち月、寝待ち月、更け待ち月・・・。江戸時代には「月待ち」の行事が全国的に行われるようになった。

供養のしるしとして二十三夜塔、二十六夜塔などが建てられた。二十三夜講の晩(十月二十三日)には集落(地縁的な講とした方が正確か)ごとに当番の家に集まって、夜月(月の出は11時頃と遅い)に農作物の収穫を祈念し、酒を飲み、歌い、談じた。このような月待講は昭和初期までは行われていたようだが、その後次第に行われなくなった。

二十三夜塔は道祖神の隣に祀られていることが多く、よく目にしていた(写真には写っていないが、常夜灯の右側に道祖神が立っている)。一体何だろうとずっと思っていたが、先日長野で買い求めた本(下の写真)でその意味が分かった。


メモ
二十三夜塔は本尊として勢至菩薩を祀った。


本稿の参考文献 『道祖の神と石神様たち』 西川久寿男/穂高神社発行


「想定外」の罠

2011-09-21 | A 読書日記



 ノンフィクション作家・柳田邦男氏の作品は新潮文庫になる度に読んできた。上の写真はその中でも印象に残る5作品。『マリコ』は少し傾向の違う作品だが、他の作品では柳田氏の冷静な眼が事故の真相、深層に迫っている。



先週末、『「想定外」の罠 大震災と原発』文藝春秋を読んだ。

東日本大震災と福島第1原発の事故だけでなく、チェルノブイリ原発の事故、スリーマイル島原発の事故、東海村の核燃料工場での臨界事故、阪神・淡路大震災、新潟中越地震、スマトラ沖地震などが取り上げられている。

繰り返し起こる事故や災害の教訓がきちんと活かされてこなかった、ということが本書を読むとよくわかる。海外で起こる大事故についても「日本では考えられない事故」というような括りで済ませてしまうことが多い。このような愚はもう終わりにしなくてはならない。

徹底的に事故の全貌を調査して詳細な報告書にまとめて広く公開する、福島第1原発の大事故にはこのことが国際的にも求められている。

福島原発事故調査・検証委員である柳田氏は本書のあとがきに**日本人に国のあり方や暮らしのあり方や価値観の転換を迫るほどの大地震と原発事故だったのだから、いずれ時間をかけて取材し、全体像を書かなければと痛切に感じている。**と書いている。

柳田氏には『空白の天気図』や『マッハの恐怖』のような緻密なレポートを期待する。


メモ

システム辺縁事故、ヒューマンエラー


「九鬼周造全集」

2011-09-19 | A 読書日記



 昨日(18日)久しぶりに書店へ行った。
店内に置かれていたこのパンフレットを手にした。
九鬼周造。
この哲学者については代表的な著作に『「いき」の構造』があることくらいしか知らない。
没後70年にして『九鬼周造全集』岩波書店が復刊されるという。



第一巻 「いき」の構造
第ニ巻 偶然性の問題
第三巻 人間と実存
第四巻 文芸論
・・・・
第十一巻 講義文学概論 講義偶然性
別巻 資料編

全巻を通読したいとは思わないが、一、ニ巻は読みたいなぁ。
この全集は予約出版。
全巻予約しないと入手できないことになっているが、問い合わせてみよう。
こういう本は図書館できちんと揃えておいて欲しいな。
パンフレットに載っている年譜によると『「いき」の構造』は昭和5年刊だ。
名著は読み継がれていく・・・。