透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

宿命か・・・

2013-03-31 | A あれこれ



南海トラフの巨大地震による震度の最大値の分布図 (内閣府のホームページから転載)

 内閣府のホームページによると、これまで東海地震、東南海地震、南海地震はそれぞれ個別に検討されてきたが、平成23年3月11日の東日本大地震や、平成15年以降の科学的知見の蓄積により、南海トラフのような長大な震源域(小規模な地震の震源域は日本地図上に点で示されるようなかなり限定的なもの)の巨大地震を想定する必要性が認められ、様々な検討、シミュレーションを基にこの分布図が作成されたそうだ。

この図によると震度6弱、6強、7の想定域の合計が10.4万k㎡、国土面積のおよそ30%にもなる。日本列島、ここは大丈夫などというところは無い。どこにいても地震の被害に遭う可能性が・・・。

ああ、地震列島日本に生まれたことを宿命だと受けとめて、日々生きていく・・・。


 


春だ 恋愛小説を読もう

2013-03-30 | A 読書日記

 今日は出勤日だけれど、代休した。ワークライフバランスを少しは考えないと。女房は学生時代の友だちと女子会旅行で県外の温泉へ。ならばこっちも羽を伸ばそうと、夕方から冷酒をぐいぐい、いや、ちびちびやっている。

というわけでほろ酔いで書くアルコールなブログ。

「君の名は」って、ボクが生まれるよりずっと前(と強調しておく)のラジオドラマだけれど、再会を約束したもののすれ違いばかりでなかなか会えない、そう、会えそうで 会えない男と女のものがたりだということは知っている。放送時間になると銭湯の女湯ががら空きになっというエピソードも。

高見順の『今ひとたびの』を読み終えた。この恋愛小説もまた、恋人どうしの再会ものがたりと括っていいだろう。ウン、よい。

いままで高見順の作品にはなぜか縁がなかった。壇ふみのおとっつぁん、壇一雄や阿川佐和子のおとっつぁん、阿川弘之の小説は読んだのに高見恭子(ってこんな字だっけ?)のおとっつぁんの作品は未読だった。

これは何とも古風な恋愛小説だなと思いつつ読み進んだが、昭和21年の作品というから当然か。

**芝居の疲れからか、それともそのひとの性質なのか、まわりの人たちが傍若無人にはしゃいでいるなかで、そのひとだけは何か寂しそうに、皆と溶け合えないのを自ら寂しがっているような風で、頬に物倦げな微笑を浮かべていた。**(13頁)

主人公が一目惚れした女性はこんなふうに描かれている。ああ、このひとは・・・、ボクの好みのタイプ。

時代は第二次大戦前。主人公は大学生で左翼運動家。活動資金を援助してくれている友人の芝居を見に行って、舞台のそのひと、暁子に一目惚れしたのだった。暁子もまた次第に主人公の私に惹かれていく。

主人公は逮捕や徴兵に阻まれ、暁子が他人(ひと)の妻になっても、ひたすら慕情をつのらせ続ける。

**そのひとと、ここで、悲しい、別れたくない別れをしてから思えばながい年月が経っていることゆえ、私とのあの固い約束も、そのひとはあるいは忘れてしまったのだろうか。(中略) ここで、――お互いに生きていたら必ずまた会おうと言ったのは、ほかならぬそのひとだったのだから・・・・。**(3頁) 男と女の再会ものがたりはこのように始まる。

そしてラスト。

**「あ!」 
思わず大声をあげた。周囲の人が吃驚(びっくり)してその私に眼を注いだ。
そのひとだ。
そのひとが立っている。
そのひとは遂に来た。**(122頁)

そして・・・。

映画ならその瞬間をスローモーションで表現するだろう。そしてそのひとの動きが止まった瞬間からその姿が次第にハレーションを起こして消えていく・・・。エンドロールが流れ出す・・・。で、そのひとのところではあのひとの名前が・・・って、一体誰? 


 


― 火の見最後の日

2013-03-30 | A 火の見櫓っておもしろい

 先日消防団詰所の解体・撤去作業が行われた山形村小坂(*1)で、今日(30日)火の見櫓の解体・撤去作業が行われた。



火の見櫓をクレーンで吊った状態で、踊り場の少し上のところで柱やブレースをガスバーナーで焼き切る。



柱やブレース、梯子の切断が完了するとクレーンで吊り上げる。






切断した櫓を地上に吊り下ろして、トラックに積み込む。



櫓の下半分も同様に脚元で切断、写真のように倒すところまで見届けた。8時過ぎに始まった作業はここまで2時間足らず。

火の見櫓は鉄くずと化す・・・。

メモ)

見張り台の床の寸法:1,650×1,650、同手すりの高さ:865、柱間寸法(見張り台床のところで計測):900、見張り台床から屋根のてっぺんまでの高さ:約3,300


*1 長野県東筑摩郡山形村小坂


ブックレビュー 1303

2013-03-29 | A ブックレビュー



■ 3月、年度末。別れと出会いの季節。


今月は珍しく小説を3作品も読んだ。

『散り椿』 葉室 麟/角川書店 

『蜩ノ記』もラストが恋愛小説のようで印象的だったが、この小説のラストも同様だった(過去ログ)。ラストを読んで、なぜか『たけくらべ』のラストを思い浮かべた。樋口一葉の代表作『たけくらべ』は淡い初恋のものがたりだが、ラストがとてもいい。


『秋月記』 葉室 麟/角川文庫

『散り椿』読了後、続けて読んだ時代小説。好みからすると『散り椿』かな。


『植物はすごい』 田中 修/中公新書

長野県公立高校の国語の入試問題第1問がこの本から出題された。文章は平易で読みやすいし、なるほど!な内容だった。果実が色付くのは紫外線対策で、中の種子を守るためだということをこの本で初めて知った。

今春、めでたく志望の高校に合格したMさんにこの本をプレゼントした。


『虚空の冠 覇者たちの電子書籍戦争』 楡 周平/新潮文庫

電子書籍ビジネスに関する著者の見解が登場人物によって実に説得力を持って語られている。私は電子書籍にはまったく馴染めないし、紙の本のほうが好きだが・・・。

この作家の未読作品を読もう。


『食べることも愛することも、耕すことから始まる』 クリスティン・キンボール/河出書房新社

過去ログ

「なんだか違うんじゃないかな~、この生活」と感じている都会暮らしの女性におすすめの本。


 


「今ひとたびの」

2013-03-29 | A 読書日記



■ 先日 カフェ バロでこの本を買い求めた。カフェでブックオフをしていたのだ。Kさんが読んだ本を何冊も並べてあった。その内の何冊かは私も読んでいたが、高見 順の作品を読んだことはなかった。

奥付を見ると昭和31年に初版発行、昭和51年に改版15刷発行となっている。よく読まれた本だということが分かる。

カバーの折り返しには次のような紹介文が載っている。**人の世の恋とはかくも美しいものであろうか。かりそめならぬ慕情を胸に秘め転変の波にさいなまれながらも、ただひたぶるに「そのひと」の面影を抱きつづけ、晴れて再会の街角に立った主人公の瞳に映じた恋人暁子の姿は?・・・・(後略)**

この週末は久しぶりに恋愛小説を読む。


 


安曇野の庚申塔

2013-03-28 | B 石神・石仏

 

 一見して新しい庚申塔だと分かります。安曇野市明科、県道51号沿いにあるこの文字碑には前から気が付いていました。

先日、この碑の近くに車を停めて観察しました。裏面に昭和五十五庚申年十二月吉日 中木戸庚申講中と刻まれていました。庚申塔は60年ごとに1度巡ってくる庚申(こうしん、かのえさる)の年に祀られることが多いと聞きます。この碑もそうでした。

庚申講は冠婚葬祭などの際の相互扶助の地縁組織で江戸時代中期以降に組織されたものが多いそうです。「おこうしんさま」 子どものころ、このことばを聞いた記憶があります。ここ、鄙の山里にもいつ頃までかは分かりませんが、庚申講があったということでしょう。事実、庚申碑が複数祀られていて、比較的新しいものもあります。

道祖神、二十三夜塔、庚申塔、馬頭観音・・・。野に祀られている石碑の観察をこれからも続けたいと思います。


 


目地の名前

2013-03-28 | A あれこれ


 復元された東京駅丸の内駅舎の壁面のレンガ目地は写真のようにかまぼこ形に盛り上がっています。創建時にはこのような技術的に難しい目地がつくられていたんですね。当然この目地には名前があるはずですが、知りませんでした。ちなみに今回の工事で新設された壁面の目地はフラットになっているとのことです。

東京駅を特集した「新建築」という雑誌の2012年11月号にこの目地のことが紹介されていることを同僚のN君が教えてくれました。「覆輪目地」と分かりましたが、読み方が? 調べると「ふくりん、ふくわ」、共に出ています。ふくわは重箱読みですから、ふくりんでしょうかね。 

「新建築」には南ドーム内の2階部分に設けられたTORAYA TOKYOというカフェも紹介されています。内籐廣さん設計のカフェで、むき出しになったレンガ積みの内壁と白い人工大理石の窓枠の対比がとても魅力的です。

既にこのカフェに行って来たというN君。私も今度東京へ行ったら是非この空間を体験したいと思います。


撮影日 130309 写っているのは北側のドームの外観


 


「食べることも愛することも、耕すことから始まる」

2013-03-25 | A 読書日記



 マンハッタンでフリーランスのライターや講師として働いていた女性が有機農業生産者と恋に落ち、エセックスに移住。ライフスタイルを180度変えるまで、そう **ハイヒールをはきバッグをさげて朝の四時まで街をうろついているはずが、朝の四時に「起床」、作業ズボンをはき(後略)**(5頁) となるまでの過程、日々の暮らしを詳細に綴る。

本書を読むと豊かな生活とは何か、改めて考えることになる。でもそれを実践するかどうかは別の問題・・・。


 


山形村上大池の庚申塔

2013-03-24 | B 石神・石仏


撮影日 130324

 久しぶりの石仏観察。山形村上大池でみかけた庚申塔。青面金剛像と足下の三猿。三猿は右から見ざる、言わざる、聞かざる。

三猿が庚申像に併せて刻まれるようになったのは江戸時代のことで、三猿が眼や耳や口を塞いでいることから、悪事を見ても、聞いても天帝に言わないと考えたから、というのがその理由のようだ。三猿像がこれほど鮮明な状態を保持しているのを見たのは初めて。

右側に江戸末期の弘化三年とあるが、調べると西暦で1846年。


 


おばさんたちの女子会

2013-03-24 | D 新聞を読んで


信濃毎日新聞130322付朝刊9面(経済欄)より

 年齢に関係なく女性を女子といい、女子だけの食事会や飲み会、旅行を「女子会」という。このことばの使い方にはなんとなく違和感を覚える。このことは以前も書いた。そう、女子ということばには年齢の上限があるのではないかと。でも世間ではそうではないらしい。同僚の「女子」にも訊いてみたが、「年齢制限は無いと思います!」ときっぱり。

新聞記事によると、女子会の経済波及効果が全国で3兆6941億円に上るという試算を共立総合研究所(岐阜県大垣市)が発表したそうだ。これがどのくらいのものなのか、なにか別のものとの比較を示してもらうと分かりやすいのだが、残念ながら記事にはない。でも相当な規模なんだろう。

調査に協力した20代以上の既婚女性の約80%が女子会への参加に前向きで、回数や金額を今後増やしたいとの回答も多かったという。その一方で夫の小遣いについては今後減らしたいという回答が全ての年代で多かったと記事にある。おじさん、いや「男子」にとってはトホホな回答だ。

我が家では居間のカレンダーの余白に予定を書き込んでいるが、今日(24日)のところに「女子会6PM~」と書き込みがある。結構。女子会をするような友だちがいないと寂しいでしょう。

歳を取ると「きょうよう」と「きょういく」が大切なんだとか。「今日用」と「今日行く」。これは以前、NHKのラジオ深夜便で聞いた多湖 輝さん(「頭の体操」という大ベストセラーの著者)の話しに出てきたことば。

「今日すべき用事と今日行くべき所」を持つことの大切さを説いていた。どちらも無いとなると一日を無為に過ごすことになってしまうし、そんな生活を続けるとボケやすいかも・・・。


 


「虚空の冠」

2013-03-20 | A 読書日記



■ 楡 周平の『虚空の冠』、今日(20日)下巻を一気に読み終えた。文庫化するとき副題の「覇者たちの電子書籍戦争」を加えたそうだが、この説明的な副題が必要だったのかどうか。私は不要だったと思う。

上下巻で約730ページの長編は終戦から3年後のある事件から始まる。極東日報の掛け出し記者の渋沢大将(ひろまさ)は緋色島で発生した火災取材に船(きく丸)で向かう。当時遠距離の情報伝達手段として一般的だった鳩と共に。

船はアメリカの軍艦に衝突されて日本人50人と共に沈没する。この時衝突した軍艦は救助活動もせずに現場を立ち去った・・・。アメリカ軍艦の当て逃げ事件。この不祥事は日米間の政治的判断によって隠蔽される。

漂流の末、ただ一人救助された渋沢大将。

時は流れて現代。高層ビルから見る夜の東京、光の洪水。

渋沢は日本最大のメディアグループのトップの座に就いている。メディアグループとIT業界の寵児率いる通信事業会社との「プラットフォーム」と「コンテンツ」を巡る熾烈な戦い。

戦いの勝利、新メディアの確立に貢献した功績による最高位の叙勲。渋沢は成功の頂点を手にして、人生の終焉を迎えることができるかと思われたが・・・。ラスト、戦後のあの事件の真相が明らかにされる、それも鳩によって。

長編を一気読みさせる楡 周平の力量に脱帽。


 

 


413 白馬村の火の見櫓

2013-03-20 | A 火の見櫓っておもしろい


413 北安曇郡白馬村北城森上の火の見櫓 撮影日130319

 白馬村は長野オリンピックでジャンプなどの競技が行われた村です。この写真の後方に写っているのは、八方尾根スキー場ではないかと思います。まだまだ積雪量が多く、スキーが楽しめます。この火の見櫓の脚元にもこのように雪が残っています。

梯子の段数はざっと数えて20段あります。間隔を40センチメートルとすると、見張り台の床面まで約8メートルの高さです。床面から屋根のてっぺんまでの高さを約3メートルとみると、この火の見櫓の高さは約11メートルとなります。それ程高くは見えませんが案外高いんですね。高いところが苦手という人は上ると怖いでしょう。



3角形の櫓に円形の屋根と見張り台、よく見かけるタイプの火の見櫓です。特徴を探せば、手すりがやけに高いということでしょうか。屋根との間が狭いです。

昨日(19日)は風が強く、半鐘が大きく揺れていました。近くに吊るしてある木槌(写真に写っています)が時々半鐘に当たって、カ~ン、カ~ンといい音をたてていました。それほど大きな音ではありませんでしたが。



残念ながら櫓の下部に脚がありません。ブレースを1ヶ所設置しないで櫓内部への出入りを容易にしています。このような省略型も珍しくありません。

防錆塗装をしたばかりのようで、火の見櫓全体がきれいです。このようにきちんとメンテナンスをしてある火の見櫓を見るとうれしくなります。地域の人たちが今でも大切にしていることの証ですから。


 


― 消えゆく火の見櫓

2013-03-19 | A 火の見櫓っておもしろい



■ 松本市に隣接する東筑摩郡山形村では消防団の各分団の詰所の建て替え工事が行われている。既に数ヶ所工事が終了している。新しい詰所が完成すると古い詰所と火の見櫓が撤去される。

ここ小坂(おさか)地区でも先日新しい詰所とホースタワーが完成して、古い詰所の解体工事が始まった。今月中には火の見櫓も撤去される予定だと聞いている。





この火の見櫓は以前も取り上げていて、その時にも書いたが、屋根がどことなく五重塔の屋根を思わせる和風の形をしていて美しい。この火の見櫓が消えて無くなってしまうのかと思うと何とも寂しい。

生者必滅の理(ことわり)などという仏教用語を火の見櫓に使っていいものか迷うところだが、耳にしている予定だと後数日で撤去されてしまうのだそうだ。



4本の柱のなだらかなカーブが美しい。脚部のトラスにアーチ部材が使われていないのは残念だが、整った形をしている。詰所の2階の窓から火の見櫓の踊り場に直接出ることができるようにブリッジで繋げてある。これはよくあるパターン、でもないのかな。窓から出入りするようになっているのは少数かもしれない・・・。