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透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

春だ 恋愛小説を読もう

2013-03-30 | B 読書日記

 今日は出勤日だけれど、代休した。ワークライフバランスを少しは考えないと。女房は学生時代の友だちと女子会旅行で県外の温泉へ。ならばこっちも羽を伸ばそうと、夕方から冷酒をぐいぐい、いや、ちびちびやっている。

というわけでほろ酔いで書くアルコールなブログ。

「君の名は」って、ボクが生まれるよりずっと前(と強調しておく)のラジオドラマだけれど、再会を約束したもののすれ違いばかりでなかなか会えない、そう、会えそうで 会えない男と女のものがたりだということは知っている。放送時間になると銭湯の女湯ががら空きになっというエピソードも。

高見順の『今ひとたびの』を読み終えた。この恋愛小説もまた、恋人どうしの再会ものがたりと括っていいだろう。ウン、よい。

いままで高見順の作品にはなぜか縁がなかった。壇ふみのおとっつぁん、壇一雄や阿川佐和子のおとっつぁん、阿川弘之の小説は読んだのに高見恭子(ってこんな字だっけ?)のおとっつぁんの作品は未読だった。

これは何とも古風な恋愛小説だなと思いつつ読み進んだが、昭和21年の作品というから当然か。

**芝居の疲れからか、それともそのひとの性質なのか、まわりの人たちが傍若無人にはしゃいでいるなかで、そのひとだけは何か寂しそうに、皆と溶け合えないのを自ら寂しがっているような風で、頬に物倦げな微笑を浮かべていた。**(13頁)

主人公が一目惚れした女性はこんなふうに描かれている。ああ、このひとは・・・、ボクの好みのタイプ。

時代は第二次大戦前。主人公は大学生で左翼運動家。活動資金を援助してくれている友人の芝居を見に行って、舞台のそのひと、暁子に一目惚れしたのだった。暁子もまた次第に主人公の私に惹かれていく。

主人公は逮捕や徴兵に阻まれ、暁子が他人(ひと)の妻になっても、ひたすら慕情をつのらせ続ける。

**そのひとと、ここで、悲しい、別れたくない別れをしてから思えばながい年月が経っていることゆえ、私とのあの固い約束も、そのひとはあるいは忘れてしまったのだろうか。(中略) ここで、――お互いに生きていたら必ずまた会おうと言ったのは、ほかならぬそのひとだったのだから・・・・。**(3頁) 男と女の再会ものがたりはこのように始まる。

そしてラスト。

**「あ!」 
思わず大声をあげた。周囲の人が吃驚(びっくり)してその私に眼を注いだ。
そのひとだ。
そのひとが立っている。
そのひとは遂に来た。**(122頁)

そして・・・。

映画ならその瞬間をスローモーションで表現するだろう。そしてそのひとの動きが止まった瞬間からその姿が次第にハレーションを起こして消えていく・・・。エンドロールが流れ出す・・・。で、そのひとのところではあのひとの名前が・・・って、一体誰? 


 


― 火の見最後の日

2013-03-30 | A 消える火の見櫓 残る火の見櫓

 先日消防団詰所の解体・撤去作業が行われた山形村小坂(*1)で、今日(30日)火の見櫓の解体・撤去作業が行われた。



火の見櫓をクレーンで吊った状態で、踊り場の少し上のところで柱やブレースをガスバーナーで焼き切る。



柱やブレース、梯子の切断が完了するとクレーンで吊り上げる。






切断した櫓を地上に吊り下ろして、トラックに積み込む。



櫓の下半分も同様に脚元で切断、写真のように倒すところまで見届けた。8時過ぎに始まった作業はここまで2時間足らず。

火の見櫓は鉄くずと化す・・・。

メモ)

見張り台の床の寸法:1,650×1,650、同手すりの高さ:865、柱間寸法(見張り台床のところで計測):900、見張り台床から屋根のてっぺんまでの高さ:約3,300


*1 長野県東筑摩郡山形村小坂


ブックレビュー 2013.03

2013-03-29 | B ブックレビュー〇



■ 3月、年度末。別れと出会いの季節。


今月は珍しく小説を3作品も読んだ。

『散り椿』 葉室 麟/角川書店 

『蜩ノ記』もラストが恋愛小説のようで印象的だったが、この小説のラストも同様だった(過去ログ)。ラストを読んで、なぜか『たけくらべ』のラストを思い浮かべた。樋口一葉の代表作『たけくらべ』は淡い初恋のものがたりだが、ラストがとてもいい。


『秋月記』 葉室 麟/角川文庫

『散り椿』読了後、続けて読んだ時代小説。好みからすると『散り椿』かな。


『植物はすごい』 田中 修/中公新書

長野県公立高校の国語の入試問題第1問がこの本から出題された。文章は平易で読みやすいし、なるほど!な内容だった。果実が色付くのは紫外線対策で、中の種子を守るためだということをこの本で初めて知った。

今春、めでたく志望の高校に合格したMさんにこの本をプレゼントした。


『虚空の冠 覇者たちの電子書籍戦争』 楡 周平/新潮文庫

電子書籍ビジネスに関する著者の見解が登場人物によって実に説得力を持って語られている。私は電子書籍にはまったく馴染めないし、紙の本のほうが好きだが・・・。

この作家の未読作品を読もう。


『食べることも愛することも、耕すことから始まる』 クリスティン・キンボール/河出書房新社

過去ログ

「なんだか違うんじゃないかな~、この生活」と感じている都会暮らしの女性におすすめの本。


 


「今ひとたびの」

2013-03-29 | B 読書日記



■ 先日 カフェ バロでこの本を買い求めた。カフェでブックオフをしていたのだ。Kさんが読んだ本を何冊も並べてあった。その内の何冊かは私も読んでいたが、高見 順の作品を読んだことはなかった。

奥付を見ると昭和31年に初版発行、昭和51年に改版15刷発行となっている。よく読まれた本だということが分かる。

カバーの折り返しには次のような紹介文が載っている。**人の世の恋とはかくも美しいものであろうか。かりそめならぬ慕情を胸に秘め転変の波にさいなまれながらも、ただひたぶるに「そのひと」の面影を抱きつづけ、晴れて再会の街角に立った主人公の瞳に映じた恋人暁子の姿は?・・・・(後略)**

この週末は久しぶりに恋愛小説を読む。


 


「食べることも愛することも、耕すことから始まる」

2013-03-25 | B 読書日記



 マンハッタンでフリーランスのライターや講師として働いていた女性が有機農業生産者と恋に落ち、エセックスに移住。ライフスタイルを180度変えるまで、そう **ハイヒールをはきバッグをさげて朝の四時まで街をうろついているはずが、朝の四時に「起床」、作業ズボンをはき(後略)**(5頁) となるまでの過程、日々の暮らしを詳細に綴る。

本書を読むと豊かな生活とは何か、改めて考えることになる。でもそれを実践するかどうかは別の問題・・・。


 


「虚空の冠」

2013-03-20 | B 読書日記



■ 楡 周平の『虚空の冠』、今日(20日)下巻を一気に読み終えた。文庫化するとき副題の「覇者たちの電子書籍戦争」を加えたそうだが、この説明的な副題が必要だったのかどうか。私は不要だったと思う。

上下巻で約730ページの長編は終戦から3年後のある事件から始まる。極東日報の掛け出し記者の渋沢大将(ひろまさ)は緋色島で発生した火災取材に船(きく丸)で向かう。当時遠距離の情報伝達手段として一般的だった鳩と共に。

船はアメリカの軍艦に衝突されて日本人50人と共に沈没する。この時衝突した軍艦は救助活動もせずに現場を立ち去った・・・。アメリカ軍艦の当て逃げ事件。この不祥事は日米間の政治的判断によって隠蔽される。

漂流の末、ただ一人救助された渋沢大将。

時は流れて現代。高層ビルから見る夜の東京、光の洪水。

渋沢は日本最大のメディアグループのトップの座に就いている。メディアグループとIT業界の寵児率いる通信事業会社との「プラットフォーム」と「コンテンツ」を巡る熾烈な戦い。

戦いの勝利、新メディアの確立に貢献した功績による最高位の叙勲。渋沢は成功の頂点を手にして、人生の終焉を迎えることができるかと思われたが・・・。ラスト、戦後のあの事件の真相が明らかにされる、それも鳩によって。

長編を一気読みさせる楡 周平の力量に脱帽。


 

 


413 白馬村の火の見櫓

2013-03-20 | A 火の見櫓観察記


413 北安曇郡白馬村北城森上の火の見櫓 撮影日130319

 白馬村は長野オリンピックでジャンプなどの競技が行われた村です。この写真の後方に写っているのは、八方尾根スキー場ではないかと思います。まだまだ積雪量が多く、スキーが楽しめます。この火の見櫓の脚元にもこのように雪が残っています。

梯子の段数はざっと数えて20段あります。間隔を40センチメートルとすると、見張り台の床面まで約8メートルの高さです。床面から屋根のてっぺんまでの高さを約3メートルとみると、この火の見櫓の高さは約11メートルとなります。それ程高くは見えませんが案外高いんですね。高いところが苦手という人は上ると怖いでしょう。



3角形の櫓に円形の屋根と見張り台、よく見かけるタイプの火の見櫓です。特徴を探せば、手すりがやけに高いということでしょうか。屋根との間が狭いです。

昨日(19日)は風が強く、半鐘が大きく揺れていました。近くに吊るしてある木槌(写真に写っています)が時々半鐘に当たって、カ~ン、カ~ンといい音をたてていました。それほど大きな音ではありませんでしたが。



残念ながら櫓の下部に脚がありません。ブレースを1ヶ所設置しないで櫓内部への出入りを容易にしています。このような省略型も珍しくありません。

防錆塗装をしたばかりのようで、火の見櫓全体がきれいです。このようにきちんとメンテナンスをしてある火の見櫓を見るとうれしくなります。地域の人たちが今でも大切にしていることの証ですから。


 


― 消えゆく火の見櫓

2013-03-19 | A 消える火の見櫓 残る火の見櫓



■ 松本市に隣接する東筑摩郡山形村では消防団の各分団の詰所の建て替え工事が行われている。既に数ヶ所工事が終了している。新しい詰所が完成すると古い詰所と火の見櫓が撤去される。

ここ小坂(おさか)地区でも先日新しい詰所とホースタワーが完成して、古い詰所の解体工事が始まった。今月中には火の見櫓も撤去される予定だと聞いている。





この火の見櫓は以前も取り上げていて、その時にも書いたが、屋根がどことなく五重塔の屋根を思わせる和風の形をしていて美しい。この火の見櫓が消えて無くなってしまうのかと思うと何とも寂しい。

生者必滅の理(ことわり)などという仏教用語を火の見櫓に使っていいものか迷うところだが、耳にしている予定だと後数日で撤去されてしまうのだそうだ。



4本の柱のなだらかなカーブが美しい。脚部のトラスにアーチ部材が使われていないのは残念だが、整った形をしている。詰所の2階の窓から火の見櫓の踊り場に直接出ることができるようにブリッジで繋げてある。これはよくあるパターン、でもないのかな。窓から出入りするようになっているのは少数かもしれない・・・。


 


「虚空の冠」 楡 周平

2013-03-17 | B 読書日記

■ 楡 周平。宝島社文庫で『Cの福音』を読んだのは2001年のこと。日本の作家でこんなにスケールが大きくておもしろい作品を書く人がいるのか、とすっかり魅せられ、宝島社文庫で出るたびに読んでいた。大沢在昌とも違う、北方謙三とも違う、男くさい作品の魅力・・・。過去ログ ←





先日久しぶりにこの作家の作品を手にした。『虚空の冠』新潮文庫。川上弘美も小川洋子もいいけれど、たまにはガッツリ肉食系小説(ってどんな小説?)を読むのもいい。

このところ多忙で、帰宅するのが毎日遅く、読書時間もあまりとれないが、そこは隙間時間読書。上下2巻の長編を読もう。


 


「植物はすごい」

2013-03-12 | B 読書日記



 葉室 麟の時代小説『秋月記』を読み終えて『植物はすごい 生き残りをかけたしくみと工夫』田中修/中公新書を買い求め、読み始めた。植物の生き残り戦略の数々の紹介。なるほど!な情報満載。

渋いカキの実は鳥などに食べられることはないが、タネができあがってくると食べてもらえるように甘くなる。そうして鳥に食べてもらってタネを運んでもらうという巧妙なしくみを備えている。

一体どんなしくみで渋ガキが甘ガキに変化するのか、本書に紹介されている。

カキの渋みの成分はタンニンという物質で、渋ガキはタンニンが果肉や果汁に溶けこんでいるのだそうだ。このタンニンは「不溶性」に変化する性質があるそうで、そうなるとタンニンを含んだカキを食べても口の中でタンニンが溶け出してこないので、渋みを感じることはないという。なるほど!

タンニンを不溶性にするのはアセトアルデヒドだそうだが、この物質はタネができあがるにつれてカキの実の中でつくられてくるのだそうだ。このあたり、実にうまくできている。不溶性のタンニンが黒ゴマのような斑点だという。なるほど!

本書にはなぜ渋ガキを干しガキにすると甘くなるのかも紹介されている。このことについては書かないでおく。

この本を読了するまでに一体、どの位のなるほど!があるだろう。


 


「秋月記」

2013-03-10 | B 読書日記



 今日の午後、カフェ・シュトラッセで『秋月記』葉室 麟/角川文庫のラスト数十ページを読んだ。

筑前の小藩、秋月藩のために生きる主人公、間小四郎(余楽斎)の武士としての生きざま。一途に生きるというのはこの作家が描こうとしている大きなテーマだろう。読むと人生について、生きることについて考えさせられる。

子どものころ臆病者であった小四郎は強くなると心に誓って、修行を重ねてやがて藩の重要なポストに就いていく。小四郎が藩の改革に乗り出し、憎まれ役、捨石を買って流罪になるまでを描く。そこに淡い恋愛がからんでくるのも既に読んだ他の作品と同じ。

ラスト近くに印象に残ることばがあったので記して備忘としたい。

**「時折、こうして腰かけて山を見ておると、秋月を思い出す。十八年、島暮らしをしたが、思い出すのは不思議に秋月の山の景色だな」
「さようですか」
余楽斎は織部の胸中を思って、胸がつまる思いがした。
「人は美しい風景を見ると心が落ち着く。なぜなのかわかるか」
「さて、なぜでございますか」
山は山であることに迷わぬ。雲は雲であることを疑わぬ。ひとだけが、おのれであることを迷い、疑う。それゆえ、風景を見るとこころが落ち着くのだ」**(342頁)


 


週末日帰り東京

2013-03-10 | E 旅行記〇

 昨日(9日) 日帰りで東京へ行って来た。



その1 『日本の民家 一九五五年』 パナソニック汐留ミュージアム

建築写真家の二川幸夫さんが建築美と向きあうことになった原点は民家にある。この写真展には二川さんが二十歳の頃全国各地に民家を訪ね、その美を写し取った写真約70点が展示されている。

自然と暮らしが育んだ民家の美しさには私も魅せられてきた。展示作品の撮影地のうち、何ヶ所かは学生時代に私も訪ねたことがあって、なつかしい思いと共に写真を観た。

現代の建築はこれほど美しい「風景」をつくり出しているだろうか・・・。

会場構成は建築家の藤本壮介さん。作品を壁に沿って展示するという一般的な方法ではなく、一枚一枚の存在が際立つようにみな違った向きに天井から吊るすという方法が採られていた。曲がりくねった順路は分かりにくかったが、面白い試みだ。

展覧会に付き合ってもらった東京の友人とランチして、私は東京駅へ。


 

その2 東京駅舎 

500億円という工事費を投じて復元した東京駅舎の繰り返しの美学に注目



外壁のレンガ積みの目地は既存に倣って、平ではなくかまぼこ形に盛り上げられている。このような目地には名前があるはずだが、知らない。昔は実に丁寧な仕事をしていたのだな、と改めて思う。こうすれば雨水が目地に留まることなく下に流れやすいので、傷みにくい(たぶん)。海鼠(なまこ)壁の目地も同じ断面形をしているが、その理由は同じだろう。



繰り返しの美学 東京駅に新たに設けられたキャノピー 


その3 会田誠展 森美術館

丸の内オアゾのカフェで、昔の同級生と待ち合わせ。小学校の高学年のときから同じクラスだったようだが、当時の記憶はない。あの頃は女の子よりも野に咲く草花やトンボやチョウの方に関心というか、興味があったから。

何の予備知識もなく会田誠展へ。いろんな作風の作品が展示されていた。どんな作品でも創ることができる多才な人なのだろう。

作品に込められた社会風刺、アートに対する既成概念への疑問の提示・・・。ただあまりにもグロテスクな作品やエロチックな作品には全く興味がわかなかった。この手の「アート」はダメだった。しばらく前、新聞に紹介されていたのは「おとなしい」作品だったようだ。

現代アートに気品とか風格まで求めようとは思わない。でもアートは美しくなければいけない。

根津美術館かサントリー美術館にでも行けばよかったかな。



会場を早々に後にして屋上、スカイデッキへ。夕景に東京タワーが浮かび上がっていた。美しい・・・。照明の効果だと思うが、タワーに透明感があって、鋼材の質感が消えていた。これこそアート! この風景を見ることができたから、可としておこう。


再び東京駅へ。食事。共通の思い出、それもはるか昔の思い出を持つ人との語らいは楽しかった。昔を懐かしく思う、そういう歳になったということか・・・。

いつの間にか最終のあずさの時間が迫っていた。


 


「きづき」

2013-03-06 | B 読書日記



 『きづき』は浜松市のOMソーラー株式会社が編集・発行する冊子。その最新号(2013年3月号)は昨年12月に亡くなった建築家奥村昭雄さんの追悼号。

内容は奥村さんの作品紹介、奥村さんを偲ぶ多くの方々のコメント、OM誕生物語、奥村さんのすまいと事務所の紹介など。

広告は裏表紙に掲載されているだけで内容が充実している。