透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ウォーキング

2022-04-30 | A あれこれ



 信州スカイパークでウォーキング。28日は、今日(30日)は南側のゾーン、で示す右端の駐車場から陸上競技場手前のまで往復するコース。





今回は前回とは全く様子が違い、北アルプスを遠くに望む非常に開けたコース。


ウォーキングの途中で飛行機が離陸するところを見た。


白馬三山(やや左側の3つのピーク)を望む。




ここで折り返す。


遠くにシバザクラの白い帯が見える。あそこまで歩く・・・。


駐車場近くの展望台から歩いてきたコースを見る。

遠くまで見通せる今回の南側のウォーキングコースより前回の北側コースの方が疲れを感じない。その時の状況でどっちのコースにするか判断しよう。


 


ブックレビュー 2022.04

2022-04-30 | A ブックレビュー



 角田光代現代語訳の『源氏物語』を読み進めながら、他の小説なども読んでいる。4月の読了本は6冊だった。買い求めたまま、読んでいない作品を読み終えたら、『源氏物語』と源氏関連本だけにしようかとも思うが、新聞の書評欄などを読むと読みたいと思う本が次々出てくる。

『本所おけら長屋 十八』畠山健二(PHP文芸文庫2022年)
このシリーズ、いつまで続くのか分からないが追っかける。

『人新生の科学 ニュー・エコロジーがひらく地平』オズワルド・シュミッツ(岩波新書2022年)
**人類のさまざまな活動は、「人新世」と呼ばれる新たな地質時代をもたらした。その影響を世界規模で考え、持続可能な社会を維持するには、人間と自然を一体として捉える思考、ニュー・エコロジー(新しい生態学)が必要だ。社会経済のレジリエンスを高め、人類が「思慮深い管財人」として自然と向き合うための必読書。** カバー折返しの本書紹介文にはこのように書かれている。決して無関心ではいられないテーマについて書かれた本だが、ひたすら字面を追うだけだった。

『さがしもの』角田光代(新潮文庫2021年第26刷)
9編の本の物語。
表題作。「その本を見つけてくれなきゃ、死ぬに死ねないよ」病床のおばあちゃんに頼まれた本を探し求める私。

『マザコン』角田光代(集英社文庫2011年第3刷)
8編の短編で描きだされる母親の諸相。

『九紋龍 羽州ぼろ鳶組③』今村翔吾(祥伝社文庫2022年第14刷)
火消時代小説で江戸の火消事情を知る。**半鐘の打ち方によって意味が異なる。一打は「火元遠し」、二打は「火消出動」、連続して打てば「火元近し」、鐘の中に木槌を差し込んで搔きまわす乱打は「火焔間近」の意である。**(92頁)
**源吾は櫓の下から呼びかけた。方角火消は通常より高い火の見櫓の設置が許されており、よく遠くが見通せる。**(201頁)
※ 文中太文字化は引用者による。

『昭和の名短篇』荒川洋治 編(中公文庫2021年)
収録された14篇の中では小林 勝の「軍用露語教室」と佐多稲子の「水」、深沢七郎の「おくま嘘歌」 この3篇が印象に残った。敢えて1作品を挙げるなら「おくま嘘歌」。
おくまには子どもがふたりいる。ある日、おくまは娘のサチ代の嫁ぎ先へバスに乗っていく。

**サチ代が、
「あれ、おばあちゃんが来たよう、坊の顔を見たくて」
と言ってこっちを向いた。孫の顔を見たくて来たのだとサチ代は思ってるので、
「坊の顔を見たくて来たのオジャンけ」
とおくまは嘘を言った。シゲオの顔も見たいが娘のサチ代の顔を見たくて来たのである。
だが、シゲオの顔を見たくて来たと言った方がサチ代は喜ぶだろうと思ったからだった。**(134頁)

この短篇には娘や嫁、家族に思慮して暮らすおくまの様子が描かれている。いいなぁ、昭和の静かな小説。


 


写真展「レトロスペクティブ・ロマン」

2022-04-29 | A あれこれ


 安曇野市豊科のカフェ BELL WOOD COFFEE LABで開催されている写真展「レトロスペクティブ・ロマン」を鑑賞してきた。

写真展の案内カードには次のように書かれている。**シネレンズを含むオールドレンズやオリンパスベンドなどのフィルムカメラによる写真、その個性豊かな粒子の味わいを様々な特殊紙の効果を活かした写真表現でお楽しみいただきます。(後略)
フォトグラファー:木暮嘉胤(こぐれ・ひろかず)= 本名:高山浩一 **

写真表現の技術的なことは分からないけれど、展示されている何気ない風景を撮った写真にオリジナリティを感じた。あれ、この風景写真、見たことあるような気がするなぁ、と思うようなオリジナリティのない写真、個性的でない写真にはそれほど魅力を感じない。

いとこのH君がカメラ持参で一緒に行った。で、木暮君とカメラ談義。ふたりのデープな会話についていけなかった・・・。


▢  BELL WOOD COFFEE LAB 0263-75-3319
▢  会期:2022.04.27~05.29 10:00~18:00 定休日  月・火曜日


名刺 今日の1枚 169 170 171

2022-04-29 | C 名刺 今日の1枚

 名刺 今日の1枚の記録が滞っていた。3人まとめて。

169枚目 4月8日、S君と飲んだ。2次会で行ったスナック、店内に掛けられていたリトグラフを見て、なんとなく池田満寿男の作品ではないかと思い、そう伝えると「そうです!」とママ。当たり!にうれしくなって名刺を渡した。

170枚目 長野県朝日村に「里山のオフィス ASAHI」というコワーキングスペースを備えた施設が完成したと新聞で読んだ。4月16日、内覧会に行き、受付で名刺を渡した。


171枚目 5月8日までGRAIN NOTE(写真上 松本の中町通り)の2階ギャラリーで開催されている宇賀神拓也 写真展「JOMON-SPIRAL」を鑑賞した。グラフィックな表現は私の好み。在廊していた宇賀神さんと名刺を交換した。私も縄文土器の螺旋紋様には注目していて、2019年10月20日に次のような記事を書いている(過去ログ)。

以下記事の一部再掲

螺旋紋様は火の見櫓の屋根の先の蕨手に通じるデザインで、元々は全く同じものなのかもしれない。渦巻状の形は生命の連続性をイメージさせ、縁起が良いと解されていたのであろう。岡本太郎ではないが、縄文人の造形力に魅せられた。


 


ウォーキング

2022-04-28 | A あれこれ

 信州まつもと空港は松本の郊外にあります。その周囲は信州スカイパークという広大な公園です。この公園には1周10キロのウォーキングコースが整備されています。ここでウォーキングを始めました。1周するのはきついので、私は6,000歩(4キロ弱)を目安に、週2,3回。


信州スカイパークの案内図(部分)です。この向きだと上が東。南端(右端)の駐車場(印)から展望台(印)まで、図中あずき色の線で表示されているコースにほぼ沿って往復しているのです。標準ルートは図の通りやまびこドームの南側を通っていますが、私は少し遠回りして北側を歩きます。


標準ルートが青線で表示されています。このコースを歩く人、走る人。


プロムナード広場 新緑が美しいです。


やまびこドーム 


青い線はやまびこドームの手前で大きく左にカーブしていますが、私はまっすぐ進みます。


野鳥のさえずりを聞きながら、折り返し地点の展望台に向かいます。




展望台から見る大型遊具(木造)。


スタート地点に戻るコース 最近完成した白い管理棟が遠くに見えます。


変化に富んだコースで歩いて楽しいです。 


駐車場近くのベンチで休憩中に千歳空港を発った(14:55発)飛行機が到着しました(16:35着)。遠くに鉢盛山が見えています。空気遠近法の手本のようです。

これからは、時々ウォーキング中に写真を撮って、掲載します。


 


「紅葉賀」

2022-04-27 | G 源氏物語

「紅葉賀 うりふたつの皇子誕生」

 光君が若柴と出会った時、その少女はまだ10歳だった。この7帖では57,8歳の熟女が光君の恋(?)の相手。この熟女、次のように紹介されている。**さて、年配の典侍(ないしのすけ)がいた。彼女は家柄も立派で才気があり、気品もあって人から尊敬もされているが、ひどく好色な性分で、その道ではじつに軽々しいことをする。**(240頁)「光君はいろんな女性と恋をする」紫式部はこのように考えていて、この女性も登場させたのだろう。

「紅葉賀」は藤壺が光源氏にうり二つの男の子を出産するという大切な帖なのだが、ラブコメディの観がある。ラブコメを演ずるのは、光君と頭中将と熟女の3人。

60歳近いのに色恋が現役の典侍だと聞いた光君は、好奇心からこの女性と一夜を共にする。女性のことを聞きつけた頭中将は**女のことなら隅々まで手抜かりのない自分でも、あの女のことは考えもつかなかった、とはっとする。いくつになっても衰えない典侍の好き心に、にわかに興味を覚えた頭中将はとうとう典侍と懇ろな仲になってしまった。**(242頁)

典侍は頭中将とのことを光君にひた隠しにしている。ある夜更け、典侍の部屋に光君がいるところに頭中将がそっと入りこむ。**頭中将は、自分だとわからせないように何も言わず、ただすさまじく怒っているふうを装って、太刀を引き抜いた。**(244,5頁)*

この後、修羅場にはもちろんならず、**二人とも恨みっこなしの、同じくらいしどけない姿でいっしょに帰っていった。**(246頁)

翌朝、典侍から光君に届いた手紙には、うらみてもいふかいぞなきたちかさね引きてかへりし波のなごりに とあった。典侍って恋の経験が豊富な熟女だねぇ。


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋


「九紋龍」読了

2022-04-27 | A 読書日記



■ 
晴読雨読な日々。昨日(26日)は羽州ぼろ鳶組シリーズ第三弾、『九紋龍』今村翔吾(祥伝社文庫2022年第14刷)を読んだ。

本作のメインキャストのひとりは本のカバーに描かれている男(写真)。**辰一は不敵に笑うと、右手を寅次郎の股の間へ差し込んだ。そして野獣の如く咆哮すると、何と重さ四十五貫目(一六八キロ)もの巨漢の寅次郎を高々と持ち上げてしまった。**(110頁)という「に組」の頭、九紋龍の辰一、最強の町火消。尚、寅次郎は元幕内力士、ぼろ鳶組の壊し手の要。

それから、御家老に代わり江戸に入ってきた出羽新庄藩の御連枝、戸沢正親(三代藩主の孫)。御連枝という身分でありながら、**領内の村で遊び惚けたり、城下で酔いつぶれたり、酷い時などは鉄火場で博打を打っていることもあった。**(45頁)という男。

この御連枝、**「鳶の俸給を減じ、その他火消道具などへの費(つい)えを五箇年差し止める」**(84頁)と宣言。しかも主人公・松永源吾が率いる新庄藩の方角火消について**「方角火消のお役目は、免じられるようにお頼みするつもりだ」**(86頁)と。これには源吾も肩を落として項垂れるばかり・・・。

辰一といい、この御連枝の正親といい、登場した時の印象は全く良くないが、終盤になると読んでいて涙が出るほど好い人物になっている。ストーリーの展開がなかなか面白い。

今回、ぼろ鳶組の「相手」は盗賊、千羽一家。**まず夜更けに一軒ないし二軒に火を付ける。それが燃え上がれば、火消たちが太鼓や鐘を打ち、庶民は一斉に野次馬に出るか、避難を始める。その隙を衝いて盗みを働くのだ。**(13頁)その時一家皆殺しにするという極悪非道ぶり。

やがて明らかにされる辰一の悲しい過去、千羽一家との関係。

物語の最終第六章「勘定小町参る」を読んで、それまで緊張していた気持ちが和む。テレビドラマの事件ものでは事件が解決した後に、しばらくまえからはやっている医療ものでは難しい手術が無事終わった後に、スタッフが冗談を言い合って和むシーンがあるけれど、この最終章はその拡大版といったところ。

新庄藩の特産品・工芸品を、全国各地から集めた商人相手に披露、彼らに競わせ少しでも高く売る商人披露目の義。新庄藩の財政立て直し策の一環。その交渉役に源吾の妻、深雪が指名される。談合を防ぐために深雪が取った、なるほど!な策。途中、誰がつくったものか、という商人の質問に深雪が窮する。その時、襖が勢いよく開け放たれて、あの正親登場! 具体的な説明から、正親が領民に精通し、民に寄り添っていたことが明らかに。好い場面だ。それにしても海千山千の豪商を相手に入札を仕切った深雪はすごい。ますます惹かれる存在になった。そしてラストの落ちが好い。読者には深雪ファンが多いようだが、この章は作者、今村翔吾のファンサービスだろう。


 

 


「末摘花」

2022-04-26 | G 源氏物語

 **こんな荒れ果てたところにこそ、思いがけないほどうつくしい人が住んでいて、恋が生まれるといった話が物語にはよくあるのだし、何か言葉をかけて近づいてみようか。**(192頁)こんな思い込みが光君にはあるようだが、時には落胆することもあるようで・・・。

「末摘花」

紫式部はこの長編にいろんなタイプの女性を登場させる、ということがここまで読んできただけでも分かる。

光君は宮中に仕える大輔命婦から、亡き常陸宮が可愛がって育てた末摘花という娘、いや姫君と表記すべきか、が琴を友として心細く暮らしていることを耳にする。さっそく訪ねる光君。 この積極性!

いくそたび君がしじまにまけぬらむものな言ひそと言はぬ頼みに(201頁)引っ込み思案な姫君、手紙を出しても返事がない。

ある冬の寒い夜、久しぶりに常陸宮邸を訪ねた光君。翌朝早く**「朝の空が美しいから見てごらん。いつまでも心を許してくれないのはつらいよ」**(208頁)と姫君に声をかけ、雪明りの中で初めて顔を見る。

**(前略)その次に気になったのは、その異様な鼻である。真っ先に目につく。普賢菩薩が乗っている像が思い浮かぶ。あきれえるくらい長い鼻で、咲のほうが垂れて赤く色づいているのがなんとも不細工である。(後略)**(209頁)

登場する女性に落胆することもある。

**もしあの姫君が人並みの平凡な容姿ならば、忘れ去ってしまっただろうが、あの異様な姿をはっきり見てしまってからは、かえって哀れに思え、光君は暮らし向きのことにも終始気を配るようになった。**(212頁)

このあたりが光君の優しさだろう。


120

4月25日付信濃毎日新聞朝刊の投稿欄に「源氏物語」の原文を半年以上かけて読み終えたという投稿が掲載されていた。まず原文を読んで、難解な語句を注釈で確認し、それでも意味がはっきりしない場合は現代語訳を参照したとのこと。すばらしい! 本当はこういう読み方が良いのだろうが、私には無理。角田源氏の通読で良しとし、できれば他の作家の現代語訳も。


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋


生活雑記 庭の雑草取り

2022-04-25 | A あれこれ



 今日(25日)の午前中、庭の雑草取りをした。既に先々週一度草取りをしているので、6つに分けたエリア(*1)の全てを2時間程で済ませることができた。前回の草取りは4日間、それぞれ2,3時間、延べ10時間程かかった。

今日、ずいぶん長い根を引き抜いたので記録写真を撮った。

上の雑草、君の名前は? 根の長さがおよそ60cmもあった。こんなに細い根が途中で切れることなく抜けたのでビックリ。こんなに長いのか・・・。

下はタンポポ。太い根の長さはおよそ30cm。タンポポの根が途中で切れることなく抜けることは珍しい。こんなに長いアースアンカーで引抜き力に抵抗しているから、普通は根は抜けて来ない。

あちこちにスギナが顔を出し、伸びてきている。スギナはやっかいだ、根ごと引き抜くことがなかなかできないから。


*1 6つのエリア:西 南1 南2 東1 東2 北


「短編小説と世界」荒川洋治さんの講演

2022-04-25 | A 読書日記


「本の寺子屋」リーフレット 写真:えんぱーく

 11期目の「信州しおじり 本の寺子屋」が始まった。今期(今年度)は全17講座が予定されている。聴きたいな、と思う講演を以下に挙げる。

佐野眞一(ノンフィクション作家)「コロナは日本の何を見せたのか」   
田中優子(法政大学名誉教授・前総長)「絵と文字で読む江戸の本」
立花珠樹(共同通信社編集委員)「戦後日本映画の名優たち ―高倉 健、吉永小百合、渥美 清ら―」
小泉今日子(女優・歌手)「本と本屋とわたし」
加古陽治(東京新聞編集委員)「文芸取材の流儀」
矢崎節夫(金子みすゞ記念館館長)「童謡詩人、金子みすゞのまなざし ―よみがえりの軌跡―」
島田雅彦(法政大学教授・作家)「フィクションの方が現実的」

※ 講師の肩書を一部省略した。

こんなにすごい講座が地方都市で企画できるというのはすごいこと。「文藝」の編集長をされていた長田洋一さんが講座のナビゲーターを務めておられる。会場はえんぱーく3階・多目的ホール、定員は60人(*1)、参加費 無料。早めに申し込まないと定員に達して参加できなくなってしまう。

「短編小説と世界」

昨日(24日)第1回目の講演の講師は現代詩作家の荒川洋治さんだった。荒川さんは「日本全国8時です」という民放の朝のラジオ番組に長い間(1991年~2013年)出演されていた。火曜日の朝、通勤途中で荒川さんの話を聴くのが楽しみだった。久しぶりに聞く荒川さんの声、懐かしい。

講演は配布された資料のウクライナを中心とするロシアの地図をもとに、ロシアの文豪の多くの生地がモスクワからウクライナ東部の都市・マウリポリまで、線状に並ぶ都市である、ということから始まった。なるほど資料を見ると、プーシキンはモスクワ、ゴーゴリはウクライナ・ボルタバ近郊、ツルゲーネフはオリョール、ドストエフスキー モスクワ、トルストイ トゥーラ、チェーホフ タガンログで、これらの都市は北から南に並んでいる。

荒川さんの「話芸」にすっかり魅せられた。面白く語る人だということはラジオ番組で知っていた。午後2時から4時まで、有意義な時を過ごした。紹介された短編小説の全てが実に優れた作品だと思ってしまった。で、ぜひ読んでみたい作品は次の通り。

シュトルム「みずうみ」岩波文庫、光文社古典新訳文庫
ブッツァーティ「七階」/『七人の使者・神を見た犬』岩波文庫
国木田独歩「画の悲み」(現在の表記「画の悲しみ」/『運命』岩波文庫
小林 勝「軍用露語教程」/『小林 勝作品集』第1巻 白川書院
佐多稲子「水」講談社文芸文庫
瀬戸内寂聴「南山」/『場所』新潮文庫(解説・荒川洋治)



講演会終了後に会場で荒川さんが編者・解説者の『昭和の名短篇』(中公文庫2021年)を買い求めた。上掲したリストの太文字表記した2編が収録されている。これは助かる。

『源氏物語』も読み続けたいし(いや、自分に課した義務だから読み続けなければならない)、他にも買い求めた小説、『あ・うん』向田邦子(文春文庫2006年第4刷)、『九紋龍 羽州ぼろ鳶組③』今村翔吾(祥伝社文庫2022年第14刷)『鬼煙管 羽州ぼろ鳶組④』今村翔吾(祥伝社文庫2022年第11刷)がある。

読む本、読みたい本があることはうれしいことだ。


*1 小泉今日子さんの講演に限り会場はレザンホール、コロナ対応で分からないが、定員はかなり多いと思う。


「若紫」

2022-04-24 | G 源氏物語

「若紫 運命の出会い、運命の密会」

 光源氏18歳。病気がなかなか治らず加持祈祷を受けるために北山に赴いた光源氏。そこで可憐な少女を垣間見る。継母・藤壺の姪に当たる子で実母亡き後、祖母に育てられていた。藤壺によく似たその少女(若柴)に心奪われた光源氏、性急にも若紫を引き取りたいと思う。

高校3年生くらいの男の子が小学4年生くらいの少女に恋したなどと現代に置き換えて捉えると、源氏ってロリコン? なんて思ってしまうが、平安時代は今とは年齢の感覚が違うし、歳の差婚なんて当たり前だったということも考え併せれば、そうではないのだろう。プラス10歳くらいだと考えればしっくりくる。

**ねは見ねどあはれとぞ思ふ武蔵野の露分けわぶる草のゆかりを**

若紫(紫の上)に心奪われる一方、藤壺と密通する光源氏。やがて藤壺は懐妊。祖母を亡くした若柴を父親は自邸に引き取ることにした。が、光源氏は父親に先んじて若紫を二条院に連れ帰ってしまう。

この内容、「源氏物語」ってすごい小説だ。


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋


1334 塩尻市桔梗ヶ原の火の見櫓

2022-04-24 | A 火の見櫓っておもしろい

 この火の見櫓は2012年に1月28日に既に見ている。だが、その時勘違いして通し番号を振っていなかった。昨日再訪して観察したので、新たに通し番号を付けた。通し番号については昨日再確認したが誤りがあるかもしれない。ただあったとしてもごく少数のはずだ。

以下、過去の記事(削除済み)に手を加えて載せる。

 
1334 塩尻市宗賀桔梗ヶ原 3脚663型 撮影日2022.04.23



塩尻市宗賀の桔梗ヶ原公民館前の狭い道路脇に消防団詰所と一緒に立っている。少し傾いているのが気になる。製作精度の問題か、建設後に傾いたわけではないと思う。見張り台の高さはおよそ11メートル。



見張り台の床面の開口が大きい。梯子の上端が見張り台の床面止まりだが、1メートルくらい上まで伸ばして欲しかった。スピーカーが無いのでスッキリしている。


見張り台床面直下の様子

 
撮影日2012.01.28(左) 2022.04.23(右)

10年ぶりの再訪だった。同じところを同じようなアングル、同じようなフレーミングで撮るものだ。

10年前には鉄骨がだいぶ錆びていた。その後、錆止め塗装がされたことが分かる。メンテナンスされていることは大変好ましい。 梯子桟に巻かれていた縄は撤去されている。

360

詰所の2階と火の見櫓の踊り場をつなぐ梯子。梯子から踊り場に入るところの櫓のデザインがいい。ちゃんと人を迎え入れる表情をしている。


脚部 脚間寸法約2.6m 


 


大切にしたい小さな幸せ

2022-04-23 | A 火の見櫓っておもしろい


長野県朝日村針尾にて(火の見櫓が立っているところは古見地区) 撮影日2022.04.20


長野県朝日村針尾にて 撮影日2022.04.20 


21日(木)の日本経済新聞朝刊最終面(文化面)に火の見櫓好きな私の紹介記事が掲載されました。記事を読んでいただいた知人・友人から電話やメールをいただきました。全国紙ですから、地元だけでなく県外からも。大変うれしい一日でした。お読みいただいた皆さん、ありがとうございました。

これからも小さな幸せを(今回の件は私にとって決して小さくはありませんが)大切にしていきたいと思います。


 


「マザコン」

2022-04-23 | A 読書日記



『マザコン』角田光代(集英社文庫2011第3刷)を読んだ。

角田光代が描き出す母という存在の諸相。娘や息子から見た様々な母親像が描かれる。収録されている8編の短編の中で印象に残ったのは最後の「初恋ツアー」。

私は夫の洋文と、洋文の母親の三人で旅行にいくことに。母親が夫(私の義父)を亡くして、一切の気力を失ったように家から出なくなってしまったので、旅行に誘ったのだった。行き先は義母の希望で札幌。

**「洋文には内緒にしてほしいんだけど」義母は上目遣いに言う。
「え、なんですか」
「私、会いたい人がいるのよ。それでね、この旅行のあいだにその人をさがしあてたいんだけど、匡子(きょうこ)ちゃん、手伝ってくれない」**(205頁)
ずっと昔につきあっていた人が、札幌に住んでいるらしいことを知った義母。**「(前略)あのね、会ってどうこうしようなんて思ってないの。ただ、ちょっと遠くからでも、姿を見てみたいなってそのくらいの気持ちなの。(後略)」**(205頁) 札幌に来た理由が明かされる。

母が高卒後に上京して繊維工場で経理の仕事をしていたことを札幌の喫茶店で聞かされた私たち。経営者夫婦の自宅に間借りしていた伊本幸子(婚前の母の名前)は、近所の大学生でしょっちゅう経営者宅に遊びにきていた大学生と交際を始めた。ところがその学生・藤枝秀一郎は大学を卒業して就職した会社の一人娘と結婚してしまった。秀一郎の子どもを身ごもるほどのつきあいをしていたのに・・・。

秀一郎のいきつけの飲み屋が見つかって、私は母とふたりでその飲み屋にいくことに。**「私ね、試してみたいことがあるの。黙ってあなたと飲んでるの。そこへあの人がくるとするじゃない?そうしたら私に気づくかどうか。ねえ、どう思う」**(219頁)その後、私は母だけ残して夫が待つホテルに帰る。ホテルの近くの居酒屋のカウンターで飲み始めた私と夫。

**(前略)隣に座ってハイペースで飲んでいる自分の夫を、力の限り胸に抱きしめてやりたいと思った。母を放棄した母をはじめて見たのであろう、この気の毒な男を。そうして、そんな気持ちがなんだか母のようであると気がついて苦笑する。(後略)**(234,5頁)
 
この短編の最も重要なというか、作者が描きたかったテーマがこのくだりに表現されている(と私は思う)。

母が娘時代の恋人と再会できたのか、明かされないまま小説は終わる。 


 


精密とは適応限界をわきまえていること

2022-04-22 | A 読書日記



 **物理学者が太いチョークを使うのは少しもさしつかえない。物理学が精密科学であるというのは、細い鉛筆を使うことではなくて、使った鉛筆の太さを最後まで忘れずにいることなのである。** 

ぼくはこの言葉をずっと覚えていて、時々使うことがあった。だが、どこに書かれていたのか覚えていなかった。昨日、自室の書棚から当たりをつけて取り出した『時間・空間・物質』小野健一(三省堂選書1977年)の「はじめに」にこの言葉が載っていた。この本を読んだのは今から43年前、1979年の1月だったことが巻末に記したメモから分かる。

この本にはA、B、C、Dの「はじめに」がある。上掲の言葉が載っているのはBの「精密ということ」(4頁)。ここで著者の小野氏は物理学は精密科学であるとし、続けて**精密とは一口で言うと適用限界を心得ていることであって、有効数字の桁数の多いことではない。**(3頁)と述べ、次のような具体的な例を挙げている。

少し長くなるが引用したい。**実験値をグラフの上にプロットした結果が散ってしまって、あまりきれいに一つの曲線の上に乗ってくれなかったとしよう。物理学者ならば目分量で大体の傾向をにらんでなめらかな曲線を一本引くであろう。あるいは、鉛筆の代わりに太いチョークを使って、どの実験値も曲線の上に乗るように太い線を引くであろう。**(3頁)

著者はこんなやり方に対して反応のしかたに二つのタイプがあるようだ、という。ひとつは測定値をそのままぎざぎざの線で結ぶべきだ、と反対するタイプ。もうひとつははじめのデータが散っていて、それを太いチョークで結んだことを忘れて少数点以下何桁でも計算するタイプ。後者は技術者に多いと指摘している。

精密とは適応限界をわきまえていること。この言葉を改めて肝に銘じたい。