透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 2022.08

2022-08-30 | A ブックレビュー


 8月の読了本はこの4冊。

『日本が飢える! 世界食糧危機の真実』山下一仁(幻冬舎新書2022年)
**人口増加や気候変動により、近年、世界的な食糧不足が問題になっているが、ロシアのウクライナ侵攻で、事態は一気に深刻化した。穀物価格は高騰し、途上国では暴動も勃発。そして、食料の多くを輸入に頼る日本でも、憂慮すべき事態が進行している。(中略)軍事危機で海上交通路を破壊されたとき、国は国民にどうやって食料を供給するのか?日本は有事において武力攻撃ではなく食糧不足で壊滅する――。元農林水産官僚による緊急警告。**カバー裏面の本書紹介文より 
日本の食料供給事情にあまりにも無関心だな、と自省。で、読んだ本。


『視覚化する味覚』久野 愛(岩波新書2021年)
タイトルが内容を的確に表現しているのかどうか、本書は食べ物の色が意図的につくられてきたものであるということを多面的に論じている。


『コロナワクチン失敗の本質』宮沢孝幸 鳥集 徹(宝島社新書2022年) 
本書に出てくる用語を例示しておきたい。ADEとワクチン後遺症は気がかりな用語。
自然免疫・・・体内に侵入した細菌・ウイルスや体内で発生した異常細胞をいち早く感知して、排除する免疫反応のこと。好中球、樹状細胞、マクロファージ、NK(ナチュラル・キラー)細胞などがこれを担っている。(27頁)
サイトカイン・・・免疫細胞の活性化や抑制をコントロールし、体内の免疫機能のバランスを保つ働きを持つ物質の総称。(29頁)
ADE(抗体依存性感染増強)・・・ウイルス感染やワクチンによって体内にできた抗体が、感染や症状をむしろ促進してしまう現象。(31頁)
ワクチン後遺症・・・新型コロナワクチン接種後に生じた体調不良が長期的に続く状態を指す。(99頁)
*****
mRNAワクチンが免疫システムに混乱を来たすのではないか、という懸念を著者ふたりが語っている(72頁~82頁)。そういうことがあるのかもしれないな、と思わないでもない。世界中がワクチン接種を実施してきているのだから、そんなことはないだろう、とも。
政府や研究者は、そしてメディアは不都合な真実をきちんと示してくれているのだろうか・・・。


『駅は見ている』宮脇俊三(角川文庫2001年)
書き鉄の著者が書いた鉄道エッセイを読み鉄の私が読んだ。
**私は終着駅を分類してみたことがあるが、「社寺参詣型」は「鉄道建設史の一つのジャンルだな」と思った。**(142頁)
分類のことを考えていると、不思議なことにこんな記述に出合う。宮脇さんはどんなふうに分類したんだろう・・・。
ネット検索で『ニッポン終着駅の旅』、『終着駅巡礼』という本が見つかった。
ああ、読み鉄の旅に終着駅はなさそう・・・。


 


上田市真田町長の火の見櫓

2022-08-29 | A 火の見櫓っておもしろい


1383 上田市真田町長 4柱4〇型たばね脚 撮影日2022.08.25


街並みが一望できる立地。


サクラの木に隠されていて火の見櫓の全形が見えない。


残念ながら全形を写すことができるポイントを見つけることができなかった。


鉄のモダンアート。


柱と横架材から成る門型フレームに内接する半円形のアーチ部材を用いて、ぴったり柱に接するアーチ下端から柱に沿わせて基礎まで伸ばしている。たばね脚は幾何学的にこのような納め方しか考えられない。例外的にこれとは違う納め方が見つかればおもしろいが・・・。

 
「建設 昭和35年10月 眞田區」と記した銘板 リング内に一文字ずつ収めた分団名


上田市真田町長の戸沢地区の「電飾火の見」を見に行った際に観察した火の見櫓は以上の14基。本稿でそれらの紹介終了。


上田市殿城の火の見櫓

2022-08-29 | A 火の見櫓っておもしろい

 上田市は南北に長く、ピーナッツの殻のようにすっきりした形ではないが中央がくびれていて、そこを千曲川が流れている。北陸新幹線と国道18号も千曲川沿いに通っている。上田市の北部、千曲川の北側の地域には火の見櫓が多いという印象だ。車で走っていても視界に次々火の見櫓が入ってくる。

殿城地区に立っているこの火の見櫓は背が高くて遠くからでもよく見える。まさにランドマーク的な存在だ。既に観ていることは分かっていたが、またひきつけられるように火の見櫓の許へ向かった。


(再)上田市殿城 4柱4〇型たばね脚 撮影日202.08.25


なぜこれ程まで高くしたのだろう・・・。見張り台の高さは優に15、6メートルはありそうだ。




見張り台と踊り場の手すりのデザインは同じで、エレガントな飾りがついている。


脚元にも半鐘を吊り下げてある。見張り台に登るのは相当大変だろうから、半鐘の脚元設置は当然といえば当然。


 


上田市漆戸の火の見櫓

2022-08-29 | A 火の見櫓っておもしろい


(再 過去ログ) 上田市漆戸 4柱4〇型BC前たばね脚(BC: ブレース囲い)撮影日2022.08.25

 狭い坂道を通って、火の見櫓に到達した。初めての観察かと思ったが既に2016年の10月に観ていた。落ち着いた雰囲気の集落にすくっと立つ火の見櫓。なかなか魅力的な田舎風景だ。道沿いに花が咲いていたらもっと良かっただろう・・・。


東北信の火の見櫓は直線的に逓減しているものが多い。7段の垂直構面のブレースの内、リング付きは下2段のみ。


平面が4角形(四角形という表記が一般的だが、敢えて角数を数字で表記している)の屋根と円形の見張り台という組合せは東信地域では7割近くを占める(218/314)。屋根と見張り台は大きさのバランスがよく、端正なつくりで美しい。6年前と変わらず木槌を吊り下げてある。


中南信の大型の火の見櫓の踊り場は見張り台と同じ様なデザインのものが少なくないが、東北信の踊り場は簡素なつくりのものが多いという印象。脚をタイプ分けをして、分布傾向を把握したように、踊り場についても調べてみたい。

2016年の脚部の観察では**脚元は正面のみアーチ部材を使い、櫓内部に入ることができるようにしている。**と書いている。まだこの時は脚の型を分類して名前を付けるということをしていなかった。今なら「ブレース囲い前たばね脚」とタイプ名を書くことができる。対象物きちんと認識するためには名前が必要だ。

東信地域ではこの複合型は少なく、1割もない(18/267)。北信地域ではこの型が最も多く、4割超(123/291)。この違いは一体何に因るのだろう・・・。


♪ 見上げてごらん 昼の見張り台 ぼくらの見張り台 

ガッチリとした鉄の工作物。レトロな街灯がアクセントになっている。消防信号板とこの街灯がこの火の見櫓のアクセント。なかなか好い。


 


「〇〇前駅」の分類

2022-08-28 | D 新聞を読んで

 日本経済新聞を読むことはあまりなかったが、今年4月21日付同紙の文化面に「火の見櫓 孤高の姿撮る」という私の記事が掲載されたのを機に文化面(最終面)を読むようになった。8月22日の同紙文化面に掲載された「「〇〇前駅」は本当に近い」という落語家・古今亭 駒治さんの記事を読んだ。

三越前駅(東京メトロ銀座線・半蔵門線)、成城学園前駅(小田急小田原線)などの「〇〇前駅」、略して「前駅」は本当にその施設や名所に近いのか・・・。「前駅」でも施設に近いとは限らないことが分かった古今亭 駒治さんは、ロードメジャーで距離を測り、ストップウォッチで所要時間を測って確かめているそうだ。全国にはおよそ330の「前駅」があるとのことだが、7年ほどかけて230の駅を調べたという。

ぼくが興味を持ったのは、記事の後半に書かれている調べた駅の分類のこと。このところ火の見櫓の分類のことをあれこれ考えていたので。

駒治さんは前駅を「駅名の種類」と「駅と施設の関係」というふたつの観点から分類している。前者を~系、後者を~型として、このふたつを組み合わせて「前駅」を分類していて、記事には「表記違い系南海型」「愛称系南海型」などの分類名が例示されている。

施設の旧名がそのまま残る「前駅」は「小林旭系」と名付けられている(理由は分かりますよね)。「小林旭系」か・・・、名付け親が落語家だからなぁ、おもしろいなぁ、とその名前に感心した。記事には~系の名前も~型の名前もそれぞれ「フルネーム系」「ダブルス系」、「ホーム直結型」「通路直結型」などが例示されているだけで、全てが示されてはいない。記事のスペースがきっちり決まっているので仕方ない。

全部知りたいと思い、ネットで検索してみると、駒治さんのブログがヒット!。

ブログに全て示されていた。~系は全部で11、~型は17ある。系と型の組合せによる分類名は長野県内の5つの「前駅」のうちの2つを例示するに留める。

アルピコ交通上高地線「北新・松本大学前」――「地名先行系対面型」 
上田交通別所線「大学前」――「一石二鳥系中距離型」 駅の近くに上田女子短期大学と長野大学がある。単に大学と表記しているので一石二鳥というわけ。上田市真田町まで電飾火の見を見に行った時、この駅のすぐ近くを通った。



火の見櫓の分類名は固いなぁ・・・。トラス脚は網タイツでよくないか? いや、スケベなおっさんが名付けたなんて思われるのはいやだから、トラス脚のままにしておこう。


 


上田市真田町横尾の火の見櫓

2022-08-28 | A 火の見櫓っておもしろい


(再)上田市真田町横尾 4脚4〇型たばね脚 撮影日2022.08.25

 東信、北信の火の見櫓は上半分のブレースにリングが無いものが多いが、この火の見櫓は上から下まで全てリング付き。


見張り台に赤色灯が設置されている。シルバーの櫓に赤はよく目立つ。




櫓の中間にデザインの異なるふたつのカンガルーポケット。下は梯子の踊り場で上は消火ホースを掛けるための設え。正面の交叉ブレースのリングに横尾分団と一文字ずつ付けている。


中信地域に多い(3割近く)ショートアーチと比べるとたばね脚はかなり丈夫だと思う(私には定性的な判断しかできないが・・・)。


 


見張り台の床の構成 

2022-08-28 | A 火の見櫓っておもしろい


(再 過去ログ)上田市真田町本原 竹室公民館前 4柱44型たばね脚 撮影日2022.08.25

 櫓の一つの面を真正面から撮影するとフォルムが分かりやすい。全体的に整った姿・形で美しい。


円形の見張り台の床面の構成を観る。4本の柱材から2本の山形鋼(アングル材 以下同じ)をT形に重ねて持ち出し梁として設置し、山形鋼の方杖で梁の先を支えている。4本の持ち出し梁の先端を円形に加工した山形鋼の梁で繋ぎ、二次部材の根太材(山形鋼)を放射状にそれぞれ3本設置して、平鋼をすのこ状に並べて床面をつくっている。根太を放射状に架けたところがポイントで、端正だという好印象を与える。方杖材をはらませて(下側に曲げて)使っているが、構造的には疑問。反らせて(上側に曲げて)使う方が、見た目にも好ましい(前稿、後稿の火の見櫓のように)。


 


上田市真田町本原の火の見櫓

2022-08-28 | A 火の見櫓っておもしろい

(再 過去ログ)上田市真田町本原 4柱4〇型たばね脚 撮影日2022.08.25


 4角形の屋根、円形の見張り台は東信地域のプロトタイプ。形が整っていて、美しい。櫓の部材接合部のガセットプレートがやや大きめ。


簡易な踊り場、カンガルーポケット。半円形が多く、角型は少ない。


たばね脚。ネーミングは大事。名前を付けることで意識的に観るようになる。名前の無いものは脳がきちんと認識できないということを実感する。横架材の高さは2.5mくらいか。脚の間隔と1段目(脚の付け根)の横架材の高さは脚の形に関わるので出来るだけ確認しておきたい。


 

 


上田市中央西の火の見櫓

2022-08-28 | A 火の見櫓っておもしろい


1380 上田市中央西  4柱〇〇型BC前たばね(?)脚 撮影日2022.08.25

 東信では極めて珍しい円形(円錐形)の屋根の火の見櫓。


半鐘と木槌の他は何も無い見張り台。実に好ましい。


後ろと左右の3方に丸鋼のリング付き交叉ブレース、たばね(?)脚で前を開放している。珍しいことに補強部材を柱材と横架材の後ろに設置してあるので、たばね脚かどうか写真では確認できないので?付き。


 


上田市古安曽の背の高い火の見櫓

2022-08-27 | A 火の見櫓っておもしろい

360
1379 上田市古安曽 東塩田小学校前 4柱4〇型たばね脚 撮影日2022.08.25 


 櫓に交叉ブレースが10段ある。上の5段には平鋼、下の5段には丸鋼が使われている。輪っか(リング式ターンバックル)の有無、ブレースの形状の違いが櫓の印象に影響していることがよく分かる。背が高いので踊り場を2か所設置している。


魅力的な鉄の造形


下の踊り場は簡素なつくり。上の踊り場は櫓の1面にバルコニーのように張り出したカンガルーポケット(KP)で、東信に多い。今度は踊り場のタイプ分けを行い、脚と同じ様に分布状況を調べてみたい。


たばね脚。背が高い分、脚の間隔が広がる。