透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「「廃炉」という幻想」

2022-02-27 | A 読書日記

 拙ブログの前の記事「ブックレビュー 2022.02」に、将来歴史の教科書に太文字で表記されるであろう出来事が続いていると書いた。そこに挙げた福島第一原発の大事故はなんとなく過去の出来事のような捉え方になってしまっている。だが、事故処理は続く、この先まだ何年も何年も・・・。



25日(金)の午後、久しぶりに松本駅近くにある丸善に立ち寄った。買い求めたのは『「廃炉」という幻想 福島第一原発、本当の物語』。 **私事になるが、筆者は福島第一原発事故、通称1F(いちえふ)事故の発生初日から現在まで、民放テレビ局の記者として、一貫して1F事故収束を取材している。**「はじめに」にこのような著者・吉野 実さんの自己紹介がある。これも光文社新書。

読み始めるといきなり次のような記述があった。**高い放射性物質であるデブリ取り出しについては、これまで、わずかなサンプルの取り出しもできず、技術的には全く見通しが立っていない。現場は成算も立たないまま、様々な試みをしているが、大量のデブリ取り出しができる保証はない。
百歩譲って、デブリ取り出しに成功したとしても、現状では、デブリや、原発解体に伴って発生する膨大な廃棄物を、安定的に保管する場所は存在しないし、見つかる目途も全くない。(後略)**(26頁)

デブリってなんだっけ? デブリとは燃料と構造物等が溶けて固まったもの(原子炉建屋の概念図などは東京電力のホームページに掲載されているので検索・確認願います)。

このデブリの取り出しについて著者の吉野さんは無理なんじゃやないか、という見解をお持ちなのだ。本書の帯に**不可能に近い「デブリ取り出し」**とある。

デブリの量は1、2、3号機で合計880トン(もっと多い可能性もある)(45頁) こんなに多いのか、びっくり。

バイアスがかかっていようがいまいがそれは自分のフィルターを通して判断するだけ。本書を読んで、福島第一原発の現状と今後に関する知識を得ることができれば・・・。

余談だが、本書に掲載されている写真や図の大半がカラーだ。美術作品を取り上げるような新書、例えば先日読んだ『日本美術の核心』矢島 新(ちくま新書)などは掲載する絵画がカラーの方が有難い、割高になっても。


 


「6 男はつらいよ 純情篇」再び

2022-02-27 | E 週末には映画を観よう

 寅さんシリーズ全50作で特に印象に残る5作品に次ぐ作品とマドンナは次の通り。

第  6作 純情篇 若尾文子
第17作 寅次郎夕焼け小焼け 太地喜和子
第27作 浪花の恋の寅次郎 松坂慶子
第38作 知床慕情 竹下景子
第39作 寅次郎物語 秋吉久美子

第6作「純情篇」を観た。この作品のあらすじは省略する(過去ログ)。

長崎港。五島行きの船が出てしまって、寅さん思案橋ブルース、もとい思案。寅さん、赤ちゃんを背負った若い女性に声をかける。なんだか薄幸そうな雰囲気のこの女性、宮本信子が演じる絹代。この映画の公開が1971年1月、となると製作されたのは前年で、この時1945年生まれの宮本は25歳。絹代は遊び人の夫に愛想をつかして故郷・五島に帰るところだった。宿代が足りないことを寅さんに告げて、お金を少し貸して欲しいという。寅さん「来な」と一言。寅さんは幼い子どもを連れた絹代と鄙びた旅館に同宿する。

寅さんが隣の部屋で寝ようとした時、絹代は服を脱ごうとしている。
「泊めてくれて、何もお礼できんし・・・」

この時、寅さんは
「あんた、そんな気持ちで、このオレに金を・・・、そうだったのかい」

この後、寅さんは絹代を優しく諭す。その長台詞は省略するが、この時の寅さんの心根に涙した。今こうして書いていても涙が・・・。

この後、絹代は実家で父親(森繫久彌)と再会する。父娘の情にふれた寅さん、故郷が恋しくなって、柴又へ。帰ってみるととらやの2階には夫と別居中の夕子(若尾文子)が下宿していて、寅さんお決まりの一目惚れ。

その後の流れは省略。

とらやに迎えに来た夫と夕子は帰っていき、寅さん失恋。

ラスト、旅に出る寅さんと柴又駅のホームで小さいころの思い出話をするさくら。ふたりの会話を聞いていてまた涙。ますます涙もろくなった。

電車に乗り込んだ寅さんの首にさくらは自分がしていたマフラーをかける。
「あのね、お兄ちゃん。つらい事があったら、いつでも帰っておいでね」
「そのことだけどよ、そんな考えだから、オレは一人前に・・・」
「故郷ってやつはよ・・・」
「うん」
「故郷ってやつはよ・・・」
電車のドアが閉まる
「なに?」

電車が走り出す。

この後、寅さんがなんて言ったのか分からない。続く台詞は観る者に委ねられている。

遠ざかっていく電車をじっと見送るさくら。実にいい場面だ。

正月のとらやに絹代が夫と子どもと一緒に来ている。この時寅さんは旅の空。絹代が五島の父親に電話する。近況を聞きながら泣く父親。その様子を見てまたしても涙、涙。

寅さん映画、いいなぁ、好きだなぁ。


 


ブックレビュー 2022.02

2022-02-26 | A ブックレビュー

320

 1995年、阪神・淡路大震災の惨状に、こんなことは生きている間に二度と起きないだろうと思った。ところが2011年、今度は東日本大震災、福島第一原発の大事故でまたもや大惨事に。その後も豪雨が毎年のようにこの国を襲い甚大な被害が発生している。そしてコロナ禍。2年以上もマスク生活を強いられるなどということを誰が予想できただろう・・・。そして今後はロシアのウクライナ侵攻。将来歴史の教科書に太文字で表記されるであろう出来事がいくつも続く。大変な時代を生きているのだ。ところでウクライナといえば、名作「ひまわり」の印象的なシーン、あの広大なひまわり畑シーンの撮影地なんだとか。

こんな前置きをしてから書きにくいが、月末だからブックレビュー。2月の読了本は6冊。このところ新書を読むことが多い。

『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』今村翔吾(祥伝社文庫2021年20刷)
江戸の火消たちが活躍する時代小説、となれば読まないわけにはいかない。江戸の消火事情が分か。。

『いま、幸せかい? 「寅さん」からの言葉』滝口悠生(文春新書2019年)
「伯父さん」
「何だ?」
「人間てさ」
「人間?人間どうした?」
「人間は何のために生きてんのかな?」
「何だお前、難しいこと聞くなあ、ええ?」
「うーん、何て言うかな。ほら、ああ、生まれてきてよかったなって思うことが何べんかあるじゃない、ね。そのために人間生きてんじゃねえのか」

『毛 生命と進化の立役者』稲葉一男(光文社新書2021年)
驚異のミクロの世界。神さま(造物主)は決して手を抜かず、微細な部分もきっちりデザインしている!

『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』伊藤公一朗(光文社新書2018年10刷)
データ分析の基本のき、因果関係分析入門。

『日本美術の核心 周辺文化が生んだオリジナリティ』矢島 新(ちくま新書2022年
日本美術に関するなるほど!な解説。キーワードは庶民性と素朴な造形。

『メタバースとは何か ネット上の「もう一つの世界」』岡嶋裕史(光文社新書2022年)
**リアルでは男性の人が、メタバースでは女性のアバターを使い、婚姻することは可能か。それを女性と信じて婚姻した配偶者が、実は相手がリアルでは男性だったと知ったときに、詐欺罪は成立するのか。人間が操るアバターだと信じて疑わなかった相手と結婚したら、その背後にいたのがAIだったときどうするのか。**(244頁) ??? こんな状況を想定することが必要になるんだろうか、混乱してくる・・・。


 


仮想世界

2022-02-25 | A あれこれ

 今はそうでもないが、しばらく前までスタジオ収録番組で、一部の出演者が設置された画面に写されてスタジオの出演者と同じようにコメントをするという方法が採られることがあった。その番組をテレビで見ている私にとって、スタジオの画面の中の出演者と実際にスタジオにいる出演者とは同等の存在、両者に違いはない。画面を消すことができたら、両者はまったく区別がつかないだろう(既に技術的は可能だろうが、敢えて画面を消していないのかもしれない)。テレビ画面に映し出されているこのような状態って完全にリアルな現実世界とは言い切れないような気がする。少し仮想世界が混ざった状態ではないのか。少なくとも出演者全員がスタジオにいるのとは違うということは明らかだ。

オンラインで行われる会議などで、参加者は背景を実際とは違う別のものに変えることが難なくできる。リゾート地にいて会議に参加しているのに、背景は部屋の中。あるいはその逆パターンもあるだろう。このような状況も完全にリアルな現実とは違うということは明らか。

AIで復活させた美空ひばりが出演して話題になったのは何年前の紅白歌合戦だっただろう。

長ったらしい説明で言いたいのはリアルな世界と仮想世界の境目は必ずしも明確ではなく、重なっている部分があるということ。今読んでいる『メタバースとは何か』岡嶋裕史(光文社新書)では**リアルと仮想の融合**と表現している(5頁)。

無縁と思っていた仮想世界に私も入り込むことがあるということだ。

**「自分が活躍したり、寛いだりする場所は、必ずしもリアルでなくていい」と言えるほどには、メタバースは現実になっているのである。**(58頁)

この本を読んでいると、混乱してくる。リアルってなんだ?


 


「松本の本」

2022-02-24 | A 読書日記



 『松本の本』第3号に掲載予定の原稿を書いています。で、ブログの記事が書けません。年1回発行のこの雑誌、第2号に「火の見櫓」について書きましたが、今回は松本のマンホール蓋について書いています。発行はまだ先ですが、今から楽しみです。他の皆さんどんなテーマで書くのかな。

  


 


メタバース

2022-02-21 | A 読書日記



 信濃毎日新聞の2月16日付朝刊文化欄に人類学者・磯野真穂氏の「生活の仮想空間への移行に危機感」という見出しの論考が掲載されていた。この論考のキーワードは「メタバース」。

論考を読んで次の件(くだり)にサイドラインを引いた。

**私たちの身体の捉え方、感じ方も、言葉に合わせて変化してゆくということだ。言葉は言葉のみでは止まらず、現実の実感を変えてゆく。**

**人類学者のメアリー・ダグラスが、社会のイメージは身体に反映されると述べたように、理想とされるIT機器のイメージは私たちの身体に当てはめられる。** なるほど確かにスペックが高い人などと言うようになった。

**身体の「デフォルト(初期設定)」は両親からもらったそれではなく、自分が描く理想のそれとなってゆくはずだ。生まれ持った身体はその理想に向けて、あらを削られ続ける対象と化すのである。**

**メタバースは、かつてなく自由なようで、最も管理された世界であることは知っておくべきだろう。なぜならメタバースは見えない誰かによって常に整備され、監視された世界であるからである。** 見出しの「生活の仮想空間への移行に危機感」はこの警告的指摘に因るのだろう。

この記事のようにメタバースという言葉がメディアに出るようになったが、どのような意味なのか、どのような世界なのか全く知らない。

書店で『メタバースとは何か ネット上の「もう一つの世界」』岡嶋裕史(光文社新書2022年)を目にして、買い求めた。全く無縁な世界とも言い切れないように思うので読んでみようと思った次第。朝カフェで読み始めた。

480


 


「日本美術の核心」

2022-02-20 | A 読書日記

360

 巣ごもり読書。『日本美術の核心 周辺文化が生んだオリジナリティ』矢島 新(ちくま新書2022年)を読んだ。本書の内容を一言で括るとすれば、日本美術のオリジナリティの分析。

オリジナリティ、即ち日本において独自に発達してきたと考えられる造形は西欧的なファインアート(著者・矢島氏の定義をまとめると高い完成度を誇り、見る者を威圧する純粋で立派な造形となろう)をはみ出す部分にこそあると矢島氏は指摘する。ファインアートという観点から中国も西欧と事情が似ているということも本書の論考では考慮すべきで、**西欧と中国は世界の美術をリードしてきたツートップである**((12頁)という認識が示されている。

矢島氏は錦絵や俳画、文字絵、茶の湯の器物、神仏像(円空の刻んだ像に代表される)など江戸町人に親しまれた美術品をはじめ数多くの作品を例示しながら、リアリズムよりもデザイン的な造形や素朴な造形に魅力があると説いている。

デザイン的な造形ということでは、私は本書でも取り上げている尾形光琳の「燕子花図屏風」(写真下『日本美術史』カバー図版)がまず浮かぶ。この作品の魅力は燕子花(かきつばた)という単一のモチーフによってグラフィックに構成された「繰り返しの美学」にある。素朴な造形となると、帯の左上、白隠の「達磨像」はじめ、さらっと描かれたまさに素朴な絵がいくつか浮かぶ。


『日本美術史』 美術出版社1999年18刷

日本美術のオリジナリティは中国の周辺に位置し、そのファインアートの規範をある程度逃れることができたことに起因するという著者・矢島氏の見解が「周辺文化が生んだオリジナリティ」という本書の副題に表れている。また、『かわいい禅画』や『日本の素朴絵』、『ゆるカワ日本美術史』などの書名からも矢島氏の日本美術の見方、捉え方が窺える。

思い出すのは『日本辺境論』新潮新書(2009年5刷)。この本で著者の内田 樹氏は日本の「辺境性」に注目して日本文化の特徴を論じているが、その指摘に通じるように思う。

以下『日本辺境論』について書いた過去ログの再掲

この本での論考の結論部分として、**私たちは華夷秩序の中の「中心と辺境」「外来と土着」「先進と未開」「世界標準とローカル・ルール」という空間的な遠近、開化の遅速の対立を軸にして、「現実の世界を組織化し、日本人にとって現実を存在させ、その中に日本人が自らを再び見出すように」してきた。**という辺りを私は挙げる。


さて、次は何を読もうかな・・・。


中川村の火の見櫓

2022-02-18 | A 火の見櫓っておもしろい


(再)上伊那郡中川村 4脚444型 撮影日2022.02.17

 所用で中川村へ。帰路この火の見櫓と再会できた。1基、また1基と姿を消している火の見櫓。このような状況にあって、1年半ぶりに再会できたことは幸せなことだ。





脚部のデザインが正面だけで他の3面はブレース入りで櫓のままというのは残念だが、末広がりのフォルムは美しい。2020年10月16日に見た時は消防信号板があったが(過去ログ)、昨日(17日)は無かった。


てっぺんの避雷針と見張り台の手すりに同じようなデザインの飾りが施されている。消火ホースを引き上げるために柱の上端から腕木を出して滑車を付けている。見た目は芳しくないが必要なものだからと割り切って見るしかない。


外付け梯子から踊り場へ、移動しやすいよう手すりに配慮している。





163枚目

2022-02-18 | C 名刺 今日の1枚

280

163 

**日本の絵画は西欧や中国の絵画よりも、「美」を大切にしているのではないか。** 『日本美術の核心』(ちくま新書2022年)で著者の矢島 新氏はこのように提起し、続けて西欧や中国の絵画は美よりも真実や真理を優先しているように見えると指摘している。(81頁)この本にいついては稿を改めたい。 

江戸末期に日本に入ってきた写真技術。写された人物を見て、絵画とは違うそのリアルさに驚いたに違いない。このことがphotographを真実を写すという意味で、写真と訳したことにも表れているのではないか。photoを原義通り光としてphotographを写真ではなく、光画とでも訳していたら、と思うことがある。そう、写真は真実を写すわけではない。

前置きが長くなった。久しぶりにプライベートな名刺を渡す機会があった。相手は上條紗季さん。この写真は彼女の印象とは違うような気がする。どう違うのかについては触れない。

火の見櫓に全く関心のなかった彼女が俄かに興味を持ち始めて、出先で出会った火の見櫓をスマホで撮って、見せてくれるようになった。火の見ヤグラー、やぐらおじさんとしては嬉しい限り。

やぐら女子になって欲しいなぁ。


写真と名前の掲載は本人の了解済み


ビスケットの割れ方 追試

2022-02-17 | A あれこれ


2022.02.13

 ビスケットの中心部分に加力した時に生じる曲げモーメントの面的分布を考えるというかイメージするとこの割れ方に納得する。支持点(ビスケットに付けた黒点)を結ぶ線に沿って、このビスケットのように割れるか、支持点間の中央を結ぶ線に沿って割れるかのどちらかだ。支点位置のずれや加力点のずれ、ビスケットの材質的なばらつきなどの要因で、想定線から少しずれることはあるだろうが。過去ログ

加力点と支持点とでは曲げモーメントの向きが違うことから、変曲点(連続的で、加力点を中心とする円形の線になるのかな?)が生じていると思われるが、直感的にそう思うだけで、説明できない。あるいは違っているのかもしれない・・・。


 


「データ分析の力 因果関係に迫る思考法」

2022-02-14 | A 読書日記



 限定的な知の領域について深く知るためには専門書を読む必要があるだろうが、広大な領域をあちこち覗いてみるのに新書は向いていると思う。私のような発散型の人間には安価な新書はありがたい。

『毛 生命と進化の立役者』では鞭毛や繊毛の精緻な構造を知ることができた。ネットで微小管と検索すればいくらでもヒットするが、私は紙の本を読むことで知の世界を覗くことが好きだし楽しい。専門的な内容を理解できなくても構わない。

先週末、巣ごもりで読んでいた『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』伊藤公一朗(光文社新書2018年10刷)を今日(14日)朝カフェ読書で読み終えた。

本書はデータ分析の「基礎のき」を説いている。難しいことを分かりやすく解説することは難しいと思うが、本書は記述が論理的でその流れも明快で分かりやすい。著者の伊藤氏が日本ではなくアメリカの大学(シカゴ大学)で教鞭を取る研究者であることも無関係ではないかもしれない。本書の構成として「論理構成図」が載っているがこのような本はなかなかないと思う。

**データ分析の力が特定の専門職に就いている方だけではなく、これまで以上に多岐にわたる職種において要求されるようになってきている。**(はじめに 3頁) 

第1章で真っ先に示された、広告の影響でアイスクリームの売り上げが伸びた?という例題の解説、以降示される例題の解説になるほど!

興味深いデータ分析の世界。


RCT(ランダム化比較試験)、RDデザイン、集積分析、パネル・データ分析



84円切手 鬼滅の刃 

2022-02-14 | D 切手



 今日(14日)届いた封書に貼られていた84円切手は鬼滅の刃だった。ネットで調べるとシートに15種類の題材が採用されていて、このキャラは悲鳴嶼行冥(ネットで調べた)。鬼滅の刃ファンにはたまらないシートだと思う。それにしても切手の種類って多いなぁ。


 


寅さんシリーズ 印象に残る場面

2022-02-13 | E 週末には映画を観よう

 男はつらいよシリーズ全50作品(第49作と第50作をカウントしないで48作品とする見解もある)を第49作(第25作「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」のリマスター版)を除き、全て観た。寅さんの片想いパターンの作品の方が多く、その逆、マドンナが寅さんに恋愛感情を抱くという作品は少ない。印象に残るのは全て後者のパターンで次の5作品だが、これらを2回観終えた。

第10作「寅次郎夢枕」八千草薫
第28作「寅次郎紙風船」音無美紀子
第29作「寅次郎あじさいの恋」いしだあゆみ
第32作「口笛を吹く寅次郎」竹下景子
第45作「寅次郎の青春」風吹ジュン

5作品の印象的な場面を以下に記す。

第10作:寅さんが千代(八千草薫)さんと亀戸天神でデートする場面、第28作:光枝(音無美紀子)さんが柴又駅前で寅さんに亡くなった夫との約束の真意を確認する場面、第29作:かがり(いしだあゆみ)さんの色香(丹後の実家に帰ってしまったかがりさんを訪ねた寅さん。最終の船便が出てしまって泊めてもらうことに。居間でふたりだけで飲む場面と離れの2階の寅さんが寝ている部屋にかがりさんが入ってくる場面)、それから鎌倉デートでかがりさんが、旅先の寅さんとは違う・・・、という次の場面。

「今日の寅さん、なんか違う人みたいやから」
「私が会いたいなあ、と思ってた寅さんはもっと優しくて、楽しくて、風に吹かれるたんぽぽの種にたいに、自由で気ままで・・・、せやけどあれは旅先の寅さんやったんやね」
「今は家にいるんやもんね、あんな優しい人たちに大事にされて」

第32作:朋子(竹下景子)さんが柴又駅のホームで寅さんの気持ちを確認して悲しそうな表情をする場面、第45作:蝶子(風吹ジュン)さんが寅さんと浜で歌う場面。

これらの中から、敢えてひとつを挙げるとすれば・・・、柴又駅のホームでと朋子さんが見せた悲しく、寂しそうな表情。ふたりは以下のような会話をする。その時、雰囲気を察したさくらはその場から少し離れている。さくらはいつも場の空気というか雰囲気を読み取り、その状況に相応しい振舞いをする。すばらしい女性だと思う。

この作品の後、竹下景子は第38作、第41作でもマドンナを演じている。これは彼女の演技を山田監督が高く評価した結果だと、私は思っている。第38作、41作で彼女はそれぞれ違う役を演じている。

「ごめんなさい」と朋子さんが切り出す。
「え、何?何が・・・?」
「いつかの晩のお風呂場のこと」
「え、何だっけな」ここでも寅さんはとぼける。
「あ~、あのことか」
「あの三日ほど前の晩に父が突然お前今度結婚するんやったらどげな人がいいかって訊いたの」
「それでね・・・、それで、私・・・」
「寅ちゃんみたいな人がいいって言っちゃたんでしょ」
朋子さん頷く。
「和尚さん笑ったろ。おれだって笑っちゃうよ。ハハハ なあ、さくら」
「ね、寅さん。私、あの晩父ちゃんの言うたことが寅さんの負担になって、それでいなくなってしまったんじゃないか思うて、そのことをお詫びしに来たの」
「おれがそんなこと本気にするわけねーじゃねーか」

落胆した朋子さんは
「そう・・・。じゃ、私の錯覚・・・」と悲しそうな表情に。
「安心したか」という寅さんのことばに朋子さんは目を潤ませ、首を横に振る。
「お兄ちゃん東京駅まで送ってあげたら」とさくら。
「もういいの、私はこれで。さくらさんありがとうございました」


 


「毛 生命と進化の立役者」

2022-02-12 | A 読書日記

360

 『毛 生命と進化の立役者』稲葉一男(光文社新書2021)を読んだ。


出典:小林製薬のウェブサイト

書名の「毛」は髪の毛や体毛のことではなく、細胞についている繊(せん)毛、鞭毛と呼ばれる微細な毛のこと。繊毛ということばは喉薬の説明などで目にすることがある。

「生命と進化の立役者」と副題にあるように本書には細胞の毛が生命活動と進化を支えているということが書かれている。電子顕微鏡的なミクロの世界、それが地球規模の環境変化にも関わってくるという話。

オタマジャクシのような姿の精子の尾っぽは鞭毛。その鞭毛は一体どのような構造をしているのか、波打ち運動はどのようなメカニズムによるのか、本書の解説にびっくり。すごい、造物主はこんな微細なところまで抜かりなく精巧にデザインしている!

微小管(理化学研究所の関連サイト)、9+2構造、チューブリン、ダイニン、ノード繊毛・・・。初めての用語に戸惑いながらも読み続けた。

本書の章立ては次の通り。
はじめに
第1章 孤独な戦士「精子」
第2章 体内の毛なしに生きられない
第3章 毛のルーツは生命のルーツ
第4章 美しいナノ構造のひみつ
第5章 波打つ仕組み
第6章 細胞の毛は環境問題につながっている
おわりに

細胞の毛は生命の誕生や進化にも関わっている! 器官の形成を司り、例えば心臓が左にあることにも関係している! それから回りの環境からの刺激(光や音、臭いなど)のセンサーの役目もしているし、自然環境の変化への対応にも関わっている。

自分が知らない驚きの世界を覗いてみるのは楽しい。


 


ビスケットはどのように割れるのか

2022-02-11 | A あれこれ

 円形のせんべいを4点で支持して中心に集中荷重をかけたらどのように割れるのか。硬いせんべいは予想1、やわらかいせんべいは予想2のように割れるだろう。しばらく前に試した。その時の供試体のせんべいは硬いから予想1。結果は下の写真⓪-2の通り(過去ログ)。

  
予想1 供試体が硬い場合          予想2 供試体がそれ程硬くない場合

⓪-2

右上のピースの割れた位置が予想1と少しずれている。せんべいは厚さが一定ではないし、材質も不均一ということが理由だと思われる(過去ログ)。

ビスケットはせんべいとは異なり厚さが一定で材質も均一だから理論的に想定される割れ方をするだろうと予想し、試してみた。硬いビスケットだから予想1。硬いとか硬くないとか定性的な表現だが仕方ない。


せんべいなどの供試体を支持する箸

①-1

供試体①と②を①-1のように4点支持し、中心部に箸の元(先の反対側)で集中荷重を加えた。次のような結果となった。

 
①-2                   ②-2 

供試体の①と②で割れ方が違う。①-2の割れ方は予想1とピッタリ一致している。②-2は支点間の真ん中を結ぶ線上で割れている。

①と②の割れ方の違いは何に因るのだろう・・・。ビスケットの強度(曲げ強度?)にばらつきがあって、①より②の方が弱かったから? 個々のビスケットの強度の微妙な差が割れ方の違いとなって現れるのかもしれない。


次に別の供試体③、④で①と②の場合と同様の試験をした。

 ③-1
試験体は折版状になっている。

 
③-2                   ④-2

断面形状から縦方向と横方向とでは強度的に差があるから、③-2のような割れ方を予想していた。だから④-2のように割れた結果に驚いた。

供試体③と④の割れ方の違い、この違いにはどのような理由が考えられるだろう・・・。これも強度の個体差によるのだろうか。

④-2(破断面の様子)

断面的に一番薄いところで割れている。これは当然と言えば当然だけれど。


結果を踏まえ、なぜ円形の供試体がこのような割れ方をしたのか考察したい。