透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「永すぎた春」を読もう

2010-02-28 | A 読書日記


 先日、春を感じた日のことを書きました。そのとき春がタイトルについている小説とエッセイとして、思いつくままに島崎藤村の「春」と日高敏隆の「春の数えかた」を挙げました。

その後タイトルに春がつく小説ならもっとあるだろう・・・、と思い浮かんだのが『永すぎた春』でした。40年も前に読んだ小説です。三島由紀夫にしてはライトな恋愛小説だったかな・・・、ストーリーが思い出せません。

この小説を思い出したのも何かの縁かもしれません。『ソラリスの陽のもとに』スタニスワフ・レム/ハヤカワ文庫を読み終えたら再読してみようと思います。

本はいいですね、何十年経っても再会できるのですから・・・。



日曜の午後に

2010-02-28 | A あれこれ

 今日の朝刊(信濃毎日新聞)の読書欄に『手紙、栞を添えて』辻邦夫、水村早苗/ちくま文庫が紹介されていた。

**(前略)ギリシャ悲劇や源氏物語、ディケンズ、ドストエフスキーら古今東西の名作を読み解きながら、小説の意義や使命、読むことの幸福感や書くことの喜びを伝える。**

この
短い紹介文を読んで、ふと思った・・・。古今東西の「東西」って地球上に配置された日本とヨーロッパの地理的な位置関係をただ単に捉えただけなのではないか、と。

もし、ヨーロッパとアジア・日本の地理的な位置関係が南北であれば、当然洋の東西を問わずなどという表現はされす、洋の南北は問わずとなったはず・・・。いや、太陽の昇る方位、東志向が強いこの国なら別の表現になったかもしれない・・・。書きながらも考えは揺れる。

■ NHKの「日曜美術館」 松方幸次郎の名画収集物語。

実業家、松方幸次郎は川崎造船の初代社長。50を越えてイギリスに渡り、画家のフランク・ブラングィンと出会う。

絵にはすごい力がある!

松方は西洋の美術を日本の人々に広く観てもらことを考えて、ブラングィンに絵の指南役を依頼して収集を始めた。

松方コレクションの中にゴッホの「アルルの寝室」があったことは知らなかった。「アルルの寝室」は水色の壁の室内に黄色のベッドが置かれていて、ゆがんだパースが印象的な絵だ。

第一次大戦後の大不況で、川崎造船の経営は行き詰まる。第二次大戦後までロンドンに保管されていた松方コレクションは焼失。フランスはパリに保管されていたコレクションを日本に返還したが、そのとき特に価値を認めた作品は自国に留めた。「アルルの寝室」も日本には帰ってこなかった・・・。この絵は現在オルセー美術館が収蔵している。

松方にもうひとつの人生、美術品収集家としての人生を歩ませる契機となったフランク・ブラングィンとの出会い。現在国立西洋美術館でこの画家の展覧会が開催されている。今朝の番組で紹介された絵は重厚で存在感があった。

この画家のことは何も知らないが、会期中に東京する機会があれば鑑賞したい。


 


ブックレビュー 2月の本

2010-02-28 | A ブックレビュー

■ 2月も今日で終わり。今月は忙しく、読書をする隙間時間もあまりなかった・・・。



『ワインバーグの文章読本』翔泳社
文章の書き方を自然石で壁を構築することに喩えて教えている。

『キリマンジャロの雪が消えていく アフリカ環境報告』石 弘之/岩波新書
アフリカと聞けば自然豊かな大地に野生動物が群をなして棲息いるシーンを思い浮かべる。テレビでは「限られた情報だけ」が切り取られて伝えられ、人々が様々な問題を抱えて暮らしていること、環境破壊が進んで深刻な状態であることなどはほとんど伝えられない。


この本で、アフリカの悲惨な現状を知る。**貧困や環境破壊の大波に翻弄されるアフリカを救い出す特効薬は、これまでのところ見つかっていない。多分そうしたものはないのだろう。**と著者はあとがきに書いている。小説とは違って現実は厳しい・・・。

『からだのままに』南木佳士/文春文庫
南木佳士のエッセイや小説は「抗不安剤」。読むとなぜか気持ちが落ち着く。同じような内容が繰り返されるが、これからも読み続ける。


 


ユニバーサルデザイン

2010-02-27 | A あれこれ


 写真はシュレッダーのスイッチです。 左はメインスイッチ、初めてでも操作方法が分からないということはありませんね。形が操作方法を示しています。

では右のスイッチはどうでしょう。円いスイッチが3つ並んでいます。水色のスイッチの操作方法が初見で分かる人は少ないと思います。このスイッチは黒やピンクのスイッチのようにポンと押してもだめなんです。メインスイッチのように押さないと。円いスイッチのひとつだけ、操作方法が違うんです。これは分かりにくい。

このことはメーカーも分かっているのでしょう、下の写真のように操作方法が示されています。



日常的に使う機器で電源スイッチの操作方法が表示されている・・・。操作方法が視覚的に分からないデザインに合格点はつかないと思うのですが、これは老人力がついてきた者の責任転化なのかもしれません。

カーナビ、デジカメ、ケータイ・・・、操作方法が分かりにくい機器はいくらでもあります。操作系のデザインは誰にも分かりやすいこと(ユニバーサルデザイン)が基本でしょう。この基本を外したデザインが多いのは残念です。

デザインのルール ←過去ログ

三九郎マップ 追記

2010-02-26 | A あれこれ



■ 三九郎のエリアについて木曽方面が分かりました。

塩尻市と合併した旧楢川村(奈良井宿の所在地)は予想に反してどんど焼きでした。塩尻市は三九郎とどんど焼き、両方の地域があるということになります。合併などによって地域に固有の伝統的な行事やその呼称が変わっていくのではないか、と危惧します。

松本市に合併した旧安曇村(上高地の所在地)と旧奈川村がどんど焼きか三九郎か未調査ですが、三九郎エリアとしてピンクで表示し、今回の調査の結論とします。

何人かの知人・友人にヒアリングしました。ありがとうございました。

御柱と三九郎それと道祖神には何らかの関係がありそうです。飾り御柱の近くには道祖神がありました。来年は各地の三九郎の取材をしてみようかな、と思っています。

追記:その後の調査で旧奈川村はどんど焼きだと分かりました。上のマップは訂正してありません。旧安曇村も調べなくては・・・。


生活雑記 春を感じた日

2010-02-25 | A あれこれ
 今日から春!などと季節に線引きなど出来ないとは思いますが、あるんです、そう感じる日が。今週の月曜日、22日がまさにその日でした。

松本平の東に連なる山並み、高ボッチや美ヶ原が淡い単色に霞み、稜線を目で追っていくといつの間にか空に溶け込んで見えなくなっています。

過去の記録によると07年がやはり2月22日、06年は3月8日が春を感じた日でした。昨年はそのことをブログに書いていないのか、検索してもヒットしません。日記に記録があるかも知れません、調べてみます。

松本城の梅がほころびはじめ、福寿草も咲き出したとか・・・。出かけてみることにします。

春・・・、エッセイだと動物行動学者、日高敏隆の『春の数えかた』。生き物たちは皆それぞれの方法で三寒四温を積算し、季節を計っている。小説だと島崎藤村の『春』。この小説、内容はすっかり忘れています。他には・・・。


室生寺の奥性

2010-02-21 | A あれこれ



■ 先日、塩田平の古刹、前山寺の三重塔について書きました。長い参道を歩き、石段を何段も上って三門へ。その先に更に続く石段越しに三重塔を見たとき、室生寺の五重塔を思い浮かべました。

室生寺を訪ねたことはありませんが、土門拳の写真集などで石段の先の五重塔を見上げるアングルは馴染みです。

今日は久しぶりの休日。日本名建築写真選集に収録されている「室生寺」の写真を観ながら工藤圭章氏の解説文を読んでみました。

**室生寺の伽藍の特徴は、堂塔が山腹に散在することである。そして、それらの建物が段状になり、左右に見え隠れする。**

室生寺は慎み深く里山の深い緑に隠れていて全貌を一望することは出来ません。都市の中心にあってランドマーク的な存在のヨーロッパの寺院とは対照的です。自然の中にひっそりと佇む堂塔の姿は日本人の建築観に合っているような気がします。

日本名建築写真選集 全20巻は92年1月に刊行が始まりました。手元に本が届く度に写真には一通り目を通しましたが、解説や資料はほとんど読んでいませんでした。

昨年末になぜか古今東西について考え、日本人の東志向に気が付き、更に辺境というか「奥」に惹かれる心性、メンタリティーに注目するようになりました。それから山里の寺院の伽藍配置が気になりだしたのです。で、山岳寺院としてつとに知られている「室生寺」の解説文を読んでみたという次第です。 

伽藍配置図によると、室生川に架かる太鼓橋を渡ってすぐの正門から、鎧坂、雪の金堂、弥勒堂、本堂、そして有名な五重塔、奥の院への石段、そして奥の院御影堂へ、その距離約500m! やはり「奥」なんですね~。

室生寺はシャクナゲが有名ですね。石段の両側に咲く濃いピンクのシャクナゲを前景とする五重塔の写真が載っています。

室生寺、いつか訪れてみたいです。


 


「からだのままに」を読んだ

2010-02-21 | A 読書日記


 南木佳士の小説やエッセイは単行本ではあまり読んでいないが、文庫化されるたびに買い求めて読んできた。一昨日(19日)久しぶりに書店へ出かけて、文春文庫の棚を探して『からだのままに』というエッセイ集を見つけて購入した。昨日の夕方カフェマトカにて読了。

カバーの折り返しのリストをみると前作は『こぶしの上のダルマ』だ。その前は『冬の水練』(過去ログ)。

**群馬県嬬恋村で生まれ、十三歳まで育った。東京や東北での学生生活を終えた直後より信州佐久平に住んでいる。気がつけば五十代半ばの身の、四十年あまりを浅間山麓の北と南に置いたことになる。** 収録されている「浅間山麓で書く」というエッセイの書き出し。

幼いとき母親を亡くして祖母に育てられ、東京の郊外の進学校を卒業、東北地方の大学の医学部に進んで・・・。医者になってから著者はパニック障害からやがてうつ病に・・・。 健康の回復を得て登山を始めて・・・。

エッセイでは著者の半生が繰り返し綴られる。著者自身あとがきに**読み返してみるとおなじ題材の繰り返しが目立つ。** と書き、**しかし、書くときの状況によって扱いは微妙に異なっている。** と続けている。それで、文庫化されるたびに読んできた。

秋の日の深夜から明け方にかけて、机上の明かりだけで読むエッセイ。読むといつも心が落ち着く・・・(と以前も書いたかな)。


前山寺の三重塔

2010-02-19 | A あれこれ


 上田市の前山寺 

三門(山門)の真正面に重要文化財に指定されている三重塔を望む。

安定感のある美しい塔だ。屋根の四隅の反りもいい。実はこの塔は未完成だという。ニ層、三層の柱の下部から四方に貫が出ていることからそのことが分かること、建立が室町時代と推定されることが説明板に記されていた。

しばらく前に取り上げた安楽寺の三重塔は八角形だったが、やはり四角形の塔の方が木造では自然だと思う。八角形の平面は中国の塔の様式。安楽寺の三重塔はその様式を踏襲したもの。

道路際の冠木門から直線的に続く参道、その長さ150メートル。この寺も「奥性」を意識した空間構成だ。日本人には奥を好む心性があることを再確認した。

 

繰り返しの美学なキャノピー

2010-02-17 | B 繰り返しの美学



 先日「雨氷」を取り上げたところ友人が自身のブログで紹介してくれました。雨氷はいくつかの条件が整わないと起こらない珍しい気象現象で、長野県では10年に1回くらいしか見ることが出来ない、と説明してあるサイトもありました。

氷でコーティングされた木の枝に朝日があたってキラキラ輝く様は、本当にきれいでした。光と氷による自然の芸術です。今度はいつ観ることができるのか分かりません・・・。

さて、今回は久しぶりの「繰り返しの美学」、取り上げたのは長野県上田市内の某保育園のキャノピーです。



等間隔に並ぶ鋼管柱が11本。柱から持ち出した梁相互を先端で繋ぎ、その位置からテンションロッドで上方に吊り上げてバランスさせています。よく見かける構造です。柱間を繋いだ梁と先端の梁との間に等間隔に母屋材を渡して屋根を形成しています。

屋根の上に突き出た鋼管柱とロッド材は雨にさらされているので、錆びやすいのではないかと気になりますが、すっきりした印象のデザインです。

やはり繰り返しは美しい!


 


「ソラリスの陽のもとに」スタニスワフ・レム

2010-02-14 | A 読書日記
 

「ワインバーグの文章読本」読了。文章を構成することは自然石を積み上げて壁をつくることと似ている。文章を書く方法を自然石構築法に喩えて教える本。



全20章で構成されているが、各章の扉には石積みの写真とその説明文が載せられている。それが各章の概要を分かりやすく伝える役目を果たしているのが巧み。この手の本をときどき読み返すことも必要かも知れない。

この本の一番の教えは帯の**興味のないことについて書こうと思うな**だった。ブログにも、もちろん当て嵌まるだろう・・・。



 哲学的思索に満ちたSF小説『ソラリスの陽のもとに』スタニスワフ・レム/ハヤカワ文庫を読んでから17年が経つ。

「惑星ソラリス」はこの小説を原作とするタルコフスキーの映画。キューブリックの「2001年宇宙の旅」と共に印象に残っているが、両者は全くタイプの異なる映画だ。「ソラリス」というタイトルで7、8年前に再度映画化されたが観たいとはあまり思わなかった。

久しぶりのSF、ようやく小説モードになってきた。名作には再読させる力がある。


「キリマンジャロの雪が消えていく」

2010-02-14 | A 読書日記



■ **アフリカ大陸と聞いただけで、反射的に大草原を移動する野生動物の群れや、雨季の到来とともに大地を覆う花を思い出す。アフリカほど、動植物の種類に恵まれて多様な自然に富んでいる大陸はないだろう。** 著者はアフリカについてこう書いている。私もテレビの番組などを通じてアフリカに対してこのようなイメージを抱いている。

その一方で、**干ばつ、飢餓、内戦、クーデター、政治腐敗、エイズ、海賊・・・** アフリカ発のニュースはこんなことに終始する。

本書は30年間アフリカに足を運んだ著者による「アフリカ環境報告」。

**貧困や環境破壊の大波に翻弄されるアフリカを救い出す特効薬は、これまでのところ見つかっていない。多分、そうしたものはないだろう。** 著者はあとがきにこう書いている。

本書を読むとアフリカを救う手立てはないな・・・と暗澹とした気持ちになる。

**国土の北半分がサハラ砂漠というチャドでは、森林保全と砂漠化進行の防止のため、政府は二〇〇八年一二月から「木炭」の使用を禁止した。木炭を運搬する車両は焼却処分され、取引に関与した者は逮捕されることになった。政府は価格を抑えてはいるが、貧しい住民に代替燃料の天然ガスボンベを購入する余裕はなく、きびしい措置に暴動騒ぎまで起きた。アフリカの人々にとって、燃料材は自分たち自身の「呪いの資源」である。**

アフリカの実情をあまりにも知らない・・・。


氷のコーティングは雨氷でした。

2010-02-13 | A あれこれ

 前稿の写真のような木の枝をコーティングした氷を「雨氷」ということが分かりました。で、「雨氷」を検索。以下はウィキペディアの記事の要点をまとめたものです(かなり端折りました)。

「過冷却」の雨(着氷性の雨)は物にぶつかって瞬間的に凍結して透明な氷になる。この氷が雨氷(うひょう、あめごおり)。

過冷却の雨は、地上付近の薄い冷気層(気温が0℃以下の空気層)の上に暖気層(気温が0℃以上の空気層)が発生した(逆転層の発生)ときに降る。通常大気の温度は上空になるほど下がるから逆転層の発生は稀。

暖気層の上にある冷気層の雲から雪が降ると暖気層でいったん雨となり下層の冷気層で再び冷やされて過冷却状態の雨となって地上に降ってくる。ただし地上付近の冷気層が厚いと雨が凍結して凍雨となる。

冷気層と暖気層が逆転する逆転層の発生には低気圧や前線の影響のほかに地形も関係していて平野部では発生しにくく、山間部で発生しやすい。

雨氷はいくつかの条件が重なって局地的発生する珍しい現象なんですね。それが11日から12日にかけて発生した、というわけです。

雨氷の被害の記録がウィキペディアの記事に載っています。私が昔見たのは1969年(昭和44年)の1月に長野県で発生した雨氷だったのかもしれません。1980年(昭和55年)にも長野県中部で発生して被害が出ていますが、その頃は東京で生活していましたから。

雨氷について12日の夕方長野地方気象台に電話で問い合わせをしました。6年前、2004年の4月4日に着氷注意報が出ているそうです。

着氷現象は霧氷や融雪の再凍結などでも起こりますから、そのときの着氷が雨氷だったかどうか、定かではありません。

今回、架線に雨氷が発生して中央東線の塩尻のみどり湖駅付近で給電が滞り、電車が運行できなくなるトラブルが発生したとのことです。



13日の信濃毎日新聞朝刊に載った記事では雨氷に?が付いています。「雨氷」現象が発生した可能性がある、と書いてあります。雨氷だと断定できないということでしょう。

水って様々な現象を引き起こすんですね・・・。


 


氷のコーティング

2010-02-11 | A あれこれ

■ 冬のフォトアルバム 100211


△ 水滴のように見えますが、凍っています。


△ 水平の枝には氷滴がつき、斜めの枝には氷のコーティングが施されています。

どのような気象条件でこのような現象が起こるのかよく分かりませんが、朝方急に地表付近の気温が下がったことで、昨晩からしとしと降っていた雨が、このように凍ったのではないかと思います。軒下の温度計は氷点下1度でした。上空の気温次第では雪になったと思いますが、雪にはならなかったんですね。

このような現象を昔も一度見たことを覚えています。アイスキャンディのような「氷のコーティング現象」にも名前があると思いますが、分かりません。着氷? 他に何かいい名前がついていないのでしょうか・・・。