透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

風景から見出したふたつの構造 

2023-10-31 | A 火の見櫓のある風景を描く

 火の見櫓のある風景スケッチ展②が10月29日に無事終了して、ホッとしている。会場でスケッチのことや構図のことなどについて繰り返し説明をして、自分が風景をどう捉えているのか、より明確になった。過去の記事を編集するなどして、このことについて改めて記録しておきたい。

1 道路山水的構造の風景

道路を奥行き方向に配置し、道路沿いの家屋や庭木などで遠近感、奥行き感を示す構図を「道路山水」という。この道路山水という言葉は吉田博展(上田市のサントミューゼで2017年5月に開催された)で知った。



富士見町にて


東筑摩郡朝日村にて

どちらも奥行き方向に伸びる生活道路とその両側に建ち並ぶ住宅や塀、樹木などによって道路山水的な構造の風景がつくり出されている。構図をどうするか考える際、このことを強く意識するようになり、スケッチにも明確に表れるようになった。


2 重層的構造の風景


朝日美術館にて(長野県東筑摩郡朝日村 写真撮影・掲載の許可を作者からいただいています)

朝日美術館で2022年11月に開催された「加藤邦彦・温子展 ― 自然と共に生きる―」を鑑賞した。展示会場には鑑賞者に太古に誕生した生命体を想起させるような邦彦さんの不思議な造形の彫刻と、温子さんのイチョウをモチーフとした具象とも抽象ともとれるような表現の油彩画や石版画がおよそ120点展示されていた。

魅せられたのは温子さんの上掲作品だった。私はこの作品を緑の風景と観た。風景を奥行き方向に層が重なる、重層的構造として捉え、5つの層によって表現している。層の幅を次第に小さくし、色相・明度も層ごとに変えることによって遠近感を表現している。


新潟県の田園風景を表現した作品(写真撮影・掲載の許可を作者からいただいています)

新潟在住の布絵作家・坂井真智子さんの上掲作品も遠景の山並みまでの田園風景を布の層の重なりによって表現している。層の幅を次第に狭くしているところは加藤温子さんと同じだ。遠近法上当然と言えば当然だが。


上高地にて

上掲したような作品を鑑賞して、重層的構造の風景を意識するようになった。そうなると、風景の捉え方が明確になり、スケッチにも表れる。

3 火の見櫓の効果

道路山水的構造、重層的構造の風景で火の見櫓はどのような効果をもたらしているのだろうか。

小中学校のクラス担任はクラスの児童、生徒をまとめてクラスの秩序を保っている。風景における火の見櫓にも同様の役割、効果があると私は考えている。火の見櫓は風景を束ね、風景を統べて、そこに秩序を与えているのだ。火の見櫓は風景を秩序づけるランドマークだ。しかも地域の人たちによって建てられた地域愛の象徴とも言えるような存在だ。 

もともと魅力的な道路山水的風景、重層的風景、火の見櫓によってその魅力が倍化する。




スケッチの展示では火の見櫓のある風景の道路山水的構造と重層的構造のそれぞれの魅力が分かりやすいような配置をした(写真)。

このような風景を見ていいな、と思うのは私だけはあるまい。火の見櫓のある風景スケッチ展②では多くの人たちに、いいね!と言ってもらった。私のスケッチのことではなく、火の見櫓のある風景っていいねと言われたと解さなくてはならないだろう。


 


火の見櫓のある風景スケッチ展② 最終日

2023-10-30 | A 火の見櫓のある風景を描く

 火の見櫓のある風景スケッチ展、昨日(29日)が最終日だった。

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モデルをお願いしたAKさん(右)とHYさん(左)

開店時刻の10時、HYさんが、続いてAKさんが颯爽と、そう、颯爽とカフェに入って来た。しばらくしてMSさんも来てくれた。

HYさんは初対面の方だけれど随分前から知り合いのようなフレンドリーな女性だった。MSさんは最もつきあいが長く、50年以上も前からの友人。また、AKさんとは30年くらい前からの友人。3人の女性とぼくとが一つのテーブルに着いている。

どんな話題にしたらいいだろう・・・。ここはおじさんのコミュ力が問われる。あれこれ話が弾み、気が付けば2時間近く経っていた。 12時頃、カフェトークはお開き。ぼくのコミュ力など不要だった。ぼくはAKさんと食事に出た。その留守中にぼくのいとこの友人・KSさんが来店、観覧。美大出身のKSさんとカフェトークしたかった・・・。

午後、SK君が奥さんと来てくれた。SK君がSNSに挙げるランニング記事をいつも読んでいるから久しぶり感はない。早朝ランニングを毎日欠かさず、高山の100キロマラソンに参加したSK君。マラソンを始めたきっかけを知りたいと思っていた。「なるほど、そういうことだったのか」SK君の話で経緯を知って納得。AKさんもSK君とは旧知の仲。食事をしながら、「きっかけはなんだろうね」とSK君のマラソンのことを話したばかりだった。

TKさんが奥さんとお孫さんふたりと一緒に来てくれた。「U1さんが火の見櫓の写真を撮っていることは前から知っていたけど、絵を描いていることは知らなかった・・・」と奥さん。上のお孫さんは高校で美術クラブに所属していてアクリル画を描いているとのこと。で、スケッチを前に構図のこと、線描のこと、着色のことについて説明した。「絵を描くことは楽しいよね」

TKさんも来てくれた。建築設計が生業のTKさん、スケッチはお手の物だろう。ぼくのスケッチに対しても目の付けどころがやはり違っていた。


『火の見やぐら』大西雄一(明石豆らんぷの会1971年)

上高地線大好きKBさんからうれしいプレゼント、火の見櫓のスケッチを収録した豆本(大きさが分かるようにスケッチで使う油性ペン、マッキーを置いた)をいただいた。 

ZTさんとカウンターで話をしているころ、外は暗くなってきていた。5時過ぎ、KRさんが来てくれた。確か会期中3回目。スマホの待ち受け画面を最近火の見櫓の写真にしたとのこと。すばらしい!

6時、真っ暗。

4日に始まったスケッチ展が無事終わった。

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 会期中にお越しいただきました多くの友人・知人、初めてお会いした方々(芳名帳に記載していただいた方の人数:141名 延べ人数150名超)にお礼申し上げます。また、カフェの鈴木様にも深くお礼申し上げます。

幸せな10月でした。ありがとうございました。

火の見櫓のある風景スケッチ展② 27日

2023-10-28 | A 火の見櫓のある風景を描く

 今月4日に始まった火の見櫓のある風景スケッチ展②、早いもので会期末の29日まであと二日。

昨日(27日)は会場のカフェ開店と同時に高校の同期生のTZ君が来てくれた。その直後に来てくれた新潟在住の布絵作家、SKさんと3人でカフェトーク。

今回展示しているスケッチ11点の中で2枚だけ重層的構造の風景(風景を構成する要素が層を成し、奥行き方向に重なっている風景)を描いている。この構造を気づかせてくれたのがSKさんの布絵だった。このことをTZ君に説明すると、興味を示してくれた。SKさんは既に来年の春に個展の予定があるとのこと。私だけでなくTZ君にも個展案内のDM送付をお願いした。布で創る柔らかな風景をTZ君にもぜひ鑑賞して欲しいと思うから。

昼近くになって、須坂在住のSTさんが奥さんと来てくれた。何年ぶりだろう・・・。過分な評価に恐縮。

午後、TK君が来てくれた。話題豊富な彼とは話しが尽きない。1時間以上経過していたと思う。私とTK君の共通の友人、AYさんが来てくれた。3人であれこれ話していると、外は真っ暗。もう帰らなきゃ。

**ちょうど帰宅ラッシュにハマり、1時間半走って帰宅。でも、すごく楽しかった!いろんな話いっぱいできて、豊かなスケッチ画を堪能しました。
ありがとう。思い切ってお伺いできてよかった。
ますます火の見愛が深まりました!!!** AYさんのコメント。


友遠方より来松の記 26日

2023-10-27 | A あれこれ

26日 上高地散策

 早めに上高地線の新島々駅まで車で行き、友人3人の到着を待った。新島々駅から上高地まではバスでおよそ1時間。「大正池」で下車。日頃の行いの良さに加えて晴れ男効果で晴天。 河童橋までおよそ4kmを歩いた。

以下、野暮な文章は書かず、写真を載せたい。






重層的構造の風景







スケッチ展初日に立派な胡蝶蘭が届いた。送り主のMRさん


KRさん 


3年前のスケッチ展にも来てくれたKBさん


3人とも後頭部に歳を取ったことがかなりはっきり出ている。それが目立たない写真を選んだ。


上高地の紅葉を満喫。2時過ぎのバスで新島々へ。私の車で移動、松本市今井の道の駅で買い物。それから、スケッチ展を開催しているカフェへ。

つるべ落としの秋の夕。いつの間にか暗くなっていた・・・。松本駅まで3人を送り、帰路に就いた。夜、グループラインで3人から写真が何枚も届いた。

MRさん、KRさん、KBさん。ありがとうございました。


 


友遠方より来松の記 25日

2023-10-27 | A あれこれ

 学生時代の友人(先輩だが、友人と記す)3人が松本観光と紅葉の上高地散策、「火の見櫓のある風景スケッチ展②」観覧のために東京、埼玉から来てくれた。

25日 松本市内観光

新宿発8時ちょうどのあずさ2号、じゃなくで今はあずさ5号で来るMRさんとKRさんの松本到着予定時刻は10時37分、長野経由で来る埼玉のKBさんの松本着予定は10時49分。今年の7月にも同じメンバーで上高地に行っている(過去ログ)。

松本駅のスタバで本を読みながら3人を待つことに。

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『美しき愚かものたちのタブロー』原田マハ(文春文庫2022年)

ゴッホの「アルルの寝室」。カバーに採用する絵はこれしかない。松方コレクションを扱ったこの長編小説を読み終えてそう思った。実に感動的なストーリーに涙。ラスト数ページを改札口の前で立ち読みして読み終えた。


宿泊予定のホテルに荷物を預け、徒歩で中町の「そば処まつした」へ。


10月末で店を閉じる「まつした」、開店時刻11時過ぎにはお客さんでいっぱい。とうじそばをお願いした。鴨肉やキノコの入った鍋にそばを投じて鍋汁につけ、お椀に移して、汁をかけて食べる。とうじそばは旧奈川村(現松本市奈川)で発祥したと聞く。鍋、一般家庭では囲炉裏の鍋(時に味噌汁)に投じて食べていたことからとうじそば、と名前の由来を聞いていたが、店員さんの説明も同じだった。美味なり。



蔵の街を散策する。途中、蔵座敷を見学した。上掲した説明板にあるように、この蔵は開智学校を手掛けた立石清重の作品。4人とも建築学を専攻したから、この蔵は見学対象。


 
縄手で見かけた「高橋由一」 


その後、縄手通り、四柱神社参拝と定番コースを経て松本市立博物館へ。


おりがみっく構造の屋根。折り紙のように鋼板を加工して構造的に成立させている。


松本城下のジオラマ


常設展示室(3階)

常設展示を見ての感想。KBさんは「薄いよね」と一言。同感。

**一のことを説明するためには十くらいの知識が欲しい**(下掲書213頁)ぼくたち4人の指導教官は「十を知って一の説明」と説いていた。

展示内容が通り一遍な感は否めないなどと書けば失礼だろう・・・。そうか!この博物館は十を知ってもらうための一を展示しているんだ。


『マナベの「標語」100』真鍋恒博(彰国社2019年)


松本城、開智学校で撮った記念写真は掲載を控えたい。



馬刺し

徒歩で駅近くの「萬来」へ。この居酒屋を予約していた。遠路来松の友人に味わって欲しい馬刺し、山賊焼、地酒を提供している店。

懐かしい研究室時代の思い出話に花が咲き、秋の夜は更けゆく・・・。


 


解き明かされる美と視覚脳の関係(再掲)

2023-10-25 | A 読書日記


『脳は美をいかに感じるか ピカソやモネが見た世界』セミール・ゼキ 著、河内十郎 監訳(日本経済新聞社2006年11月 8刷)

 2007年3月24日の記事に手を加えて再掲する。今読んでいる本を読み終えたら再読するつもり。








『フェルメール全点踏破の旅』朽木ゆり子(集英社新書)


『脳を究める 脳研究最前線』立花隆(朝日新聞社)

①から④の4枚の写真を見ると画家フェルメールの作品を扱った本と脳に関する本、2冊の中身を撮ったものだと思う。作為的にこんなことをすれば誰だってそう思ってしまうだろう。実は①から④の写真は1冊の本の中身。世の中にはこのような作為が案外多いのでは・・・。

**美術作品の生み出す美的体験が脳のどの部位でどのように生じるのかについて、あるいは美術作品の呼び起こす情動的体験の基礎にある神経科学的機構について**論述した本。

ミケランジェロ、セザンヌ、モンドリアン、デュシャン、モネ・・・ とり上げられている多くの芸術家達の作品を脳はどのように見るのか。

著者は神経生物学を専攻する大学教授、視覚脳に関する研究の開拓者だと巻末に紹介されているが、優れた美術評論家でもあることは間違いない。私が好きなフェルメールの作品の魅力を明解に説いている。

この本1冊で脳科学と美学、 両方勉強できる。2冊分の定価(3,500円+税)も納得。


 


まだあった! 朝日村の火の見櫓

2023-10-25 | A 火の見櫓っておもしろい


1486 朝日村古見 3柱1構面梯子63型(*1) 2023.10.23

 22日の午後、スケッチ展に来たE君が教えてくれた。
「古見にはまだ火の見櫓があるよ」
「えっ、どこに?」
持参していた雑記帳に地図を描いてもらった。で、さっそく翌23日に行ってみた。
「あ、本当だ、あった!」

そうか、朝日村にはもともと18基火の見櫓があって2基撤去されたから、現在16基あるということになる。ひぇ~、ずっと全部で17基だと思っていた。だから現在15基だと・・・。




*1 3柱1構面梯子型は柱3本から成る3角形の櫓の1構面が梯子を形成しているタイプ。尚、続く63型は屋根の平面形が6角形、見張り台が3角形であることを示す。朝日村には3柱1構面梯子型がこの火の見櫓を含めて現在11基ある。16基中11基は多い。

梯子桟の数とピッチからこの火の見櫓の見張り台床面の高さはおよそ6mだから、総高さは8.5mくらいだろう。櫓には交叉ブレースが3段あって、上の2段のブレースには等辺山形鋼が、下の段にはリング式ターンバックル付の丸鋼が使われている。


屋根が小さい。表面がつるりんちょな半鐘。木槌を半鐘の中に吊り下げてある。


接合にはリベット、ボルト、溶接が使われている。施工上の都合で使い分けている、と考えるのが妥当だろう。

火の見櫓の脚元に屋外消火栓とホース格納箱。合理的な配置。



 


223枚目~229枚目

2023-10-24 | C 名刺 今日の1枚

 火の見櫓のある風景スケッチ展を開催しているカフェ、BELL WOOD COFFEE LABで名刺をお渡しした方は22日までに7人。

223枚目:KRさんはSNSで繋がっていた方 ギャラリートークにも参加していただいた。
224枚目:TNさん、KRさんと一緒に来ていただいた方
225枚目:SKさんは3年前のスケッチ展にも来ていただいている。絵画教室を開いておられる方
226枚目:鉛筆画家の無量路人さん 名刺に細密に描かれた人物画と風景画「渕から早瀬へ」が印刷されている。
227枚目:高校の同期生NSさんのご主人Kさん
228枚目:IZさん 妹の友人 
229枚目:IZさんの娘さん


 


火の見櫓のある風景スケッチ展② 22日

2023-10-23 | A 火の見櫓のある風景を描く

「素敵ですねぇ」
高校の同期生・TKさんが目の前に座っている。

22日は日曜日。会場のカフェ開店直後に鉄塔女子のFさんが来てくれた。東京電力の鉄塔か中部電力の鉄塔か、送電鉄塔が大好きな彼女は鉄塔の立ち姿を見れば分かるそうだ。彼女の鉄塔写真集でレクチャーを受けたけれど、ぼくには見分けがつきそうにない。

妹の友だちのIZさんが娘さんと、朝日美術館のAKさんが友だちと。午前中から楽しくカフェトークしていた。

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で、昼過ぎTKさんが来てくれた。彼女はまだ現役、高校で英語を教えているとのこと。近況を訊けば読書会に参加しているそうで、中原中也や大岡昇平、立原道造らの名を挙げた。

中原中也は確か角川文庫があったな・・・。この原稿を書くために自室の書棚を探したけれど見つからなかった。数年前、古書店に引き取ってもらった文庫1,100冊の中に入っていたようだ。

大岡昇平、「俘虜記」と「野火」は読んだけれど、あの頃と変わらない爽やかな印象のTさんとの会話にはふさわしくない。立原道造こそ、彼女との会話にふさわしい。良かった、立原道造は好きな詩人(過去ログ)でぼくも少しは知っている。恋人の水戸部アサイ、ヒアシンスハウス、磯崎 新がデザインした立原道造詩碑・・・。

小一時間経っただろうか、TKさんは次の予定があるとのことで芳名帳に名前を記し、カフェを後にしていった。「またお会いしましょう」とあいさつして・・・。

それからしばらくして、小学1年から中学3年まで9年間同じクラスだったEY君が来てくれた。ナイスタイミング。久しぶりにゆっくり話をすることができてうれしかった。

夕方5時、そろそろ帰ろうと思っていたとき、カフェのすぐ近くにお住まいというご夫婦が来店された。熱心にスケッチを見ておられるので声をかけた。

「緑が多くて、いいですね。優しい絵で心が癒されますね」
「ありがとうございます」
「この絵、売ってないの」
「いえ、ご希望の方には販売もしています(*1)。でもこのスケッチは購入予約があるんです。赤いシールはその印です」
「え? みんな貼ってあるじゃない。貼ってないのはあの絵だけ?」
「11点展示していますが、9点が既に・・・」
「もっと早く来ればよかった」

うれしい日曜日だった。


*1 画廊のように売ることを目的とはしていない。


火の見櫓のある風景スケッチ展② 21日

2023-10-22 | A 火の見櫓のある風景を描く


NSさんが使っている便利グッズ

 昨日(21日)は週末、土曜日。何人もの知人、友人、親戚、それから初対面の方にお越しいただいた。

開店時刻10時を10分くらい過ぎてカフェに着くと、既にNSさんがご主人と来場していた。しばらくしてひのみちゃんも来場して、4人で楽しいひと時を過ごした。

たとえば花の絵を描こうとするとき、ある人はまず色に注目するだろう。きれいなピンク色だな、と。また、ある人は形に注目するだろう。花びらがきれいな円形に並んでいるな、というように。

色と形は描画対象のものの主要な属性、そのどちらに先に意識が向くのかは人によって違う。ぼくの描画対象は風景だが、風景を構成している要素の形にまず注目する。だからまず線描で形を捉え、その後にその形に色を付けるという手順になるのだろう。自己分析から得た答えだ。

NSさんは逆ではないか。SNSに投稿されるNSさんの絵を見て、そう思っていた。描画対象の形より色にまず注目して、先に着色、その後で対象に確定的な形を与えているのではないだろうか・・・。

なんとも硬い話を3人の前で始めてしまったが、このことを彼女に訊いてみたいと思っていた。答えはイエスだった。やはりそうでしたか。 

彼女は時にシャガールのような鮮やかな色使いの絵を描き、時に誰に例えよう・・・、そうルオーのような彩度が低く重い絵も描く。その様を見ていて形より色なんだ、と感じていた。

彼女はまず鉛筆でラフな下描きをして、着色する。その後で形を線描しているとのこと。

NSさんのご主人のKさんとは初対面だった。知性豊かな方、ということが風貌に表れていた。Kさんは私のスケッチを分析的に捉え、風景要素の構成などにも言及された。ものの捉え方がぼくと似ていると感じた。

ひのみちゃんは火の見巡りでは今やぼくより積極的で、北海道旅行では小樽の火の見櫓(確か昭和2年に建設された火の見櫓で登録有形文化財への登録を目指した活動が行われている)を見てきているし、静岡では黄色の火の見櫓を見てきている。

ひのみちゃんが絵画にどのくらい関心があるのか、分からないけれど、ぼくのスケッチの主題は火の見櫓だから、初対面のふたりとの会話にすんなり入り込んでいた。彼女のコミュ力、バッチリ。

他の来場者のことも記しておきたいけれど省略する。それぞれ、内容の異なる話題で会話が弾んだとだけ記しておく。この日、芳名カードに記載された名前は11人。空き時間に読もうと持参した文庫は1行も読めなかった。


モデルはひのみちゃん この頃寒いから服装がもっこりしている。


 


火の見櫓のある風景スケッチ展② 19日

2023-10-20 | A 火の見櫓のある風景を描く

 19日 「いつものスタバ」には顔なじみの店員さんが数人いる。午前中に来てくれたHさんもその一人。名前は母音のEで始まるということが付けた名札で分かっていた。なんという名前だろう・・・。記名カードで名前が分かった。若い人の名前はユニーク、初めて目にする名前だった。

ぼくは角田光代が現代語訳した源氏物語を昨年読んだけれど、Hさんも読んだということは聞いていた。全3巻で厚さ14cmにもなる長編を読むのはなかなか大変。それを読んだというのだからHさんは読書が好きだろうと思っていた。訊けばやはり読書は好き、とのことだった。数日前に読み終えたばかりの原田マハの『楽園カンヴァス』をHさんも読んでいた。Hさんはこの小説を読んで、主人公の織絵が勤める倉敷の大原美術館に行ったとのこと。すばらしい。 

小川洋子(過去ログ)、村上春樹(過去ログ)・・・。Hさんが挙げた作家の小説を偶々ぼくも読んでいた。久しぶりに本の話ができてうれしかった。 Hさんが挙げた好きな本を読んでみよう。

午後来てくれたMMさんもスタバの店員さん。MMさんの名前は3年前のスケッチ展の記名カードにもある。前回は私が不在のときの来訪で会うことができなかったから、今回話しができて良かった。ぼくはMMさんが卒業した松本市内の中学の体育館を設計していた。偶然! 「優しい感じの絵ですね」MMさんからもやはりこのような感想を聞いた。

平日だから来訪者は多くないけれど、昼には年上のいとこ、Oさんが遠くから来てくれた。

 18日 スケッチ展後半初日。昼に高校の同級生のEN君が奥さんとふたりで大町から、EN君とクラブが一緒だったというNS君が松本から来てくれた。スケッチについて一通り説明した。

夕方、甘味喫茶お茶の間の店長、HMさんが来てくれた。来年の秋、甘味喫茶お茶の間でスケッチ展をさせていただくことが早くも決まっている。秋景色、冬景色を描こう。


夜、EN君にお礼のメッセージを送ると、返信があった。拙い説明を聞いてちゃんと理解してくれた。EN君、昔も今も賢い。


19日の夜のギャラリートークについては改めて書きたい。

 


火の見櫓講座(講演会)の記録

2023-10-19 | A 火の見櫓っておもしろい

火の見櫓講座(講演会)の記録

①2011.09.03 週末のミニミニ講座@松本市梓川 カフェバロ
②2014.02.16 安曇野まちなかカレッジ  @安曇野市穂高 安曇野市商工会穂高支所
③2014.07.04 週末のミニミニ講座(アップグレード版)@松本市梓川 カフェバロ
④2014.12.07   信州大学のゼミ生有志主催による講座  @松本市北深志 「となりの、」
⑤2015.10.21   建築士会安曇野支部主催研修会  @安曇野市豊科 豊科交流学習センター「きぼう」
⑥2019.12.01 ココブラ信州  @安曇野市穂高 碌山公園研成ホール
⑦2019.12.07 サイエンスカフェ  @北安曇郡池田町 カフェ風のいろ
⑧2020.10.15 火の見櫓講座  @安曇野市豊科 BWCL
⑨2020.11.03 火の見櫓講座  @安曇野市豊科 カフェギャラリーお茶の間
⑩2020.11.20 朝日村社会福祉協議会主催 高齢者ふれあい学習  @朝日村マルチメディアセンター
⑪2022.08.07 小野宿問屋夏季講座  @小野農民研修センター
⑫2023.06.17 火の見櫓講座 研修の一環として  @松本市内の建設関連の某会社
⑬2023.07.28 三会合同研修会  @Mウィング(松本市中央公民館)
⑭2023.10.01 火の見やぐらを語る  @穂高町区公民館
⑮2023.10.19 火の見櫓のある風景に魅せられて @安曇野市豊科 BWCL



「楽園のカンヴァス」を読んだ

2023-10-19 | A 読書日記

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『楽園のカンヴァス』原田マハ(新潮文庫)

 15日、日曜日の午後、スケッチ展を開催しているカフェで来場者が途絶えたとき少しずつ読んでいた『美術の愉しみ方』山梨俊夫(中公新書)を読み終えた。で、カフェの真澄さんが数冊の本を持ってきてくれた。

その中に原田マハさんの『楽園のカンヴァス』があった。カバーの絵画はアンリ・ルソーの「夢」。ルソーの作品で私がまず思い浮かべるのは夜の砂漠に横たわる黒人の女性、隣りにライオンが立っている・・・、そんな「眠るジプシー女」だが、この「夢」も知っている作品だ。早速読み始めた。おもしろい!

16日の月曜日、17日の火曜日、カフェはお休み。で、自宅で読もうと本を借りて帰った。

ルソーには「夢」と極めてよく似た構図の別の作品「夢をみた」があるという設定。「夢をみた」の存在は世に全く知られていない・・・。スイスの富豪のコレクターから招かれてその作品の真贋をふたりの美術史研究者が鑑定するというのがストーリーの骨格。

作者の原田さんはカバー折り返しに記載されているプロフィールによると、1962年東京生まれ。関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術科卒業。森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館勤務を経て作家デビューしたという方。このような経歴の作家が描く美術ミステリーの本作、虚実織り交ぜたストーリーにすっかり魅せられた。海外作品の翻訳ではないかと思わせるような雰囲気のある文章。

16日の朝、この本をTSUTAYAで買い求めた。読み終えたら手元に置いておきたいと思ったので。それから朝カフェ読書@スタバ。

「夢をみた」の真贋鑑定のためにスイスの富豪から招かれたのは、大原美術館の監視員、織江とニューヨーク近代美術館のアシスタント・キュレーター、ティム・ブラウン。

16日、17日は何かと用事があったが、読書に出来るだけ時間を割いて、18日の朝には最終章「再会」を残すのみとなっていた。カフェで読もうと思ったが、結末が気になって出かける前に読み終えてしまった。

**北斎の絵について、この歴史小説の登場人物に自身の捉え方や評価について語らせているだろう。読み進むのが楽しみだ。**とある作品を読み始めたとき、書いたが、そのような思い、期待をこの『楽園のカンヴァス』にも寄せた。原田さんは私の期待をはるかに超える作品に仕立て上げてくれていた。

ミステリーだから、ネタバレしないように書かなければならない。この物語を私は恋愛小説として読んだ。鑑定依頼を受けたふたりの研究者、どちらも相手を意識し、特にティム・ブラウンは織江に次第に惹かれていく・・・。最終章を読んでいて、ストーリーの実に巧みな展開に感動の涙、涙。

ルソーの「夢をみた」に関わるキーワードは画家のピカソと情熱。最後の最後、このキーワード、PICASSOとPASSIONが驚きの方法で示される。こういうの好きだなぁ。

怖るべし原田マハ。

原田ハマと間違えそうになるが、マハという名前はゴヤの有名な作品「裸体のマハ」に依っているのではないか、といわれることもあるようだ。

『楽園のカンヴァス』は今年読んだ本のベスト3に入る作品だ、間違いなく。


 


「美術の愉しみ方」を読んだ

2023-10-17 | A 読書日記


『美術の愉しみ方』山梨俊夫(中公新書2023年)を読んだ。

**本書は、名画や美術史の解説を目的にしていない。普段美術にあまり縁のない人や、美術は面白そうだけど近づき方が判らないと思っている人が愉しむきっかけになればとの思いをもって著わされている。**(ⅰ)「はじめに」で著者はこのように書いている。そう、本書は美術鑑賞の手引き書。

本書は「関心を開く」「好きを見つける」「読む」「比べる」「敷居をまたぐ」「参加する」「判る判らない」という七つのキーワードで美術作品へのアプローチ法を提示し、それらの内容について説いている。掲載されているカラー図版が理解を助ける。

美術を愉しむ方法は人それぞれ。予備知識は鑑賞の妨げになる、と考える人もいるだろう。白紙の状態で作品の前に立つのが好ましい、と。でも、このような入門書を読むことは鑑賞の手引きにこそなれ妨げにはならないだろう、と私は思う。

現在火の見櫓のある風景スケッチ展を開催していることもあり、年内は美術関連本を読もうと思っている。で、『楽園のカンヴァス』原田マハ(新潮文庫)を読み始めた。おもしろい!