いいですねぇ 鳥は自由で
■ 細川たかしのヒット曲「心のこり」の歌詞に 一度はなれた 心は二度と もどらないのよ もとには というくだりがある。リリー(浅丘ルリ子)のその後が気になって寅さんシリーズの第15作、「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」を観た。リリーは離婚して旅回りの歌手に戻っていた。この作品を観て、寅さんとリリーの心はずいぶん近いと思った。
出勤途中で失踪、旅に出た中年サラリーマンの兵頭(船越英二)と八戸の駅で出合ったという寅さんはその後一緒に旅を続ける。エリートサラリーマンだって仕事に疲れ、旅に出たいと思うことだってあるだろう。旅の途中、兵頭は間近にカモメを見ながら寅さんに言う、「いいですねぇ 鳥は自由で」と。
青函連絡船で函館に渡ったふたり。屋台かな、ラーメン屋で寅さんばったりリリーと再会! よかった。この場面でうれし涙が出た。「寅さん」観ても泣いてしまうから映画は大概ひとりで観る。
その後三人は小樽へ。小樽には兵頭の初恋の人・信子(岩崎加根子)がいる。彼の旅の目的は信子を訪ねることだった。夫と死別した信子は喫茶店を切り盛りしていると聞いた兵頭はその喫茶店を訪ねていく。店の外で彼女と二言三言言葉を交わしただけで去り行く兵頭。この場面にも涙。
旅を続ける三人、ささいなことが発端で寅さんとリリーは大喧嘩。
柴又のとらやに帰ってきてからも喧嘩別れした原因が自分にあると気を病む寅さん。さくらやおいちゃんたち家族の前でそのことを告白しているところへリリーが訪ねてきて・・・。偶然にも寅さんの話しを聞いたリリー。ふたりは仲直り。柴又で噂になるほどアツアツなふたり。
ある日、旅から帰って来た兵頭がとらやを訪ねてくる。この時の手土産のメロンが原因の「メロン騒動」勃発。居合わせたリリーに大人げないとこっぴどく叱られる寅さん。この後、本作のタイトルの相合い傘シーンが出てくる。雨の中、寅さんは番傘を差してリリーを迎えに柴又駅へ。で、相合い傘。1つの柄をふたりで持つところだけトリミング、このシーンが好い。やはりリリーは他のマドンナとは違う特別な存在だ。
この作品、僕には涙映画だった。