透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「15 男はつらいよ 寅次郎相合い傘」

2021-07-04 | E 週末には映画を観よう

いいですねぇ 鳥は自由で

 細川たかしのヒット曲「心のこり」の歌詞に 一度はなれた 心は二度と もどらないのよ もとには というくだりがある。リリー(浅丘ルリ子)のその後が気になって寅さんシリーズの第15作、「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」を観た。リリーは離婚して旅回りの歌手に戻っていた。この作品を観て、寅さんとリリーの心はずいぶん近いと思った。

出勤途中で失踪、旅に出た中年サラリーマンの兵頭(船越英二)と八戸の駅で出合ったという寅さんはその後一緒に旅を続ける。エリートサラリーマンだって仕事に疲れ、旅に出たいと思うことだってあるだろう。旅の途中、兵頭は間近にカモメを見ながら寅さんに言う、「いいですねぇ 鳥は自由で」と。

青函連絡船で函館に渡ったふたり。屋台かな、ラーメン屋で寅さんばったりリリーと再会! よかった。この場面でうれし涙が出た。「寅さん」観ても泣いてしまうから映画は大概ひとりで観る。

その後三人は小樽へ。小樽には兵頭の初恋の人・信子(岩崎加根子)がいる。彼の旅の目的は信子を訪ねることだった。夫と死別した信子は喫茶店を切り盛りしていると聞いた兵頭はその喫茶店を訪ねていく。店の外で彼女と二言三言言葉を交わしただけで去り行く兵頭。この場面にも涙。

旅を続ける三人、ささいなことが発端で寅さんとリリーは大喧嘩。

柴又のとらやに帰ってきてからも喧嘩別れした原因が自分にあると気を病む寅さん。さくらやおいちゃんたち家族の前でそのことを告白しているところへリリーが訪ねてきて・・・。偶然にも寅さんの話しを聞いたリリー。ふたりは仲直り。柴又で噂になるほどアツアツなふたり。

ある日、旅から帰って来た兵頭がとらやを訪ねてくる。この時の手土産のメロンが原因の「メロン騒動」勃発。居合わせたリリーに大人げないとこっぴどく叱られる寅さん。この後、本作のタイトルの相合い傘シーンが出てくる。雨の中、寅さんは番傘を差してリリーを迎えに柴又駅へ。で、相合い傘。1つの柄をふたりで持つところだけトリミング、このシーンが好い。やはりリリーは他のマドンナとは違う特別な存在だ。

この作品、僕には涙映画だった。


 


消えゆく火の見櫓

2021-07-04 | A 火の見櫓っておもしろい

 「消えゆく火の見櫓」とは何とも切ないタイトルだが、実態なのだから仕方がない。


(再)松本市高宮北 4脚8〇444型 撮影日2021.07.04 

松本市高山北、国道19号沿いに立っているこの火の見櫓は昭和5年に建設され、松本では最も古い部類の1基だが、近々撤去されると聞いていた。撤去されてしまう前にもう一度見ておこうと思い、今朝(4日)出かけてきた。



櫓が下方に直線的に広がっていて、末広がりになっていない。柱材に等辺山形鋼が使われている。丸鋼や平鋼を曲げることは容易だろうが、山形鋼を滑らかにカーブさせる技術が建設当時にはまだ無かったのかも知れない。このようなことは文献を探し、じっくり調べれば分かるだろう。

梯子段の間隔の寸法と段数によって見張り台の床面のおよその高さが分かる。この方法で13メートルくらいだと分かった。





屋根と見張り台を見上げる。見張り台の床に方杖を突いている火の見櫓は珍しくもないが、屋根に方杖を突いているのは珍しい。現存する火の見櫓は昭和30年代に建設されたものが大半だが、それらにはこの火の見櫓のように方杖を突いているものはまず無いだろう。平鋼を交叉させて設置した例も他に見た記憶がない。手すり子の飾りは必要なものではないが、丁寧なつくりだ。仕事と割り切って出来るものではない。職人気質ということばがピッタリの仕事だ。手すり端部の処理も然り。





踊り場には半鐘があるが、見張り台の半鐘は既に無い。見張り台に吊り下げてあった半鐘はもともとお寺のものだったようだと、偶々居合わせた分団長(*1)から伺った。『あ、火の見櫓!』で、半鐘について、**よく響いて音が遠くまで伝わる小さな梵鐘、小鐘を火の見櫓でも使おうということになったのではないかと思います。半鐘は梵鐘と似ているというより元々同じものでしょう。**(59頁)と書いたが、全てがこの推測通りかどうか分からないが、梵鐘の転用が実際にあった、ということだろう。この火の見櫓の撤去された半鐘について、取材する機会があるかも知れない。



 

構造材は全てリベット接合されている。ただし柱脚は例外的にボルト接合。なぜ? 分団長に、この火の見櫓はもともと詰所の左隣に立っていたが、水路改修工事に際し、現在の場所に移設されたと伺った。なるほど、そういうことだったのか。

残念だが90年の長きにわたり地域を見守り続けて来たこの火の見櫓は今月(7月)撤去される・・・。


*1 名刺156


155、156

2021-07-04 | C 名刺 今日の1枚

 「名刺 今日の1枚」155枚目はしばらく前(5月21日)の1枚。某メディアの方から連絡をいただき、火の見櫓に関する取材を受けた際にお渡しした。

156名目は今日、4日の1枚。松本市消防団の分団長にお渡しした。