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透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

268 池田町渋田見の火の見櫓

2012-05-29 | g 火の見櫓観察記

 
268  北安曇郡池田町渋田見の火の見櫓 撮影120528







 池田町の火の見櫓は構成部材が細いという印象がある。実際はどうだろう・・・。寸法を調べてみる必要があるが、平日は無理。数分で写真を撮るのが精いっぱい。休日に改めて出かけることにする。

火の見櫓観察のポイント(改訂120529)を載せる。


1 火の見櫓の立地、環境

10 周辺の状況・環境、観察時の季節や天候、時間など 
11 消防団詰所(屯所)、消防倉庫の有無、火の見櫓との位置関係と両者の形や色などのバランス
12 観察者の主観的な印象
13 その他


2 火の見櫓の全体の様子 

20 形式:1本柱、梯子型(2本柱)、櫓型(3本柱、4本柱 その他の型)
21 櫓の高さ、脚の長さ、脚間長さ
22 プロポーション:上方への絞り方(櫓が描く曲線の様子) 総高/脚間長さ、逓減率
23 屋根と見張り台の形、大きさ及びバランス
24 色
25 発錆状況
26 その他

3 火の見櫓を構成する各部の様子

30 屋根の有無 屋根の形(平面形と立体形)と飾り(避雷針と飾り、蕨手、その他)
31 半鐘の有無 半鐘の設置位置、半鐘の形(梵鐘形(表面の様子)、ドラ形) 半鐘用の小屋根の有無 形
32 見張り台の有無 見張り台の平面形、床の構成、手すりのデザイン
33 踊り場の有無 踊り場の平面形、床の構成、手すりのデザイン
34 櫓の平面形と立体形、構成部材の種類(鋼材、木材、石、コンクリート、その他)、寸法、接合方法(鋼材:ボルト、リベット、溶接)、ブレース(筋かい)の材料と構成  
35 梯子の設置の仕方(櫓の内部、外部)構成部材 手すりの有無など
36 脚部のデザイン 単脚、複合脚(トラスの組み方やアーチの有無 カーブの様子) 
37 基礎:独立基礎、一体型(塊状)基礎
38 消防信号表示板の有無 銘版の有無と記載内容(製造所名、製造年、寄贈者名など)
39 スピーカー、サイレン、アンテナ、照明、ウインチ、ホース掛けなどの有無  その他


4 その他 


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― 見張り台に消防団員!

2012-05-23 | g 火の見櫓観察記



朝日村西洗馬にて  撮影 120520

 朝日村のカフェ・シュトラッセからの帰路、消防団員が火の見櫓に登っているところを偶然見かけた。消火訓練で使ったホースを乾燥させるためにウインチで吊り上げて見張り台の手すりのフックに掛けているところだった。

今や火の見櫓の多くは本来の機能ではなく、このように消火ホース乾燥塔か、防災無線スピーカー設置塔として生きながらえている。これも時代の流れ、仕方がない。立ち続けているだけでいい・・・。


 

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「空間の日本文化」

2012-05-19 | g 読書日記



『空間の日本文化』オギュスタン・ベルク 宮原信 訳/ちくま学芸文庫

 日本の空間を論じた本は書店で目にする度に手に取ってざっと目を通し、面白そうなものは買い求めて読んできたが、この本については全く知らなかった。文庫の1刷発行が1994年、単行本の刊行が1985年だから長年書棚に並んでいただろうに・・・。

先日、丸善で買い求めた数冊の本のうちの1冊。

「Ⅰ 環境に置かれた主体 空間の精神的組織化」
「Ⅱ わがものとなった列島 空間の技術的組織化」 
「Ⅲ 国土の一体化 空間の社会的組織化」 

各章のタイトルからしてなかなか難しいが、Ⅱ章の「遠近法の拒否」「街路は住民のものである」「内側を包む」「「おく」に向かって進む」「場所の発生と境界域性」などは理解しやすい内容だろう。

本書でまず論じられるのは日本語の構造。どの程度理解できるか分からないが、とにかく読み進むことにする。

**フランス日本学の若き第一人者による画期的な日本論。日本語の構造、心のありよう、家族・企業などの組織原理、都市空間、土地利用など、日本文化特有の有機的な空間性を多面的に検証し、統一的な視座を提出する。外部からの光により浮き彫りにされる日本的空間の全体像。**(本書カバーの紹介文より)

たまには読み応えのある本をじっくり読むのも良いだろう・・・。


 

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267 明科の火の見櫓

2012-05-17 | g 火の見櫓観察記

 
267

詰所のすぐ後ろを国道19号線が通っている。







1 櫓のプロポーション ★★★★★
2 屋根・見張り台の美しさ ★★★★★ 
3 脚の美しさ ★★★★★ 

久しぶりの評価は少し甘いかもしれない。でも減点すべき点は特に無い。あえて挙げれば屋根面が錆びていることだ。スピーカーが付いていないことも好ましい。

以前から気になっていた安曇野市明科(旧明科町)、国道19号線沿いに立っている火の見櫓を今日(17日)ようやく観察することができた。

4角形の櫓に4角形の屋根(立体的な形で捉えると方形)、円形の見張り台という組み合わせ。全体のプロポーションが良く、美しい。脚部のトラス、小振りのアーチ、なだらかなカーブもなかなか良い。

銘板から地元の鉄工場で造られたことと昭和30年9月の建設ということが分かる。


 

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266 変身

2012-05-16 | g 火の見櫓観察記

 「変身」というタイトルで思い浮かべるのは・・・、仮面ライダー?それともカフカ?

どちらも違う。 今回は火の見櫓から消火ホース塔への変身を取り上げる。





 
266 

大町市の隣、池田町の役場の敷地内に立っている消火ホース塔。役場へは所用で出かけたことが何回もあるが、すぐ後ろの高木に塔が同化していて今までこの塔には気がつかなかた・・・。これは火の見櫓から消火ホース塔への変身だと確信できるわけではないが、たぶんそうだろう・・・。

火の見櫓の脚部だけを残し、そこに踊り場をつけて鋼管の消火ホース塔を吊り込んで設置したものと推測する。既に何回も書いているが、火の見櫓は本来の機能を失い、消火ホース塔や防災無線用スピーカーの設置塔として生きながらえているものが多い。でもこのような変身物は初めて見た。

完全に撤去されてしまうより、このように脚部だけでも残してもらえればいい、とも言い切れず・・・。気持ちは複雑だ。


 

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「ロボットはなぜ生き物に似てしまうのか」

2012-05-13 | g 読書日記



 タイトルに「なぜ」がついている本はつい手に取ってしまう。

先日丸善でじっくり本を探すという幸せなひと時を過ごした。その時買い求めた数冊のうちの1冊がこの本、『ロボットはなぜ生き物に似てしまうのか』 鈴森康一/講談社ブルーバックス。

著者は書名の問いに対する答えを本書の中で何回か書いている。**私たちは確かに、日々自分たちの頭で考え抜き、知恵を振り絞っている。だが、行きついたところには、常に神様のデザインが先回りしている。生き物のからだもロボットのからだも、力学的・幾何学的な制約条件の範囲でしか成り立たない。その制約条件下で最適な設計を追及して行く限り、ロボットは生き物が待ち構える同じゴールに向かわざるを得ないのだ。**(222頁)

自然は「力学的・幾何学的な制約条件下での最適解」を示している。

本書には設計に関する興味深い指摘がいくつもある。技術者の設計手法と神様の設計手法とは全く異なるというのもそのひとつ。

「形の最適化」で技術者が採る方法は **エンジニアが行う最適形状設計では、全体の変形や力の情報を1つのコンピュータにすべて集め、計算を繰り返しながら、望みの特性を得られるように形状を変えてゆく。**(176頁) となる。

この方法は建築構造設計の分野でも行われていて、佐々木睦朗さんが『FLUX STRUCTURE フラックス・ストラクチャー』TOTO出版でその高度な解析法を紹介している。


最適化手法による形態解析過程(「FLUX STRUCTURE」 124頁)

では、コンピュータを持たない神様は、例えばヒトの大腿骨の形状をどのような設計手法で最適化し、創造したのか?

これを具体的な問いに置き換えると**精緻な計算の裏付けなしで、力がかかり過ぎている箇所の寸法を大きくし、さほど力がかかっていない箇所の寸法を削る最適化が行えるのはいったいなぜか?**(177頁)ということになる。

本書に書かれている説明が興味深い。少し長くなるが本書の要点でもあるので引用する。

**エンジニアが構造物全体の情報をコンピュータで処理して最適形状を導いてゆくのに対し、生き物の最適形状設計は局所的な情報に基づいて行われる。各造骨細胞は、直接的には骨全体の情報を持っておらず、自分自身とその周辺の情報のみ(骨の圧電効果によって発生する電流の情報のみ)に基づいて、造骨の速度を決めているのである。各造骨細胞があくまで分散的な処理に基づいて行動する結果、骨全体が自然に最適な形状へと進化するのは全く驚くべきことだ。**(178頁)

ところで本書はロボットと生き物との構造的・機構的な比較検討を工学的な視点から行っているので、植物は出てこないが、建築構造という視点で樹木を見ていると興味深い。とても建築的には実現できそうにない「不安定な」形態をしてる。

樹木が「全体のバランス」を察知し、生長してゆくのは、原理的には骨の成長と同じ方法によるのかもしれない。でも不思議だ。それに重力や風圧力、積雪荷重に耐える強度をどのように確保しているのだろう・・・。


竹は節という名前のダイヤフラムのところから枝を出す 

また、技術者の設計の最適解は自然が既に用意してあるということについて、思い浮かぶのは竹だ。

鉄骨構造の柱と梁のジョイント部分にはダイヤフラムを設けるが、竹は節という名前のダイヤフラムのところから枝(持ち出し梁)を出している!自然は優秀な構造設計者だ。

著者は本書の最後に**私たちロボット設計者は、引き続き神様のデザインに学ばせていただくという謙虚な姿勢を持ちつつも、生き物とは異なる、ロボット独自の進むべき方向も考えていくべきであろう。**と書いている。

全体の論理構成が分かりやすく、読み易い本だ。




類書 『進化の設計』佐貫亦男/講談社学術文庫

 

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関越道のバス事故に関する新聞記事を読んだ

2012-05-12 | g 新聞で学び考える〇

 群馬県藤岡市の関越自動車道で4月29日の早朝に起きた高速ツアーバスの事故については既に書いた。今日(12日)改めてこの事故関連の新聞記事を読んだ。


読売新聞



産経新聞はガードレールと防音壁の隙間について「被害拡大」と見出しにした記事を載せている。



毎日新聞もこのことを取り上げているが、見出しを「被害拡大か」として、隙間が大事故の惹起要因だと断定的に書いてはいない。


毎日新聞

運転手が事故の前日に飲酒したことなど、事故とは無関係だと思うのだが、記事にしている。この事故で7人もの乗客が亡くなった直接的な原因は防音壁が車体に突き刺さったことだ。防音壁の内側にガードレールが設置されていれば、防音壁に突き刺さるようなことにはならなかったはずだ。

ガードレールがバスを防音壁の小口に誘導する結果となったということが記事から読みとれる。ガードレールがガイドレールになったわけだが、その後各紙ともガードレールと防音壁の隙間のことについて書いた記事は見当たらなかった。道路の構造に問題があることを記事にしておきながら、その後このことについてフォローしていないのだ。

今回の事故について、原因を全て運転手やバス会社に帰着させて、「終わり」にしてはならない。事故について科学的な検証をきちんとして問題の本質に迫る必要性を新聞は書いて欲しい。


 

 

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続 朝日村の石神石仏

2012-05-12 | g 道祖神〇



■ 朝日村西洗馬の荒井集落の入り口に祀られている道祖神と不動明王像 



道祖神 抱肩握手像  弘化二巳三月日(1845年)

裏面に帯代五両と刻字してある。以前紹介した道祖神。


不動明王像 明治二十三年(1890年)

「不動明王は大日如来の化身といわれ、悪魔を降伏させるため恐ろしい姿をし、仏道に従わないものを無理やりにでも導き救済する仏様である。」(説明板より)




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― 似て非なるもの

2012-05-10 | g 火の見櫓観察記






撮影 120504

 松本駅構内に立っているこの鉄塔の用途は何だろう・・・。駅構内の様子を把握するための監視塔の類かな。

火の見櫓と同様に梯子がついていて、塔のてっぺんまで昇ることができるようになっている。中間に踊り場がある。塔の構成部材も火の見櫓同様、アングル材だ。部材相互をボルトで接合している。

塔の印象は火の見櫓とは随分違う。火の見櫓よりスレンダーでモダンだ。てっぺん、火の見櫓の見張り台に相当する部分に屋根がない。これはどうもしっくりこない。

次に脚部に注目。櫓が唐突に終わっている。火の見櫓と違って脚部としてのデザインが施されていない。このような、火の見櫓とは似て非なるものを観察すると、火の見櫓のデザインの特徴がはっきりする。

やはり火の見櫓はいいなぁ。


 
松本市波田の火の見櫓  比較の対象として。


 

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「空海入門」

2012-05-08 | g 読書日記



 菩提寺(真言宗の寺)で大般若法要が行われた。毎年5月6日に行われている法要で、大般若600巻の転読を12人の僧侶が45分程で行う。私も檀信徒総代として朝から本堂境内の掃除や法要の準備など裏方仕事を務めた。

旅行で立ち寄る神社が祀っているのはどんな神様なのか、お寺の本尊がどんな仏像なのか、案外知らないのでは。恥ずかしながら私はほとんど知らない。しばらく前にも書いたが、この機会に真言宗の開祖・空海について少し学ぼうと思っている。

ということで先日買い求めた『空海入門』加藤精一/角川ソフィア文庫を読み始めた。3章から成る本書、第1章に空海の生涯がざっくりと約70頁にまとめられている。昨日、この章を読み終えた。

空海は宝亀5年(774年)、現在の香川県善通寺市の豪族、佐伯家の3男として誕生する。幼少のころから漢学を学び、18歳になって大学に学ぶも教育内容に満足せず中退。約束されていた高位高官の地位を得ず、仏道修行の道に入る。

やがて留学生として遣唐船で入唐。同時に最澄も別の船で唐に入った。このとき4船のうち2船が沈没、空海と最澄の乗った船が無事に唐についていなければ、平安初期以後のわが国の宗教界はずいぶん変わっていたに違いないと著者は書いている。 確かにそうだろう、と思う。やはり歴史に「たら、れば」は付き物だ。

第2章は「著作と思想」。**空海は、言語とか文章を極めて重視し、言語や文章を離れては、いかなる教えも人生も成り立たないという強い信念を持っている。**(74頁) 空海は思索の成果を数多くの著作に残した。それらの基本の「き」を本章で押さえたい。

第3章は「空海と現代」。

これから第2章を読む。類書を何冊か読めば、わが国最大の宗教家、というか思想家とも評される弘法大師空海の輪郭がおぼろげながら浮かびあがってくるだろう。総代を務める3年間で、そうなれば・・・。


メモ:弘法も筆も誤りの弘法とは空海のこと。

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「プロメテウスの罠」

2012-05-06 | g 読書日記



 朝日新聞で2011年10月に始まった連載「プロメテウスの罠」が書籍化された。『プロメテウスの罠 明かされなかった福島原発事故の真実』朝日新聞特別取材班/Gakken  

プロメテウスはギリシャ神話に登場する神様で人類に火を与えたという。その神様が罠を仕掛けてあった、というのだろうか・・・。誰に? 東電に?政府に?国民に? どうもこのタイトルはしっくりこないし、気負いを感じなくもない。

○どこへ逃げれば安全か、誰も教えてはくれなかった
○無人となったふるさとへ、再び帰れる日は来るのか
○住民は本当の数値が知りたかった
○全く生かされなかったSPEEDIのシステム
○異常な放射能数値を示すさなかの観測中止令
○国会議員の登場で状況一変
○広島・長崎の内部被曝の悲劇が繰り返される可能性
○チェルノブイリ周辺では、今も続く子どもの甲状腺異常
○態勢の整わない放射能の検査システム
○「撤退を食い止めるには東電に乗り込むしかない」
○首相官邸のいちばん長い日
○決死隊をつくってでも

各章の小見出しをこのように挙げれば本書の内容はおよそ見当がつくだろう。

原発の事故で生まれ育ったふるさとを離れ、今なお避難生活を強いられている福島の人たち。いつ帰れるのかも分からない、これほどつらく悲しいことがあるだろうか・・・。


 

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関越自動車道のツアーバス事故に思う

2012-05-05 | g あれこれ考える〇

 時間正確に運行すると列車どうしが衝突するようなダイヤが組まれていたが、常に時間通りに運行されないというどこかの国、幸いにもダイヤの欠陥に気が付くまでの間に事故は起きなかった・・・。以前こんな話を何かで読んだ記憶がある。

また、福知山線の事故について、「技術者は転覆限界速度を求めた上で、もともと半径600mで設計していたが経営者は科学的考察なしに線路の曲率半径を600mから304mに変更することを決定した。彼らは、物理限界とは何かを知らなかった。」という指摘を以前『FUKUSHIMAレポート』で読んだ。この事故の時、運転手の過失だけでなく、この線路の曲率半径の変更(ある意味事故の必然性)について、マスコミがきちんと報じたのかどうか・・・。

さて、先日群馬県藤岡市の関越自動車道で起きたツアーバスの事故について。



乗客7人が亡くなった痛ましい大事故だが、運転手の過失やバス会社の管理体制、ツアーの過当競争などのことばかりがマスコミで取り上げられ、道路の構造を問題視する記事があまりない(写真は信濃毎日新聞の5月4日、5日付朝刊の1面に載った同事故に関する記事の見出し)。

事故の写真を見ると、防音壁がバスの前からかなり後ろまで突き刺さっている。そう、バスは防音壁にぶつかったというより、突き刺さったという状態だ。

なぜバスが防音壁に突き刺さったのか。これは道路の構造上の問題に起因するのではないか、そう直感した。この点について知りたくて、ネット検索して、以下のような記事を見つけた。

**道路を管理する東日本高速道路(東京)は一日、現場で近く再発防止策の工事を実施する方針を明らかにした。バスがガードレールと防音壁のすき間付近から突っ込み、車体が大きく裂けて死傷者を増やしたとの指摘があるため、すき間をつなげる工事をする見通し。*東京新聞

**国交省は98年、高速道路でこうした隙間ができないよう求める通知を出したが、新設の設備に限っていたため、80年代に整備された事故現場は対象外だった。今回の事故では隙間があったことで被害が大きくなった可能性もあり、同省は対策が必要かどうか検討を始めた。**毎日新聞

**バスが衝突した防音壁と直前に設置されたガードレールの間に20~30センチの隙間があったことが30日、捜査関係者への取材で分かった。この隙間にバスがはまり込むように衝突、防音壁がバスに深く刺さったとみられ、群馬県警捜査本部は隙間が被害を拡大したとみて調べている。**産経新聞 (太文字化は筆者による)

事故の直後には何紙かが、このように道路の構造を問題視する記事を載せたようだが、その後は運転手の過失、バス会社の管理体制、ツアーの過当競争 これらの問題点のみ取り上げているのではないか(本当はこの事故に関する記事について主要紙を全てチェックして書かなければならないが)。これらを追及するのは当然。それと同時に道路の構造上の「欠陥」について、科学的なというか、技術的な視点からきっちり追及して欲しい。

ガードレールが防音壁と重なるように内側に設置されていれば、このような大事故にはならなかったのではないか。少なくとも防音壁に突き刺さるようなことにはならなかったはずだ。

「ガードレール 突き刺さる」の2語検索で、岡山県の国道で乗用車がガードレールに突き刺さり、小学生の兄妹が死亡するという事故がヒットした。数年前の痛ましい事故だ。欧米では、ガードレールの上端の高さを次第に低くして路面に埋めるというのが端部の一般的な処理の仕方だという。車がガードレールに突き刺さらないような配慮だ。

この国では人は運転ミスをするということを前提とした道路の安全設計、フェイルセイフな配慮に欠けるのではないか。いやそもそも道路の安全性について科学的な検討を充分しているのだろうか・・。交通事故に限らず、マスコミには事故の原因を、敢えて安易にと書くが、個人の問題に帰着させてしまう傾向がありはしないか。それでは問題の本質に迫れないだろう。


 

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265 火の見櫓巡りは続く(加筆)

2012-05-05 | g 火の見櫓観察記

① 
265  長野市小柴見の火の見櫓


 安曇野のヤグラー・のぶさん紹介の火の見櫓を見に長野へ。3角形の櫓に6角形の屋根、円形の見張り台というオーソドックスな火の見櫓。アングル片掛けのブレースを受けるガセットプレートが大きくて目立つ。隣の詰所は壁ブレースむき出し。CB造の平屋に2階を後から増築したのかな? もっとしっかり観察してくるべきだった。









櫓の脚部に注目。石柱にボルトを貫通させて、脚材の山形鋼にひっかけて留めている(写真④の後方の石柱に注目)。これと同様の方法を大町市美麻の木製の火の見櫓(←過去ログ)でも見ている(写真⑥)が、珍しいと思う。

石柱に「昭和十六年建設之」と彫ってある(写真⑤)。 

前稿に書いたように長野へは早朝、電車で出かけた。姨捨駅を過ぎて善光寺平に入っても車窓から火の見櫓が何基か見えた。いつかまた出かけよう。

まだまだ火の見櫓巡りは続く・・・。


木製の火の見櫓の脚部@大町市美麻(旧美麻村)


 

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― 火の見に惹かれて善光寺

2012-05-04 | g 火の見櫓のある風景を撮る〇





春のフォトアルバム 火の見櫓のある風景 撮影120504

 大型連休の後半2日目、松本6時19分発の普通列車で長野へ。7時28分、定刻に長野着。目的の火の見櫓(次稿で紹介予定)を観察してから善光寺へ。牛に引かれて善光寺、ではなく火の見に惹かれて善光寺だ。

山門(三門)が一般公開されていたので楼上に昇る。山門内部にある説明文をメモしてきたので載せておく。「楼門御建立勘定帳」によると寛延三年に竣工した。昭和40年に重要文化財の指定を受けた。平成14年から20年に亘る大修理で桧皮葺きをとち葺きに復し、箱棟の形式も復した。総工事費約8億8千万。 

大勢の参拝客が参道を行き来しているのが見える。仁王門の隣に火の見櫓が立っている。楼上に昇ったのはこの風景が見たかったから。


 

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動的平衡

2012-05-03 | g 読書日記

 動的平衡とはいかなる概念か。

分子生物学が専門の福岡伸一さんが内田樹さんとの対談の中で**動的平衡とは、それを構成する要素が、絶え間なく消長、交換、変化しているにもかかわらず、全体として一定のバランス、つまり、恒常性が保たれている系(システム)です。**(17頁)と説明している。

この説明で思い出すのが方丈記の有名な書き出しだ。



**ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとゞまりたるためしなし。**(岩波文庫 9頁) 平安時代、じゃなかった鎌倉時代の初期に鴨長明は既に河の流れに動的平衡を認めていたのだ。

**自分の体は自分のものだと思っていても、自分の体は自分のものではない。半年もたてば、自分の体を構成している原子はすっかり食べたものと入れ替わっています。(中略)ですから、「久しぶりですね。以前とお変わりないですね」と言っても、あなたは実は「お変わりありまくり」なのです。(笑)**(『せいめいのはなし』新潮社 17頁)と福岡さん。これは河の流れと本質的に同じ。

福岡さんは同書で建築のメタボリズムという60年代の運動にも触れている。メタボリズムとは前述の動的平衡の概念説明に倣うと、建築を構成する要素は経年変化するが建築全体としては恒常性が保たれているようなシステムを構築する理論と実践だった。生命現象のアナロジーが建築でできないかと試行錯誤したわけだ。

メタボリズムを具現化した代表的なというか、唯一といってもいい建築作品が黒川紀章さんの「中銀カプセルタワービル」だ。このビルのカプセル(下の写真の丸窓付きのボックス)は古くなれば新しいものに交換して、ビル全体として性能を保持し続けるというアイデアだったのだが、実際にはそうならなかった。新陳代謝しなかった、動的平衡が保てなかった。で、取り壊しが決まっている(いつ取り壊されるのだろう・・・)。



ところで、民家は障子を貼り変え、畳表を更新し、屋根の茅が古くなれば葺き替え、柱の根元が腐れば根継ぎをするというように、構成要素を更新して動的平衡を保つシステムだった。

さて、そろそろ本稿のオトシドコロを考えないと・・・。

その民家が消えつつある。民家は絶滅危惧建築だ。中銀カプセルタワービルでは動的平衡が保てなかった。だが現代建築においても民家のような更新システムを確立しなくてはならない。そう、メタボリズムをもう一度!だ。もはや「造っては壊す」という高度成長期のいけいけどんどん的な発想では地球環境の保全も脱原発もできないから。

そう、これが本稿の結論。

そのためには建築に限らず、例えば家電製品でも「壊れたら買い換える」から「壊れても修理して使い続ける」というライフスタイルに変えないと、それでも成り立つ成熟した経済に移行させていかないと・・・。

ああ、いつものことながら行方定めぬ波枕的文章。 ♪今日は今津か長浜か・・・。


 

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