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透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「らんまん」蔵の水切り瓦

2023-06-27 | g 蔵観察・蔵考〇

 朝ドラ「らんまん」。今、万太郎は寿恵子、竹雄と共に高知県は佐川に里帰りしている。

高知の蔵の外壁には「水切り瓦」が付いている(*1)。降雨時、外壁をを伝わる雨滴を断ち切り、壁の土佐漆喰を保護するための工夫だ。「らんまん」で時々映る万太郎の実家・峰屋の蔵にも水切り瓦が付いている。その様子を見ると民家巡りをしていた20代のころを思い出す。

①は高知県安芸市内で撮った蔵の写真。記録によると撮影したのは1980年の4月1日。この時は四国で民家巡りをした。有名な安芸市の野良時計もその時にも見ている(写真②)。


高知県安芸市にて 撮影1980.04.01 


高知県安芸市の野良時計 撮影1980.04.01


野良時計のすぐ近くの火の見櫓(ストリートビューより)

いつ頃建てられたのか分からないが、見た目がそれ程古くないことから、建て替えられたのかもしれない。柱脚の様子を見てもそう思う。

四国で民家巡りをしたのは1980年、43年前。当時もこの場所に火の見櫓が立っていたなら、見たかった。でもあの頃は火の見櫓には全く関心がなかった・・・。



一般住宅の妻壁の水切り瓦



浜松市天竜区にて 撮影日20180526

*1 高知県では蔵だけでなく、一般住宅にも水切り瓦を付けたものがある(写真④)。また水切り瓦は他県でも見られる(写真⑤)。




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辰野町小野の蔵

2022-08-14 | g 蔵観察・蔵考〇


辰野町小野で見かけた蔵 撮影日2022.08.07

 学生の頃から民家を見て歩くのが好きだった。初期の中山道と伊那街道が通っていた小野には古い民家が多く残る集落があり、蔵もあちこちに残っている。歴史が地層のように重なる町、歴史の重層性は町の魅力に欠かせない要素だ。

先日辰野町の小野でこの蔵を見てカメラを向けた。妻壁の上部に押縁下見板張りの雨避けが設置されている。妻面の漆喰壁に雨がかからないようにするために設置されているものと思われる。役目は妻垂れ(過去ログ)と同じだろう。火の見櫓も好いけれど、民家も好い。 


 

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建てぐるみ

2022-07-11 | g 蔵観察・蔵考〇


諏訪の建てぐるみ 撮影日1979.05.04

 今は火の見ヤグラーなどと自称してあちこち火の見櫓めぐりをしているが、若かりし頃は民家を見て歩くのが好きだった。上の写真は中央東線の茅野駅から上諏訪駅まで徒歩で民家めぐりをした時に撮った建てぐるみと呼ばれる民家の写真だ。蔵をくるむ(包む)ような型式だからこのように呼ばれると理解している。

民家に対する関心が無くなったわけではない。今回、群馬県内をめぐっていて、あちこちで民家を見かけた。火の見櫓を何基くらい見つけることが出来るか分からなかったこともあり、民家の写真も少しだが撮った。

みなかみ町から沼田市に入り、県道266号を走っていてこの民家と出合った。群馬で何と呼ばれているのか分からないが、これは諏訪地方の建てぐるみと同じ型式だ。これは「利根錦」の蔵元の建物であることが看板などから分かった。

火の見櫓と同様に民家も今や絶滅危惧種。民家めぐりをしていた頃から火の見櫓にも興味を持っていたら、民家と火の見櫓のツーショットが撮れただろうに・・・。


沼田市下発知 下発知生活改善センター向かい 撮影日2022.07.07


 

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建てぐるみ

2021-05-08 | g 蔵観察・蔵考〇

 諏訪地方には「建てぐるみ」と呼ばれる民家の形式がある。蔵を住宅でくるんでいるから建てぐるみなのだと私は思う。蔵は火災に強く、大切なものを保管する役目を持っている。だから金庫が建築化されたもの、と言えなくもない。蔵を完全にくるんでしまわないで見えるようにしているのは、ドーダ(過去ログ)の表現なのかも。







② 破風を交叉させてすずめ踊りと呼ばれる形にしてあり、妻だれと呼ばれる雨除けを付けてある。




 

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棟石の民家

2019-01-20 | g 蔵観察・蔵考〇

 33会で松江旅行をしたことは既に書いた。旅行中、瓦屋根の棟の両端が反っている民家があちこちにあることに気がつき、このブログにも載せた。また瓦屋根の棟に石が使われている民家があることにも気がついていた。




松江で宿泊したホテルの部屋の窓から撮った写真 撮影2019年1月

蔵の瓦屋根の棟に石が使われている。ネットで調べてみると使われている石は地元の松江市宍道町来待地区で産出される凝灰質砂岩の来待石のようだ。




松江の民家 撮影2019年1月

松江市内でこんな立派な民家(このような建築を民家と呼んでいいものかどうか)も見かけた。やはり棟が石でつくられていて神社の鳥居のように反っている。

昔は物流エリアが限定的だから民家の建設は地産地消だ。以下、昔撮った写真を載せる。


茅野の民家 鉄平石一文字葺きの屋根 撮影1979年5月 40年前の写真 月日の経つのは早い。


新島の民家 抗火石の屋根と塀 撮影1980年7月


対馬の民家 砂岩の屋根 撮影1981年9月


 

 

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富士見町立沢の蔵

2017-10-01 | g 蔵観察・蔵考〇



■ 学生のころから各地の民家を見て歩いていたが、火の見櫓にぞっこん、となってしまってこのところ出歩いても民家にはあまり注目してこなかった。でもこんな立派な蔵を目にすると、「お!すごい」となる。近くの空き地に車を停めて、観察した。



諏訪地方の民家に見られる棟端の飾り・雀おどり(松本平の民家・本棟造りの棟端飾りも同名で呼ばれることがあるが、デザインが全く違うので区別したい 過去ログ過去ログ2)。



破風板を交叉させ、その上に破風と同じような板(雨ぶたが意匠的になったものと解したい)を載せてひし形をつくり、その中を飾る。この雀おどりは竹を組んでいるが、他のデザインも見られる。



破風と鼻隠し(鼻隠しの外側に付けた「風返し」と解した方が良いかもしれない)の交叉部。これほど立派なものを見るのは初めて。破風板下端の下り懸魚を思わせる飾り、破風板を留める金物部分の菱型の飾りにも注目。


 

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妻垂れのある蔵 信濃町にて

2017-04-28 | g 蔵観察・蔵考〇



■ 東北旅行は先延ばししたけど、仕事は予定通り休んだので4連休。ワークライフバランスを考えないとね。

昨日(27日)は長野市以北の信濃町・飯綱町・中野市の櫓と蓋巡りをしてきた。この後また火の見櫓の記事を続けることになるから、ここでひと休み。

*****

民家の妻垂れについては何回か書いた(過去ログ)。昨日、小林一茶の出身地として知られる信濃町で久しぶりに妻垂れ(*1)付きの蔵を見た。わざわざ車を停めて写真を撮ったから、学生のころから民家に寄せていた関心は失せてはいないようだ。

蔵の外壁を改修している。蔵の意匠上のイメージを意識してのことだと思うが、腰壁と上部の壁とは材料と色を変えているのは好ましい。妻垂れが板張りなのも好い。


 

*1 妻面は建築用語で屋根の「へ」側の面のこと、別の側面、屋根が四角く見える面を平面(ひらめん)という。妻面に出入口のある場合は妻入り、平面の場合は平入りという。長野県を代表する本棟造りの民家は妻入り(*2)。

平面は軒の出を大きくすれば壁にはほとんど雨がかからない。妻面は雨がかかりやすく、壁(妻壁という)が傷みやすい。妻垂れは妻壁に雨がかからないようにするために写真のように付ける三角の垂れ壁のこと。長野県内では諏訪、茅野方面でよく見られる(見られた)。


*2 堀内家(塩尻市) 本棟造りの民家 妻面が正面で玄関がある(妻入り)。

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大黒様

2015-10-03 | g 蔵観察・蔵考〇


茅野市内にて 撮影150927

■ 日本の建築文化の凄いところは事細かに名前がついていることだ。蔵の妻壁上部にある蔵ワッペン(藤森照信さん命名)にも元々牛鼻という名前がついている。牛鼻には家紋や水、寿という文字を鏝絵でつくることが多いが、大黒様も時々見かける。 大きな袋を肩にかけて米俵の上に乗っているから、富の象徴と解されているのだろう。だから蔵の牛鼻に相応しい。

七福神の一柱の大黒様は、大国様(因幡の白莵の大国主命)とは全く違う神様なのだが、音が同じで、混同され、というか習合されて同じと見做されるようにもなっている。

先日(0927)、諏訪大社上社前宮のすぐ近くでこの蔵を見かけた。火の見櫓だ、狛犬だと浮かれているが、民家を忘れてはいけない・・・。

因みに大国主命は諏訪大社の御祭神・建御名方神の父親。


 

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高山村の蔵

2015-05-10 | g 蔵観察・蔵考〇





路上観察  上高井郡高山村黒部にて 撮影日150510

蔵の小屋組に注目。唐破風のような形の梁の納まりが絶妙、隣の須坂市でも同じ小屋組を見かけたが、こんな小屋組は今まで見たことがなかった(と思う)。

妻壁に牛鼻(蔵ワッペン←藤森照信さん命名)がないと何だか変。

民家巡りをしていた昔が懐かしい・・・。




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建てぐるみ?

2013-07-26 | g 蔵観察・蔵考〇


民家 昔の記録 撮影日 19790504

諏訪地方の民家「建てぐるみ」 住宅で土蔵をくるみこんで、一体化している。


路上観察 松本市内にて  撮影日 20130725

諏訪の民家が「建てぐるみ」というなら、松本のこれは?


 

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丑鼻

2011-07-29 | g 蔵観察・蔵考〇



林丈二「鏝絵は鏝絵だけど、あの名前を何て言うんだろう。無ければ決めたいんですよね。ああいうところについているあれの名前を」
藤森照信「あれ、名前が無いんですよ」
赤瀬川原平「ないの?鏝絵と言ったらもっと一般的な」
藤森照信「うん。一般的には鏝絵。あそこの丸いところの名前を今つけたら、それが日本の建築の中で公用語になっていくね」

昨年、2010年の4月3日に茅野市民館で行われた座談会ではこのように語られているが(「藤森建築展のカタログ」に収録されている)、あれには名前があった・・・。

川島宙次さんは『民家のデザイン』相模書房であれを「妻飾り」としていたので、私もそう書いてきたが、長野県では「丑鼻(うしはな)」という名前があることを最近知った(*1)。 

長野県地方の左官用語 土蔵の地梁(牛梁 写真③)は壁面から少し外に出ている。この梁端をいう(写真②)。左官は壁土で塗り込め、ここに家紋や屋号のほか、火除けのまじないとして水、龍などの鏝絵をつける。「丑鼻」についてはこのように彰国社の建築大辞典にもちゃんと出ている。

日本建築の部位にはきちんと名前がついているから、あれには名前が無いという藤森さんの発言には ?だったが、これですっきりした。

②梁端

③丑(牛)梁 桁行方向に掛っている梁


*1 第5回松本安曇野住宅建築展

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まもりのかたち

2011-07-11 | g 蔵観察・蔵考〇


 会津若松の蔵



 塩尻の蔵


 高田の蔵


 蔵には火災から収蔵品を守るという一義的な機能があります。ならば、開口部など設けない方がいいのでしょうが、通風や時には採光が必要になるでしょう。で、開口部を用心深く設けることになるんですね。でもその際、雨や雪の浸入は防がなくてはなりません。通風や採光を確保しつつ雨や雪の浸入を防ぐ・・・。相反する条件をクリアするために窓まわりに施された設えには地方によって異なる工夫を見ることができて興味深いです。

まず会津若松の蔵(30年位前に撮った写真です)。目板葺きの庇。この地方の蔵すべてにこのように庇が付けられているわけではありません。いや、むしろごく少数の例かもしれません。

次は塩尻の蔵。妻垂れが付けられています。雨や雪は上方から降ってくるので、妻垂れも有効な方法です。写真を見ると、通常の雨や雪の降り方なら大丈夫、そう思います。長野県内では諏訪地方によく見られる手法です。妻垂れについては既に何回か書きました(過去の記事)。

そして上越市高田の蔵。これはすごい! 上越市内でこのような設えをしてある蔵をいくつも見ました。これなら雨や雪対策はバッチリでしょう。冬は風が強い地域なのかもしれません。

先日、小笠原諸島が世界自然遺産に登録されました。小笠原は生物の固有種が多いそうですね。昔は他の地方との交流に乏しく、情報(建築構法に関する情報)も物(建築材料)も各地方限定に近い、ほとんど「小笠原状態」でした。このことが民家をそれぞれの地方独自に「進化」させてきたことの主たる要因、などと強引に論じてしまいます。

各地各様 民家っておもしろい!
 

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上越市板倉区の蔵

2011-07-09 | g 蔵観察・蔵考〇




新潟県上越市板倉の蔵:漆喰の白壁が周囲の緑によく映えて美しい。110709 

美しい造形の蔵だ。プロポーションが実にいい。妻壁の開口部の上部の庇と両側の袖壁は雪や雨の吹き込みを防ぐためだろうが、この設えはこの地方独特のものなのかもしれない。屋根の雪割り棟は長野県の大町以北、白馬村や小谷村でも見ることができる。

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上越市高田の蔵

2011-07-09 | g 蔵観察・蔵考〇




上越市高田の蔵 110709

■ 上越市板倉区で見かけた蔵(前稿)と同様、雨や雪の吹き込みを防ぐために開口部周りを囲っている。この地方の守りの形。

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路上観察 松本の蔵

2011-07-06 | g 蔵観察・蔵考〇

   
松本の蔵 110706

 松本市内の蔵(しばらく前にもこの蔵の写真を載せました)の外壁に付けられている2段の帯に注目。

本来この帯は鉢巻きのようにぐるっと外壁を一周しているのですが、どうやらその一部が欠落したまま外壁が補修されたようで、帯の断面(小口)を見ることができます(右の写真)。断面の形状からこの帯が単なる飾りではなく水切りであることが分かります。

外壁を伝わって落ちる雨水はこの水切りで外壁を離れて落下します。外壁の汚れや劣化を防ぐための工夫ですね。このような工夫は今の建築にも取り入れることができます。

先人たちの工夫にもっと注目すべきだと思います。

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