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透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「利休にたずねよ」を語る

2025-05-23 | g カフェトーク〇

透明タペストリー2

 はてなブログにブログを開設しました。閲覧いただければ幸いです。



「U1さん、ブログに載せる会話ってフィクションだっていつか断っていましたけれど、私との会話ってほとんどそのままでしたね」
「そうだっけ」
別にかまいませんけど・・・。よく覚えているな、って感心してました。別にメモしているわけでもないのに・・・」
「まあ、会話の流れを覚えていれば、再現できるんじゃないかな」
「そうですか・・・。もしかして、プロ騎士が対局を最初から再現できるのと同じなんでしょうか」
「う~ん、あんな能力はないけれど・・・」

「あの、これ」
「何? もしかしてチョコ?」
「少し早いんですけど」
「義理堅いね、今はもう義理切り、だよ」
「でも、本命って今いませんから・・・」
「そう? ま、義理が廃れりゃ この世は闇、だからね」
「え?なんだか演歌みたいですね」
「そう。でもKちゃん若いのに知ってるの」
「ええ、父が歌ってましたから。あの、この本って、この間の直木賞受賞作ですよね」



「そう」
「利休ですか・・・。あの侘び茶の」
「そう。Kちゃん、さすがだね。侘び茶ってよく知ってるね」
「ええ。私、高校で茶道部でしたから」
「そう? そういえば和服が似合うかも」
「あ、いえ、成人式の時しか和服は着たことないです」
「そうなんだ。すごく和服が似合いそう」

「そうですか、しとやかに見えます? で、どんな小説なんですか、これ」
「利休って19歳の時、高麗出身の超美人と駆け落ち同然のことをしようとしたんだね。未遂に終るんだけど」
「そうなんですか・・・」
「ン、史実なのかどうかしらないけれど。この小説ではね。で、え~と、どこだっけな。あ、ここ。**あの女(ひと)に茶を飲ませたい―。それだけを考えて、茶の湯に精進してきました。**ってあるでしょ。利休の台詞。どうも、その高麗の女性のため精進したってことらしいよ」

「初恋かどうかわかりませんけど、その女性のために茶道を極めたってことなんですか」
「そう。案外男なんてそんなかもね。で、ここ。**あなた様には、ずっと想い女(ひと)がございましたね**ってあるでしょ。利休は奥さんにこう訊かれるわけ。小説の冒頭でね」
「ふ~ん。利休はその女性のために一生・・・? 最後は切腹したんですよね。それまでその女性のために茶道を極めたんだ。奥さん気の毒・・・」
「そう、そういう小説。小説は利休切腹の朝から遡っていくんだけどね。で、高麗の娘と知り合う経緯を書いて、最後にまた元に戻って、利休が切腹して・・・」
「へ~」
「で、その高麗の女性は不幸な死を遂げるんだけど。その形見を利休はずっと大切にしていて・・・。その形見の交合を奥さんが石灯籠に投げつけるところで小説は終っている。嫉妬だよね」
「そうですか。読んでみたいな」
「貸してあげるよ」


2009年2月11日投稿記事再掲

 

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一寸法師の身長は?

2021-12-26 | g カフェトーク〇

 20代の女性、Kさんとの会話

「Kさん、一寸法師の身長ってどのくらいか知ってる?」
「1寸は・・・、知らないです」
「1寸は約3cmだよ」
「え、そんなにちっちゃいんですか? 小さいからだに大きな望み お椀の舟に箸のかい 京へはるばるのぼりゆく」
「Kちゃん、よく覚えているね、お椀の舟に箸のかいの前後の歌詞は、忘れていたよ」
「私 一寸法師の歌、おばあちゃんから教わって、知ってます」
「すばらしい!」
「え、でもお椀って深さが5cmくらいありません? 身長が3cmだったら、顔がお椀から上に出なくないですか?」
「そうだよね」
「それに、箸をかい、かいって舟をこぐ、え~と、棒ですよね、身長3cmの子には長すぎません?」
「・・・、確かに」

ここで、Kさんがスマホで一寸法師を検索して、画像を僕に見せてくれた。いくつかあるが、一寸法師の身長はどれも10cm以上ありそうな感じでお椀や箸との大きさのバランスに違和感はない。
「U1さん、一寸法師って、ただ、小さい子どもって意味で、身長が3cmということじゃないのかも」
「なるほどね」
「でも・・・、U1さん思い出しました? 歌詞は ♪指にたりない一寸法師、って始まるんですよね」
手を見ながら「そうだよね、思い出したよ。指って10cmなんてないなぁ」

*****

このような昔話に数理的な厳密性を当てはめようとすることは無理。対象によって相応しいアプローチ、理解の仕方が違うということだろう。


 

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古代のロマンを語る

2019-07-09 | g カフェトーク〇

 この度、国連教育科学文化機関(ユネスコ)で日本最大の「仁徳天皇陵古墳」を含む49基の古墳で構成される「百舌鳥・古市古墳群」を世界遺産に登録することが決まった。


「U1さん!」
「S君とYさん、偶然だね。元気? 一緒に飲もう」
「いいですか? U1さんそちらの女性は?」
「友だち。本屋さんで久しぶりに会って、ちょっと飲もうということになってね」
「Kです」
「Sです よろしく、それから妻のYです」
「初めまして」

 乾杯!


「U1さんKさんと何を話してたんです?」
「この本のこと」
「飲みながら、本の話をするって、U1さんらしいですね」


 
『遊古疑考』松本清張/河出文庫

「ゆうこぎこう?」
「松本清張が独自の視点で古代史に切り込んだ本」
「U1さん、こういう本も読むんですか」
「歴史に関する本はあまり読まないけれど、松本清張は面白いよ」
「この写真は前方後円墳、ですよね。詳しいっしょ」
「そう。でも、清張は前が四角で後ろが円って考えるのって不自然じゃないかって書いているんだよね」
「え、違うんですか?」 

「中学でしたっけ、教科書に載ってましたよね。天皇陵の写真」
「仁徳天皇じゃなかったっけ。清張はいろいろ説明しているけれど、これ見て。左上の成務陵を正面から見ようとすると下の弥徳陵が邪魔してしまう」



「ほんとだ」
「でしょ。で、清張が主張するように側面が正面だとすると三つともきれいに展望できる。この図で□の位置からだけど。前から出来ていた成務陵をわざわざ隠すように後からつくるはずがないって言ってんだよね」
「なるほど、です」
「現在の参拝所の位置が違っているんじゃないか、って。中には手前の四角い部分のほうが後方の円い部分より高いものもあるっていうんだよね」
「前の四角いところがが高いと後ろの円いところというか、本殿が見えませんよね」
「そう! Kさんするどい。四角い部分に神社があったり、円い部分に神社があったりするってことも書いてある」

「ということは、少なくともどっちが前なのか分からないということ、ですか・・・?」
「そういうことになるだろうね」
「そうか・・・」

「教科書に出ているとそれが正しいって思っちゃうよね。この古墳のウェストみたいなところに造出(つくりだし)っていう出っ張りがあってそこが祭壇だって清張は言うんだよね。これ。ここは工事のときの資材置き場だとか、作業員の休憩スペースだったところで、そこで竣工祝いもしたんだろうと。で、そこが拝殿のようなところになったって言ってるんだよね。ここを伏し拝みっていうところもあるってさ」



「へぇ~」
「この清張の論考って40年も前のものだっていうから今どうなっているのか知らないけれど、古墳の方は前方後円墳のままだよね」

「でさ、次の「風水説と古墳」という章では円部が陽で、方が陰でその接合のかたちだって書いているんだよ」
「ン? 陽と陰の接合って、つまり・・・」
「そう。で、中国には上が円で下が四角の古墳があるってことだけど、それが日本に伝わったって説もあるんだって」
「上下が横になったってことは体位が変わって伝わったって・・・」
「体位? あ、そうだね」
「とすると・・・」

「やだ・・・」
「おいおい、酔いがまわってきたな。でね、これはボクの説だけど、この古墳の四角と円がその後、金堂と塔になっていったんだよね」
「金堂と塔って法隆寺なんかの・・・ え~、ほんとですか」


 

掲載履歴
20071007
20170814

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風土が文化を規定する? 

2018-08-12 | g カフェトーク〇

「毎日暑いですね」
「暑いね、でもなんとなく秋の気配も感じるけど。夜、秋の虫が鳴いているし」
「鳴いてますね、9月になれば涼しくなりますね」

*****

「ところでU1さん、この間、繰り返すヨーロッパと繰り返さない日本の違いが宗教をベースにした自然観の違いに拠るのではないかって言ってましたね」
「そう。でも宗教がベースになっているといっても、その宗教って結局自分を知る手段というか、まあ自己規定のための手段だと思うんだよね」
「つまり自分を理解するため、ですか・・・。この間、テレビで人は直線で創り、自然は曲線で創るとかいうガウディの言葉を紹介してましたけど・・・」

「そう? ガウディ自身は曲線で創ったけどね。自然というか神というかそういうところに近づきたかったのかな」
「ガウディというと、私はバルセロナにある有名なサグラダ・ファミリア教会を何年前かな、見たんですけどあの建築って実はすごく構造的に合理的な形なんですってね」
「そうだね、今のような構造計算ができるような時代じゃなかったけど、有名な逆さ吊り実験で合理的な形をみつけたんだよね、何年もかかってさ」
「その逆さ吊り実験っていくつも重りの袋でしたっけ、鎖にぶらさげている様子をみました」

「あの実験は有名だよね。ところでエジプトのピラミッドってすごくシンプルな幾何学的な形でしょ、四角錐。あれって自然と対峙するという、古代エジプト人の強い意志の表現だと思うな」

「確かに自然の造形にはないですね。でも自然環境と無関係ではない造形ですよね」
「やはりそう思う? あの形って広大な砂漠だからこそ出来た形、だよね。でね、結局「風土」ということを考えざるを得なくなる・・・。繰り返すとか繰り返さないということも風土と無関係ではないな、と・・・」
「そうか、それで和辻哲郎ですか」
「そう、さすがMさん」
「私もあの本読みました。風土が文化を規定するというようなシンプルな図式というか構造を示しているのではないような気がするんですけど、でもまあそんな理解をしましたけど」

「え?読んだの。日本の風景って、例えば春霞みとかおぼろ月とか、はっきりしないでぼんやりしているでしょ。それって湿度というか、水分が多いせいだと思うけど。まあ要するに豊かな水がつくるぼんやりした風景だよね、日本の風景って。ヨーロッパは乾いているけど」

「ええ、湿度が少ないと風景ってはっきりしますからね」

「そのぼんやりした自然環境というか風土がいろんなところに文化として出ているのではないかと、曖昧なものとして。例えば和風庭園の借景という手法は境界を曖昧に捉えているから出てくる」
「曖昧ということでしたら、例えば着物がそうですね、サイズがありませんから。どんな身長でも着ることが出来ますよね。洋服だときちんとサイズが決まっていますけど。それから風呂敷もそう。どんな形も包むことが出来てしまう。でもU1さんが書いていた三十三間堂の千手観音の繰り返しというのは・・・」
「もちろん、全く繰り返しのようなものを受け入れない、ということではなかったとは思うよ。大陸からそういう文化も古代から入っていたんだから。そんなにシンプルな図式にはならないよね」
「そうですよね。逆にフランスにある世界遺産のモン・サン・ミシェルなんて島と建築が一体ですし、トルコのカッパドキアのような例もありますしね」

「でもさすが女性、和服に風呂敷ね。なるほど。それから・・・、例えば昔の民家の小屋組みでも古いものは曲がった自然木をそのまま梁に上手く使っているよね。次第に直線的な材料を使うようになっていくんだけど」

「私、お茶をしてますから茶室にも興味がありますけど、中柱でしたっけ、自然の木、それも曲がった木をやはり上手く使っていますよね」
「そうだね。松とか百日紅とかね。まあ、風呂敷も和服もそれから茶室の材料も結局自然の一部として生きるという考え方がベースとしてないと出てこない発想なのかもね。ちょっと飛躍しているかもしれないけど」


「日本って台風も毎年来るし、地震もあるし、とてもヨーロッパ人のように自然と対峙しようなんてことは考えられなかったんでしょうね。自然と親和するしかないんですよ。それが石や森や山を御神体とする宗教的な考え方にもなっていった・・・」
「そういう土壌ではピラミッドのような造形なんて出てこないよね、やはり。幾何学的な造形にはやはり馴染めない・・・。せいぜい前方後円墳どまり」

「日本の風景にピラミッドって似合いませんよ」
「そうだね。茅葺の民家だって風景に同化しているもんね。そんなところに明治になったとたん、ヨーロッパの建築が入って来ちゃった・・・」

「入って来ちゃったって、歓迎してないみたいですけど」
「だってさ、受け入れる土壌じゃないんだもの、自然環境も文化的にも。だからどうしても日本には馴染まない・・・。それが今の都市景観の惨状にも繋がっていると思うけどね。あのさ、硬い話はこのくらいにして、どこか飲みに行こう」


「あの、私 いいバーを知ってますけど行きます?」
「バー・・・、大人だね」


掲載履歴: 20090425 20170815 20180812

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