透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「風景学入門」

2012-01-27 | A 読書日記



■ 『風景学入門』 中村良夫/中公新書  1982年初版の本書はサントリー学芸賞を受賞している。 この年末年始に松本駅近くの丸善に数回通って何冊かの本を買い求めた。この本もその内の1冊。

**思うに、場所に対する寡黙な帰依によって初めて与えられる存在の証しよりも、自己完結的な造形を多とするにつれて、都市風景は乱れてきた。作品の自己を空じて、そこの場所のささやきに耳をかたむけ、辺りの風景の意趣にならうところに、建設者本来の覚悟があり、また風景という思想の根本がある。**(201頁) 馴染みのない文章表現は読みにくいが、例えばこの指摘は現代建築の問題の本質を突いて、鋭い。

古今東西の様々な対象に対する文系理系両面からのアプローチ、縦横無尽な論考。「風景学」の学問的基礎の確立、学問体系の構築という壮大な試み。