松風をうつつに聞くよ夏帽子 芥川竜之介
松風の凄みを子どもころに経験した。木曽川の土手に200~300㍍は続く松林がある。強い季節風が松の枝を激しく揺すり、こすれあう音は地獄の底からのうなりに似て縮み上がった。離れた場所からも聞けた。松風はあの時1回で、以来冬のものと思いこんでいるが、季語ではない。そこへこのが夏帽子とあるから理解は複雑である。
松風の凄みを子どもころに経験した。木曽川の土手に200~300㍍は続く松林がある。強い季節風が松の枝を激しく揺すり、こすれあう音は地獄の底からのうなりに似て縮み上がった。離れた場所からも聞けた。松風はあの時1回で、以来冬のものと思いこんでいるが、季語ではない。そこへこのが夏帽子とあるから理解は複雑である。