昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

三鷹通信(232)市民大学哲学コース(25)

2017-11-19 05:36:49 | 三鷹通信
 17日(金)は正村俊之大妻女子大学教授の「社会学からみたポストモダン」
 
 ポストモダンとは
 そもそも建築の領域から流入した概念で、<脱近代>をめざす思想的潮流を言います。
 従来、場所とか出来事に密接なつながりを持った形で建てられた建築が、脱コンテクスト性(普遍性とか抽象性)たる装飾的、象徴的、ハイブリッドな、つまりポストモダンな建築が1980年代以降に生まれました。
 代表的なものとしてフィリップ・ジョンソンやコルビュジェの建築などが挙げられます。
 アメリカのAT&Tビル、現ソニービル。
 日本で言えば国立西洋美術館など。
 
 どのような場所にも建てられ、建物の内部を自由に仕切れる構造のものです。
 原広司「空間<機能から様相へ>」によれば
「それが可能な理由は、ひとえに建物内部の空間が外界から切断されて成立しうることにあり、建物それ自体から意味的な部分が捨てられて、建物がたつ場所の意味とも切り離すことができるからである」

 西洋史上<近代>は概ねルネサンス、大航海、宗教改革以降の時代。
 特に市民社会と資本主義を特徴とする時代で、その近代主義(モダン)の時代の後という意味でポストモダンと言います。
 
 思想史的に言えば、「近代の原理に対する批判的思想」です。
 つまり、普遍的に定義された人間(すべての人間は自由平等である=人権を有する人間)
 抽象性を備えた自己アイデンティティ(他者から自立した自己、一貫した行動をとる自己=個人としての人間)
 それらの個人を取り巻くコンテクスト(他者や状況)からの独立を意味します。
 
 <近代的主体>は国家、官僚制組織です。
  その特徴は、①国境の設定
        ②常備軍の保有
        ③中央集権的な官僚機構
        ④国民主義(人民主義)
 1980年代以降、組織のレベルに変化が現れる。
        
 環境の複雑化に伴い、ネットワーク時代に突入、変化するニーズは流動的になる。
        
 
 アメリカにおける産業都市ボストンルート128とシリコンバレーが明暗を分ける。
 
 
 典型的な官僚制組織の集合だったボストンルート128は衰退。
 企業間の競争的・協同的な関係、企業と大学、金融機関、法律事務所、行政機関とのネットワーク的関係を構築したシリコンバレーは大きく復活する。

 <国際レジームからグローバルレジームへ>
 国家、多国籍企業、国際組織、非国際組織、社会運動組織などのグローバルな関係へ。
 

 <近代的個人主義の衰退>
 マフェゾリ「小集団の時代、大衆社会における個人主義の衰退」によれば、
 「現代人は他者に従属し、社会的与件を受け入れ、有機的な全体に組み込まれている。…古典的な集団意識(部族性)がもたらした安定性とは逆に、この新しい集団意識はその流動性と、局限的な集合と、その散乱である」

 情報化による新しい段階、人工知能とIoTの時代の到来。
 <アマゾンの手法>が隆盛を極めている。
 
 今や<情報化による脱理性化>が問われている。
 情報システムの設計方法や設計思想、それに基づいた情報システムの構造が、抽象的、普遍的な規範に代わって、人々の行動を制御、誘導する時代になっている。

 最後にボクから敢えて質問させていただいた。
 「テクノロジーの急激な発達により、人類を滅ぼしかねない<核兵器>はテロにまで拡散するリスクを抱え、不毛な貨幣への投機で富は偏在し、今や政治も経済も人間社会は普遍的な価値、理性でコントロールできない現状です。いかに対処すべきでしょうか?」
 先生も「そのとおりです。それこそ今後の(ポストモダンの?)課題です」と応えて下さった。




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