昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説<手術室から>(13)村上晶先生(5)

2015-08-16 10:08:30 | 小説・手術室から
 翌週再び病院に出かけて、血液、尿検査などの内科検査を受け、眼底検査の結果手術という流れになった。    
 手術日は先生のスケジュールが混んでいるため2か月以上先に設定された。

 病院から家までの道のりをバスに乗らないで、畑の中の道を歩いて帰った。
 12月の湿気を帯びた薄墨色の冷たい空気が、西の空の残光を急速に消していった。
 
 若者が自転車を飛ばして、秀三の脇をすり抜けるように風を起こして飛ばして行った。
 幼い子どもが母親に何か話しかけながら、灯りの瞬き出した家並みの中に入って行く。

 ・・・手術か? やっぱりやめようかな・・・
 頭の中ではまだ手術をすべきか否かを反芻していて、外気の寒さは感じなかった。

 ─続く─



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