昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

三鷹通信(323)三鷹市民大学日本の文化「並行と移行─縁の詩学」

2019-02-03 04:02:49 | 三鷹通信
 講師は尼ケ崎 彬学習院女子大学名誉教授

 *テーマは「並行と移行─縁の詩学」
  ・・・詩の構造とは並行性の連続である(ジェラルド・ホプキンス)しかし、似た言葉の反復だけでは詩ではない。
  ・・・「反復的な回帰」つまり、構造の反復<並行性>が必要。

 *ヨーロッパの代表的な詩型・・・イタリア風ソネット(14行詩)
 *ヨーロッパ、ロシア、ヘブライ、インド、中国、モンゴル系民族に共通。
  

 *短歌は<並行性>を忌避。(57577の形式は<並行性>をもちえない。)
 *仮名に物書くことは、(中略) 詞の飾りを求めて好みを書くべからず。僅かに寄り来る所ばかりを書くなり。対をしげく書きつれば真名に似て、仮名の本意にはあらず。これはわろき時の事なり。彼の古今の序に、
  「花に鳴く鶯、水に棲む蛙」などように、え避らぬ所ばかりを(こう書くしかない)自ら色へたるがめでたきなり(鴨長明「無名称」)

 *「流れるような連続性の要請」・・・俊恵法師(中略)五尺のあやめ草に水をかけたるやうに歌は詠むべしと申しけり。
 *<同音反復>・・・河のべのつらつら椿つらつらに見れども飽かず巨勢(こせ)の春野(万葉集56)
        ・・・ほととぎす鳴くや五月のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな(古今集469)
 *<縁>という統辞原理・・・「歌をよまんには歌を先だつる事あるべからず。先ず題につきて縁の字を求めよ。(中略)縁の字なくば、縁の詞を尋ねて置くべし。縁の字詞を求めずして、歌を先だつる事は、材木なくして家をつくらんがごとし」(悦目抄) 「縁の字」は掛詞 「縁の詞」は縁語

 *一気呵成に流れる滑らかな推移の中で、いつのまにか話題が転換し、外界と内面と視点が入れ替わり、古典世界の物語や和歌が背景に現れ、それらの世界が重なりあうのを楽しむ。

 *西洋詩が、幾何学的庭園を航空写真で楽しむのに対して、和歌は庭園を回遊して楽しむ。
 *構造ではなく過程を楽しむ。