昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

ペット(7)雀のチュン太5

2008-12-24 04:53:42 | ペット
 妻の掃除機を繰る音が聞こえる。
 チュン太が「ジャー、ジャー」と威嚇している。
 そろそろ寒くなってきた。
 チュン太の巣を新しいものに交換してやらなければならない。
 ぼろぼろだ。
 夏のうちチュン太が間引いてしまったのだ。
 スカスカで後ろから覗けるほどだ。
 
 最近落ちた藁を一生懸命巣に運んでいる。
 巣作りをしているつもりなのだ。
 見ていると、入れたり出したりしているだけだ。
 
 今までより大き目の新しい巣を買ってきた。
 ところが頑として新しい巣に入ろうとしない。
 今まで、ぼくが部屋に入って行くと、照れたように慌てて隠れるように巣に入ったのに入らない。
 手で脅しても入らない。
 二、三日頑固に入らなかった。

 止まり木に乗ることも少なくなった。
 元気のない這いずり鳥になってしまった。
 拗ねているのかもしれない。

 それがいつの間にか入るようになった。
 何がきっかけになったのかは分からない。

 チュン太の様子がおかしい。
 口を半開きにして、バタバタとイラついている。
「おとうさん! 何か変なもの食べさせたんじゃないの!」
 妻が抱いたり、水を含ませたりするが、一向に口の半開きが直らない。
 そのうち口を開いたまま、目を瞑っておとなしくしている。

 「このまま死んだらおとうさんの所為だからね!」
 もう歳だし、だいたい雀が十年も生きているのはおかしい。
 これがきっかけで死んでしまうことを半ば覚悟した。

 「チュン太、治ったよ」
 書斎に引っ込んでしばらくしたら妻が言いに来た。
 何か吐き出したと言うのだが、ひょっとしてうどんに餅がくっついていたのかもと思い浮かぶ。
「これで、死んでもぼくのせいじゃないな」
「何言ってんの。変なもの食べさせないでよね。おとうさんがわるいんだからね。私が治したんだからね、チュン太!」
 ともかくほっとした。
 
 <我と来て遊べや親のない雀>

 2000年に噴火した三宅島では、人びとが島から避難すると雀も消えたそうだ。
 天敵から身を守りやすく、餌も豊かだから人の近くに住む。
 人と寄り添い生きる雀も最近減っているそうです。
 雀にとっても受難の時代となっている。