昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

ペット(5)雀のチュン太3

2008-12-22 05:18:37 | ペット
 きれいになった巣に戻すと、チュン太は必ず新しい水を一口、二口、時には五口も六口もおいしそうに飲む。
 自分の糞や藁くずの入った汚い水は嫌なのだ。
 そして糞の落ちていない新しい新聞紙の上で羽を広げ腹を擦って新聞浴びをする。

 たまに水浴びもする。
 狭い水入れの中に少しずつ、恐る恐る、何度も入ったり出たりしながら徐々に身体を浸し、全身を水浴びする。
 水から出ると、濡れ鼠のようになって寒そうに震えている。
 そして妻の掌を要求する。
 
 温かい妻の掌の中で落ち着いて毛づくろいする彼にとって至福のひと時だ。

 ぼくの掌には載らない。
 巣をきれいにしたり、食べ物をやったりぼくも結構世話をしてやっているのだが。

 チュン太は不思議なくらい人を差別する。
 妻が掌を上に、指先を動かして「チュン、チュン」と挑発すると、身を剣のように細くし、羽をジェット機のように尖らし、首を伸ばして上下左右に振りながら、盛ったように挑んでくる。

「そんな尖ったスタイル嫌い! ふっくらしたほうがいいのに」
 妻が言い寄られた女の子のように言う。
 そして「おとうさんもやってごらん」とぼくに振る。
 
 ぼくが同じ仕草をすると、お前は嫌だとばかり巣の中へ逃げ込む。
 男だから、女だからというわけでもなさそうだ。

 息子の俊には妻と同じ反応をする。
 妻も息子もぼくに何度もやらせて笑いものにする。
「おとうさんは召使だと思ってるんだよ」

 -続くー