タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

既往帝王切開の問題

2018-08-31 21:08:06 | 産科
尼崎市武庫之荘西の源多(げんた)くん、8月1日生まれ。
「優しい子に育ってください。
ここで産めてよかったです。
皆さん、優しかったです。」

1人目は鳥取県の病院で、帝王切開で産んだのですよね。
途中までは進んでいたのに、胎児の状態が悪くなってのことだったようです。
ですが、今回は初めてタマル産で、しかも経膣的に産んだのですよね。

むかしは前回のお産が帝王切開でも、次は下から産むことも多かったのですが、
最近、とくに2000年以降は、全国的に帝王切開になることが多くなりましたからね。
これだけ裁判が多くなっては致し方無いでしょう。

8月は、もう1人、既往帝王切開のお母さんが居られて、そのお母さんは再度、帝王切開で産まれました。
タマル産では、何も絶対に帝王切開とか、経膣分娩にこだわっているわけでは有りません。
ご両親でよく相談されて、メリットやデメリットを考えて判断していただいています。

毎月、だいたい1件くらいしか帝王切開はしていないのですが、
9月は早くも予定で2人、帝王切開が決まっています。

1人のお母さんは、前回は胎児が大き過ぎて、しかもへその緒が首に巻いていたので、
途中で帝王切開になられました。
今回は頑張って、経膣的に産むと言われていたのですが、
どうも今回も食欲に負けて、胎児が大きそうなのです。
それで産む直前になって、帝王切開を希望されたのです。
やはり予定日近くになってくると、迷うものですね。

もう1人は、初めての妊娠なのですが、さかごなので、帝王切開を選択されました。
こちらのお母さんも、経膣分娩か帝王切開のどちらも可能なことを説明して、
帝王切開を選択されました。

たくさん赤ちゃんを産むつもりが有れば、できれば経膣的に頑張って産んでいただきたいのですが、
1人か2人しか赤ちゃんを産まないのであれば、
どちらでも良いのでしょうね。
もしくはリスクを犯さずに、帝王切開でも良いのでしょう。

ただし1つだけ言っておけば、帝王切開は何もリスクが低いとは思いませんよ。
お産での出血も増えるので、母体死亡率という怖い統計を見ても、
経膣分娩よりずっとリスクは高いのです。
輸血する確率も上がるというわけです。
輸血のリスクというお話は、興味深いのですが、それはまた今度お話しましょう。

もちろん、前回帝王切開で産んで、今回下から産んだとして、
子宮が破裂するという可能性が無いわけではありませんしね。
そこはやはり考え方次第なのでしょう。

今日は、つい先ほども、赤ちゃんが生まれました。
けっこう難産だったのですよ。
帝王切開になる可能性も有ったのですが、
何とか吸引分娩で生まれました。
これがもし帝王切開になっていたら、産後もたいへんだったことでしょうね。
満足感も違ったことになったかもしれませんしね。

それでも、帝王切開を否定しているわけではありませんからね。
適応さえきっちり守れば良いと思うのです。


新しいSHR脱毛機を導入しました

2018-08-29 21:30:11 | 美容医療
篠山市味間奥の明峯(あかね)ちゃん、7月30日生まれ。
「周りを温かい気持ちにさせるような明るい子になりますように。
お姉ちゃん2人の笑いの中で、スムーズに生まれて来てくれて良かったです。
ゆったりと入院生活が過ごせました。今だけと満喫しました。」

3人姉妹になったのですね。
しかも家族で迎えられて。
今回、初めてタマル産でのお産でしたしね。

今年は、とても暑い夏でしたが、ようやく9月になりますね。
タマル産では美容皮膚科もしているので、今日は脱毛のお話を。
夏の前は、脱毛で来院される方は多いのですが、
夏も終わって少し希望される方が減ってきました。
今なら予約が取りやすい状況です。

そこで今一度、脱毛のおさらいをしておきましょう。
脱毛の種類は大きく分けて、今までは2種類の方法が有りました。
有りました、というのは、3つ目の方法が始まっているからです。

1つ目は、エステや美容院で行われている、強い光を当てるという方法です。
電車の中吊り広告などでよく目にしますね。
この方法は、1ヶ月に1回程度、光を照射するのですが、
1年とか2年とかしないと、なかなか完全には脱毛できないのです。
費用的には安い設定になっているでしょうが、その分回数が多くかかるので、
根気が必要ですし、結局は費用がかかってしまいますよね。

2つ目の方法は、医療行為に該当するので、医療機関でしかできない方法で、
レーザー脱毛というものです。
正確には、ダイオードレーザー脱毛と言います。
黒い色にだけ反応する、ある単一の波長の光線を照射するのです。
だから肌への副作用も少ないので、強い線量を出力できるので、効果も高いのです。
1ヶ月に1回の頻度で3回も照射すれば、光治療の1年分くらいの効果が有ります。
ただし人によっては、濃い部位など、6回くらいかかることも有りますよ。

そして3つ目の方法が最近、新しく医療機関でだけ行われるようになってきた方法です。
ですがまだその機器を導入している施設は少なく、有ってもさらに高額なようです。
それは、SHRという方法なのですが、聞いたことが有りますか?
Super Hair Removel の略で、今までの Hair Removal にスーパーが付きました。

何がスーパーかと言えば、毛根にまで効く方法で、
毛周期を意識しないで良いので、毎月でなく、毎週だって構わないのです。
今までの脱毛のように、1年かけてとか、春になって夏に向けて、など考えなくても、いつからでもできるのですよ。

しかも副作用が少ないのですって。
副作用とは、脱毛後に人によっては、さらに太い毛が生えてくることが有ったのです。
タマル産ではあまり経験したことは有りませんが、そう言われています。
それが今度のスーパー・ダイオードレーザー脱毛では、副作用も殆ど無いようです。
ただ、まだ新しい機器ですから、評価はこれからなのですけれど。

そしてその機器が、今日からタマル産に導入されました。
しかも費用は据え置きです。
さらに言うと、照射するレーザーを出すスポットが大きく、さらに短時間で施術できる、その中でも高級機なのですよ。

短時間、かつ短期間で、費用設定も他の医療機関と違ってとても安く、
もちろんエステと違って医療機器なので、脱毛効果も高いのです。
安いからとエステの脱毛では、結局長くかかってしまうかもしれませんしね。
そして副作用も少ないのでしたね。
脱毛は何も夏に向けてばかりでなく、いつからでも構わないのですからね。


不育症や不妊症の助成金のお話

2018-08-27 21:24:47 | 不妊症
今日、生まれた赤ちゃんとお父さんです。
お母さんによく似たお姉ちゃん2人と、お父さん似の弟くんでしたね。
いえいえ、どちらにも似ているところは有るものです。
お産の時の写真は、了解を得てフェイスブックに載せさせていただきました。

ところで最近は日曜日も外来を開けているものですから、
けっこう遠方の患者さんも来院されることが多くなりました。
それは妊娠ではなくて、不妊治療の場合ですが。

北東は福知山から綾部、そして舞鶴まで、
北西は丹波市はもちろんですが、豊岡から来院される方が多いです。
タマル産より向こうの裏日本で不妊治療をしていると言えば、鳥取県まで通われている方も居られるくらいですから。

でもね、20年ほど前は、アメリカまで行って治療する女性が多かったのですよ。
費用だって、高い高いと言われますが、当時は数百万円かかるのは当たり前でしたからね。
今、体外受精にかかる金額は、日本が世界で一番安いでしょう。
さらには助成金が豊富ですから、世界一受けやすいと言えますからね。

そしてタマル産ではその20年前から体外受精を始めました。
結局7年ほどしたのですが、すればするほど赤字でしたね。
というのも、当時はまだまだ不妊治療への理解が進んでおらず、
高度不妊治療まで希望されるカップルは少なかったからです。

そういうわけで今、タマル産で行なっているのは、一般不妊治療だけなのです。
それでも、かなりの確率で妊娠されていますよ。
今までの成績は公表しています。
何もいきなり体外受精から始める必要はないのですよ。

今日、外来に妊婦健診で来られたのは、豊岡よりさらに向こうの加美町からですよ。
それは、タマル産に不妊外来で通院されていたからですよね。
ちゃんと妊娠されたということですよ。

他にも先日職場の友達で来院された福知山のお2人、
1人はすでに妊娠されて妊婦健診中、もう1人も今日、妊娠反応が陽性になりましたね。
このように兵庫と京都の北半分を背負っているような責任が有って、ちょっと重圧がかかっています。

福知山市以外にも京都府では、一般不妊治療にでさえ、助成金が適応になります。
兵庫県は高度不妊治療に対してだけ助成金の対象になり、
篠山市では兵庫県の助成に、さらに10万円までの二重の助成金が用意されていますよ。
詳しくは市と県のホームページで確認してくださいね。
ただし一般不妊治療は適応になりません。

一方、不育症の検査は、かなり保険でまかなえるようになりましたが、
まかなえない部分も、最近では助成金で戻るようになってきました。
篠山市ではようやく今年度から助成が始まりました。
上限は20万円までです。
保険診療の自己負担分や、ヘパリン注射やアスピリンの内服にも使えるようですから、
ほとんどまかなえてしまいますね。

今までは自由診療で高額だったのでしなかった、流産した胎児側の組織の染色体検査まで、
今年度から助成の範囲になったので、覚えておかないと損をしてしまいますね。
先日からヘパリン治療を始めた方が居られたのですが、
教えてあげるのを忘れていました。
今度教えてあげましょう。

丹波市さんはまだのようですから急いで検討してくださいよ。



稀少部位子宮内膜症って?

2018-08-24 21:23:12 | 婦人科
初めての赤ちゃんと、母方のお婆ちゃんです。
それにしても若いお婆ちゃんですね。
まあ、日本人の初めての出産は30代ですから、
インドネシアの女性のお婆ちゃんが若いのは当然ですね。

私も一番下の子ができたのは、38歳の時でしたから、
成人する頃にはすっかり年を取ってしまいますよ。
やはり子育てするのは、若い時の方が楽しいものです。

そうそう、お婆ちゃんはヒジャブを被っておられるので、イスラム教徒なのでしょうね。
出産の時も熱心にお祈りされていましたよ。
私たちが忘れてしまったことばかりではないですか。
篠山にはインドネシアの人はそれほど多くないらしく、
タマル産で産まれたのは、まだ2組目です。
みなさん良い方たちばかりです。
むしろ日本人以上に日本的な方たちばかりですよ。

さて、今日外来を受診された方に、子宮腺筋症と他院で診断されていて、
検診のために受診された方が居られました。

子宮腺筋症とは、聞きなれないでしょうけれど、
子宮内膜症が子宮にできた場合の呼び方です。
それに対して、子宮の周りや卵巣などにできた子宮内膜症のことを、
外性子宮内膜症と言います。単に子宮内膜症と言えば、こちらです。
とくに卵巣にできた場合は、チョコレート囊胞と言います。

医療者でも間違って、チョコレート嚢腫と言う人が居ますが、それは間違いです。
囊胞とは、何かが溜まった状態で、血液が溜まっているので、囊胞なのです。
嚢腫とは、腫瘍のことですからね。良性とか悪性のことが有りますよ。

さらに、子宮の周りだけでなく、結腸や小腸、膀胱や、さらには遠く離れた肺などにもできることが有ります。
これを、稀少部位子宮内膜症と呼ぶのです。
本当は、以前にもこのお話はしています。

直腸にできると、よく直腸癌と間違われて、外科で手術されてしまうことが有りますよ。
膀胱にできると、血尿や排尿痛が出て、やはり泌尿器科の病気と間違われてしまうことも有ります。

肺にできると、毎月、月経期に、吐血することが有ります。
私も、むかし2症例ほど治療した経験が有ります。
肺にできた場合は、80〜90%の人に、肺に穴が開いて、気胸を起こすと言われます。
子宮内膜症が無くても、若い人は突然、気胸になることが有るくらいですからね。

結局、治療としては、通常の子宮内膜症のように、ホルモン療法が第一です。
妊娠したい人で、ホルモン剤でコントロールできない場合は、
手術という選択も有るようですね。

話は違いますが、子宮にできる病気で、絨毛性疾患というものが有ります。
悪性になると、血管の中を流れて肺に転移するのです。
抗がん剤が効くのですが、最終的には肺を部分切除することも有ります。
これは少し辛い治療ですが、むかしそういう治療をしたことが有りますよ。
今思うと、今の私の年齢より若い方でしたよ。
成人した娘さんが居られて、説明するのに苦労しました。

同様に、肺の子宮内膜症も血行を介して肺に転移するのですが、
子宮内膜症は悪性でもなければ、腫瘍でもないので、転移とは言わないのですね。
稀少部位子宮内膜症、ですからね。
今だったら、もし見つけたら、気胸の恐れも有るので、専門病院を紹介することになるでしょう。

流産の処置と合併症

2018-08-22 21:11:56 | 産科
篠山市味間南の斗陽(とうや)くん、7月18日生まれ。
「光続ける星のように、自分の意思をしっかり持って、笑顔いっぱいの人生を歩んでください。
産後は回復が早かったです。
みなさん話しやすく、入院中とても安心できました。」

男の子が3人続きましたね。
不思議と女の子ばっかりだとか、男の子ばっかりと続きますよね。
もし次も有れば、上の子たちと一緒に産みたいそうですよ。

今日の話題は、流産の合併症について、です。
流産の手術の後に、腹膜炎になったり、最悪、亡くなってしまうことだって有り、
毎回ニュースになりますよね。
いったい流産の手術の合併症って、どれくらい有るのでしょう?

一番問題になるのは、子宮穿孔(せんこう)と言って、子宮に穴が開くことです。
毎年、全国で25件ほど報告されています。
ということは10年で250件、20年で500件ということですね。
しょっちゅう起こると言っても良いでしょう。
おそらく穿孔後に腹膜炎を合併したから報告されたのでしょうが、
無症状ならもっと多いのかもしれませんしね。

例えば、帝王切開でも子宮に大きな穴を開けるわけですが、
抗生剤を使用するので、産後には子宮の穴は閉じますよね。
だから穴が開いただけでは、そう問題にはならないかもしれませんよ。

むかし天理に居た時ですが、
未婚の女性で子宮外妊娠になられて、開腹手術をした際に、
子宮に大網(だいもう)という膜が癒着していたことが有ります。
大網はお腹の中の炎症などを包み込む働きを持つ臓器です。
だからおそらく人工妊娠中絶の手術の時に穿孔が起こって、自然に治ったのだろうな、と想像したのです。

その女性は、過去の妊娠歴は無いと申告されていたのですが、
術後に問うてみると、やはり中絶の手術をしていたということでした。
結局、子宮穿孔は知らないうちに起こっているということですね。
だって、子宮って、とても柔らかい臓器なのですから。

いきなり怖いお話をしましたが、
それで日本では2年ほど前から、流産や中絶の手術には、昔ながらの細長いスプーンで掻き出す手術ではなく、吸引法でされることが少しづつ拡まってきました。
こちらの方が安全だから、というわけです。

それともう1つの問題も有ります。
流産や中絶の手術の既往の回数が多いほど、
子宮内膜が薄くなることが報告されています。
それによって、子宮因子による不妊症になることと関係していると言われているのです。
そしてこの子宮内膜が薄くなる対策としても、
吸引法の方が影響が少ないとされているのですね。

タマル産では、以前から胞状奇胎という病気には吸引で、
普通の流産には掻き出す手術をしていましたが、
最近はどちらも吸引法だけでしていますよ。

さらに言うと、最近は普通の稽留流産に対しては、
待機療法も考慮しています。
手術した方が1日で回復するので、次の妊娠が早くできるということは有ります。
それに仕事にも戻りやすいですしね。

それでも手術を希望されないことも有るので、
場合によっては、待機して、月経を待つように、流産でも待つこともします。
その場合は流産するまでの期間が長くなりますし、
出血する期間も長くなるのですが、
手術を回避することもできるので、人によってはメリットと考えられることでしょう。

知識として知っておかれると、
自分の番になった時に、考える材料となるのではないでしょうか。