タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

老人デモクラシーな社会

2023-03-31 16:04:17 | 産科
今週は連夜、大きな赤ちゃんの出産が続いて、へとへとですよ。
他院でなら、帝王切開続きだったことでしょう。

さて、1999年3月1日に開業して24年が経ちました。
当初は空き産婦人科で始めたために、建物も古く維持費がかさみ、看護職員さんも集まらない中で、
1年目のお産はわずか14件しかなかったのですよね。
結局5年間で3000万円の赤字を出し、それ以上続けられなくなったので、
2004年に丹波篠山市へ新築移転しての再始動だったのですよ。
税務調査に来た税務職員が、たいへんですね、と心配されたくらいです。

再挑戦はしたものの、グラフにあるようにその間、丹波篠山市の出生数は加速度的に減少してきました。
それに並行して、この20年で医療訴訟が著増して、全国の開業産婦人科施設は半減したのです。
それは赤ちゃんの数が減る以上に著明な減少なのですよ。
現在は全国の出産の半数は有床診療所が取り扱っていますが、開業医のほとんどは60代、70代ですから、あと10年もすれば病院でしか産めなくなっていることでしょう。

私の計算ではグラフの赤い線が示すように、今から20年もして2042年頃には、赤ちゃんに会える機会は著しく減ることでしょうね。
赤ちゃんが減れば、みなさんの期待している将来の年金なんてなくなってしまうのですよ。

1年半前から丹波篠山市から年間1500万円の助成を受けられることになりました。
ですがこの助成を入れても昨年は新型コロナの影響をまともに受け、久しぶりに赤字決算となりました。
出生数減と人件費の大幅増のためですよ。

ようやく国も少子化対策が重要なことに気付き始めたようです。
ですが丹波篠山市はどうでしょうか?
先日の議会で、公明党で副議長の園田より子議員が、タマル産への助成金が必要なのか、と市長に問いただされたと聞きます。
市長もすぐに、必要どころかこれからますます重要になる、とでも答えてもらっていれば少しは救われたのですけれどね。

現在、市は兵庫医大に毎年数億円、岡本病院やにしき記念病院などの高齢者医療施設に毎年2000万円ずつ、配られています。
そちらの方が人口が多いのですから票が取れますからね。
ですがこれから高齢者数がどんどん増えて増収増益になるのに、本当に必要なのでしょうか?
それに対して、赤ちゃんは際限なく減りますから、産婦人科施設にお金をかけても仕方がないと考えておられるのでしょう。

繰り返しになりますが、あと20年もすれば丹波篠山市に子供は生まれなくなります。
赤ちゃんが減り続けて赤字が続けば、私もいつまでも奉仕活動を続けることはできませんからね。
体力うんぬんの話ではありません。
兵庫医大撤退からわずか2年も経たずに、市議会はいったい何を考えておられるのでしょう。
全員無投票再選だそうですけれどね。





さかごは帝王切開?

2023-03-24 15:22:54 | 産科
最近のお料理から、鱈(タラ)のみぞれあん、です。
タラを揚げて、ダシの効いた大根おろしをたっぷりとかけます。
優しい味でしたよ、私も頂いたのですが。
副菜にはサツマイモのコロッケ、デミソース味です。
新しいシェフの作でね、こんな美味しいお料理が食べられるなんて、みなさんは幸せものですよ。

さて、本業のお産の話をしなくては。
先週も、さかごのお母さんに、胎児をお腹の上から向きを変える外回転術を試したのですが、
羊水が少なかったのと、胎盤の位置が悪かったために、不成功に終わりました。
そこで、さかごのままお産してもらったのです。
来週もさかごの処置が有るのですよね。
やはりとても気を遣うので、年に数回はドキドキものです。

今ではさかごで無事に産ませてもらえる産婦人科施設は絶滅危惧種ですからね。
タマル産以外に探すのは困難ではないでしょうか?
普通はと言うと、帝王切開でしょう。
では帝王切開なら安全なのでしょうか?
ちょうど今月、日本産婦人科医会から、帝王切開に関する雑誌が送られてきました。

まず、麻酔によるトラブルがときどき起こります。
脊髄麻酔や、最近では無痛分娩に使用したチューブでそのまま硬膜外麻酔でするのですが、
硬膜外麻酔で相次ぐ母体死亡がニュースになりましたね。
有名な知り合いの先生も、危ない経験をされていますよ。

脊髄麻酔でも、太っている妊婦さんにはうまくいかないことも有ります。
そんな時は大きな病院では麻酔科ドクターを呼んで全身麻酔に切り替えるのですが、
太っていると、のども狭くて成功しないことが有るのですよ。

帝王切開では経膣分娩に比べて出血が大量になりがちです。
自然のお産なら、産後に子宮も縮むのですけれど、
子宮を刃物で切るのですからね、収縮も悪くて輸血をする場面が増えますよ。

前回も帝王切開をしていたなら、今回は子宮が破裂することだって有ります。
2回目以降の帝王切開では、前の切開創が、透き通るほど薄くなっていることが有りますからね。
前の切開部分に胎盤が貼り付くことも有って、これが癒着胎盤の原因になり、これも大出血の原因になりますよ。

子宮頸がん検診で来院される方を超音波で観ると、
前に他院で帝王切開を受けておられ、切開した箇所が楔状に凹んでいることがよく有ります。
これが原因で異常出血が有ったりすることを、帝王切開瘢痕症候群と呼びます。
帝王切開瘢痕症候群では、30%が不妊症の原因になると言われていますよ。

子宮から膀胱を剥がすのですが、膀胱を傷つけたり、腸や尿管を傷つけることも有ります。
もちろん経膣分娩でも、吸引分娩の時は腸管の損傷の合併症が有るのですが、帝王切開ほどの頻度ではないでしょう。

数え出したらキリがないのですが、出血が多かったり、子宮が破裂すると、児にも影響が有るので、
帝王切開が安全だと断言するのはかなり困難でしょうね。
そんな意味でも、タマル産では1%ほどの帝王切開率ですから、おそらく先進国では世界一、帝王切開率が低いのではないでしょうか?
それだけ安全だと思っていますよ。
もちろん100%安全だなんて、お産には有り得ないことですけれどね。






新生児にはベビーシートが必要です

2023-03-17 20:36:11 | 産科
タマル産が建つ前は一面の田んぼだったのです。
ツタヤさんも無かったですしね。
今の駐車場辺りの田んぼの畦には、以前は不思議と四葉のクローバーがたくさん有って、うちの子供たちと採ったものです。
そこで今日はタマル産の遊び場に、四葉のクローバーの種をたくさん蒔きましたよ。
この夏以降に遊びに来たら、探してみてくださいね。

さて今週からマスクを外して診療にあたっています。
ですがショッピングセンターでも、はずしている人はわずかですね。
医学的に言えば、マスクなんて感染症を防ぐものではないのですが、
医師会でさえ、医療機関では付けることを推奨しているのですよ。
予防接種にしても、効果が無いどころか、日本だけでも、しかも届けられただけでも数千人の死者が出る過去最大の医療事故なのに、いまだに受けさせ続けるのですから、WHOも、ファイザーも、厚生省も、医師会も、メディアも罪深いですよ。
さらにはそんなメディアに、みなさん国民はすぐに騙されてしまうのですからね。

前置きはこれくらいにして、以前にも書いたことが有るのですが、
産婦人科退院時の赤ちゃんのシートベルトの復習をしましょう。
生まれたばかりの新生児を車に乗せる時は、チャイルドシートでなく、ベビーシートが要るのですよ。
チャイルドシートでも頭を下げられて新生児でも使えるものは有るのですが、ごく一部です。
ほとんどのものは首が座ってからでないと使用できません。
たとえ店の人が使えると言ってもです。

ベビーシートとは、ほぼフラットになるものです。
使用できるのは1歳までと、ややコスト高なのですけれどね。
タマル産でオススメしているのは、ベビーキャリーも兼ねた、ワンタッチで車のベースに付けられるものです。

ところが退院時にベビーシートを付けている家族は数組に1組くらいですね。

ですが、見つかったら、減点1点です。罰金は無いのですが。
ベビーシートが無いと、本来タクシーを呼ばないといけないのですよ。

私はお母さんが抱っこする抱っこ紐が良いと思うのですが、
残念ながら抱っこ紐では、交通違反になるようです。
ということで、母親学級でも繰り返し指導していきますが、
ベビーシートが無いと、タクシーを呼ぶことになりますよ。
タクシー代は、安くはありませんからね。


こどもは愛の形ちなのです。

2023-03-10 20:47:05 | 産科
つい先ほども赤ちゃんが生まれて今日も忙しかったですよ。
赤ちゃんが大きくて、長い時間がかかりましたからね。

大きな赤ちゃんを産ませてあげるのは、お母さんだけでなく、介助者もとても苦労します。
だから妊娠の早い時期から誰が難産になるかというのは分かるので教えてあげるのですが、食生活を改善する女性は少ないですね。
とくに里帰りのお母さんは、ちゃんと管理されていないことが多く、帰ってきた時には大き過ぎることが度々有ります。
それでできれば里帰りよりも、地元のお母さんを優先してあげたいと思っているのですよ。

昨年は新型コロナのせいで出生数が大幅に減りました。
タマル産でも通年より20%くらい減少しましたからね。
それが今年は、もう9月の前半までお産の予約がいっぱいです。
それですでに何人かの里帰りや転院希望のお母さんをお断りしないといけない事態になっています。
この分だと今年はリバウンドで赤ちゃんが増えそうな気配ですよ。
もし里帰りを考えておられるなら、妊娠初期のうちに申し込んでおいてくださいね。
実家のお母さんに窓口に来てもらってください。

さて、忙しいと言いながら、産科のパンフレットを新しくしてみました。
アメリカの企業でビスタプリントというサービスが有ったのですが、
突然サービスが終了されて、印刷データがすべて飛んでしまったのです。
日本の企業だったら大問題になっていたことでしょう。
それで一から作り直したというわけです。
先月は美容皮膚科のパンフレットも改訂したところなのですけれどね。

開業当初から、ホームページや看板、折り込み広告、パンフレットや母親教室のテキストブック、様々な入院カルテなどもすべて私が作成しているのですよ。
カルテなんて2年ごとに点数が変わるので度々修正するのですよ。
そうそう、クリニックの基本設計も私の作成です。
いろんな業者に持って行って、ようやく建ててもらえるところを探したのですから。

それで今回は産科のパンフレット作りです。
私はこれがこれまでの産科の集大成だと思って作成してみました。
長年撮りだめた写真なども使っています。
分娩費用や分娩数や帝王切開の数なんかも最新のものを使いました。
とくに今回のテーマは、家族で赤ちゃんを迎える、ということでしょうか。
それでお父さんも写真に入ってもらったというわけです。

最近はせっかく赤ちゃんを産んでもすぐに離婚するカップルも多いです。
そもそもシングルで産むお母さんも多くなりました。
でもね、やはり子供を残すというのは、愛を残すということなのです。
愛とは1人では成立しないのですからね。

早産は予測できません

2023-03-03 20:18:49 | 産科
昨日の夜の7時ごろに、タマル産のベランダから木星と金星のランデブーを撮ってみましたよ。
昨日ほどではありませんが、今も西の空に2つの明るい星が並んでいるのが見えます。
覗いてみませんか?
だって次は40年後なのですから。

とその後、夜中のことですが、神戸大学まで救急車で妊婦さんを搬送してきました。
タマル産で2人赤ちゃんを産まれていて、今回が3人目を産むはずだったお母さんなのですが、妊娠29週に突然の破水です。
推定体重は1500グラムくらいと小さいのです。
おそらく今頃、帝王切開になられていることでしょう。

残念ながら、切迫早産や前期破水を予測することは困難なのです。
予定日が近い妊婦さんでさえ、いつ生まるかとよく聞かれるのですが、
そんなことはなかなか分かりません。

それでもいくつか、知見は有るのですよ。
何十年も産婦人科医をやっていると、分かってくることが有ります。
妊婦健診の数日後に破水したり陣痛が始まったりすることが多いのです。
だからタマル産では、妊娠34週までは内診をしないのです。
他院ではどうですか?
毎回、内診が有るのではないですか。
内診をしないので、タマル産では早産が少ないのかもしれません。

他院では、早産しないかどうか、子宮の出口の長さを測るでしょう?
ですが京大の関連病院の共同研究では、頚管長では早産を予測できないと結論されたのですよ。
それでもどこの病院でも、早産を誘発するかもしれないのに、頚管長を測るでしょう?
1つだけ言えるのは、妊娠中期に25ミリより長いと、早産しにくいので、早産しにくいという太鼓判には使えそうです。
逆に短い場合は早産しやすいかといえば、早産しない方がずっと多いのです。
だから短いからとすぐに薬を出されたり、入院させられるのは、過剰医療ということになりますよ。

早産とは逆に予定日が過ぎそうな妊婦さんや、予定日より少し早めでも大きな赤ちゃんを妊娠している時は、健診時に少し強めに内診します。
医学用語的には卵膜剥離という手技ですよ。
するとたいていその日の夜か次の日には陣痛が始まるのです。
それでタマル産では予定日超過で陣痛誘発をすることが少ないのです。
他院ではよく入院して誘発するのですよ。

結論として、早産は予測できません。
ですがみなさん、妊娠中でも仕事をしますよね。
短時間にするとか、職場の中でも軽い仕事に配置換えしてもらうなどの工夫は必要でしょう。
早産して赤ちゃんに障害が残れば、一生悔やんでしまうことになりますからね。
あるいはすぐに離婚して、1人で育てなくてはならなくなったりしますからね。

木星と金星のように仲睦まじく、仕事と家庭を無理なく両立させてくださいね。
そうそう、昨日からタマル産では、ツバメの巣作りが始まりましたよ。
いつもの巣を少し手直しするようですね。