タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

妊婦のメンタルヘルス

2016-06-29 21:06:59 | 産科

篠山市黒岡の「いちか」ちゃん、5月20日生まれ。
「芯の有る、自立した子になってください。
皆さん、優しかったです。」

ひらがなの名前なのですね。
お母さんもそうなのですよ。

久しぶりに梅雨らしくなりましたね。
そんな雨の中、タマル産のツバメたちは巣から旅立っていきました。
すぐに大きくなってしまうのです。

このブログ、1日の読者は300人前後も有るのですよ。
ときどきボート部の先輩産婦人科医から電話がかかってくるのです。
ブログを書き上げた瞬間なんかにです。
今日も電話がかかってきて、質問攻めですよ。
ということでプロにも読んでいただいているブログ、ということですね。
責任重大ですね。

今日は妊娠中のメンタルヘルスについて、書いてみましょう。
というのも最近も産後に心療内科に紹介したお母さんが続いたものですから。

ちょうど昨年と今年、日本産婦人科医会から、
周産期メンタルヘルスケア推進に関するアンケート調査、というのが有ったところです。
とくに日産婦の今年の目標は、メンタルヘルスと自殺予防のあたりにあるようですよ。
たしかこのアンケートも回答したように思います。
結果をお知らせしてみましょうか。

妊娠中に精神疾患と診断されていた妊婦さんはどれくらい居られると思われますか?
数パーセントだと思われますか?
実は30%なのですよ。
3人に1人は精神疾患ということになりますね。
精神科で薬を処方されている女性も多いです。
大規模なアンケート調査の結果では、約18%の女性が精神科の薬を服薬されています。

妊娠してから薬の副作用を心配される女性も多いのですが、
こんな時は1つづつ薬を調べてあげます。
それで納得されれば服用を続けられたり、授乳は諦めたりされることも有ります。
もちろん主治医と相談してからですけれど。
勝手に飲まなくなる女性も居られますからね。

昨年と今年の2年だけの調査ですが、変化が有ったのは、
要支援妊婦が増えていることと、
支援が必要な場合に自院で診るよりも、精神科に紹介する割合が増えていること、の2点です。

要支援が増えているのは、産婦人科医のメンタルヘルスへの関心の高さが高まったからと言われます。
確かに、いろんな折に広告されますからね。
そして精神科に、より早く紹介するのも、産婦人科医や助産師が単独で診ていては、
バッシングされる時代になってきているように感じていることと合致します。
これも自殺予防という観点からは、自然の流れなのでしょう。
ただし私個人の意見としては、あくまで産婦人科医も関わった方がいいとは思っています。
赤ちゃんとの関係も有りますからね。

赤ちゃんを産むということは、女性にとっては人生の一大事なのですよ。
お産は命がけ、と言いますが、肉体的にもそうでしょうけれど、
実は精神的にもそうなのです。
産後に統合失調症やうつ病を発症することが、とても多いのですよ。
お産を機に、働けなくなる女性も多いです。
あるいは産む度にやつれていったり、それがもとで離婚されたり。
男性は一生をかけてサポートしていかなければならないのにね。

おそらく皆さんが想像されている以上に、お産におけるメンタルヘルスのダメージは大きなものが有りますよ。



不妊治療セミナーの報告

2016-06-27 18:55:50 | 不妊症
昨日は、梅雨の合間に、お隣のお菓子の里さんにて、不妊治療セミナーを開催しました。
そうですね、30人くらいの方に参加していただけました。
カップルでの参加がもう少し多いかと期待していたのですが、
女性1人での参加の方の方が多かったかもしれません。

丹波新聞社さんから原稿を依頼されたので、いつもとは違う形式で書いてみました。
それが下に有る原稿なのですが、
投稿後に「没」になってしまったのですよ。
ちょっと力をいれて、なるべく一般の読者の方向け、ということでね。
没になった理由は、セミナーの報告ではなく、
一般的な不妊治療のことを書いてください、とのことでしたよ。
なんだ、それならそうと初めに言っておいて欲しかったのですが。
せっかくですから、没になった原稿を載せさせていただきます。

*******

私、タマル産婦人科院長と、扇町ARTレディースクリニックの朝倉寛之院長との出会いは、27年も前の話です。天理よろづ相談所病院の産婦人科医局で、同じ師から手ほどきを受けた仲です。産婦人科としては私の方が1年先輩になりますが、医師としては朝倉先生が逆に1年先輩になります。先生はその後米国に渡り臨床で准教授までされたほどの先生です。帰国後北野病院で副部長をされ、高度不妊治療のクリニックを開業された噂は聞いていました。私の方は京大病院で不妊外来を担当し、塚口病院を経て開業しているので、道は共通していたと言えるでしょう。篠山にはちょくちょく食材を仕入れに来られているようです。

お菓子の里丹波に篠山市と丹波市の健康課の方にも参加いただけ、施設を飛び出して公的な集会となったことは幸いです。一般の方にも参加していただければなお良かったのですが、まだまだ不妊症という言葉に抵抗が有るようです。このセミナーの目的の1つは、仕事を早退や遅刻しやすい環境を作ってあげたり、隠れて治療しなくてもよい社会を築くことです。

タマル産婦人科の不妊外来からお知らせしたのは基本情報で、不妊症の定義が昨年から1年に短縮されていることには驚きの声が漏れました。加えて月経不順や月経困難、35歳以上の方では1年待つことなくすぐにでも受診する必要が有ること、在宅での治療が保険認可され、男性不妊治療でさえも大きな改善をしていること、最近の動向として治療は1年以内、年齢を考慮して数ヶ月以内としていること、治療成績は一般不妊治療だけでも8割前後にもなることなどを説明しました。それでも妊娠されない場合はさらにステップアップして、高度不妊治療を受けます。

ここから扇町ARTさんの話に移ります。兵庫県とくに丹波や豊岡での助成制度の充実ぶりが大阪との違いのようです。加えて領収書や通院の電車代も控えておいて、医療費控除の手続きをすればかなり節約できるというお話です。体外受精のメリットは、自然妊娠よりも高い妊娠率を得られることです。

これからの時代、施設連携によって、卵胞刺激の副作用への対応、うまく妊娠した時の切迫流産への対応など、補間した治療ができることがメリットです。扇町さんでは通院しやすいように丹波圏の実情に合わせた治療時間まで設定されました。地方と都市を結んだ不妊の医療連携は、これまでに存在しなかった初めての試みです。

尖圭コンジローマと帝王切開

2016-06-24 21:26:27 | 婦人科

タマル 産の庭のラベンダーが急に大きくなって咲き出しました。
キョウチクトウの桃色の花もチラホラと。
ツバメの赤ちゃんもいつの間にか5羽に増えていましたよ。
季節は巡るものですね。


ところで今日は突然、表を載せてみました。
今、作ってみたのですよ。
これは国立感染症研究所が、昨年の1月から6月までの全国のデータをまとめたものを、
私が一覧表にしたものです。

全国2,501の分娩取り扱い施設にアンケートをしたものです。
タマル産もデータを送りました。
1,841施設からの回答で、実に73.8%の解答率ですから信頼できますね。

この間の分娩数は244,887人ですよ。
これは日本の、この期間の分娩数の約50%にあたる分娩数です。
すごくおおがかりな調査だったというわけですよ。

まず1列目が年齢別の分娩数です。
お産をする女性は、なんと30代が最も多いですね。
20代ではないのですよ。

2列目は、出産した女性の中で、尖圭コンジローマという病気に罹っていた人数です。
3列目は罹っていた割合です。
結果は、19歳以下で出産する女性は少ないですが、
その中で、尖圭コンジローマに罹っている割合は、30代女性の10倍以上だということです。
若くて産む女性は、性感染症によく罹っているということですね。

4列目は、すごく意味の有ることなのですが、
尖圭コンジローマに罹っていると、こんなに多くの女性が帝王切開で産んでいるということです。
性感染症に罹ったままお産すると、赤ちゃんにうつってしまうからですね。
そうすると、赤ちゃんの生命に関わるからです。
仕方なく帝王切開するのですね。
他にも、ヘルペス感染症なども帝王切開するのですよ。
あるいはエイズとかですね。

5列目は、結局、若い女性では、この性感染症がもとで帝王切開することがよくありますよ、
という結論でした。
怖いでしょ?

そうそう、昨日も、若い女性で、まだ未婚の女性でしたが、
尖圭コンジローマで、手術をしましたよ。
外陰部や膣、肛門などに、イボがたくさんできる病気です。
部分的なら切除します。

範囲が広いと、最近は炭酸ガスレーザーで焼却していますよ。
塗り薬というのも、最近保険適応になっているのですが、
これがあまりスッキリとは治りませんね。
以前は自費診療で、ポドフィリンという薬を塗っていたので、
それよりはましかもしれませんが。

こんな病気をもらわないようにするにはどうしたらいいか分かりますか?

不妊治療は男性の協力が必要です

2016-06-22 20:23:13 | 不妊症

上の写真は、篠山市真南条中の華月(かづき)ちゃん、5月17日生まれ。
「世界人となってください。
お産は幸せを感じました。
お料理がおいしかったです。」

お兄ちゃんに妹が生まれましたね。
皆さんのお産はどうでしたか。
ただ痛いだけではなかったでしょう?
赤ちゃんを産んだ喜びのようなものが、湧いてきたのを覚えていますか?

さて、何度もお知らせしているのですが、次の日曜日はお菓子の里さんで、
「不妊治療セミナー」を開きますからね。
時間はお昼の2時から2時間を予定しています。
まだ間に合いますから、こんな機会は滅多に無いので、ぜひ参加してください。

当日は大阪の扇町ARTレディースクリニックの朝倉院長と、看護師長さんが来られます。
篠山市の健康課と丹波市の健康課の方も来られるので、
この機会に、助成金のことなんかも相談されてもいいかもしれませんよ。

話の内容は、基本的な不妊症の定義や検査、治療に始まって、
専門的な体外受精や顕微授精、日常生活の話から、体外受精にかかる費用のことまで盛りだくさんです。
すでに不妊治療を受けておられる方は、復習、予習になりますし、
未婚の方でも興味が有れば聞かれてもいいかもしれません。
お申し込みはこちらから。もしくはお電話にて。
http://www.tamar.jp/#!blank/apoi7

それでは今日は、不妊の検査について、一言書いておきましょう。
不妊症の検査は、初診で来院されてから、
月経周期の規則正しい方ですと、1ヶ月ですべての検査が終わります。
不規則な方や、仕事でとびとびしか来院できない方は、2、3ヶ月かかることも有りますよ。

検査はたいてい保険が利くので、費用は3万円ほどだけです。
受診回数は、この間、7回くらいが平均的でしょうか。
ほとんど女性側がする検査ですが、
男性にも精液検査をしていただかなくてはなりません。
それと性交後検査、あるいはヒューナーテストと言って、
排卵期頃の夫婦生活の翌日に女性が来院してする検査も有ります。

検査に困難なものが有るとすれば、この精液検査でしょうか。
男性の場合、どうも検査を拒否する方が居られるのですよ。
なぜだと思われますか?
少し、自信が無いのだと思いますよ。
なかなか妊娠しないのが、自分のせいではないかと考えるのですね。
実際、原因の半分近くは男性側ですからね。
ですが、治療が有るということを初めに言っておいてあげないといけませんね。

次に治療のことですが、
今までは、仮に男性側に原因が有ったとしても、
治療するのは女性側だったのですよ。
精子が殆ど居ない無精子症という状態では、
顕微授精という治療をする必要が有ったのです。
それでもそういう時は、男性は、精子を持参するだけでいいのですよ。

ところが昨年から治療は大きく変わっています。
男性の無精子症に対してのホルモン療法が保険適応となったからです。
このあたりは、来週の不妊セミナーでお話しようと思っているのですよ。
詳しいことは、ぜひセミナーに参加して聞いてくださいね。
と、ちょっと予告だけして終わっちゃいましょう。

新生児モニター揃えました

2016-06-20 20:44:08 | 産科
今日は、月に一度のマタニティヨガクラスでしたよ。
よければ皆さんも参加してくださいね。
妊婦健診中の女性は、無料で受講できますからね。

今日、2年ぶりに外来に来られていたお母さんなのですが、
1人目をタマル産で産まれ、2人目も健診されていたのですが、
妊娠27週の時に心臓の奇形を発見したので、大きい病院に紹介したのですよ。
その後、予定日くらいに経膣的に生まれて、体重も十分で、
赤ちゃんのうちに3回も手術が必要だったのですが、
今は2歳になって、元気にしている写真を見せていただいて、感激しましたよ。

3回目の手術の後で、鼻からはまだ経鼻チューブで酸素を吸入していたのですが、
おもちゃで遊んでいるようでしたよ。
また、早く見つけてあげられたことを感謝されていてもらえたのが、
有難かったです。

心臓の心室は右と左に1つづつ有るのが普通ですが、右だけが大きくて、
心室から出る血管も右室からは肺動脈、
左室からは大動脈が出るのですが、
2本の血管とも右心室から出ていたのですよね。

以前、もっと大きな心奇形の胎児が居て、
ひどくなると、心不全になるので、体に水が溜まってくるのですよ。
割と早い週数だったのですが、こども病院に紹介して、
残念ながら妊娠を継続することができなかったことも有ります。

逆に、生まれるまで分からなくて、
生まれてからチアノーゼが出て、NICUに搬送したことも有ります。
すべてが事前に分かるというわけではないのですが、
この時は、感謝してもらえないどころか、怒られていました。

生まれてすぐは元気なのに、
生まれて1日ほどした時に、急に色が悪くなることが有るのです。
それは胎児循環に関係しているのです。
お母さんのお腹の中では息をせず、肺の中は肺水という水で満たされています。
だから肺に行く血管には血液が流れず、
左右の心房の短絡路と、肺動脈と大動脈をつなぐ動脈管という短絡路によって、
動脈血と静脈血が混ざっています。
それが生後24時間ほどすると、この短絡路が閉じてしまうのですよ。
この時に心臓に奇形があると、急に症状が出てくるのですね。

天理よろづ相談所に居た時ですが、
他の先生が主治医の赤ちゃんだったのですが、
生後1日目に急に真っ黒けになり、こういうのを全身チアノーゼと言うのですが、
すぐに小児科に入院になったことが有りますよ。
1万人くらいの赤ちゃんを見てきてそれくらいなので、そう頻度は高くないということですね。

ここ数年、タマル産では新生児酸素飽和度モニターで、生後すぐにすべての赤ちゃんで検査してきました。
これで、早期の異常が発見されることが有るからです。
そして最低生後24時間は、新生児モニターでも、体の動きを検知するモニターで検査してました。
退院する頃にはそこまで必要としていないので、4台だけ置いていたのですが、
この春からモニターを12台に増やし、
全員の赤ちゃんが、退院までずっとモニターできるようにしたのですよ。
これで入院中は、さらに安全性が増したということです。

退院してからは?
それほど神経質になる必要は無いと思うのですが、
最近では病院と同じモニターが市販されていて、ネットで購入できます。
SIDS(乳幼児突然死症候群)になるのは、
やはり家庭に喫煙者が居る場合が多いようですからね。
ご主人が喫煙者の場合は、買ってもいいかもしれませんね。
だんだん重武装になってしまいますね。