タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

人工授精に遠心フリーのミグリスも使用します

2022-06-24 20:33:25 | 不妊症
梅雨が明ければ、お中元の季節ですよ。
毎年贈っているのは、神戸の英(はなぶさ)レディースクリニックの理事長の塩谷先生と、
小野市の小野レディースクリニックの小野先生と江見先生です。
塩谷先生と江見先生は、京大病院で研究時代を過ごした先輩ですからね。
京大で初の体外受精を成功させた時代でした。
東京で梅ヶ丘産婦人科を開業された辰巳先生も当時の先輩で、日本における体外受精の第一人者の1人です。
その後お会いした時に、著書の「よくわかる不妊治療」というマンガ本を頂きましたよ。

その辰巳先生が、コンタクトレンズ会社のメチコンと開発されたのが、
人工授精用の「ミグリス」という使い捨ての運動精子選別装置なのです。

前回の人工授精の記事で、タマル産では一般的な密度勾配遠心法という方法で精子濃縮をしていると書きました。
その中でもミニパーコル法と言って、遠心回数を2回から1回に短縮させる方法を取っています。
それはより細い遠心管のニプロのキットを併用しているから可能なのです。
遠心機にかけると、少なからず精子にダメージを与える可能性が示唆されていますから、
2回より1回の方が優しい治療と言えるからです。

さらに今回、遠心機にかけないスイムアップ法を改良した、遠心フリーの運動精子選別装置が発売されたというわけです。
原理的には簡単で、元気に泳ぐ精子が塀を乗り越えて隣の培養液に泳いできたところを捕まえるのです。
ただ細い管を作るのが技術的に難しかったのですが、これを辰巳先生のアイデアでメチコンが開発したというわけです。

英レディースや梅ヶ丘産婦人科のデータでは、どちらの方法も精子回収率や妊娠率には、あまり差が無かったようです。
ただし高年齢の女性には、今回の装置の方が妊娠率は高くなることが示唆されたようです。
さっそくタマル産でも、この方法を試してみることにしましたよ。
しばらくはどちらの方法を採るかは、ランダムにこちらで決めさせていただきます。
デメリットといえば、今度は1時間以上時間がかかりますから、
朝の8時からでは、9時に終わりそうにないので、仕事に遅刻して行かれる方には、もう少し遅れるかもしれないですね。

人工授精は30年ほど前までは、精子を原液のまま、子宮内に入れていたのです。
ほとんどは流れ出てきてしまうので、ロスが多かったのですが、
その他にも感染のリスクが高く、抗生剤が必須だったのです。
今でも原液のまま人工授精をしている施設が有りますが、それではこの春から認められた保険診療の適応ではないので、2万円ほどしますよ。
4月から保険診療が認められているのは、密度勾配遠心法と、スイムアップ法の2種類だけですからね。
タマル産ではどちらの方法もこれで可能となり、しばらくはランダムに決めますよ、というお知らせでした。
費用はどちらも3割ですから、5,460円プラス診察料や注射料です。


エステでは永久脱毛してはいけないの?

2022-06-17 20:38:36 | 美容医療
夏も近づいてきましたから、脱毛のお話をしましょう。

タマル産では医療脱毛をしていますよ。
医師の指導のもと、看護師が施術しています。
毎年のように、ダイオードレーザー脱毛機を更新しているのです。
性能が日進月歩で上がりますからね。

ところで電車や道端の広告で、エステの宣伝をよく見かけますね。
え、そんなに安いの、と驚いてしまいますよね。
ですがそれにはもちろん仕掛けが有るので、騙されないようにお話しておきましょう。

まずエステでは「永久脱毛してはいけない」のです。
驚きませんか?
脱毛しに行っているのに、脱毛してはいけないのですからね。
永久脱毛するためには、毛根を破壊しなければならないのですが、
これは医療行為なので、エステでは禁止されています。
だからエステで治療して、また生えてきても、それが普通なのです。

ただし永久脱毛の定義は、3回の施術で、半年後に3分の2以上減っていることです。
永久に1本も生えない、という意味では有りませんからね。
だからタマル産では、3回の施術で1クールとして行っているというわけです。
1回や2回ですぐにやめて、効果が感じられないで終わらないようにです。

次に治療の目安ですが、1ヶ月に1回施術を受けるとすれば、3ヶ月で終了です。
3分の2でなく、もっと完璧にということであれば、2クールで半年が必要です。
同じ効果をエステで受けるなら、永遠に終わりませんが、
ある程度減毛するという意味では、2〜3年通わないといけません。
気の遠くなる話ですし、それでも効果が十分でないと感じたら、
さらに追加料金が必要になり、若い人がカードローンに苦しんでいるのが問題になっているようです。
結局エステでは、高くかかりますからね。

脱毛とは毛根に熱を加えることですから、多少のやけどは起こり得ます。
タマル産では、医薬品も有りますし、看護師がすぐに対応できます。
もちろん医師も必ず隣の部屋に居ますからね。

最後にもう1つ、医療脱毛の中でも違いが有ることを説明しておきましょう。
都会の有名所では、1台500万から1000万くらいのレーザー機器を導入しています。
ですが、ダイードレーザーの良い所は、工業用の大雑把なものでも構わなくて、
実は安い機器でも構わないのです。
だって、単に毛根を焼き潰すだけなのですから。

よく勘違いされるのは、シミの治療器はヤグレーザーと言って、
短時間に熱を集中させて、副作用を小さくするものですから、原理が違います。
その場合は高級機の方が良いかもしれないのですが、
こと脱毛に至っては、安物の機器で構わないのですよ。
ただし繰り返しますが、エステでは永久脱毛はしてはいけないのですけれどね。

母体救急への対応を学び直しました

2022-06-10 20:28:18 | 産科
タマル産では、久しぶりに夏季研修会を開催することにしました。
ちょうど中学生もトライやるで来てくれていますからね。
夏は母体の救急医療を学び、冬は新生児の救急医療の勉強をしているのですよ。

今と違って昔の研修医は3ヶ月も研修すれば、1人立ちです。
そのわずか3ヶ月の間に、1つ上の先輩医師から医師としてのABCをすべてを学ぶのです。
私にとっての先輩は、今でも交流が有るのですが、
母体救急の本を書かれていて、これを全国の医療機関が学んで、さらに実践しているのです。
タマル産でもアレンジして行ったのです。
だからまた研修させていただいている気分でしたよ。

まず救急蘇生人形での、さまざまなシチュエーションでの対応です。
弛緩出血やケイレン、薬剤アレルギー、心停止への対処の仕方などです。
AEDも7年ぶりに新調しましたよ。
こんなシーンには、本当は出会ってはいけないのですが、
実際はどこの診療所や病院でも起こり得ることなのです。
ですが消防訓練と同じで、一生見ないことの方が多いのですけれどね。


中学生たちにも練習してもらいましたが、
たった1分、心臓マッサージをするだけでも重労働だと感じてもらえたようです。
聞くところによると、最近の運転免許の取得のプログラムには組み込まれているようですね。
心臓が止まったら、4分以内にマッサージを開始しないといけません。
そして8分以内に電気ショックのAEDを始めなければいけないのです。
学校や職場でも、役に立つかもしれませんよ。

皆さんには裏方は見せない方が良いのかもしれませんね。
赤ちゃんは普通に生まれて当たり前と思われているでしょうからね。

今、丹波では妊婦さんの新型コロナ感染が激増しています。
今日も陣痛が始まったのに、隔離中ということで、丹波医療センターに急遽転院されての分娩でした。
せっかくのお産でしたが、見ず知らずのスタッフに囲まれ、赤ちゃんとは別々になり、
ご主人や上の子も隔離中で面会にも来れずです。

それでも予防接種を済ませられている妊婦さんは、比較的軽症で済んでいますが、
予防接種嫌いな妊婦さんは入院になったりされていますよ。
切迫早産になった方も居られます。
今からでも予防接種をされていない妊婦さんは受けてくださいね。
お母さんだけでなく、赤ちゃんの身にも危険が迫りますからね。


帝王切開は安全か

2022-06-03 21:30:15 | 産科
この1ヶ月はとくに、たいへんなお産が続きました。
それでも帝王切開は1年ぶりに1人、有っただけです。

私も開業する前は、兵庫県立病院で勤務していたので、
病院と診療所の違いは、誰よりも分かっています。
今、全国の病院では帝王切開は3人に1人くらいなのです。
診療所では5人に1人くらい。
病院と産婦人科診療所は半々ですから、平均して4人に1人くらいが帝王切開で産まれています。

世間の方は、最近では帝王切開した方が安全だと、誤解されることが増えてきましたね。
裁判所や報道機関も、トラブルが有るとなぜ帝王切開しなかったんだ、という論調になりますからね。
ところが近年帝王切開が増えることによって、違う問題が起こってきているのをご存知でしょうか。

帝王切開はお腹の皮だけでなく子宮を切るのですから、切った所が薄くなります。
次のお産の時に破裂することが有るので、次も帝王切開になってしまいますね。
妊娠していない時にも不正出血や月経期間が長くなったりすることにもなります。

子宮を切った部位の内側の凹んだ部位に、受精卵が着床する瘢痕部妊娠は、
胎盤が剥がれなくて、帝王切開時の大量出血に繋がります。
輸血をすることも増えるし、入院期間も長引くことになるでしょう。
あるいは子宮自体を取ってしまわなくなることも有ります。

私が開業した大きな動機の1つは、帝王切開は非人道的だなと思っていたことです。
帝王切開の方が安全だと妊婦さんや家族、自分にも言い聞かせて、すぐに帝王切開する医師が多すぎます。
ですからタマル産では数十年かけて、なるべく無駄な帝王切開を無くしてきました。
それで今では100人に1人か2人くらいしか帝王切開をしていないのです。
こんな施設は世界広しと言えど、無いのではないでしょうか。

経膣的に産むと、産後2時間もすれば普通に歩けるし、
退院も早いし、入院中に子育ても学べます。
何より、産んだという満足感も得られますよね。
輸血しないといけないお母さんも、他院の数分の1ですよ。

今週も3人、たいへんなお産が続きましたが、みなさんちゃんと産まれましたよ。
他院でなら3人とも帝王切開になっていたでしょうね。
何度も言いますが、私も県立病院で働いていたから分かるのです。
どんなお母さんが帝王切開になられるかを。