タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

ルワンダにも愛を

2018-10-31 20:37:35 | つれづれ
写真は、先週生まれた赤ちゃんですよ。
お兄ちゃんが嬉しそうでしょう?
ずっとお産も付き合っていたのですよね。

昨日生まれた赤ちゃんも、お母さんが入院してすぐに生まれたのですが、
ずっとお兄ちゃんが付き添っていましたよ。
というか、ウロチョロしていました。
でも生まれて赤ちゃんが大泣きしたら、つられてお兄ちゃんも大泣きでした。
びっくりしたのでしょうね。
お父さんが遅れてやってきて、ようやく落ち着きましたからね。
大きくなっても覚えていてくれることでしょう。

タマル産では、いろいろとボランティア活動を行っているのですが、
みなさんにお配りしている、ハーファミリーという雑誌が有ります。
タマル産の待合の本棚にもバックナンバーを1年分置いているのです。
このコーナーで、各地での女性活動を紹介しているページが有るのですよ。

その中で、我ら尼崎チームでは、アフリカのルワンダを支援しているのです。
ずっと以前から現地に入っているのですよ。
今もメンバーがアフリカに飛んでいます。
現地でニューホープ技術専門学校をを建設しただけではなく、
そこの女性たちに、手仕事の教育をしているのですよ。
例えば服をミシンで縫うとか、お土産品を作るとか。

ルワンダって、どんなところかも知らないでしょう?
それでタマル産の職員一同で、毎朝「生かされて」という本を2巡、読んだことが有るのです。
内戦というより、虐殺が起こった国なのです。
現在はだいぶ様変わりしているようですが。
本が苦手なら、「ルワンダの涙」という映画も有ります。

毎年年末に、宝塚市立西公民館でチャリティーコンサートを開いています。
ルワンダに愛を、というテーマでやっているのです。

今年は12月8日の土曜日の13:30〜16:00まで、どなたでも自由に入れます。
ギターやピアノ、コーラスが有るようです。
シューベルティアーゼ丹波には負けるかもしれませんが、
その趣旨では勝負できますからね。
ファッションでしているのではなく、心が慟哭するような心情で応援しています。

明日から11月、ちょっと年末気分になってきましたね。

3人に1人は、しんどいお産です

2018-10-29 21:15:17 | 産科
写真は、篠山市味間南の弘英(こうえい)くん、9月25日生まれ。
「優しい子に育ってね。
みなさん、優しく、丁寧でした。」

初めてのお産でしたからね。

先週から今週にかけては、4人連続でしんどいお産でしたよ。
4人中3人がへその緒が巻いていたからです。
1人は首に2重、1人は首に1重、1人は右足に1重、
もう1人は巻いていなかったのですが、早くから心音が下がるのですよ。

4人連続で何時間も私が付きっきりのお産でした。
助産師や看護師も一緒にです。
物凄く気を使いながらお産を進めていきます。
他院であれば、この4人のうちの何人かは帝王切開になったことでしょう。

なぜ分かるのかと言えば、県立塚口病院に勤務していた時に統計を取ったことが有るからです。
過去10人ほどのドクターの統計を取ると、
ほとんどの先生の帝王切開率は30%代だったのです。
1人だけ部長は40%代でした。リスクは犯さない先生でしたからね。
そして1人の先生は20%代でした。
そんな中で、私の患者さんだけ10%代だったのですよ。

当時はさかごや前回帝王切開のお母さんは全員が帝王切開という部長の方針下で10%代でしたが、
今では自分で方針で決められるので、さらに帝王切開率は下がり、
5〜7%程度になっています。

このように帝王切開率が低いのは、リスクの高いお産では、付きっきりでお産するからなのです。
ただしリスクが低いお産の時は、生まれる時にしか顔を出さないことも有りますよ。

ではリスクが高いか低いかはどうやって見分けるか、をお話しましょう。
胎児心音というのは普通は1分間に120回以上打つのですが、
へその緒が巻いていて引っ張れると、60回くらいまで落ちることが有るのです。
たいていはお腹が張った時に、胎児が降りてくるので、へその緒が引っ張れて、
胎児がしんどいと言う信号を送るのです。

60の法則と言って、心拍数が60以上落ちるか、
60以下まで落ちるか、60秒以上続くと、高度一過性徐脈という言い方をします。
これを見ると、ヒヤヒヤものなのですね。

ですが、へその緒が巻いていることによるので、
お母さんが右に向いたり左に向いたり、
寝ていたら座ったり、その逆をしたりといった体位の変換で改善することも有ります。
子宮の口が6センチも開いていれば、手助けすることによって、
すぐに10センチまで開いてあげることも可能です。
分娩の時間を短縮してあげることで、しんどい時間を短くすることができるのですね。

注意点としては、へその緒が首に巻いていると引っ張れて、
たまに逆回転をすることが有るので常に頭に置いておくことです。
お母さんのお尻側を向いて生まれてくるはずが、
お母さんのお腹側を向いて生まれようとすることが有るのです。
この場合は分娩の進行が停止してしまいやすいのです。
すると吸引分娩か帝王切開で産むことになるのですね。
経産婦さんであればなんとかそれでも生まれることも有りますよ。

先進国では3人に1人が帝王切開で産んでいます。
へその緒が首に巻いている確率も4人に1人と言われます。
ですが足に巻いていたり、巻いていなくても引っ張れていたりすることも有るので、
結局は3人に1人くらいがしんどいお産になるのですね。
しんどい場合は、世間では無理をせずに帝王切開されているのです。
タマル産ではそんなお母さんでも、なるべく産ませてあげようと頑張っているのですよ。

先日、へその緒が巻いていて心音が下がる初産婦さんにそのリスクを説明したのですが、
タマル産ではそれでも帝王切開は少ないのでしょう?と返されました。
いえいえそういうことではなくて、
リスクを下げるのはタマル産に来たら自然に下がるのではなくて、
それなりの努力をしないといけないのですよ、と理解して欲しかったのですけれどね。

というわけで、今日もしんどいお産でしたが、
無事に生まれてほっとしているのですよ。

妊娠初期のエイズ検査

2018-10-26 21:10:56 | 産科
写真は、柏原町挙田の剛瑠(たける)くん、9月21日生まれ。
「優しくて、賢い子に育ってください。
お産は安産で良かったです。
いろいろ相談に乗ってもらえて安心できました。」

とても強そうな名前です。
ヤマトタケルの神様から来ているのかな。
私が子供の頃育った近江一ノ宮には、ヤマトタケル神が祀られていましたよ。

さて、今日のお話は、HIV感染妊娠のお話です。
というのも、HIV母子感染全国調査研究報告書、平成29年度版というものが送られてきたからです。
今、大きな問題になっているのは、風疹だけでなく、梅毒の母子感染ですね。
なので、エイズは忘れられがちですが、とても重要な問題なのですよ。
毎年10月は、性感染症の報告時期なのですが、
タマル産では珍しく新規感染者が居られませんでしたよ。喜ばしいですね。

最近は妊婦健診に助成券が使えるようになったので、
検査を受けていない飛び込み出産の女性は減りましたよ。
だから妊娠初期に血液検査を受けないという人は、ごく一部の特殊な状況下の人だけになりました。

それで報告によれば、妊娠していてエイズの検査で陽性が判明した数は、
毎年40人程度です。
おもに東京圏と愛知、大阪に集中しています。
人種では、以前は日本に滞在するタイ人に多かったのですが、
現在では半分以上が日本人で、最も多いのです。

もし妊婦さんが感染していても、帝王切開で産めば、赤ちゃんへの感染を1%以下にできるのですよ。
ですから感染していても、赤ちゃんを授かることを諦める必要はないのですね。
ところが外国人や低収入などで健康保険に加入していない人や、
未婚などで妊婦健診を受けていなかったり、自宅出産の人では、
もちろん帝王切開率は下がるので、母子感染率は上がっています。

妊娠中でも、抗ウィルス薬をお母さんに投与してよくて、
投与することで、ウィルスの量が1/100以下と効果が出るのは、34.9%も居られるのですよ。
ちゃんと妊婦健診を受けて、血液検査が必要なのは当然でしょう?

1つ、注意が要るとすれば、妊婦健診でまず受けるエイズの検査は、
スクリーニングテストです。
スクリーニングとは、とにかく漏れが出ないように、多めに陽性になるように引っ掛けてくるということです。
ということはエイズでもないのに、エイズの検査が陽性や偽陽性になるという意味ですよ。
初回の検査で引っかかると、仰天される方が多いのですよね。
ところが、スクリーニンが陽性でも、確認検査の精密検査をして初めて感染が判明するのですが、
その割合はすごく少ないのですよ。
ほとんどは偽陽性なのです。
だからスクリーニングで陽性や偽陽性になっても、すぐに心配する必要はないのです。

タマル産では過去20年近くで2人の妊婦さんが偽陽性になりました。
1人は日本人で、ご主人が大阪で遊びに行ったことが有るとか。
もう1人はフィリピン人でした。
だから可能性は有ったのですが、精密検査は大きな病院に紹介しましたから、
その後の経過は不明なのです。
プライバシーに関わることは、こちらにも教えてもらえないのですよ。

これからの方向としては、
エイズの治療が進歩したことで、治療奏効例では経膣分娩も考慮していくようです。
そして我々医療者側が、一次検査の意味を十分に知って対応していかないといけないということです。
とくに看護職や一般職員はプライバシーを重視することと、
スクリーニング検査の意味をよく理解しておかないといけませんね。

結局、エイズにしろ、梅毒にしろ、性感染症は避けられる病気なのですよ。
簡単です。
夫婦でだけ夫婦生活をしていれば良いのですから。
いつもそうお教えしていますよね。



円錐切除後の不妊治療

2018-10-24 20:53:36 | 不妊症
篠山市今田町の実里(みのり)ちゃん、9月20日生まれ。
「共に助け合って、実りある生き方をしてください。
家族全員で立ち会えたので、良い思い出となりました。
リフレクソロジーを体験できて良かったです。」

女の子ばかり4人姉妹になりましたね。
今は子育てがたいへんでも、将来はそれに感謝できるようになるに違いありませんね。

今田町と言えば、今は陶器祭りの時期ですね。
タマル産で産まれた、こちらは男の子3人の家庭でも、篠山の東の方の新庄というところで、
栗田庄平陶器展をこの22日から28日まで開催されているということです。
興味の有る方は覗いてみてくださいね。

さて、今日も外来では、不妊外来の患者さんは絶えませんでしたよ。
初診の女性は、子宮頸部の円錐切除術を受けて、1年半ほど経つそうです。
そうなのです、最近は若くても、子宮頸がんや、子宮頸部高度異形成で、
このように子宮頸部を一部切除する方がとても増えたのですよ。

また先日タマル産で産まれたお母さんは、妊娠初期の子宮頸がん検診で異形成を疑われたのです。
妊娠中にもがん検診で悪化していないか確認しながら、
産後に県立柏原を紹介したので、おそらく円錐切除術を受けることになるでしょうね。

このように、不妊症や妊娠で受診されると、けっこうの率で子宮頸がん検診で引っかかります。
本当に多いのですよ。
逆に言うと、結婚されていないと子宮頸がん検診を受ける機会を失い、
子宮頸がんが進行してしまう、という可能性も有るのですよね。
ですから独身の若い女性ほど、毎年子宮頸がん検診を受けて欲しいと思うのですよ。
先日も10代の女性なのに、異形成でしたからね。

話を戻して、子宮頸部を切除した後に赤ちゃんが欲しいとなれば、
きちんとした治療をしなければなりません。
他院で1年ほど、ダラダラとクロミッド療法だけを受けられていたようです。
クロミッドは確かに良い薬なのですが、3ヶ月もすると効果が落ちてきて、
子宮頸管からの分泌物も減りますし、子宮内膜も薄くなってかえって着床しにくくなるのです。
ましてや円錐切除後では、分泌物が少なくなるので、
クロミッドは使用しない方が良いでしょうね。

最近は、乳がんの治療にも使うレトロゾールという薬をよく使用しています。
乳がんに使う、というので、怖いと言って飲まない方が居られました。
でもね、乳がんの治療にはよく婦人科で使う女性ホルモン剤を使うのですよ。
共通しているのですね。だから何も怖がる必要はないのです。

レトロゾールを使い出して、まだそれほど経ちませんが、
たしかに子宮内膜が薄くなるということは有りません。
ただしクロミッドほど卵胞を大きくする効果は強くはない印象です。
何錠まで使用して良いかということも未知数ですね。

むしろ円錐切除後では注射剤も考慮するべきですし、
人工授精は必須かもしれませんね。
切除後で分泌物が少ないと、精子が子宮の奥まで進めないからです。
それに膣は酸性なのですが、分泌物はアルカリ性で中和する効果が有って、
精子が排卵時期だけ生き残れるようになっているのですから。

だから人工授精が必要なのです。
30代なら6回まで、35歳以上なら4回まで、40歳から42歳なら2回までが目安です。
それでダメなら体外受精を考えましょう。

イメージはつかめましたか?
大きい病院と言えども、不妊外来の無い病院も多く、
今日の患者さんのように、1年をまったく無駄にしてしまった、
ということにならないようにしてくださいね。

1000日ルール

2018-10-22 21:54:35 | つれづれ
ジャジャーン、タマル産の砂場に飛行機が登場です。
けっこう大きくてビックリしました。
滑り台も、スピードが出るので大人と一緒に遊んでくださいね。
小さな子は、隣に小さな滑り台も有りますからね。
デザインはちょっと真似をしたのですが、私がオーダーして作ってもらった、クジラの親子なのですよ。
世界で1台の飛行機です。

中はこんな感じで、ちゃんと操縦席も有るのですよ。
さっそく、お姉ちゃんが遊んでくれましたよ。


今日もブログの更新が遅れてしましましたが、
つい先ほど、2人の赤ちゃんが続けて生まれたからなのです。
殆ど時間差だったのですよ。
ちゃんと生まれてくれると、こちらも安心するのですよ。

さて、最近話題の話では、DDHaDという概念が有るそうです。
なんでも略語ですね。
むかし略語辞典というものを持っていました。
医学用語は略語ばかりだからです。
DDHaDとは、Developmental origins of health and diseaseの略のようです。

それをお話する前に、放射線科では10days ルールというのが有ります。
月経が始まってから10日以内なら、お腹の写真や胸の写真を撮っても、
妊娠希望の女性だってだいじょうぶです、というルールです。
普通は14日目頃に排卵して、しばらくして受精するからです。

解剖用語では、この受精を受胎と言うのですよ。
解剖用語と産婦人科用語は2週間ずれていて、
この時、解剖学的には胎生0日なのですが、産婦人科的には妊娠2週と言います。

わざと難しくしてしまいましたね。
この受胎から2歳までが、だいたい1,000日ですよ。
それで first 1,000 days ルールという意味で、
この1,000日間は、その子の将来の疾病リスクを決定する重要な時期ですよ、というものです。

この期間に生じた栄養不足や、汚染物質や薬剤に暴露されたり、
環境因子の影響を受けたりすると、予測適応因子が発達して、
組織構造や生理機能の不可逆的な変化を起こすのです。

これがいわゆる「プログラミング」というのですよ。
メタボリックシンドロームに将来なりやすいだとか、
先日の男脳や女脳が逆転したりするのも、そのせいかもしれません。

今日、外来に来られていた女性は、妊娠する前からタバコを吸われていて、
初回にタバコをやめて葉酸を摂りなさいと指導していたのですけれどね。
すでにプログラミングが狂ってしまったかもしれませんね。
生まれる前からの虐待と言えるかもしれませんね。

昨日なんて、スーパーで買い物をしていたら、
2歳くらいの男の子と赤ちゃん連れのお母さんが、蹴り合って、大声でけんかしていましたよ。
ちょうど1000日くらいの子なのですけれど。
みなさんはだいじょうぶですか?