タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

今年もSTDのご報告

2013-10-30 20:14:40 | 産科
ミッドナイトに弟くんが生まれました。ミッドナイト・イン・タマル。

さて、今日も婦人科のお話です。
今月は全国的にSTDの調査月間だというお話はしましたね。
この1ヶ月のタマル産での新規STDの患者さんは4人居られました。
月に4人だと、1年で50人程度の新患さんという計算になりますね。
多いとお思いでしょうか。こんなものでしょうか。

いつもの年は妊婦健診でたまたま見つかる方が居られるのですが、
今年は皆さん、症状がお有りでした。
たいていは帯下が増えるとか、月経以外に出血するとか、臭いがいつもと違うなどです。

今年の特徴としては、クラミジアと淋菌の混合感染の方が居られたことでしょうか。
これまでは女性で、症状が有る方には、クラミジアの検査をすることが多かったのです。
というのも淋菌は女性の場合、検出率も低く、遺伝子検査も保険が通らなかったからです。
それが数年前からクラミジアと淋菌を同時に検査してもいいことになったのです。
それでも妊娠中のスクリーニング検査はクラミジアしか認められていません。
逆に男性の場合は不思議と淋菌はよく検出されるのですが、
クラミジアもおそらく混合感染しているのでしょうが、検査では検出されにくいのです。
でもそれってへんですよね。女性も男性もどちらの感染症も同じ割合で持っているはずですから。

STD、いわゆる性感染症の特徴は、みんなで同時に治療しないといけないということです。
女性と男性を同時に、また男性がもらってきたのだとすると、その感染源の女性ですね。
そのまた感染源の男性と、ねずみ講式にたくさんの人になるかもしれません。
だから自分だけ治したってダメなわけで、
治ったと思っても、また彼氏からうつされるし、
彼が治療した後にまたうつし返すことだって有ります。
こういうのをピンポン感染と言います。
だから全員同時に、ワンツースリーで治さなくてはね。
内科なんかに行くと、これが徹底されないのですよ。困りますね。

他には今年もまた、ヘルペス感染症の方も居られました。
淋菌なら細菌なので、うまく治療すれば永遠に再発しません。
ただ最近は抗生物質に耐性を持つ淋菌が多いらしいのですが。
クラミジアは細菌よりも小さく、宿主の細胞の中で増殖します。
ですが、こちらもたいてい、1回の治療で治ります。
まれに違う薬を使わないといけないような耐性を持つことも有ります。
ですが、ヘルペスはウィルスなので、その時には押さえ込んで増殖を抑制はできるのですが、
体調が悪い時や、妊娠した時、年をとった時などに、再発することが有ります。
もしお産する前に外陰部に再発していたら、お産はできなくて、帝王切開で産む必要が有ります。
それがお産の前になって、顔を出してくることが案外有るのです。
タマル産でも2度ほど有りました。
もしお産で赤ちゃんに感染すると命取りになります。

ところでヘルペスって、口にできるヘルペスと同じですか?
そうです。単純ヘルペスウィルスと言って、1型と2型の違いは有るのですが、
オーラスセックスで、どちらのタイプも感染します。
では身体にできる帯状疱疹ヘルペスとは同じでしょうか?
帯状ヘルペスは友達ですが、違う病気です。
初めて感染すると水ぼうそうになります。
再発した場合は身体に帯状に痛みを伴う発疹が出るので、帯状疱疹と言うのです。

一番怖いと思うのはエイズですか?
今では死ぬ病気ではなくなったので、感染が見つかれば、きちんと治療しなくてはいけません。
いまだに日本では感染者が増えているのですから、性教育の失敗でしょうね。
妊婦さんには全員検査をしています。
これまでに簡単な検査で1人、偽陽性に出ましたが、精密検査までいけば陰性のことの方が多いのです。
いきなり全員に精密検査をするわけにはいかないので、スクリーニング検査で
多めに偽陽性として怪しい方を引っ掛けるのです。
2段階目の精密検査でその中から本当に陽性の方を見つけるわけです。
この2段階方式は、他の病気でも一般的にする方法なのですが、
エイズだけは1次検査で引っ掛かっただけで、ショックを受けてしまうのです。
だから2次の精密検査が必要だというお話をするのが難しいのです。

読者の皆さんには、まじめに生きてくださいね、とだけお願いしておきましょう。
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ヒューナーテストはドイツ語でしょう

2013-10-29 20:24:09 | 不妊症
お姉ちゃんに弟が生まれたところ。
お姉ちゃんは興味津々でしたよ。

さて、私たちが研修医だっと頃と言えば、ちょうど体外受精が日本でも始まったところでした。
その頃に研修を受けた医師が、今の不妊専門病院の院長レベルですね。
兵庫県でおそらく一番有名なのは英(はなぶさ)クリニックでしょうか。
2年上の先輩です。お互いに大学病院から兵庫に派遣されて、アルバイトも一緒でした。
京都で一番有名なのは足立病院かな。ここの院長は私の1つ上の先輩です。
大学でも奈良県の赴任先でも切瑳琢磨していたのです。
大阪なら、扇町レディースクリニックがおすすめです。
ここも1つ上の先生です。京都の山科なら醍醐渡辺病院は1つ下の先生なのです。
電子顕微鏡の標本作りから染色の方法も指導していたのです。

ここまでは思い出話です。それから20年あまり。
私も不妊専門として働いていた方が、ひょっとすると皆さんにより役に立っていたかもしれません。
ですが方向として産科と不妊を両立していくのは、なかなか困難ですからね。

今日は不妊症の中でも、ヒューナーテストについてご説明しましょう。
フーナーテストと書いているかもしれません。
もとはきっとドイツ人医師の名前ではないでしょうか。
uの上にウムラウト、いわゆる点々がついているのです。
「ウ」の口をして「イ」と発音するのですよ。
と、ドイツ語には苦しめられましたが。
でも待てよ、テストは英語なのに。でもヒューナーは人名だからいいのか。

女性は排卵期にだけ、子宮頸部の頸管腺から粘液が分泌されます。
人にもよりますが、数日の間だけ帯下が多くなるのです。
この時だけは透明で、触ってみると10センチくらい納豆のように糸を引きます。
乾かして顕微鏡で見ると、シダの葉状の結晶が見えます。
よく雑誌の通販なんかで、唾液でもこのシダ状の結晶が見えるという器具が売っていますね。

この帯下が多い時だけ精子が泳いで子宮に登れるのです。
コイが川を登って産卵しに行くような感じでしょうか。
ここでは精子が卵に向かって泳いで登るのですが。

ところがこの帯下が多くならない方が居られますね。
エストロゲンの分泌不全なのでしょう。
或は性感染症で頸管炎が有る方とか。
子宮内膜症の方も分泌が悪いです。
こういう方は分泌が悪いだけでなく、子宮の入口が内向きに閉じてしまっていることも有ります。
若い女性は普通は子宮の入口は外向きに花が開いたようになっています。
こういうのを子宮膣部びらん、と呼びます。「びらん」という病気だと思われているでしょうか。
「びらん」が有るのが正常な状態なのですよ。

そこで排卵期に夫婦生活をしてもらって、その翌日に頸管粘液を採取し、
粘液の中を泳いでいる精子を顕微鏡で観察するのです。
元気な精子は活発にたくさん泳いでいるのですが、
元気が無かったり、数が少なかったり、あるいは頸管粘液が少なくて採取できなかったりします。
この検査のことを、先ほどお教えしました、ヒューナーテストと言うのです。

ヒューナーテストの結果が悪い場合は2通り有って、
頸管粘液が糸をひくほどでない時、
もう1つは精子の状態が良くない時です。
どちらの場合も人工授精なんかが、奏功します。
頸管粘液が良くない時は、卵胞成熟刺激ホルモンの注射を連日施行するというのもいいですね。

この検査はけっこう重要な検査なんだな、と覚えておいてください。
不妊外来のホームページはこちらです。少し順番を手直ししました。
http://www.tamar.jp/pg73.html

Rhはプラスマイナス

2013-10-28 20:24:21 | 産科


赤ちゃんは3姉妹ですよ。タマル産では初めてのお産でしたね。
私のお師匠の産婦人科の先生なんて、子どもさんは5人姉妹でしたよ。
バスみたいな車にみんなで乗られていたな。
産婦人科医だって、男女の性別は思うようにはなりませんからね。
そうそう、私の父親は6人、男だけの兄弟でした。

今日は血液型のお話を致しましょう。
それもABOではなくて、Rh型についてです。
皆さん自分が何型の血液型か知っていますよね?
それが案外ABOは知っていても、Rhはプラスだったか、マイナスだったか知らない方が多いのです。

赤ちゃんを産んでいる方はまずRhプラスですよ。
もしマイナスだったら、たくさん説明しているはずだし、
妊娠中や産後に注射をしているはずだし、赤ちゃんも人よりよけいに検査をしているはずですからね。

もうすぐ生まれる赤ちゃんのお母さんで、Rhマイナスというお母さんが居られます。
確率から言うと、お腹の中の赤ちゃんはRhプラスのことが殆どです。
だからお母さんと赤ちゃんとで、血液型の不適合が起こってしまうのです。
もっともお母さんとお腹の中の胎児とは、血液は混じり合ってはいないのですよ。
間に胎盤が挟まっていますから、血液の中の酸素や栄養だけが行き来して、
赤血球などは混じり合わないのです。

それが上の子をお産した時や流産した時、中絶した時などに、
ほんの少し胎児の血液がお母さんに漏れ出てしまうことが有るのです。
そうすると、胎児の赤血球をやっつける抗体がお母さんにできてしまいます。
次の赤ちゃんを妊娠した時に、その抗体が胎児に移行して、
胎児の赤血球をやっつけて、溶血と言って血が溶けてしまうのです。
そうすると、新生児は貧血になったり、黄疸が強く出たりするわけです。
場合によっては生まれる前であっても、胎児に溶血が起こって、胎児水腫という状態になることも。

だから流産や中絶、出産の後と、妊娠28週頃に、
Rhマイナスのお母さんには、抗Dヒト免疫グロブリンという注射をしてあげないといけません。
注射をするだけで、次の妊娠時にリスクがグンと減るわけです。
ただしそれでも抗体ができてしまった場合は、もう効果がないので注射はしません。
その代わり、妊娠にはリスクが高まります。

このようにRhプラスかマイナスかは妊娠したい方はとくに知っておかなくてはいけないのです。
それと流産や中絶の時でも血液型を検査して、
マイナスだったら注射が必要だということも覚えておいてください。

そして最近生まれた赤ちゃんですが、Rhプラスでもマイナスでもないという
特殊な血液型の赤ちゃんが居ました。
タマル産では初めてなのですが、Rhプラスマイナスの赤ちゃんです。
こういう血液型をRhDu型と呼びます。
将来、輸血したり、献血したりする時に注意が必要なので、
その子はずっと知っておかないといけませんね。そんなことも有るのですね。

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あなた方を迫害する冷酷な人がいた時、
その人に向かって怒鳴り返さず、
涙をもって、
神様の祝福が彼らの上にも
注がれるように祈ってあげるとしたら、
神様はあなた方に同情し、
祝福してくださるでしょう。
他人のために常に祈ることによって、
あなた方は神様の心情に近づいていくのです。
どれほど困難な道であっても、
固い決意をもって歩みなさい。
そうすれば神様が、
「私の子よ、
私はいつもおまえのそばにいる」
とささやいてくださるでしょう。

   レバレンド・ムーン

インフルエンザワクチン始まりました

2013-10-25 20:57:48 | 産科


外来に付いてくる子たちは、いつの間にか大きくなっています。
お母さんも同じです。初めてお会いした時は、まだ幼さが有ったのに、
子を産み、母となっていかれるその姿は、神々しくもあります。

さて、今日はインフルエンザワクチンのお話を致しましょう。
数年前までは、厚生労働省は妊婦さんにはインフルエンザワクチンを奨めてはいませんでした。
ところが4年前から急に、妊婦さんは優先的に予防接種を受けてくださいね、と
手のひらを返す状況になりました。
厚生労働省の、妊婦さんへの予防接種の注意事項をリンクしておきます。
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/infu091028-01.pdf

なぜ急に妊婦さんはインフルエンザの予防接種をすることになったかというと、
外国では妊娠している方がインフルエンザに罹ると、非常に重症化して、
死んでしまう方が続出しているからです。
2009年の発表では、例えばアメリカでは、若い女性の入院するほど重症の方が142人で、
そのうち妊娠していた方が28%もあり、
集中治療室に入院した妊婦さん100人のうちで、28人もの方が亡くなられたのですから。

ただし、どうも日本人だけは肩すかしで、
日本の妊婦さんは1人もインフルエンザで亡くなられなかったのですよ。
これに関しては不思議ですが、昔の流行との関係なんかがうわさされています。
だから、どうも日本人女性はインフルエンザの予防接種にまだまだ積極的ではないのですね。

それでも昨日より、妊娠中の方専用に、予防接種を開始しました。
ただし適応をお守りください。
まず妊娠初期でも受けてもいいか、ということですが、まったく問題有りません。
妊娠中期になってから、と言われる方も居られますが、
そんなことしていたら流行前に注射を終わらせることができませんし、
不活化ワクチンなので、副反応が上昇しなかったという統計が多々有ります。
それでも妊娠していない時と同様の確率で、
注射部位に赤みが出たり、アレルギーが出るなどは当然、人によっては有ります。

もう1つ注意していただきたいのは、
製剤には大きく分けて2つの種類が有ります。
1つは内科などで打つ場合の、50人分くらいのものが入った瓶で、
有機水銀が原料の防腐剤が入っているものです。
有機水銀とはイタイイタイ病の原因物質ですね。
神経毒性が疑われます。
重金属はどれも神経毒性が有るのですが、お母さんが痛い痛いと言っていたのに、
妊娠すると胎児に吸収されてしまって、痛みが無くなるのですよ。
その変わりに胎児の脳に水銀が集まって、影響を与えるのです。
私もむかし、卵巣癌の方の治療をたくさんしてきましたが、
プラチナという重金属で治療するのですが、
使用したプラチナに比例して、神経に痛みが出るのですよ。それもつらい副作用なのですよ。

そこで産婦人科に有るインフルエンザワクチンは、特別に、水銀の入っていない
1人分ずつ小分けされたシリンジタイプのものなのです。
だから妊婦さんは産婦人科で受けてくださいね。内科には置いていませんからね。

それともう1つ、少量ずつしか、入荷できないので、
予防接種だけには来院しないでください。
必ず妊婦健診の時に、申し込んでください。費用は4千円です。
期間は11月30日までです。余っても返品できないので、余剰は有りませんからね。
もちろん予防接種はおすすめですが、インフルエンザウィルスは毎年型を変えて流行しますから、
必ず予防できるというものでは有りませんが、重症化は防げるということになっています。

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やせ薬で死にますか?

2013-10-23 20:52:43 | 産科


よく雑誌などで、やせ薬なるものの宣伝がされていますね。
中高生でも飲んでいる子が居て、そんな子は激やせしています。
月経も不順になってから、お母さんと一緒に婦人科を来院されるということが有ります。

これまではただ痩せすぎるだけだと思っていたのですが、
厚生労働省から日本医師会に対して、注意の喚起が有りました。
健康食品のOxyElite Pro、あるいはファットバーナーという商品名のもので、
29名の急性肝炎が発生し、うち2名が肝移植、うち1名が死亡されたようです。

私も今調べてみたら、楽天で普通に買えるのですね。
ファットバーナーの主成分は1,3ディメチルアミラミンで、甲状腺ホルモン類似薬物の強力なものです。
同じようなやせ薬には密かに含有されているようですよ。

薬はこれから医療費抑制政策のために、
病院に行かなくても買えるようにしようという政府の方針です。
ネットやコンビニで簡単に買えるようになるでしょう。
医師だけでなく薬剤師だって、要らなくなってしまいますね。
ただそうなると自分で責任を持って買わなくてはなりませんが、
副作用が出て生命を落としても泣き寝入りですね。

これに関連して、医療費が物凄い勢いで増えていると、耳が痛いほど聴かされているでしょう?
でも実は医療費の本体部分、すなわち診察料や処置料はむしろ減少しているのですよ。
増えている部分は実は薬剤費の上昇によります。
毎年新しい薬が出て、どんどん高額になっているからです。

でも皆さん、薬が好きだから、私は医師ですが薬は嫌いな人ですが、
ちょっと風邪をひいても、妊娠中であっても、薬にすぐに頼ってしまうでしょう?
数日前なんて、ある妊婦さんが、夜中の2時に胃がもたれて眠れないからと、
胃薬をもらいに来院されました。
今から50年程前になりますが、サリドマイドという、つわりの薬が世界中で処方されて、
日本でも腕や足が短い奇形の赤ちゃんがたくさん生まれました。
そんな事件も思い出してしまいます。

話はそれましたが、やせ薬に限らず、健康食品は一切必要なし、
と覚えておかれてはいかがでしょう?
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