タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

脳性麻痺のすべては予測できません

2016-08-31 20:57:05 | 産科

上の写真は篠山市大山下の拓弥(たくや)くん、7月27日生まれ。
「男前で、まっすぐ育ちますように。
お産はとーても痛かったです。
スタッフはいい人ばかりでした。」

お姉ちゃんがいつも妊婦健診に付いて来てくれていましたね。
でも今日で夏休みも終わりだ!
みんなも宿題は済ませたよね。

さて、今日は新生児の脳性麻痺のお話です。
こういう話題は辛いお話ですが、知っておいた方が良いのです。

みなさん、赤ちゃんは元気で生まれてくるのが当たり前だと考えられるようになりました。
ですが、それはほんのここ数十年のことなのです。
それまでは赤ちゃんが仮死で生まれたり、
またお母さんの生命だって危険な時代だったのです。

現代では、知識が集積されてきたために、かなり安全に生まれるようになり、
逆に新生児に障害が残ったりすると、トラブルとなります。
では分娩による新生児の障害とはどの程度なのでしょうか。

新生児に悪い影響が有ったかどうかは、その子が大きくなって、
脳性マヒという状態になって、初めて気付かれるのです。
その前から分かることも有りますが、確定するのはもう少し大きくなってからでしょう。

大きくなって、四肢が硬くなって、車椅子での生活を余儀なくされるような場合、
約80%にMRIで異常が見つかります。
残り20%は画像診断では分からないのです。
大きくなって知的障害が出るような子も、画像診断には原因が現れません。

そして脳性麻痺の原因の70%は分娩の障害によると言われます。
逆に言うと、30%は分娩の障害とも限らないということです。
子供に障害が残った場合、今までは産婦人科に訴訟を起こして養育費を得るという制度だったのですが、
最近では産科医療補償制度という制度ができて、
訴訟を起こさなくても、養育費を得られるようになりました。
これにより、理論的には30%の、分娩障害によらない脳性麻痺の子も、
援助が受けられるようになったわけです。

お産が原因で新生児が将来、脳性麻痺になる場合、
先のMRIで所見が有るかという話ですが、
常位胎盤早期剥離でも、たくさん剥がれて血流が途絶したような、激烈な低酸素虚血が数分持続した場合や、
臍帯圧迫などの中等度の低酸素状態が10〜30分続いた場合、
程度の低い低酸素状態が数十分から数時間続いたような場合、
MRIではそれぞれの状態で、違った部位に病変が現れ、
その程度でもって、将来の脳性麻痺の程度まで予測できる可能性が有ると言われています。

産婦人科では、どこの施設でも、分娩時にどの程度ストレスがかかっていたのかを、
臍帯血のペーハーで、アルカリ性か酸性かで判断しており、
これが現在もっとも汎用されており、
先ほどの産科医療補償制度でも参考にされています。
ですがこれからは、このMRIも撮っておいた方がよさそうですね。
もちろん、NICUに搬送になったような子に関してはです。

先日も35週で突然破水して、分娩後、新生児をNICUに搬送しました。
いつ何が起こるか分からないのが、お産ですからね。
早産に関係する脳性麻痺も、特有なMRI所見を有すると言われています。
そうそう、突然とは書きましたが、その前から頻繁にお腹が張っていたようです。
そんな時は健診を待たずに受診されたら良かったですね。

漢方薬と西洋薬の併用ってアリですか

2016-08-29 21:29:00 | 婦人科

上の写真は篠山市今田町の愛夢(あゆ)ちゃん、7月21日生まれ。
「お姉ちゃんとともに元気に育ってください。
上の子の時よりはだいぶ楽だったー!陣痛が痛すぎーるやっぱり。
お料理がおいしすぎーる(ハートマーク)」

誤字かと思いましたが、棒線が有るのですね。
ハートマークも有りましたよ。
最近は50音だけではないようですね。
そのうち名前にも使われるようになるかもしれませんね。

さて今日も、更年期かな?と受診された患者さんが何人か居られました。
最近、婦人科の話題をあまりしていなかったので、今日はそのお話です。

50歳前後で調子が悪くなってくると、
婦人科や内科、心療内科や耳鼻科など、いろんな科を受診されるようです。
同じような症状でも、婦人科を受診すれば更年期症候群、
心療内科ではうつ病、内科では心身症、
耳鼻科ではメニエル病、などと、いろんな診断名が付くことが有るのではないですか。
それもそのはず、不定愁訴(ふていしゅうそ)と呼ばれているのですから。

私はよく漢方薬から始めるのですが、
漢方薬って、婦人科での処方が一番多いってご存知でしたか?
それでも他の科でもよく処方されるでしょうが、
西洋薬と併用することが多いでしょう?
キレの良い西洋薬と、敢えてマイルドに効かせる漢方薬を併用するのは、おかしいとは考えています。
ですが漢方も、1つの薬として処方されるのでしょうね。

その他では婦人科特有のものとして、女性ホルモンを使用することが有ります。
この女性ホルモン、飲み薬ばかりではなく、
肌に塗る薬、肌に貼る薬、膣に入れる薬なども有ります。
ただ単に剤型が違うだけではないのですよ。

経口女性ホルモンでは、善玉コレステロールを上昇させる作用と、
悪玉コレステロールを低下させ、脂質代謝改善効果を有します。
経口女性ホルモンは肝臓で代謝され、この際に中性脂肪を上昇させ、動脈硬化の原因となることも有ります。

それに対して経皮女性ホルモンでは、脂質代謝改善効果は弱いのですが、
逆に肝臓で代謝されないので、中性脂肪はむしろ下げる作用が有ります。

もう1つの女性ホルモンであるプロゲステロンですが、
併用した方が乳がんになる確率は下がりますが、
逆に併用すると、善玉コレステロールの上昇作用は減弱されます。

複雑怪奇になりましたか。
女性ホルモンを更年期頃に長期に使用するのであれば、
内科的な検査もしておいた方が良いということですね。
保険で削られてしまうので、なかなかできていないのが現状です。
タマル産で赤ちゃんを産んだ女性も、更年期症候群で来院されることも増えたので、
そろそろ女性内科的なこともしていかなくてはいけないのかもしれませんね。

薬を飲まない勇気

2016-08-26 21:02:56 | つれづれ
篠山市波賀野の藤叶(とうか)くん、7月17日生まれ。
「元気で兄弟仲良く育ってください。
ソフロロジー教室でイメージしていたので、落ち着いて産めました。
賛美歌が流れていて、心穏やかに過ごすことができました。
もっと入院していたくらいでした。」

タマル産では、ソフロロジー教室を、妊娠初期、中期、
そして後期は毎週、妊婦健診の都度、行っていますからね。
これで安産、間違い無しですね。

それと院内に賛美歌が流れているからと言って、
特定の宗教だけを賛美しているのでは有りませんよ。
仏教徒だって、神教徒だって、キリスト教徒だって、
天理教徒だって、学会員だって、イスラム教徒だって何だって良いのです。

むかし医学部の同級生と話していて、
私は世界の宗教を1つにまとめることが、人類の平和への道だと言ったのですよ。
でも友人たちはそんなことはできないと返すのです。
ですがそれではテロは無くならないですしょう?

天国では神様と仏様が喧嘩されているでしょうか?
みな仲良くされていることでしょう。
個々人は違う考えを持っていたとしても、それを超越して仲良くしないといけませんね。
まずは人類兄弟からですか。

さて、今日の本題は、今年の「神戸市北部、丹波、篠山、三田市における子ども医療の現状と今後の課題」の記録集から、ポイントを押さえておくことです。
今年の2月の例会で、しかも小児科の先生の集いなので私は参加していないのですが、
参考になりそうです。

小児科の酒井先生の発表では、おおむね篠山市と丹波市では、
1次救急は診療所開業医、2次救急は県立柏原とささやま医療センターとなっています。
丹波市では19時から22時は医師会の有志の先生が診られているそうですが、
成人と違い小児にはあまり機能的でないようです。
ただし22時以降は2次救急病院となるようですね。

篠山では平日でさえ、19時以降は難しいのが現状でしょう。
場合によっては神戸こども初期急病センターや、
伊丹市の阪神北広域こども急病センターへ受診することも有るようですね。

三田市でも、時間外や休日、夜間には対応に苦労されているようです。
どの地域の先生方も、北摂丹波にこども急病センターを、と願われているようですよ。

ここで1つ、問題点が浮かび上がってきましたが、
時間外の1次救急が足りていないようですね。
2次救急は何とか病院で輪番制で頑張っておられる。
ですが、こどもの簡単な病気を受け入れてもらえないのです。
ある病院の先生は、2次医療の紹介は診れるが、
1次は診療できないことを伝えると怒鳴られる方も有る、と言われています。

むかしはこどもの救急はかかりつけの先生が診ていたのですよ。
最近の親は心配ですぐに病院にかかりたくなるのです。
だから1次救急は飛び越えるのですね。

自慢ではないですが、産婦人科に関しては、私は24時間、365日診察していますよ。
1次はすべて受け入れていると申しましょうか。
8月は忙しくて、けっこう疲れていますが。
小児科に関しても、開業の先生がもう少し頑張られてもいいと思うのですけれど。
例えば篠山市の休日診療所ができた時、
日曜の9時から17時まででなく、夜間はどうするのかと篠山医師会に意見したのですよ。
でもそれにはどなたにも答えていただけませんでした。
だからタマル産では日曜日だって夜だって、外来を開けているのです。

最後にもう1つ、おもしろい意見を済生会の奥谷先生が話されています。
「振り返って、夜間救急の対応で自分たちが不要な薬剤を気軽に処方していないか、
という点にも注意したい。
通常の風邪症状で救急受診してみると医師は毎回薬を出す、
となるとやはり受診して薬をもらわないといけないのだな
と両親たちは考えるようにならないか。
自分たち小児科医が普段行っている行為の影響で
救急受診が減らないこともありえるだろう。
多少時間がかかっても、この症状なら薬は不要ですよ、と説明できる勇気をもちたい。」

日本人はとくに薬好きですからね。
夜中に病院を受診するより、睡眠が特効薬だと、理解されている親は少ないのではないでしょうか。


































1卵生と2卵生

2016-08-24 20:56:47 | 不妊症
丹波市春日町の奏志(そうし)くん、7月16日生まれ。
「自分なりの思いをきちんと持てる子に育ってください。
個室でゆっくり過ごせて良かったです。
みなさん優しくて温かい方ばかりでした。
些細な質問にも丁寧に答えてくださり嬉しかったです。」

今回は2回目のお産でしたからね。
それでも予期せぬことの連続だったでしょうか。

ところで不妊治療をしていると、どうしても双胎(双子のこと)になることが有ります。
まれに品胎(三つ子)になることも有ります。
ただし不妊治療で双胎になる場合は、たいていの場合、いわゆる2卵生双胎になるのですよ。
医学用語ではないのですが、1卵生や2卵生と言った方が分かりやすいでしょう?

要するに卵が2つ排卵してしまって、2つとも妊娠すると2卵生となります。
医学的には2絨毛膜双胎(DD twin)と呼びます。
男の子と女の子の双子であったり、双子なのにぜんぜん似ていないことも有りますね。

これに対して、自然に双胎になる時は1つの受精卵が途中から2つに分かれるのであって、
1絨毛膜双胎となります。
この場合は当然、男の子同士か女の子同士になりますよね。

2卵生の場合は、どちらかと言うとリスクが少ないのです。
だからタマル産では開業当初は双胎であっても、経腟分娩をしていただいていました。
ですが最近は時代が変わってきたので、全員、病院に紹介していますよ。
それでも未熟児センターの付いていない病院にも紹介しています。
ですが、1卵生の場合はそうはいきません。
2卵生に比べてリスクが高いからです。
こんな時はNICUの有る病院に初めから紹介するのですよ。

1卵生(1絨毛膜)双胎ではなぜリスクが高いかと言えば、
1つの胎盤を共有するからなんです。
2卵生の場合は胎盤は2つで、途中から合体することは有りますけれどね。
胎盤が1つしかないと、1人の胎児は栄養が良くて、
もう1人の胎児は栄養が悪いということが、よく起こります。
双胎間輸血症候群と呼ぶのですよ。
この場合は小さい赤ちゃんより、大きな赤ちゃんの方が多血症になって、予後が悪いのです。

さらにもっと言えば、この1卵生双胎は、さらに2つに分類されます。
2人の胎児の間に膜が有るか無いかでです。
有れば、1絨毛膜2羊膜双胎(MD twin)、無ければ1絨毛膜1羊膜双胎(MM twin)と呼ばれます。

MD twinとMM twinの違いは何でしょう?
MM twinでは1つの袋に2人の胎児が居るので、互いのへその緒が絡んでしまうのですよ。
80〜90%にも起こると言われます。
へその緒だけでなく、へその緒の中の血管も2人の間で吻合していたりするので、
血液が流れ合ったりして、子宮内で亡くなる確率が高いのですよ。
それで胎児機能を評価しながら、早い時期に帝王切開で産んでしまうのですね。
もっと早い時期では、レーザーで吻合血管を焼く施設も有るようです。

胎児にとってはへその緒や胎盤って、とても重要なのですね。
先日、もちろん1人だけの赤ちゃんでしたが、
生まれてきた時にへその緒が丸結びになっていた赤ちゃんが居ましたよ。
こういうのを真結節と呼びます。
強く結ばれてるほど、当然リスクは高いですね。

それでも数年に1回は、子宮の中で胎児が亡くなってしまうことが有ります。
多くはへその緒が首に何重にも絡んでいたり、
それが原因で胎盤が剥がれたりすることによります。
とても悲しまれるのです。
それでもそれで分娩費を払わない、とか訴訟するぞ、と脅す両親も居られるのですからね。

今週はさかごのお産が有りましたが、
ご両親ともに、ぜひ経膣的に産みたいと言われるので、頑張ってみましたよ。
うまくいったから良かったですね。
ですが逆子の子は分娩前に状態が悪くなる確率は、頭から産むよりは高いですから、
もしうまくいっていなかったなら、どう考えられたでしょうね。









カンジダ外陰膣炎にはなぜなるの?

2016-08-22 21:12:05 | 産科

写真の2人の赤ちゃん、ともにタマル産で生まれた2人目の赤ちゃんです。
お兄ちゃんのとまどった表情も、おもしろいでしょう?

さて今日は、お盆休みも終わって疲れが溜まっておられませんか?
この時期に多い婦人科の病気と言えば、カンジダ外陰膣炎です。
カンジダ外陰膣炎の治療は、昨年の4月に保険適応となった内服薬により、大きく変更されています。
今日はその話題ですよ。

最近は医師が薬を選択する場合でも、ガイドラインとやらに従ってしないと、
苦情が出る時代ですからね。
そしてカンジダ膣外陰炎に対するガイドラインの次回改訂版では、
この内服薬のことが入れられているのですよ。

まず、梅雨の時期にはカンジダを発症する女性が多いのですよ。
カンジダとはカビの一種ですから、頷けますね。
性行為で感染する場合も確かに有るのですが、
むしろ抗生物質の副作用として始まることが多いのです。
内科ではよく、効きもしないのに風邪で抗生物質を処方されますからね。
風邪に抗生物質が効かないことくらいご存知ですよね?

他にも妊娠中には自然によく発症します。
糖尿病の人や、風邪そのものの疲労によっても発症します。
カビであるカンジダは、どこかから飛んでくるのではなく、
初めからお尻の腸の中や、皮膚自体に常在菌として持っているのですよ。

そして妊娠していない女性が、
普段、膣の中にもカンジダを持っている割合は15%ほどです。
ですが一生涯を通してみると、75%の女性で、少なくとも1回はカンジダ外陰膣炎に感染するのですよ。
だから自覚症状が有った時だけ、病気として扱います。
ただカンジダが居ても、それは病気とは呼ばないのです。

見ただけで白いモロモロした帯下が有れば、すぐにカンジダと分かりますが、
外陰に赤みが有るだけであったりすることも有るので、
帯下を顕微鏡で観察したり、培養検査に回すことも有ります。
その場合は結果が出るのに1週間近くかかりますけれど。

治療は、膣の中に膣錠を入れるのです。
毎日6日間挿入するか、6倍量の薬を1回だけ入れるかします。
6日に分けて挿入した方が効果が高いと言われます。
それにたまに脱落することが有るので、1回だけの薬が流れてしまうとショックですよね?
膣錠と一緒に塗り薬も使います。
通常は1日に2、3回塗るのですよ。

これが1クールとして、2クール使用することもよく有ります。
長めに使った方が完治率が高いように感じています。
この膣錠ですが、先ほどお話したように、妊娠していない女性では、
最近は内服薬を使用することが多くなりました。
1回に3錠、それも1回だけ、内服するのです。
ただし塗り薬は併用しますよ。
注意は妊娠中は使えない、ということだけです。

この薬は薬局では売っていないので、
症状が有れば、婦人科を受診してくださいよ。
その方が確実に治療できますからね。