タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

不妊外来1年の成績のまとめ

2015-12-28 20:47:57 | 不妊症
丹波市氷上町の月詩(つくし)ちゃん、11月23日生まれ。
「真っすぐ、伸び伸びと育ってください。
1人目の時よりも安心してお産ができました。
みなさんとても優しくて、相談も聞いてもらい、頼りになりました。」

今年最後の、ファミリーでの写真ですよ。
また来年に続いていけますように。

今日で今年の外来は終わりました。
少し安堵していますよ。
先ほど赤ちゃんも生まれました。
まだ産後の処置中なのです。

今日は年末ということもあり、1年の総まとめなんかもしてみました。
不妊外来の統計を毎年この時期になるとしているのです。
ただし不妊外来では結果が出るのに時間がかかりますから、
今回は2014年の1年間にタマル産を受診された方が対象です。
そして今年中に妊娠された方を調査してみました。
結果は下のグラフです。


昨年の2014年、1年間に不妊外来を受診された方は、55人でした。
毎年母数は同じくらいです。
ですが1度きりで来られていない方や、1ヶ月くらいで中止される方も、けっこう居られます。
ですからそういう方は除くと、治療を受けられたのは42人になります。

この42人のうち、27人が1年以内に妊娠されました。
タマル産では現在は体外受精まではしていないので、保存的な治療のみでの成績です。
確率にして、64.3%の妊娠率です。
これってすごく高いのですよ。
どこの施設でも、おそらく1年以内だと30%程度だと思いますよ。
この数値が意味するものは、いきなり体外受精なんて受けなくても、
保存的な治療をまずはやってみるべきだということですね。

42人のうちのその他の15人の方の内訳は、12人を体外受精の治療のために他院に紹介しました。
3人はまだタマル産で治療中です。
その3人は体外受精までは考えていない、という方だからです。
いつもの年より体外受精に早くから紹介した方が多いのは、
やはり時代のせいも有って、高齢で受診される女性が増えているので、
時間がもったいないという意味も有ってのことです。
だからタマル産では、患者さんのことを思って、自院だけで完結しようとは考えていないのです。

さらにこの他院を紹介した12人の女性の中で、すでに4人が妊娠されたと返事が有りました。
ですから実際の妊娠率は、73.8%と、さらに高くなるのですよ。
ただし、他院の成績と合わせてですが。
たった1年で実に4人のうち3人もですからね。

今日は今年最後の外来だったのはお話しましたが、
その外来で、2015年に不妊外来に来られた方なのですが、
先ほど妊娠6週で、胎児の心拍を確認したところです。
人工授精の4回目でしたよ。
この方は、先の統計には入れる必要は有りませんね。
というのも今年来院されたばかりで、来年の統計に反映されるからですよ。

まだ受診するかどうかで迷っている方が居られたなら、
来年はよき年にしてくださいね。
結婚して1年経っても妊娠しなければ、受診する時ですからね。
それではまた来年。

来年は1月4日の月曜日から外来を再開いたします。
最後にもう1つ、ニュースです。
しばらく月曜日の朝の外来をお休みしていたのですが、
来年の1月4日からは、月曜日の午前診を再開することにしました。
詳しくはホームページで。
http://www.tamar.jp

メリークリスマス!

2015-12-25 21:07:48 | つれづれ

上の写真は、篠山市乗竹の春雅(はるま)くん、11月13日産まれ。
「心の温かい、思いやりのある子に育ってください。
信頼できる人たちのおかげで、お家で産んでいるような安心感が有りました。
退院するのが寂しいくらい、快適に過ごせました。」

みなさん、メリークリスマス!
先日のハンドベルの演奏は届きましたでしょうか?


まだの方は必見ですよ。

私もまた、最近産まれたお母さんからクリスマスにお手紙をいただきました。
子供たちの写真入りでしたよ。

一部なら紹介してもいいでしょうか。
他の方にも、ぜひ知っておいて欲しい内容だからです。

2人目の赤ちゃんを産んでから、赤ちゃんが泣いても手をつけられない、という様子でした。
深呼吸してから隣の部屋に入られる、というご相談だったと思います。
せっかく里帰りしてきたのに、上の子はなんとかお婆ちゃんに見てもらっておられたのですが。
困られた様子だったので、心療内科に紹介したのですよ。
以前は心の病気だと紹介すると、怒られる方も多かったのですが、
最近は抵抗もなくなり、だれでも通院できるようになりましたからね。

けっこう心療内科の先生は特徴が有って、今回行かれたのは最近できた診療所でしたよ。
褥婦さんということも有ったのでしょう、漢方薬療法だけで対応されたようです。

「おかげさまで精神科は2回の通院で回復し、漢方薬の処方のみで症状が改善されました。
「無理をしない」、「だれかに助けを求める」、「体を動かす」を条件に里帰りを終え、自宅に戻りました」
と有りました。

そして「私自身も両親も気づかない異変を早期に気づいていただき、誠にありがとうございました。
今では赤ちゃんの泣き声も苦にならず、悪戦苦闘中ではありますが、楽しい日々を過ごしています。」
ということでしたよ。

ちょうど手紙が着いたところで、
本当に心温まるプレゼントだと、こちらが感謝していますよ。

もう1つ、クリスマスにちなんだお話をしましょう。
今日、うちの4番目の娘が学校帰りにバスの中で、
末日聖徒イエスキリスト教会の伝道に来られているラスベガスからの人たちに話しかけられたようです。
年は娘と同じ18歳だそうです。
伝道に来るには条件が有って、自分でアルバイトして伝道資金を貯めてから来られているのですよ。
実はうちの娘は幼い頃、その教会にも通っていたのですけれど、そのことは黙っていたようです。

伝道に来られたらいつももてなしてあげるのですよ。
ケンタッキーのチキンだって食べたいのですからね。
いつもはとっても節約されていますから。
タマル産が開業したと同じ頃、最初に来られたピーターソンという伝道士は、
その後結婚して篠山に新婚旅行に来られたのですよ。
今では子供さんも生まれています。

そんな彼ら彼女らに、偶然クリスマスの日に出会うなんて、
素敵なことではないですか。



安産にしてあげるコツ

2015-12-21 20:44:59 | 産科
奈良県橿原市の稜大(りょうた)くん、11月13日生まれ。
「山のように大きな心を持った人になってください。
2回目だったので、うまくいきめたので良かったです。
とても親切にしていただき、安心して過ごせました。」

お兄ちゃんと仲良くね。

最近の外来でのお話を致しましょう。
久しぶりに来院された方は、むかし1人目が他院で帝王切開、
2人目、3人目がタマル産で経腟分娩だったのですよね。
そんなことも以前はやっていましたが、今はむかしとなりました。
1人目が帝王切開でも、次は同じ原因が無ければ、案外生まれるものなのですよ。
でもね、それでトラブルが有れば産婦人科医が逮捕される時代ですから、手は出せなくなりました。

他の妊婦さんで、1人目は予定日に卵膜剥離をして、無事に大きな赤ちゃんを産まれた方が居られます。
ご主人が、卵膜剥離って何かと尋ねられるのですよ。
こんなことは説明せずにしていますから、ダメですね。
ちゃんと説明しておきましょう。

赤ちゃんが生まれにくい2大原因は、いつもお話していますね。
1つは赤ちゃんが大き過ぎること。
お母さんが太ると、赤ちゃんも太ってしまうので、初めての時はとくに難産になります。

もう1つの原因は、へその緒が赤ちゃんの首に巻いているとき。
1回でもよく難産になるのですが、
2回、3回と巻いていると、こちらがとても緊張しますよ。
いつ緊急で吸引分娩や帝王切開をしないといけないか、という判断をする必要がありますからね。
最高は4回巻いている赤ちゃんでしたが、
その赤ちゃんは子宮の中で亡くなってから大学病院に紹介されて、主治医になったものです。
何回も巻いていると、妊娠中に胎盤が剥がれて(常位胎盤早期剥離)、亡くなることが有るのですね。

最初の、赤ちゃんが大きすぎる時の対処は、いくつか考えられます。
1つ目は、放っておくことです。
どんなに大きくても、自然の陣痛の方が有効だからです。
陣痛を誘発すると、自然のようにはなかなかうまくいかないことが多いものです。

ですが4キロ近くも有ると、さすがに生まれなくて、
吸引分娩になることが多いのです。
吸引分娩だと、赤ちゃんの頭に頭血腫ができて、何ヶ月も晴れることが有ります。
経験はないのですが、内出血のために赤ちゃんが亡くなったという報告もときどき耳にします。
お母さんにとっても、吸引分娩だと産後の出血が多くなって、輸血をする確率が高まります。

ですからとてもたいへんそうだな、という時は、陣痛を誘発することも有るのです。
この場合、一般的には陣痛誘発剤という点滴の薬が使われます。

いきなり使用することも有るのですが、
子宮の出口が硬く閉まっている場合は、先に出口を柔らかくするために、
飲み薬のプロスタグランディンEという薬が使われます。
この薬は陣痛も起こしますが、出口を柔らかくする作用が有るからです。
他には、子宮の出口にメトロイリンテルという風船(ヨーヨーのようなもの)を入れることも有ります。
またはラミナリアという植物を乾燥させて棒状にしたものを入れたり、
それを人工的に作ったものなんかも使用するのですよ。

でもね、タマル産で一番よくするのは、卵膜剥離なのです。
子宮の出口に指を入れて、子宮と、赤ちゃんを包んでいる卵膜の間を剥がすのです。
おしるし(産兆)で出血するのも、これと同じ機序ですよ。
予定日が近づいてお腹が張ってくると、卵膜が剥がれてきて出血するのです。
これをわざとしてあげるのです。
これだけで陣痛が付いてくることがよく有るのです。

少し痛いと不評ですが、風船を入れたりするよりは痛くないし、
より効果的ですからね。そこは我慢してください。

タマル産では、予定日超過で陣痛誘発剤を使用することは滅多に有りません。
他の施設ではよく有ることなのですよ。
もしくは予定日が大きく過ぎると、いきなり帝王切開するところだって有りますからね。

タマル産で帝王切開が少なく、陣痛誘発剤を使用することが少ないのは、
大きな赤ちゃんには、よくこの卵膜剥離をしてあげるからだと思っています。

ハンセン病と婦人科の関係

2015-12-18 21:30:30 | つれづれ


上の写真は大阪市住之江区の綾乃(あやの)ちゃん、11月11日生まれ。
「思いやりのある、優しい子に育ってください。
いろいろと不安も有ったけど、みなさんがいつも笑顔で接してくれたので心強かったです。」

里に帰っての出産でしたからね。
少しリスクも有りましたが、無事に生まれてよかったですね。

さて、少し長くなりますが、聖書の1節を引用してましょう。

「ひとりのらい病人がイエスのもとに来て、ひざまずいて願って言った、「それがあなたの意志であれば、あなたはわたしを清めることもできるかたです」。
イエスは深くあわれみ、手をのばして彼にさわり、「わたしの意志だ。清くなれ」と言われた。
すると、らい病はただちに去って、その人は清くなった。
イエスは彼を厳しく戒め、すぐそこから追い返して
言われた、「気をつけよ、誰にも何も話すな。ただ、行って祭司に自分のからだを見せ、モーセが命じたものを自分の清めのために捧げて、人々への証明とせよ」。
ところが、彼は出て行ってさまざまな事を語り、この話を言い広め始めたので、イエスはもはや表だって町に入ることができなくなり、外の寂しい所にとどまっておられた。しかし、いたるところから人々がイエスのもとに集まってきた。」

らい病とはむかしの言い方で、今ではハンセン病と言います。
2千年前でさえ、ハンセン病の患者さんは、触れるとうつると考えられていて、村八分にされていたのです。
ですがイエスは彼に「さわられた」のです。
イエスは律法を犯し、また奇跡を起こしたことで、奇跡だけを当てにする人が出ないように、
人に話さないようにと言われたのですが、話してしまいますよね。

それはそれとして、その後2千年経っても、イエスのようには誰もハンセン病患者さんに触れなかったのです。
この病気の原因は結核などの原因とよく似た、抗酸菌という細菌が原因で起こりますから、
抗生物質が開発された今では問題とはならないのですが。

1920年代にはアメリカやヨーロッパで断種法が制定され、
遺伝性疾患と思われていたハンセン病患者さんたちは、
精巣や卵巣を手術で去勢されてしまったのですよ。
まったく間違った処罰であったわけです。

日本では、ハンセン病が遺伝性疾患でないと判明してからも、
断種堕胎が実施されて、1996年まで生涯隔離生活を強いられ、
離れ小島に強制的に住まわされ、堕胎させられていたのです。
なんとつい最近の話ですね。
それ以後は、母体保護法と名前が変わって、隠蔽されたのを覚えておられるでしょうか。

ですが日本人でも、犀川一夫(さいかわかずお)という医師が、
国の隔離政策を批判し、通院での治療を可能とするよう、裁判で勝訴したのが2001年です。
犀川医師は、「隔離」をすれば、病者は怖れて隠れ、逆に外来で治療を始めれば、必ず病者は治療を求めてくる、と語っています。

ところで、彼と、キリストの愛を持ってともに患者さんに寄り添った奥さんには、2人の男の孫が居るのですよ。
国に受け入れてもらえずに外国で育ったのですが。
奥さんは90の誕生日祝いをされたところでなお元気。
そのお兄ちゃんの方と、うちの長女が今年、結婚することができました。
と、親バカな自慢話をここまで引っ張ってきた、ということですか。

でもね、奇跡を起こすのは、魔法使いではないのです。
心を癒す能力が、奇跡につながるのではないでしょうか。
思いやりや優しさ、これが医療人なら忘れてはならないことですね。




不老長寿になりたいですか

2015-12-16 20:52:18 | 婦人科


上の写真は、京都市左京区の千暖(ちはる)ちゃん、11月9日生まれ。
「暖かい心を持って、幸せに恵まれますように。
お産は本能で動いている感じがしました。
食事がおいしかったので、頑張ることができました。」

少し微笑んでしまうような感想でしたね。
タマル産でのお産は、ミッシェル・オダン先生の「バースリボーン」に出てくるような「野生の部屋」をイメージしていますからね。
だから、本能で叫んだっていいのですよ。

ただ、お産はリラックスして静かな心で産んだ方が、楽に生まれるのも事実です。
それでまったくの本能のままで産むよりは、
事前に練習して、落ち着いて産めるといいですね。

さて、今日の話題は「長寿の薬」です。
秦の始皇帝の時代から現在に至るまで、誰もが長生きしたいと願ってきたのです。
そして日本は世界一長寿な国となりました。
ガンを早期発見できたり、生活習慣病の予防に重点を置くことで達成されてきたわけで、
今まだ解決できていないのは、認知症だと言われています。

できることならいつまでも若々しくありたいと願うのは、普通の感情でしょう。
ところがそんな夢のような薬が見つかった、という話題です。
動物実験も終わって、来年には人での治験も始まる予定なのです。
うまくいけば健康寿命が画期的に延びるようですよ。

この薬は昔から有る糖尿病の薬で、メトホルミンと言います。
糖尿病の他に、婦人科でも昔から不妊症の治療に使われてきました。
排卵しにくい病気で、多嚢胞性卵巣症候群という病気が有るのですが、
肥満と合併することも多いのです。
そんな時に、排卵誘発剤と一緒に飲むと、排卵率が改善するからです。

さらに最近の話題は、この薬が子宮体癌にも効果的だということが分かってきたのです。
もともとこの子宮体癌は、赤ちゃんを産んだことがない女性や、
肥満やインスリン抵抗性、耐糖能異常の女性にリスクが高いとされてきました。
糖尿病の薬なので、ちょうど良いというわけですね。
実際に、体癌になってからでも、癌の増殖を抑制する効果が有るようです。
なる前から飲んでおけばさらに良いかもしれませんね。

ただし糖尿病だと、それだけで8年は寿命が短いと言われますから、
この薬を飲んでいても、ようやく普通の人と同じくらいになるだけ、とも言えるかもしれません。