タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

産科の2024年問題

2021-06-25 20:53:45 | 産科
タマル産の花壇では今、ロイヤルミントとラベンダーが花盛りです。
花を愛でる心が育つと、子育てにもメリットが有るのではないですか。

新型コロナワクチンの職場接種も進んだり止まったりですが、
今度は子供たちの番も回ってきましたか?
小児科学会が提言していますので、そちらを参考にしてみてはいかがでしょうか。
http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=374
要するに、大人が先にしないとね、ということのようです。

妊婦さんの感染状況は、というと、
東京ではこの3月までに231名の陽性妊婦が報告され、73%が帝王切開で産まれたようです。
普通には産ませてもらえないようですね。
やはり感染しないように、ワクチンの意味は大きいのではないですか。

さて、今日の話題は、2024年問題です。
なんだかコンピューターの2000年問題のようですが、こちらは産婦人科危機が起こる年のことです。
2024年の春までに医師の働き方改革が行われるということなのです。
医師の時間外労働を年間960時間以内にするのです。
これは一般の過労死のラインですね。
ですがそれはとても守れそうにないので、とりあえず1860時間にしようね、ということです。
これには宿直や日直の時間は含まれません。
夜間に当直室で寝ていて起こされても、カウントされないのです。

このラインを本気で守ろうとすると、外勤ができなくなります。
市中の産婦人科診療所などは、アルバイトの先生に来てもらって、ときどき休みを取ったり、帝王切開に応援を呼んだりするわけですが、
それができなくなります。
もっともタマル産では、医師は休みはなく、帝王切開も1人でするので、影響は有りませんけれど。
昨日の木曜日も外来はお休みでしたが、1日中分娩に付き合っていましたからね。

ですが日本では赤ちゃんの半分は産婦人科診療所で生まれているのです。
応援の医師が来なくなると、閉院するところが増えるでしょう。
2024年には産むところがさらに激減するということなのですよ。

もともと最近では国の周産期医療体制整備計画では、総合周産期医療センターや地域周産期母子医療センターを中心とした集約化に重点が置かれており、
その他の産科施設は切り捨てされる計画なのです。
さらに分娩数が減ってきて経営困難となる中でも、安全確保のための人件費の上昇が重荷となっている現実が有ります。

日本産婦人科医会でも議員連盟に働きかけているようですが、
報道機関は医師会叩きに熱心ですよね。
それは歯科医師や看護師、救急隊員などにワクチンを打たせるために、医師会を否定しているのかもしれませんよ。
ですがワクチンの副反応が出た時に、医師が居なくても救急処置を取れるのか心配をしてしまいます。
職場で歯科医師が接種するのも良いのでしょうけれど、何か有った時に誰が責任を取るのでしょうか。

論点がずれましたが、2024年、分娩施設クライシスが起こりそうな気配ですね。




丹波篠山市の出生数は昨年比6割と大幅減

2021-06-18 20:26:48 | つれづれ
図は、先ほど作ったものなのですが、まずは丹波篠山市で生まれた赤ちゃんの数です。
緑の線が昨年、青い線が今年の4月までの分ですよ。

全国的には今年の4月までに生まれた赤ちゃんの数は9割に減っています。
兵庫県でも同様に、88.9%ですから、約9割ですね。
ところが丹波篠山市では62.1%と約6割に大幅に減っているのです。

もちろん昨年の新型コロナの影響で、先行き不透明な中での妊娠を控えたためでしょうね。
ただし今年の後半は昨年近くに戻るのではないかと言われています。
タマル産でも、今年後半の分娩予約は昨年並みになりそうな感じですしね。


次に丹波市の同じグラフを作成してみました。
驚いたことに丹波市では昨年と比較して、100.9%と、前半も昨年並みで落ち込みは無かったのです。
それでは生活圏が近い三田市はどうかというのが次のグラフです。


三田市は88.2%で、全国平均並み、兵庫県の平均並みなのですよね。
要するに丹波篠山市だけ大幅に減って、丹波市は減らなかったということです。
これを分析するためには、婚姻数がどうであったかを調べる必要が有りそうですよ。


これは厚生労働省の図をお借りしたものです。
出生数の減少は、実は婚姻数の減少そのものなのですね。
それに加えて合計特殊出生率を掛け合わせたものになるのですが、
昨年の1.34という数字は確かに低いとは言え、この20年では真ん中ぐらいなのですよ。
それが意味することは、やはり出生数の減少は産み控えというよりは、結婚そのものの減少だと言えそうです。

正規雇用が減って非正規が増え、給料が下がって結婚どころではないということでしょうか。
そう考えると、丹波市で出生数が減っていないのは、第一次産業が強いなどが影響しているのでしょうか。
それにしても丹波篠山市の減少は兵庫県の中でも1、2を争う勢いなのです。
危機感を持っていただけましたでしょうか?



新しい流産の治療

2021-06-11 20:30:02 | 産科
今週、JA丹波篠山さんから、新茶を頂きました。
写真に写っているのは一部で、もっとたくさん頂いたのですよ。
職員一同に配り、入院患者さんにも飲んでいただいています。
医療従事者に感謝の気持ちを伝えるためということです。
本当にありがたいことです。
最近は医療不信を煽るような報道ばかりですからね。

こころところ連日、妊婦さんからワクチンを接種しても良いか、という問い合わせが有ります。
それだけ世間に回ってきているということでしょうか。

アメリカの疾病対策センター(CDC)の4月21日の発表によると、
妊婦さんのうち副作用登録に協力した3万5,691人のうち、
副反応の発現状況で非妊婦との間に差は無かったということです。
頭痛や筋肉痛、発熱はむしろ少なかったようです。
だから妊婦さんでも積極的にワクチン接種してください。
ただし12週までは待つことが勧められています。

ただブラジルでは、イギリス製のワクチンを受けた妊婦さんとお腹の胎児が亡くなられた事例が有り、一時中止したという報道は有りましたよ。
みなさんの方がニュースに敏感になっておられるかもしれませんね。

さて、新型コロナの話はここまでにして、今年の産婦人科関連の話題をピックアップしてみましょう。

妊娠すると一定の割合で流産が起こります。
これまでは日本では流産となれば入院して流産手術を受けるのが一般的でした。
子宮の出口にスポンジ状の棒を入れて、自然に膨らんできて出口が広がるのを待ちます。
それから子宮の中を細いスプーンで掃除するのです。

ただ最近では掃除する時にスプーンではなく、ストローを使って、中身を吸い出すという方が一般的になってきていました。
これには手動ポンプを使うか、機械ポンプを使うかで保険点数が変わるほどなのですよね。

ですがさらに新しく、というか世界ではずっと以前から行われてきたのが、
薬を飲んだり、膣に挿入することで自然に流産させるという方法ですよ。
タマル産でも最近はこればかりですが、いくつか問題点は有ります。

薬を外来で挿入して家に帰ってもらって、自分で流産の処置をしてもらう時に出血が多くなって、
結局は入院して追加で手術が必要になることも有るのです。
手術なら昼の何時と決められますが、薬では夜中に流産してしまうことも有って、不安になりますよね。
あるいは医療機関を受診せずに、自分でネットで薬を買って処置してしまうと、
子宮外妊娠の破裂などを起こす可能性だって有るのです。
薬を使うにしても医療機関と協力しないと危険なわけです。

ですがどうしても悪用する人は居ますからね。
それでも厚生省は今年から、薬による治療を保険で解禁するという噂です。
インフォームドコンセントの書類も、大幅に変えないといけませんね。
結局私が出した答えは、1日入院していただいて、朝から数時間ごとに3回まで薬を使うことで、
入院の上で、子宮と女性に優しい治療ができるというものです。
これから妊娠しようと考えておられる方は、知っておくべき知識ですよ。

赤ちゃんを取り上げて還暦になりました

2021-06-04 20:55:31 | 産科
やはり昨年生まれた赤ちゃんの数は減って、合計特殊出生率が1.34になったとか。
新型コロナのせいが大きいのでしょうね。
ですがこれから回復するかと言われると、悲観してしまいそうですね。

私は昨日、60歳の還暦を迎え、家族に祝ってもらいました。
赤いチャンチャンコは着ませんよ。まだまだ現役ですからね。
何が幸せかと言えば、子供たちや孫と遊べることですよ。
人生の目的は、どれだけ愛を残せていけるか、ということですから。

さて、出生数が減っても、死亡数は増えずに逆に減ったのです。
新型コロナで大幅に死亡数が増えるのかと言えばそうではなく3466人だけで、
逆にマスクや消毒のおかげで、高齢者の肺炎による死者数が1万7073人も大幅に減少したのですって。
それでトータルの死亡数は減ったのですよね。

今はワクチンの順番が回ってくるかどうかが話題ですが、
高齢者に2回続けてするよりも、若者にも接種して全員が1回する方が、コロナによる死亡数が20%減少するという論文が掲載されました。
ですが行政はそこまでは頭が回らないかもしれませんね。
丹波の方はどうでしょう?
まずは高齢者のみ2回より、全員が1回打つというのが本当は正解なのでしょうね。

話を戻して、私は25年前に篠山に引っ越してきて、地域でのお産一筋に取り組んできました。
おそらく3,000人くらいの赤ちゃんを取り上げたでしょう。
普通の病院では助産師さんが取り上げるのですが、タマル産では私が取り上げますよ。
それが帝王切開がわずか2%という少ない理由でしょうね。
帝王切開が悪いという意味ではなく、熟練した介助者が居れば、それほど帝王切開をする必要が無いという意味ですからね。

34年前に長女が生まれた時から産婦人科をして、
孫を取り上げたことで、ほぼ仕事としては満足しています。
あとは必要とされる間、なるべくみなさんのお役に立ちたいと考えているだけですよ。