タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

へその緒巻いていてもだいじょうぶ?

2018-08-06 21:18:57 | 産科
生後3ヶ月になるとこんな感じ、ということで、うちの孫で例をお見せしましょう。
生後3ヶ月と言えば、首が座ってくる頃なので、こんなポーズも取れちゃうわけです。
夏らしく、タマル産で浴衣でポーズです。

今日、ある患者さんからお手紙が届いたのですよ。
以前、タマル産で赤ちゃんを産まれたお母さんです。
タマル産で赤ちゃんを産んだのがきっかけで、産婦人科の看護師になりたくなって、
看護学校に通われ出されたのです。
小さな子が居られるので、たいへんですね。
でも、そんなことって有るのですね。

それと今日はもう1件、別に電話も有って、
今年トライやるウィークでタマル産で研修された中学生の1人が、
夏休みの宿題で、タマル産を取材に来たいのだそうです。
助産師になりたいのだそうですよ。
何かちょっと、お役にたてているようで、嬉しくなりましたよ。

さて、今日は先週に引き続いてこれから夜中に3人も赤ちゃんが生まれそうなので、急いで書きますよ。
その3人のうち、2人の胎児が、首にへその緒が巻いています。
とくに1人のお母さんの胎児は、2回も巻いていますよ。
先週、急遽帝王切開になったお母さんも、胎児の首にへその緒が巻いていました。

タマル産での妊婦健診では、とくにへその緒が首に巻いていないかどうかは、毎回見ています。
巻いていると教えてあげると、「だいじょうぶですか?」と聞かれます。
いつもは、まずだいじょうぶです、とお答えするのですが、
問題点を、ここでまとめてみましょう。

こんな基本的なことなのですが、あまり詳しく書かれているものを見たことが有りません。
そこで私のオリジナルの意見として書きますからね。

例えば今日のお母さんの1人、
陣痛が来て、今日の深夜から入院されているのですが、
朝になっても陣痛が強くならないのです。
帰っても良いくらいに弱くなったので、一時帰宅をすすめたのですが、
産んでしまいたい、ということで陣痛誘発をしています。
まだ明日ももう1日かかりそうな気配です。

このように一度来た陣痛が遠のく場合は、まずへその緒の問題ですよ。
へその緒が引っ張れて赤ちゃんがしんどくなると、お母さんの子宮に信号を送るのでしょうね。
ちょっと待ってよ、とね。

それとここでもう1つ問題点を提議するとすれば、
妊娠中に胎児が降りてこないものだから、子宮の口が刺激されず、出口が硬いのです。
だから陣痛を誘発するにしても、難産になるのですね。

先週、緊急で帝王切開になったお母さんは、
やはり出口が硬く、薬を使用してようやく子宮の口が10センチ開いたのですが、
そこからは進まず、しかもへその緒が引っ張られると血流が悪くなって、
胎児がしんどくなったのですよ。
こういうのを胎児ジストレスと呼ぶのですが、
それ以上は無理をしなかったというわけです。
吸引分娩という方法も有るのですが、この方の場合には帝王切開が適していました。

ここでも問題点を提議するなら、
赤ちゃんはただ引っ張られて生まれにくかったのではなく、
へその緒が首に巻いて、顎が浮くと、そっくりかえったようになるのですよ。
本来なら赤ちゃんは顎を引いて、胸につけるようにして縮こまって生まれてくるのですが、
そっくりかえると、とても生まれにくいのです。
こういう場合は、反対向けに回ってしまうことも有ります。
後方後頭位(こうほうこうとうい)と言います。
あるいは顎が浮くことを、第一回旋異常と言います。
ネジ穴にネジがうまく入らないと、それ以上進まないのですね。

他には、へその緒が引っ張られると、赤ちゃんと反対側の胎盤を引っ張ることが有ります。
そして胎盤が剥がれてしまうことが有るのですね。
1/3以上剥がれてしまうと、子宮の中で胎児が亡くなってしまう怖い病気です。
常位胎盤早期剥離のことですよ。

私の今までの経験では、へその緒が4回首に巻いていた赤ちゃんが最大です。
4回巻いていた赤ちゃんは3人居て、3人のことはよく覚えていますよ。
1人は他院での常位胎盤早期剥離による胎児死亡で、大学病院の主治医として診ました。
1人は問題なく生まれました。
1人は、お産がたいへんで、生まれてから搬送してNICUで診てもらいましたよ。

まあ、ちょっと怖い話ばかりをしてしまいました。
こんなことも有るよ、というだけで、
たいていの場合は、何もなく生まれてくるのですからね。
ですからまかしておいてくださいよ、という感じです。
結局は自分で対処できる場合と、専門家に任せる場合は有るのですから。