タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

一般不妊治療も助成されます

2020-03-27 21:14:30 | 不妊症
写真は16年前の六甲山のひつじ牧場の家族写真です。
ちょどタマル産が、丹波市から丹波篠山市に引っ越してきた年です。
その我が家の子供たちも、この春に2人、社会人となりますからね。
月日の経つのは早いのです。

今、六甲山では、ひつじの出産ラッシュなのだそうですよ。
群れで一斉に赤ちゃんを産むのですね。
一斉に産んだら、自分の子がどの子か分からなくなってしまうんじゃないかと思ってしまうのですが、
お母さんは、匂いで嗅ぎ分けるのだそうです。

そういえば、私も子供たちが小さい時は、頭の匂いを嗅ぐのが好きでしたよ。
子供によって匂いが違うのですよ。
そんなこと感じたことは有りませんか?
お母さんがお化粧品や香水を付けていたりすると、赤ちゃんが戸惑ってしまわないかしら。

ところで、丹波篠山市の「産科充実に向けての検討会」は7回目だそうですが、
タマル産婦人科は相変わらずお呼ばれされていません。
どうして唯一の産科施設が呼ばれないのかと、よくこのブログで否定的に書くのですが、
すると読者の方から市と仲が悪いのではないかと勘違いされてしまいます。

そんなことはなくて、丹波篠山市にはさまざまな提案をしているのですよ。
例えば、この春から「丹波篠山市お産応援119」という制度が始まります。
陣痛が始まったら、救急車で産科施設まで送ってもらえるのですよ。
これは私が直接、市長にお願いしたものなのです。
兵庫医大がお産の取り扱いを中止されると、病院で産みたいお母さんは、
丹波市や三田市、神戸市北区まで通わなければならないでしょう。
ですからそのお母さんたちのために便宜を計ってもらうようにお願いしたのです。
タマル産に来るだけなら、なんとかなりますからね。

つまりこの制度はタマル産のためものではなくて、
タマル産に通いたくないお母さんのためのものなのですが、
それでも市にお願いして、この度実現したのですよ。

他にもこの春からの制度変更が有ります。
全国的に妊婦健診の費用は、14回で12万円が標準なのです。
国は全額、市町村に交付していると主張しますが、
その交付金は、他の事業にも流用できてしまうので、市によっては必ずしも妊婦さんには流れません。

兵庫県では、最大人口を要する神戸市では12万円の助成券が貰えます。
次に人口の多い姫路市でも12万1千円が助成されるのです。
他にも朝来市や養父市などでも全額助成されるのですよ。
丹波篠山市も度々私が要請するものだから、この春からようやく満額助成されることになりました。

タマル産ではこれまで12万円より少ない市町村の妊婦さんにも自己負担を免除してあげていました。
ですがタマル産以外の病院に行くと、免除されないので、自己負担が生じていたのですよ。
これも大きな成果だと思っています。

お隣の丹波市にも、会議の度に要請しているのですが、
どうも県立病院が新設されたので、興味を示されないようですね。
ですが丹波市の半分の妊婦さんは、丹波市以外の市町村のクリニックで産んでいるのが実情です。
その人たちは妊婦健診で自己負担が大きいのですよ。
丹波市は当初、7万円ほどだったのですが、今でようやく9万円です。
5〜3万円の自己負担が生じていたのですね。
タマル産ではこれまでこの差額分をまけてあげていたのですが、
この春からは正規料金となりますからね。
今通われている妊婦さんはこれまで通りです。

市町村と交渉しているのは、何もタマル産のためではなくて、
みんさんの自己負担を軽くするために、皆さんの意見を代表して要望していたのですが、
どうもそれが理解されていないようなのです。

他にもね、いろいろと要望が通ったのですよ。
京都府では以前から、高度不妊治療だけでなく、
数で言えばずっと多い、一般不妊治療に対しても、助成されているのです。
京都府は少子化対策をよく知っていますね。

ですが兵庫県では高度不妊治療だけしか助成が有りませんでした。
体外受精まで必要な人はむしろ少数で、一般不妊治療を受けるカップルが多いのにね。
だからタマル産の要望で、丹波篠山市ではこの春から一般不妊治療に対しても助成されるようになるのです。
ちなみに丹波市にも同様の要望を出したのですが、これも無視されています。
それは置いておいても、不妊かなと悩んでおられるカップルには、
もっと気軽に不妊治療を始められるようになるのではないでしょうか。

ついでに言うと、習慣性流産に対しても、タマル産の要望で、
丹波篠山市では全額、丹波市では半額の助成が実現しているのですよ。
これもつい最近のことです。

タマル産は独自に市町村に要望して、少子化対策をしているというわけなんですね。



そして誰も居なくなる

2020-03-20 20:41:15 | 産科
春休みだというのに、子供たちは人混みでの遊びは禁止でしょうか。
そういう時は、外遊びが良いのですよ。
家でゲームばかりしていてはいけないでしょう。
私も昨日は、兵庫県立フラワーセンターに行ってきました。
加西市は丹波篠山市や丹波市からも近いのです。
コープの会員証を見せると割引で入れますよ。

春だというのに、けっこう空いていました。
子供の姿はあまり見かけずに、 高齢のカップルが多かったです。
チューリップにはまだ早く、スイセンとケシの花が綺麗でしたよ。
後ろの樹々はメタセコイヤで、タマル産の景色と似ているではありませんか。
それもそのはずで、タマル産を設計する時に、このフラワーセンターの施設をお手本にしたのです。
タマル産の大まかな設計は、私がしたものなのですよ。
壁紙1枚から、廊下の幅、外観から調度品もすべてです。

今日は神戸の英(はなぶさ)ウィメンズクリニックの理事長から、 開院20周年の案内状が来ていました。
タマル産も昨年するべきでしたでしょうか、20周年のお祝いを。
そして昨日は、小野市の小野レディースクリニックの院長からも電話が有りましたよ。
昨日でお産はすべて終了したのだそうです。これからは不妊治療一筋ということでした。

ちょうど今から20年ほど前が、産婦人科で開業する最後の時だったのです。
英ウィメンズの塩谷先生や、小野の江見先生、亡くなられた馬岡先生、
私も含めてみな、25年ほど前に、京大で不妊治療に精を出していたメンバーなのですよ。
ですがそれ以後は、産婦人科開業医にとっては冬の時代とでも言うのでしょうか。
裁判が多くなって、新規に開業する産婦人科医はなくなり、
次に病院の産婦人科も次々と閉鎖され、
今では未熟児センターを持つ大病院しか残れない時代になりました。

日本の産婦人科医療は世界一安全で、99%安全と言えるでしょう。
ですが皆さんの望みは100%の安全ですから、そこまで期待されると誰も荷を負えないということです。

そして昨日、小野レディースさんも、分娩を終えられたというニュースには心が痛みます。
なぜ電話を頂いたかと言えば、残っている医療機器を差し上げましょうというものでしたよ。
今度ご挨拶に行くつもりですからね、これまでご苦労様でしたと。



さかごには外回転術?

2020-03-13 21:02:51 | 産科
福知山市民病院や丹波市、北磻磨総合医療センターなど、身近なところで感染の噂を聞くと、
みなさん心配されるようです。
病院で健診を受けられている妊婦さんから、タマル産への転院は可能かという問合せが続きました。
ですが、その心配は必要無いと思いますよ、と答えています。
まず、自分が健診を受けている施設の対応を信じてくださいね。

それでもタマル産では、今日から入院患者さんへの面会を制限しました。
もちろん家族の方は良いのですよ。
タマル産では母子同室にしているので、
産婦さんの友人でも赤ちゃんに直接触れることができます。
その分、やはり面会の方も一般常識は持っていただきたいのです。
私の以前勤務していた病院などは、赤ちゃんとは祖父母であっても、ガラス越し、という対応でしたよ。
私はそんな風にはしたくないと考えているのです。
ですから感染症が流行っている時は、面会は差し控えたいものですね。

さて、今日は外来で質問が有ったので、骨盤位の管理について最近の変更点をお話しましょう。
先日、ALSO教育プログラムを教わってきて、皆で情報を共有し、
お産の安全管理に役立てていこうとしているところだからです。

骨盤位というのは、さかごのことなのですが、
さかごはお産の1〜2%に生じるとされています。
タマル産では年間160人ほど生まれるので、年に2、3人のさかごのお産が有ります。

以前はさかごでも、基本的に経膣的にお産していただいていたのですよ。
他院では帝王切開することが多いのでしょうね。
私は以前勤めていた大きな病院で、すべてのさかごの主治医をさせていただいていたので、
さかごを経膣的に産ませてあげる経験は人一倍有るのです。
今の若い先生は、見たこともないでしょう。

それでも、さかごのお産はとても気を使うのですよ。
普通のお産よりずっと非常事態になる確率が高いからです。
そこでここ数年は、タマル産でもさかごのお母さんで、希望する方には帝王切開してきました。
それで最近ではさかごの半分くらいの方が帝王切開ですよ。
一度目が帝王切開だと、次も帝王切開することも増えてきており、
結局、帝王切開の一番多い原因となっていたのです。

ところがALSO教育プログラムでは、外回転術が積極的に勧められているのです。
外回転術というのは、子宮を柔らかくさせる点滴をしながら、
手でお腹の赤ちゃんを押して、さかごを直す手技のことなのです。

この手技自体は昔から有って、ちゃんと保険点数も付いているので、すること自体は問題有りません。
ただし、以前は27週頃の、胎児が小さいうちに回すことが多くされており、
また戻ってしまったり、胎盤が剥がれて胎児が亡くなることが報告されているので、
安易にはやりにくい社会情勢だったのですよ。
ところがALSOでは積極的に勧奨されたのです。
注意点は、手技は36週頃と遅めに行ない、
胎児の心拍を監視しながら、緊急時にはすぐに帝王切開できるようにとされています。
36週なら緊急の帝王切開でも、赤ちゃんには大きな問題は無さそうですからね。

最近、タマル産では2人、さかごのお母さんが居られました。
1人のお母さんは、前回もさかごで、その時は、さかごのまま経膣的に産んでもらったのです。
初めてのお産も帝王切開を回避できたので、次は安心だと思っていたら、またさかごだったのです。
子宮の形がハート型をしていたりすると、こういうことはよく有るのですよ。
あるいは胎盤の位置がいつも低いところに有るとか、
赤ちゃんが小さいとさかごのままだったりとか、原因はいろいろ考えられます。
どうも今回はへその緒が強く首に巻いていて、さかごが直りにくいようでした。
それでも外回転術を行って、スムーズにさかごが直ったのです。
もうすぐお産になるのですが、無事に頭から生まれてくれると良いですね。

もう1人のさかごのお母さんは、外回転術は拒否されて、帝王切開を選択されました。
ただし運良く、37週の時点で、自然にさかごから頭が下に戻って、経膣的に産むことに。
そうですね、今までの経験では、陣痛が来た日に、さかごが自然に直ったお母さんも居られますよ。
他院であれば、初めから帝王切開と決まっているので、待つことは少ないのでしょうけれど。

そして今日も外来で、さかごは帝王切開ですか、と聞かれたというわけです。
まだ8ヶ月くらいで、標準より小さめな赤ちゃんなので、
まだこれから大きくなって、自然に直る確率は高いのですよ。
だからそんなに早くから心配しないようにと説明したのですが、どうも不安なようですね。

まあ妊婦さんは、何か指摘すると、とにかく心配されるので、どこまで話せば良いか迷ってしまいますよ。
例えば、へその緒が首に巻いていますというだけで、お産までずっと心配されるのです。
他院だと、そんなこと診てももらっていないでしょうし、
分かっても教えてもらえないでしょうからね。

コロナウィルスと同じで、とにかく心配ばかりしていても仕方ないのですよ。
なるようになれ、とでも思ってみてはいかがでしょうか。

そうそう、上の写真は、この春休みに娘と一緒に、ブドウの苗木を植えたのです。
来年、実が付いてくれるかな?手入れしだいですね。

月経痛を緩和するために

2020-03-06 21:25:49 | 婦人科
今日も先ほど赤ちゃんが生まれました。
この1週間、お産が続いて、私も久しぶりに風邪をひいてしまいました。
コロナウィルスと間違われそうですよ。

そのコロナウィルスは皆さんの大きな関心ごとでしょうね。
今日は丹波篠山市から医療機関に向けての、マスクの配布が有って、私ももらってきました。
これで当面は問題無さそうです。
トイレットペーパーの買い占めには困りましたが、毎日1袋ずつ買っていますよ。

皆さんは知らないでしょうけれど、昔、石油ショックというのが有って、
この時もトイレットペーパーが無くなって、小学生の私は遠くまで買いに行かされました。
この時も確か数週間で終わりましたから、そのうち解消されるでしょう。
それも紙類は石油から作られているというデマからだったのですよ。

だから感染症そのものより、パニック心理の方がよっぽど恐ろしいのです。
今日は医師会から連絡が有って、今度の広報に載せる注意報の確認でした。
産婦人科と透析施設には、新型コロナウィルスが疑われる人は受診を控えるという通達だそうです。
インフルエンザもそうですが、妊婦さんが感染すると重篤になりかねませんからね。
私も皆さんにうつさないように、マスクにメガネ姿でごめんなさい。

もともとタマル産では、退院ごとに個室の病室を丸ごとオゾン消毒をしているのですよ。
オゾンは隙間に居るウィルスだって退治できるのです。
タマル産では基本的に母子同室なので、お見舞いの方はしばらく遠慮してもらった方が良さそうです。
病室の入口ごとに手指消毒薬も置いていますが、今週は外来にも増やしてみました。

ところで上の写真は、今週のタマル産での勉強会のものです。
薬品メーカーの宣伝といえばそうなのですが、
新しい情報も得ておかなければなりませんからね。
最近は何でも皆さんの方がよく知っていて、
子宮内膜症の薬が保険が利くからと、避妊ピルに使われている方も多いです。
本当は自由診療とオーバーラップするのですが、あいまいな線引きですよ。

この低容量ピルなのですが、タマル産には第一世代と第二世代のものを置いています。
非常に低容量で副作用も少ないのですが、その分、月経が毎月来ずに、2、3ヶ月に1回だとか、
途中で出血したりだとか、来てもごく少量ということも有りますね。
そこで逆手にとって、第二世代の薬は3ヶ月近く連続して内服することで、
3ヶ月に1回の出血とする飲み方も有るのです。

これには一長一短が有って、毎月来ないといやだという女性、
反対に3ヶ月に1回だと、月経痛もさらに緩和できるという評価も有るようですね。
少し勉強になりましたよ。
みなさんも参考になりましたでしょうか。