タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

男性の精子が少なくなった訳

2021-01-29 21:32:46 | 不妊症
他の市町村の人に、丹波篠山のキャラクターが何かと聞いても、まず知らないと答えるでしょう。
ですがそこの住人にとっては、ちょっと馴染みが有りますよね。
昨日は久しぶりに時間が取れたので、福崎町まで足を延ばして、お昼に夫婦でお寿司を食べましたよ。
キャラクターはカッパのフクちゃん、サキちゃんです。
今日はつい先ほどまで、お産の介助に入っていて、まるでマラソンをしていたかのような1日だったのですけれどね。

さて今日も、先週の続きで不妊症のお話です。
不妊は結婚の高齢化や、それに伴う子宮内膜症の増加や、
仕事のし過ぎで夫婦生活がうまくいかない、などなど、いろんな問題が指摘されますよね。
あるいは最近とくに思うのは、以前に比べての男性の精子の減少でしょうか。

みなさんもミカンやブドウを食べていて、最近は種無しになって食べやすいね、などと意識せずにいますよね。
そう、人間も種無しになっていたのですね。
ミツバチが激減していると聞いても、それが農薬のせいだなんて言うと、農業はやってられなくなりますからね。

私が30年以上前に京大病院で研修医をしている時に、滋賀県の農家の妊婦のお嫁さんが、有機リン系農薬を飲んで自殺未遂をして入院してこられたのです。
産月の赤ちゃんはお腹の中で亡くなって、お母さんはなんとか透析で生命を取り留められたのでした。
それから5年ほどしてまた京大病院に戻って、今度は研修医を指導する立場になっていたのですが、
その時に入院してこられた妊娠中期の妊婦さんのお腹の中の赤ちゃんは、腕も脚も4本ずつ有ったのです。
結果としては中絶されたのです。
その妊婦さんは春先に、実家の農家の縁側で、家族が農薬を撒くのを見ていただけだったそうです。

今は新型コロナのワクチンが怖いだとか、心配ごとも多いでしょうけれど、
世の中にはいくらでももっと怖いものが有るのですよ。
今日、外来に来られた妊婦さんは、前回も流産しているのに、今回も妊娠初期にタバコを吸われていたのですよ。
妊娠に気づいてからやめたと自慢げでしたが、妊娠に気づいた時にはもう遅いのですよね。
本当は喫煙者は妊娠前にやめて、葉酸を摂っておかないと奇形率が上がって、当然流産率も上がります。
お産まで行っても、低出生体重児になることも多いのですから。

実はこんな目に見えるような異常だけでなく、最近は学校での適応障害という子が増えていますね。
タマネギにイソキサチオンという有機リン系農薬を使うのですか?
これがJA久留米で春菊に高濃度で含まれていた事案が有ったそうです。
これはEUでは子供の脳の発達に影響を及ぼすとして禁止されている一世代前の農薬のようですね。
最近は新しくネオニコチノイド系殺虫剤が使われるようですが、同様に神経毒なのです。
こちらもEUでは禁止や規制されているのですよ。
ですが日本では以前よりも高濃度まで使用できるようになって、日本人の尿からは、まず農薬が検出されるのだそうです。

このネオニコチノイドを無毒と言われる濃度の1/3000という少量の濃度で6週間与えたラットでは、精巣のDNAが壊れたという実験も有るようです。
ウズラのメスに対して行われた実験でも、生まれてきた仔ウズラの卵巣重量は小さかったのだそうです。
ヒトでも、農薬が含まれる野菜や果物を多く接種した男性ほど、精子数が少なかったというハーバード大の報告も有りますよ。
また日欧で行われた調査では調査した5カ国中で、日本の男性の精子が一番少なかったようです。

そこで提案です。
丹波篠山は、無農薬野菜で健康な赤ちゃんを産もう、などというキャッチフレーズはできないものでしょうか。
私のような素人考えでは無理ですか?
マルイノを宣伝しているだけではダメではないでしょうかねえ。

むかし天理に居た時に、行商のお婆さんが、この売り物のイチゴを売れないと言われるのです。
こっちの自分たちで食べる、農薬のかかっていないイチゴを分けてあげるからと。


2019年の不妊治療の成績

2021-01-22 20:34:23 | 不妊症
今日は、過去5年間に渡る、タマル産不妊外来の成績を公開します。
毎年この時期に公開しているので、20年分以上の成績が残っているのです。

それによると、2019年の1年間にタマル産婦人科不妊外来を訪れられたのは、48カップルです。
もっともご主人は、来院されていないことの方が多いので、48人ということにしましょう。
そして最初の1、2回で来院されなくなることも有るので、
半年以上治療を継続された方は、その中で、39人です。
2020年に来院された方は、まだ結果が出ていないのですよ。

その2019年の39人の中で、1年以内に妊娠された方は、26人です。
ちょうど3人に2人ですね。
けっこう多いと思われませんか?
実は以前はもっと妊娠率は高かったのですよ。
最近は1年も経たずになるべく早くに高度不妊治療に紹介することが増えたのと、
治療を受けられる方の年齢が上がってきたのが原因です。

そして残り13人の方はどうなっているかと言えば、10人は高度不妊治療のできる施設に転院していただきました。
体外受精や顕微受精を受けていただくためです。
その中で妊娠されたと返事の有った方は3人です。
7人は返事が有りませんが、妊娠して他院にかかられている可能性も有ります。
結局残る、高度不妊治療までは受けずにタマル産で継続されている方が2人、1人は来院されていないので不明です。

ところで、なぜ大きな病院では不妊外来をあまりしていないか分かりますか?
それは病院ドクターは、外来の枠を週に2回くらいしか受け持たれていないからなのです。
不妊外来は、いつ人工授精になるか分からないので、毎日でも外来に出続けないといけないのですね。
そういう意味では来院される方も、急に受診しないといけないかもしれないので、治療の継続が難しいですよね。
ですがタマル産では、土曜も日曜も夜も外来を開けているので、治療を継続しやすいのですよ。
外来は9時からになっていますが、普段は朝の8時から1時間かけて特別に人工授精をしているのです。
これなら仕事も少し遅れていけば良いだけなので、いつだって通えますよね。

こんなに良心的な不妊外来は無いのではないですか?
それで兵庫県でも日本海側の方も、タマル産に通われている方が多いのですね。
私が京大病院で不妊外来を担当していた時は、週に2日、近くの日本バプテスト病院というところで不妊外来を受け持っていましたよ。
それくらい医師も努力しないといけませんね。
ちなみに当時は医局員という研究職の立場だったので、アルバイトはしても良かったのですよ。
だって本職の方の給料は月に10万円ほどでしたしね。

子宮頸がんが産道でうつる?

2021-01-15 20:57:57 | 産科
今日は、先ほどまでお産が有ったので、更新が遅れそうです。
それでインスタの写真を使い回させていただきますよ。
よければ時々インスタも覗いてみてくださいね。
こちらは私の娘が担当しているものですから。
https://www.instagram.com/tamar_birth_kitchen/

それにしてもフェイスブックなど、大手SNSにはがっかりですね。
大統領よりも世界を動かせるとでも言うのでしょうか。
ザーカーバーグさんは奥さんが中国人ですからね。
民主党も含めて共産主義、無神論者たちに世界が侵略されるのは、
新型コロナで身体が蝕ばまれるよりも驚異ですね。

さて、産婦人科関係の最近の話題と言えば、ヒトパピローマウィルスは母から子にうつるのか、という問題です。
今日、外来を受診されていた妊婦さんも、妊娠前にヒトパピローマ(HPV)とは別の、単純ヘルペスウィルス(HSV)の既往が有りました。
このウィルスにかかると、薬で一時的には良くなりますが、一生治らないのですよ。
妊娠したり、ガンになったりして体力が落ちると、また顔を出してくるのです。
それで、お産の時に顔を出してくると、膣で感染してしまうので、帝王切開するのですよ。
そうでないと赤ちゃんが亡くなってしまうことが有るからです。
以前、タマル産でも産月に入ってヘルペスが顔を出してきたので、他院で帝王切開をしていただいたことが有ります。

一方で子宮頸がんの原因ウィルスであるヒトパピローマ(HPV)の方は、まだ経産道感染するか不明だったのです。
それが最近のシークエンシングという技術革新によって遺伝子レベルで検査ができるようになったことで、
母親の子宮頸がんが新生児の肺がんを引き起こした2例が偶然発見されたようです。
飲み込んだ羊水に混ざっていたガン細胞を、胎児が飲み込んで、気管支の表面に生着したということです。
結局、子宮頸がんの母親では、帝王切開を勧められるのですが、
さて、ヒトパピローマウィルスを持っていて、異形成のような状態で帝王切開をすべきかどうかは、これからの課題でしょうね。

そういえば、明日も外来で中学生が子宮頸がんの予防接種に来られます。
本当は一斉にやらないとダメなのですが、しないよりはした方が良いでしょうね。

昨年の帝王切開率はわずか1.8%でした

2021-01-08 20:22:33 | 産科
少し遅くなりましたが、新年おめでとうございます。
みなさんからもたくさん年賀状を頂きましたよ。
ラインで挨拶するのが一般的でしょうけれど、手書きの年賀状でご家族の近況を窺い知れるのは嬉しいことです。

1月は医療機関にとっては報告がたくさん有るので、たいへんなのですよ。
1年間に外来受診された方の数やら、入院患者さんの数や内訳の報告などが有ります。
絨毛性疾患は何件有っただとか、医療事故はどれくらい有ったのか、その他もろもろですよ。

その1つに帝王切開の件数というものが有ります。
日本全国の産婦人科の帝王切開率も公表されているのですよ。
それによると日本では約25%の帝王切開率です。
100人中25人が帝王切開で産んでいるという意味ですね。
近隣では丹波医療センターは25%くらい、西脇市民病院は30%超え、などという風に分かるわけです。
それでタマル産では、昨年1年間の帝王切開率が、わずか1.8%でした。20%ではありませんよ。
166人のお母さんが赤ちゃんを産まれて、その中で帝王切開はわずか3人だったのです。
残りの163人のお母さんは経膣分娩です。
普通なら166人中、40〜50人くらいが帝王切開になっていたはずなのです。



3人の内訳として、緊急帝王切開はゼロでした。
陣痛の間に胎児の状態が悪くなって、緊急で夜中に帝王切開したことは無かったということです。
選択帝王切開と言って、予定で昼間に帝王切開となった方が3人です。
うち2人は、さかごでの帝王切開です。
うち1人は、前回が緊急で帝王切開になっての既往帝王切開でした。
帝王切開になる方の多くは、さかごと既往帝王切開という、どちらかの原因が多いのです。

タマル産では20年前は、さかごでも経膣的に産んでいただいていたのですが、
最近は、さかごだと帝王切開を希望する方が多いのです。
希望されれば経膣分娩もしているのですが。
それが帝王切開が無くならない原因なのです。

それでも昨年は特に帝王切開率が今まででもっとも低かったのです。
それは、昨年から外回転術を始めたからなのです。
妊娠36週でもさかごなら、お腹を撫でてさかごを直すのですよ。
成功率は半分強でしょう。
これでさかごでの帝王切開が半減したのですね。
2021年の今年は早くも2人、予定日近くで、さかごの方が居られますよ。

今から10年前は、タマル産での分娩数が200人を超えていたのですが、
昨年は166人でしたね。この10年でおおよそ20%減少しています。
さらに10年続けられるとすれば、130人を切って、月に10人くらいしか生まれなくなるのでしょうね。
その辺りが開業の限界でしょう。看護師さんを雇えなくなるからですよ。
そうなれば、多少遠くても近隣の病院で産めば良いだけのことです。
ですが、帝王切開になる方が増えるのは残念ですけれど。
なるべく普通にお産してもらおうと頑張ってきたのですからね。

最近では医療に不満を持つ方が増えてきたので、
どこの医療機関も帝王切開をしたがるのです。
なるべく苦情を受けないためにです。
そして帝王切開をすると収入が倍増するので、一石二鳥なのですよ。
そんな時代に逆行しているのがタマル産だったと、覚えておいていただけますでしょうか。