タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

急性期より慢性疾患でしょう

2021-02-26 20:46:03 | つれづれ
お雛様が隠れてしまっていますが、これは三田市で、最近改装された、寿の湯に来ているところです。
食事だけでも入館できるのです。
注文から配膳まで無人ですよ。
本当にこんな接待で良いのでしょうか。
人ごとではなく、産婦人科の接待もとても変わってしまいましたからね。
寂しいことですが、なるべくドライな関係が好まれるようになりましたよ。

最近のニュースから、地域のお話をしてみましょうか。
あまり気付いておられないでしょうけれど、この2月9日に神戸市が発表しました。
「北神戸地域の急性期医療の確保へ、神戸、三田で検討委員会設置」というものです。

もともとは丹波篠山市と三田市と神戸市北区の3者が、この地域の急性期医療を検討していたはずなのですが、
いつの間にか丹波篠山市ははずれて、三田市民病院と神戸市北区の済生会病院との協議になっています。
要は、三田市が急性期医療から手を引きたいと言っているわけです。
以前から三田市民病院は赤字が大きいので、民営化したがっているのですよ。
売却の話も出ていましたが反対に遭い、とりあえずは産婦人科や救急をやめれば赤字幅を減らせると考えているのです。
最近では、病院の職員の医師と看護師以外の給与を10年間にわたって3%減額すると発表したのもその一環です。

ところが話はこれで終わりではなくて、神戸市北区の済生会病院も、こちらも大幅な赤字なのに、産婦人科や救急を押し付けられては困ると反発しているのですね。
以前、宝塚市民病院や川西市民病院も同じように、赤字が理由で急性期から撤退したいと発表したのを書いたことが有ります。
病院はどこも赤字ですから、利益の上がる高齢者の慢性疾患だけに集中したいわけです。
産婦人科なんかやれば赤字になるから、どこもしたくないわけですよ。

そこで丹波篠山市ではどうなっているのでしょう?
他にも病院は有りますが、主に岡本病院と兵庫医大ささやま病院の2つが急性期医療を謳っています。
そうは言うものの、兵庫医大も産婦人科から撤退したのはご存知の通りです。
わずかな市からの助成だけで、産婦人科なんか続けられるわけが無いのですから。
最近は岡本病院と兵庫医大さんが急性期は1つに集約化したいし、もっと助成金が欲しいと市に申し入れましたね。

ここまでが現状なのですが、さて、産婦人科の議論が抜けているのに気付かれましたか?
丹波篠山市長は以前から、産婦人科は県立丹波医療センターではなく、
三田市民病院や済生会病院と連携すべきだと言ってこられたのです。
丹波篠山市は北を向くより、南を向く人が多いからだと説明を受けました。
別にその言葉を非難はしませんが、それならばこの三田市と神戸市北区の検討委員会に、丹波篠山市も入れてもらわないと、また手遅れになりますよ。
また、と言うのは、県立丹波医療センターができる時に、丹波篠山市も共同で母子医療センターを作るべきだったのに、この時も乗り遅れたのですからね。
いよいよ丹波篠山市の妊婦さんは、正常分娩に関しては今しばらくは、タマル産が頑張りますけれど、
母子医療センターが近くに存在しなくなるという恐怖を感じておられないように見えます。

タマル産では、平均で年に4回くらい、救急車で母体搬送をするのですが、
最近は県立丹波医療センターも、済生会病院も受け入れてもらえないことが増えてきました。
そういう時は神戸市の大学病院や神戸中央市民病院まで搬送しないといけません。
片道で1時間以上もかかるのですから、患者さん以上に、私の心臓の方が止まりそうになるのですよね。

今年の赤ちゃんは5%減止まりですが来年は

2021-02-19 20:49:09 | つれづれ
今朝は寒い朝になりましたね。
この冬、最後の雪となるでしょうか。

さて、ここで厚生労働省から昨年の人口動態の速報が発表されましたよ。
ただし過去2年間の、1月から10月までの期間限定版なのですけれどね。

それによると一昨年から昨年にかけてはの出生数は2.3%しか減少していません。
それと言うのも、この期間に生まれた赤ちゃんが妊娠した時には、まだ新型コロナの影響が無かったからです。

死亡数は1.2%減と、こちらも懸念されていたような感染症による死亡数の大幅な増加は認められませんでしたね。
結核などとは大違いですよ。

注目すべきは婚姻数の減少で、昨年は結婚式を延期するカップルが増えたでしょう?
出会い自体も減少したのでしょうね。
婚姻率は13.3%減少しました。
この影響は今年はまだそれほどは出ないでしょうけれど、来年以降の出生数に影響してくるということでしょう。

離婚数は8.7%減と、どんどん離婚が増えている現状に対して、逆に減りました。
良いといえば良いことです。経済的に結婚していた方がお得ということも関係しているのでしょうね。

それでもう少し詳しく今年の赤ちゃんの数を予想してみましょう。
昨年はまだ2.3%減と書きましたが、今年は5.1%減になることが予想されています。
というのも昨年の10月までの出生届けの減少がそうだからです。
とくに東京の昨年の5月の出生届けの減少は19.6%減と、都会の減少率こそ大きそうです。
地方では新型コロナの影響は都会に比べて軽微なので、なんとか踏ん張ってほしいものですよ。

そして昨年結婚したカップルが、来年以降に赤ちゃんを産むので、
来年からはさらに出生数の減少が進むのですよ。
実はこれからが赤ちゃんをあまり見かけなくなる世の中になる、ということなのです。
みなさん、危機感を持たれているかな?

出産を扱う産婦人科の診療所も、そろそろ必要無くなりそうですね。
実際、この14年間で、16%減少しているのですからね。

着床前と出生前、出生後検査の違い

2021-02-12 21:03:01 | 産科
今日、2人目の赤ちゃんがたった今生まれたので、更新が遅くなりました。

赤ちゃんは生まれると、生後2日目に聴覚検査をしています。
生後5日目には、先天性代謝異常の検査もしていますよ。
どちらも母子手帳に記入欄が有りますからね。
便の色で先天性胆道閉鎖症を早期発見するのは、お母さんがするのです。

いろんな病気を検査できるようになりましたが、検査するのは治療法が確立している病気だけです。
治療法も無いのに検査しても、不安になるばかりで仕方が無いですよね。
ところが治療法が無いのに検査することも有るのです。
それは出生前検査と着床前検査です。

出生前検査とは、最近要望が多くなってきたNIPT検査のことです。
お母さんの血液検査だけでダウン症など3つの染色体異常を検査できてしまう簡便な検査です。
簡便なだけに皆が受け出すと、倫理的な問題が起こることが予想されます。
今週も40代のお母さんが検査を希望されました。
先週は逆にダウン症の子を産んだことがあるお母さんでしたが、検査を希望されませんでした。
昨年、ダウン症の子を産んだ別のお母さんは20代の若いお母さんでしたよ。
ダウン症などの子を持つ親のサークルに入って、けっこう元気に活動されていると聞いています。

NIPT検査の意味をよく説明してもらってから受けないと、検査が出てから考えていてはタイムオーバーになってしまいます。
陰性と出た場合はほぼ100%だいじょうぶなのですが、
陽性と出た場合は、偽陽性も有って、さらに羊水を採取して検査しないといけません。
ところがこの検査をパスして中絶するお母さんが多いことが問題になっているのですよね。

もう1つの治療法も無いのに検査している着床前検査とは、体外受精の時にしかできません。
初めは卵子と精子が体の外で受精した1つの細胞なのですが、
これが2個、4個、8個と分裂していって、5日目には100個くらいの細胞の胚盤胞という状態になります。
このうち5個から10個ほどの細胞を抜き出して検査をしてから、異常が無いことを確認して子宮に移植するのですよ。
これなら子宮に移植する前に判断できるので、両親にとっては罪悪感を感じることが少なくなりますね。

これらの検査が有るということは知識として知っておいてください。
検査が有ることを説明しなかったのにダウン症が生まれたと、産婦人科医を裁判で訴えて勝訴した例が有るのです。
そんなことは説明されなくても、知っていて当然だと思うのですよ。
そんなことより知っていた上で検査を受けたいのかどうか、という選択をするという自己決定権を持っていただきたいのです。

それで治療が確立されているものでは、先天性代謝異常の検査が有るのです。
昨年からその内容が変わっていることは以前にお話したのですが、簡単に。
生後5日より後にしか検査できません。十分にお乳を飲んで、それを代謝してから検査するからです。
けっこうスクリーニング検査では再検査になることが有ります。
ですが、再検査するとたいていは正常と出るのです。
原因はまだ十分にお乳を飲めていないことによるので、再検査となってもすぐに心配することはないのですよ。
以前は5種類しか検査できなかったのですが、兵庫県では19種類検査できてしまいます。

実はこちらも治療できないものまで、もっとたくさんの病気を検査できるのですが、
それは治療法の発展とも関わってくるので、今後の判断によるのですね。
また県によって、もっと検査しているところも有るのですよ。
知識欲が有る方は、調べてみると興味深いのです。

人工授精の本当の意味

2021-02-05 20:25:30 | 不妊症
昨夜は2人、赤ちゃんが生まれましたよ。
1人はとても難産で、3日がかりのお産でした。

さて今日も、不妊症治療のお話をしてみましょう。
最近は体外受精の助成金の話ばかり出るので、不妊治療イコール体外受精と思われている方も多いようです。
ですが、まずは一般不妊治療から入るのが良いのですよ。
今日はそのお話です。

ただし一般不妊治療といえど、どこの産婦人科でもできるわけではありませんからね。
それともう1つ、一般不妊治療は長くても1年以内に終わらせなければなりません。
この2つは前提として知っておいてください。

それで一般不妊治療と高度不妊治療の違いとは何か、と言うと、
一般不妊治療は人工授精、高度不妊治療は体外受精と顕微受精と思ってもらっても、大きな間違いではないのです。
タマル産の一般不妊外来では、精子濃縮人工授精まで行っています。
細かく言うと、人工授精にも、普通の原液での人工授精と、精子濃縮人工授精とに別れます。
もちろん精子濃縮人工授精の方が、治療成績は上がります。
それはより多くの精子を子宮の中に注入することができるからですよ。
精子濃縮人工授精は1時間ほど時間がかかりますが、原液での人工授精は15分ほどで終了です。
だから自分が受けてきた人工授精はどちらだったか思い出しておいてくださいね。

精子は上の図の丸1の、子宮頸管を通って子宮の中に入ります。
このストロー状の筒を元気良く泳いでいける精子のみが子宮に登れるのですね。
1つ目の関門なわけで、ここで元気のない精子はふるいに掛けられるわけです。

さらに丸2の卵管の入口もストロー状になっていて、ここを卵管狭部(らんかんきょうぶ)と呼ぶのですが、
ここでも2つ目のふるいに掛けられるのです。
2つの関門を通過した元気な精子だけが、卵管の膨らんだ「膨大部」で待つ卵子に出会えるのですよ。

この1つ目のふるいを跳ばして、濃縮した精子を全量、子宮の中に入れるのが人工授精です。
2つ目のふるいには掛けられるので、より自然なながら、妊娠の確率は上がるのです。
そして2つ目のふるいも跳ばして、精子と卵子を直接混ぜてしまうのが体外受精です。
ここでは、精子は元気な精子と元気でない精子が混在してしまうのですね。
だから人工授精の方がより自然に近いというわけです。
顕微受精ともなれば、人間が1匹の精子を直接、卵子に注入するので、精子の元気具合は計れていないのです。

それらを理解してから治療は受けるようにしてくださいね。
最近は一般不妊治療を跳ばしていきなり体外受精を受けられるカップルも増えてきました。
ですがそのリスクは考えておかないといけませんからね。

それともう1つ知っておいていただきたいのは、おおよその治療回数です。
年齢で推奨されている回数が変わるからです。
女性の年齢が35歳までなら人工授精は6回まで、
40歳までなら4回まで、
40歳以上は2回までが目安です。

それでも妊娠しなければ、42歳までなら体外受精に進むべきですよ。
ただし体外受精も3回を目安にしても良いでしょう。
それで妊娠しなければ、撤退しても良いのですよ。
永遠に治療を続けるのはやめましょうね。
人生設計を考え直す時期だということですよ。