タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

婦人科のワクチンの話

2021-04-30 20:52:13 | 婦人科
昨日は、タマル産の職員のほぼ全員が新型コロナの予防接種を受けに行ってきましたよ。
どうしても受けたくない職員も居ましたけれど。
阪神間では、お産するお母さんが新型コロナに陽性であった場合、そこに居合わせた医師と助産師などは全員が2週間、自宅待機になっているそうです。
そうなると施設は一時、休院ということになってしまいますね。

先日もタマル産でも、お産するお母さんに発熱が有り、しっかりと新型コロナ対策をして分娩に挑みましたが、
心配していた検査は陰性で、ただの風邪だったようで一安心です。
最近はぼちぼちと感染したとか、濃厚接触者になったという患者さんも見受けられるようになってきましたよ。
それでやはりワクチンは重要と思い知られたようで、話は飛躍しますが、子宮頸がんの予防接種も受けないとということで来院された方が居られました。
そんなわけで、またヒトパピローマウィルス(HPV)のおさらいをしておきましょう。

上の図は子宮頸がんの時に発見されるHPVの型なのです。
日本人で1番多いのは16型ですね。2番目に多いのは18型です。
日本人ではこの2つで半分以上を占めるのです。
外国人では70%とも言われています。

逆に言うと、この2つだけ予防できても完全ではないのですね。
もし可能であれば、もっと多くの型に効いてほしいところなのですが、
新型コロナと違って、型特異的で、1つずつワクチンを開発していかないといけないのです。
それで2価とか、4価とか、9価というように、開発されているのですよ。
今現在は、中高生が無料で打てるのが2価と4価ですが、当然4価の方が良くて、
もし自由診療でも良いというのであれば、9価のものが良いのですが、かなり高価なのですよ。


2価のものは16型と18型に予防効果が有ります。
4価のものは16型と18型に加えて、尖圭コンジローマという性感染症にもついでに効果が有るのです。
子宮頸がんだけを考えればどちらでも良いのですが。
9価のワクチンは3番目に多い52型、次の58型、33型、31型と、ついでの45型まで効果が有ります。

それで本当に予防効果が有るかといえば、みんなが予防接種を受けて、10年以上しないと結果が分からないのです。
ようやく2020年の暮に、やっぱり子宮頸がんになる女性が減っていた、と結論されたばかりなのです。

予防接種の治験が少なくて心配だとか、本当に効果が有るのか、といった問題は、結果が出るまで長期間を要するのです。
だからと言って、予防接種を受けないというのは、もったいない戦略ですね。
それで、新型コロナのワクチンも是非、打たれた方が良いのですよ。

不妊治療で逆に少子化になる

2021-04-23 20:47:06 | 不妊症
写真は孫が公園の植物に水やりをしているところなんです。
マンションではガーデニングもできませんからね。

ところで将来は、みなさん、孫に会えなくなるって知ってましたか?
今読み終えたばかりの本なのですが、「近未来のこづくりを考える・不妊治療のゆくえ」久具宏司著という新刊本が有ります。
かなり専門的なので読みづらいかもしれませんが、不妊治療の現在と未来が書かれています。

丹波篠山市でも国の方針でもそうなのですが、不妊治療が今重要視されています。
もちろん少子化対策になるだろうということで始めたのですが、
実際のところは逆に少子化に拍車をかけることになるのだというのです。

不妊治療が発展して45歳で赤ちゃんを産めるとなっても、子育ても有るので2人目は難しいかもしれませんね。
その子供も45歳になって次の世代を産むとすると、孫の顔を見られるのは90歳ですよ。
もう死んでいるかもしれないということです。
25歳で赤ちゃんを産むなら、初孫は50歳ですから、そのあと35年くらいは楽しめるでしょう。
しかも若いうちなら何人も産めることでしょう。

生産年齢でも考えてみましょうか。
子供に家業を継がせるとします。
25歳で子供を産んでいたなら、親は45歳から子供と一緒に20年間一緒に働けますよ。
知識や伝統の相続だってできるのです。
逆に45歳で産んだ場合は、子供が20歳になる頃には、肝心の親世代は停年となっているのです。
これでは経済は回っていかないのです。

体外受精において、受精卵は凍結保存されているのです。
次の周期で子宮に戻すことも有れば、数年や数十年後に子宮に戻すことも有るでしょう。
結婚しない女性は、将来に備えて独身のうちに卵そのものを未受精の状態で凍結保存することを望むようになるでしょう。
自分が50歳になって産むのが困難だとしても、精子をネットで買ってきて、
日本では認められていない借り腹を外国で借りて、赤ちゃんを産むようになるかもしれません。
それが不妊治療の目指すところなのです。
これでは不妊治療は個人の欲望は満足させられても、人類の未来を明るく照らすものではなさそうだということです。

要するに、若いうちに家庭を持てる環境を整えることの方が少子化対策にもなるということです。
企業であれば、昔のように企業の中でお見合いをしてもらうとか、
育休制度を整えるとかして、女性の一生を面倒みていかないといけないのです。
タマル産は中小企業ですが、これまでも産休、育休は全取得されていますよ。
有給休暇も全部消化していただいています。そうやって長く働いてもらう方が結局はウインウインですよね。

この本の結論としては、不妊治療の専門家でありながら、不妊治療の保険導入を否定されており、
すぐに体外受精を受ける風潮を懸念しておられるのですよ。
私も目から鱗でした。

さて今晩も、今日3人目のお産が有りそうなので、このへんで。

妊娠中の新型コロナのワクチン

2021-04-16 20:48:20 | 産科
タマル産のタマルバースキッチンのインスタより写真を拝借しました。
タマル産の近くの青池の写真なのですよ。
命短し恋せよ乙女、という歌が聞こえてきそうです。

さて今日は、最近質問が多くなった、妊娠中や不妊外来での治療中に、新型コロナのワクチンを打ってもよいか、という問題です。
まだ皆さんは問診票が手元に無いので、何を申告すれば良いか分からないでしょう?
そこには基礎疾患が有ったり、アレルギー体質でないか、などの一般的な質問以外に、
現在妊娠している可能性はありますか。または授乳中ですか。という質問が有ります。

そもそも妊娠している可能性が有るか、という質問では、不妊治療中の方も可能性としては有る、ということになりますよ。
ただし基礎体温を付けている方では低温期は妊娠の可能性は無いので、低温期であれば何も心配要りませんね。
3週間後に2回目の予防接種が有りますが、その頃はちょうど月経になっている頃ではないでしょうか。
ですがそんなにうまいタイミングになるとは限りませんね。
その場合は現場の医師が判断することになるでしょう。

それでは妊娠中の女性はワクチンを受けても良いのでしょうか?
答えは、まだ日本では積極的には勧められていないのです。
妊娠中にワクチンを打っても問題無いというデータは欧米ではかなり出ていますが、日本人ではまだ経験が少ないからということのようです。
もしそれでも妊娠中に感染するとその方が問題ですから、打つ女性も居られるでしょう。
その場合は、妊娠12週以降が勧められています。
本当は不活化ワクチンではないのだから、いつでも良いとは思うのですけれどね。
あるいは生ワクチンでもないので、妊娠中にぜったい打ってはいけないというものでもないのですよ。
あとは自己判断ということでしょうか。

注意事項としては、妊婦さんの予防接種は産婦人科ですること、12週以降で、それと30分はその場で様子をみることとなっています。
ですが丹波篠山市は妊婦さんの数自体少ないですし、5人集まらないとワクチンが回ってきませんから、
現実問題としては産婦人科では打てないのですよ。
まあ、それが現状ということなのです。

新しい子宮頸がんのワクチン

2021-04-09 16:36:09 | 婦人科
昨日、今日で赤ちゃんが3人も生まれましたよ。
産婦人科医はだいたい夜中に活動しているので、みなさんの目には留まらないかもしれませんけれど。
そんな中でも昨日は県立フラワーセンターに出かけてきました。
今はいろんなチューリップが咲き誇っています。
狭いところに篭ってばかりしていないで、外に出てお花を愛でてください。
今日生まれた赤ちゃんの花言葉は、「桜」で、「精神愛」ですよ。
さっそく産声メッセージにしてプレゼントしました。

それでは今日の話題は、新しい予防接種についてです。
中学生の女子は、子宮頸がんを予防できるワクチンを無料で接種できますよね。
それにしても最近はワクチンのメリットではなく、副反応ばかりが報道されます。
過去には疼痛や運動障害などの副反応が大きく報道されましたが、2017年に厚生労働省は接種後に報告された多様な症状とワクチンの因果関係を示す証拠は報告されていないと発表しているのですよ。

今年の2月に新しく、9種類の子宮頸がんや膣がん、外陰がん、尖圭コンジローマを予防できる9価のシルガードというワクチンが発売になりました。
これで流れが変わるのではないかと期待されています。
ただしまだ無料ではないのです。
今現在無料で打てるのは、2価と4価のものです。
ですが一番、がんになりやすいのは16型と18型のHPVというウィルスなので、
この3種類のワクチンはいずれも有効なのですよ。

先週のことですが、外来に尖圭コンジローマという性感染症で来院された女性が居られます。
外陰部にギザギザのイボがたくさんできるのです。
今度は自分が他の人にうつず番になるのですよね。
あるいは若いのに、子宮頸がんやその前段階になって、子宮の一部を切り取っている女性は多いのです。

毎年日本では1万人が子宮頸がんに罹患して、2,900人が亡くなっています。
私が昔受け持った患者さんも、たくさん亡くなられました。
まだ予防接種がなかった時代でしたからね。
その方たちのことは今でも鮮明に覚えているのです。

若い女性に多いがんなので、子宮の一部を切除すると、お産では早産になったり、妊娠そのものもしにくくなったりもします。
コロナのワクチンも待ち遠しいのですが、
子宮頸がんワクチンも是非たくさんの女性が受けてください。

2020年の12月からは男性も打てるようになったのですが、日本では無料でないので問題ですね。
風疹と同じで、男女問わず受けないと、集団での感染率が下がりませんからね。
今頃になって、男性も風疹の予防接種を勧められているのですからね。
ポリオウィルスなどと同様に、将来はヒトパピローマウィルスも撲滅できていれば良いですね。

そうそう2歳の孫娘がイースターに絵を送ってくれました。
2段目の左がジージだそうです。



不育症は保険診療?

2021-04-02 20:40:47 | 不妊症
JRにはあまり乗らないのですが、県立塚口病院に通っていた頃は毎日、篠山口駅を利用していましたよ。
1日に2往復することもよく有りました。
さてもう4月、桜も満開になって心もおおらかになってきているようで、感染症が増加しているようですね。

今日は、この4月からいくつか産婦人科関係で変わった変化をお伝えしておきましょう。
菅政権の政策で、不妊症治療を保険適応にする目標が出されましたが、まだ議論中のようですね。
ですがその前に、不育症の検査を保険適応にしようということが発表されましたよ。
ただしこちらもそんなに簡単なことではないのですよ。

不育症の検査はまだあまり分かっていないことの方が多いのです。
そもそも不育症とは流産を繰り返すことなのですが、一番の原因はやはり妊娠女性の高齢化ですよね。
女性の年齢が35歳を過ぎると急激に流産率が高くなってきますからね。

35歳までなのに流産を繰り返す場合は、不育症の検査は必要です。
それでも検査をしても60%以上は異常が出ないのです。
検査で異常が出ない時に、次は自然に観るか、とりあえず積極的に治療をするか選択する必要が有ります。
この検査と治療は、まだ因果関係が100%ではないので、因果関係が高そうなものは保険適応で、
あまりはっきりしていないものや高額な検査は自由診療になって、保険と自費が混在しているのが現状です。

その中で、流産した組織を培養して、染色体検査をして、胎児側の原因なのか、両親側の異常なのかを判断する検査が有ります。
これは保険の利かない自由診療なので、8万円プラス消費税ほどがかかります。
この4月から総額表示義務となったので、8万8千円ほどかかると言っておきましょう。
まずはこれを保険適応にしようということらしいのです。

保険診療となれば、保険には消費税が付かなくて、さらに8万円のところを5万円に抑えて、3割負担ですから1万5千円の負担です。
ところが今現在は自由診療に対して10万円までの助成が有るので、負担は0円なのですよ。
だからその分、逆に負担が増えてしまうのです。
保険診療になればかえって負担が増すとはおかしな話でしょう?
しかも検査できる施設を絞り込む様子なので、どこでも受けられないかもしれません。

もう1つ、流産組織を検査するということは、自宅で流産してしまうと夜中に緊急でクリニックに運び、
細胞が生きている間に培養液に浸けなければならないので、お互いの負担が増えそうです。
そうなると流産の場合は入院の上で手術をすることに逆戻りしてしまうでしょう。
最近は流産は薬で流してしまって、手術をしないことが増えてきたのに、これも時代に逆行してしまうのです。

こんな矛盾した話なのですが、実は丹波市でも矛盾した話が進んでいます。

妊婦健診費用は全国的に12万円が妥当で、国が全額補助します、という話だったのですよ。
兵庫県では多くの市町村が12万円の助成をしています。
ところが丹波市と三田市は最低の9万円しか助成していないので、3万円は自己負担となります。
丹波篠山市も以前は低かったのですが、私が市と交渉して満額に決定しましたからね。

もしお隣の丹波市が妊婦さんに優しい制度にしようとすれば、この9万円を12万円に増額すれば良いだけのことです。
私は丹波市さんに何度も提言しているのですよ。
ところがこの4月から初回に受診した部分の、まだ妊婦健診でない時の、保険診療で受けた部分の、
さらに保険が利かなかった部分に対してだけ、1万円まで助成しますと決定されました。
何を想定されているのか分かりませんが、妊娠判定の千円ほどの自由診療分でしょうか。
それでは9千円無駄になるのに。
しかも領収書を持って後払いなのですって。

本当に国も市も、現場に即した助成をしないのはなぜなのでしょうかね。