タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

今年は風疹の流行年ですよ

2018-09-28 21:34:27 | 産科
篠山市宮田の彩陽(さや)ちゃん、8月8日生まれ。
「明るく、暖かい心を持った子に育ってください。
破水から始まりましたが、安産で生まれてくれて良かったです。
上の子と、個室で一緒に居られて良かったです。」

お姉ちゃんも一緒に、お産から産後まで参加できたのですね。
最近はどこのお婆ちゃんも忙しいですから、一緒にお泊りできるのは便利でしょ?

篠山市医師会からニュースが来ているのでお知らせしておきましょう。
以前から何回もお知らせしているのですが、
今年の風疹の流行は、昨年の5倍のペースのようです。
とくにこれから妊娠したいと考えている女性は、予防接種をされると良いですね。
妊娠された後で、風疹の抗体価が低い場合は、ご主人が代わりに予防接種を受けてください。

本人は、産後に予防接種を受けると良いですよ。
ただし産後に予防接種をしても、大人になってからの予防接種では抗体価が上がりません。
それでもブースター効果と言って、効果は十分に有るので心配要りませんからね。

先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれる確率は、普段は1年間で0〜5人とされます。
ですが昨年でしたが、兵庫だけでも数人の報告が有ったように思いますよ。

そこでついでにその他の、妊娠中にかかってはいけない病気を再度、掲載しておきましょう。
トキソプラズマ感染児は1年間で100〜200人と、風疹よりずっと多いのですよ。

梅毒は1年間で20人ほど。梅毒は急増していますから、さらに増えるでしょうね。

パルボウィルスB19は年間で10人程度ですが、流行年は100人程度。

サイトメガロウィルスは実に年間、1,000人ほどで、
難聴や精神発達遅滞が生じます。

単純ヘルペス感染児も年間100にんほどです。
これは事前に分かっていれば、帝王切開をすることで防げるのですよ。

お分かりですか?風疹は重要ですが、風疹よりもっと感染頻度の高い病気がたくさん有るということです。
妊婦さんに仕事で外に行ってはいけないとは、言えませんからね。
ですが、実は感染源は、風疹のようにご主人や、サイトメガロウィルスのように上の子だったりします。
一度かかると治療には難渋するので、まずは予防法をおさらいしておきましょう。

下の子を妊娠中は、上の子との濃厚に接触することを避けなければならないのです。
具体的には、おむつを交換したり、食事を与えたり、ハナやヨダレを拭いたり、
子どものおもちゃを触ったりした後は、石鹸で20秒ほど手を洗うのです。

子どもへの口移しはもちろん、食べ物や飲み物、食器を共有しないことです。

歯ブラシも共有しません。

口や頰にキスをしない。

など、上の子にはちょっとかわいそうですが、
妊娠中はとくに気を付けないといけないのですよ。
写真のお姉ちゃんのように、赤ちゃんが生まれたら、ちょっと規制を緩めてあげれば良いでしょう。
ですが、お母さんからの免疫が切れると、
お姉ちゃんから赤ちゃんに、いろんな菌やウィルスがうつるのですよね。
でもそうやって、少しづつ、病気に強い体になっていくので、
必ずしもそれが悪いこととは限りません。

ただし妊娠中は、ということです。

産婦人科と輸血のお話

2018-09-26 21:36:03 | 産科
写真は、篠山市のユカちゃん、8月11日生まれです。
インドネシア人のお母さんと、お父さんから生まれました。

赤ちゃんの名前はインドネシア語で、美しい花という意味らしいです。
次は男の子が欲しいとも。

技術者のお父さんですから、国に帰るより日本での仕事の方が楽しいと言われていました。
祖国では、単純労働にしか就けないとも言われていましたね。
お母さんは英語も流暢に話されますから、日本人以上に知識人と言えますね。
こういう方々が篠山に増えられると、刺激になるのではないですか。
短期間だけ、介護のためにベトナム人が増えるだけでは、日本の将来が心配になりますからね。

さて、昨日からお産続きなのですが、さらに今日は帝王切開でのお産も有りました。
初めてのお産で、さかごなので帝王切開を選択されたのです。
直前までは経膣分娩を希望されていたのですが、思い直されたのです。
時代の変化が有るので、それで良いと思いますよ。
もちろん希望されれば、経膣分娩にも付き合いますからね。

それでタマル産での帝王切開の良い点と悪い点をお話ししておきましょう。
まず良い点は、緊急での帝王切開に対応しているということです。
理想は30分以内に始められることが良いとされており、
タマル産では医師1人体制なので、素早く行うことができるからです。
大きな病院では、夜中に緊急で帝王切開するとすれば、
何人ものスタッフを確保するのに、時間がかかることも有りますからね。

タマル産での帝王切開での悪い点は、その裏返しですね。
素早くできますが、人手は少ないので、例えば輸血をしないといけないとかは苦手です。
ただし輸血までしないといけない場合は、非常に稀なのですよ。
この20年間の数千人の中で、普通のお産も含めても10人にもならないのですから。

ただし、お産ですから帝王切開に限らず、輸血のことも知っておいた方が良いですね。
今年、日赤の研究部門の方々がタマル産に来院されて、いろいろ教えていただきました。
その時は特殊な血液型の説明のためだったのですが、
輸血の副作用についての話も有りました。

私が研修医の頃は、教授の執刀の大きな手術には、家族や親戚を集めて、
手術中に生血(なまけつ)を採血するという仕事が有りました。
その血液をクロスマッチだけの適合検査で、すぐに患者さんに輸血したものです。
たまに研修医さえ、血液型が適合していると採血されたものです。

天理に居た時は、大きな手術の前には自己血採取しておくので、生血なんて必要ありませんでした。
ただし産後にDICという血が固まらない患者さんを担当した時は、
患者さんを奈良県立医大まで搬送し、緊急で生血を輸血してもらいました。
この時は学内放送で学生を招集し、あっという間に4千ミリほど集まりましたよ。
さすが普段から練習しておられると、奈良の大学病院に驚いたものです。

ですが、今はそんなことはしないのですよ。
その後、生血は危険だということが分かったからです。
なるべく近親者からは供血を受けない方が良いのです。
腎臓などの臓器移植では、近親者の方が良いのとは異なりますからね。

むかしは輸血された側の患者さんは、生命は救われても、
輸血後の肝炎やエイズで苦しまれることも有ったのです。
それで私も輸血に対しては抵抗が有ったのですよね。

ところが日赤さんの話では、今は副作用も殆ど無いのだそうです。
肝炎やエイズは、限りなくゼロに近づいているようでした。
篠山にも宗教的な理由で輸血拒否をされる方々が居られます。
信仰は優先しなければなりません。
ただし昔と違って、輸血による問題はかなり改善されているということも知っておきましょう。
それでも将来、人工血液ができるに越したことはないですね。

ところで産婦人科だけは輸血の基準が特殊なのですよ。
だって夜中や休日に緊急で検査ができないことも多いですし、
病態が急激に変化することが有るからですね。
お産の場合は、収縮期血圧よりも脈拍の数値の方が高ければ、出血が1リットル以上と考えられます。
さらに脈拍が1.5倍くらいに高くなれば、緊急で輸血が必要です。

簡単な基準なので、このSIインデックスという指標は、忘れてはいけないのですよ。
また皆さんを怖がらせてしまいましたか。
普通は、そんなことは有りませんから、あまり心配し過ぎないようにしましょうね。

車中分娩第一号

2018-09-21 21:34:07 | 産科
写真は、長野県松本市の一平(いっぺい)くん、8月8日生まれ。
「元気にたくましく、優しい子になってください。
3人目ということもあってか、本当に楽に産むことができました。
みなさんとても明るく、元気が出て、私も頑張ろうと思えました。」

お姉ちゃん2人に囲まれてのお産でしたね。
弟くんでしたよ。
松本は人気の地方ですね。
若い人も移住する人が多いとか。
私も山登りに学生時代はよく行ったものです。

昨日は、木曜で休診日だったのですが、2人赤ちゃんが生まれました。
今日も1人生まれましたよ。
うち1人は、夜中の丑三つ時に突然、「生まれました!」とタマル産に向かう車の中で悲鳴が、
電話越しに聞こえてきました。
開業してもうすぐ20年ですが、初めての経験です。
それに近いことは有りましたけれどね。
到着した時に半分出かかっていたり、
家のトイレで生まれた、と電話が有ったり。
この時は救急車のお世話になりました。

こういう場合の対処です。
まず車の中で、赤ちゃんのへその緒を、クリップで止めてから切り離します。
それで赤ちゃんだけを処置室まで抱えて運んで、蘇生処置をするのですよ。
幸い、生まれてから7分後の到着だったので、
筋肉の緊張も有りましたし、弱々しくではありますが、息はしていたので、
初期対応後にすぐに元気に泣き出しましたよ。
お母さんは、看護師さんたちにストレッチャーに乗せられて入院。
その後に胎盤を出しましたよ。

私がクリニックに毎日泊まっているので、事なきを得ましたが、
大きな病院でも必ずしも産婦人科医が毎日居るとは限りませんからね。
私もなるべくクリニックを離れる時は、万一に備えて助産師さんに居てもらっていますよ。

私は以前、兵庫県立塚口病院に勤めていたのですが、
ここは兵庫県立柏原病院並みの規模でしたが、
産婦人科医は夜間は宅直でした。呼ばれたら行くという感じ。
当時は篠山から通っていたのですが、経産婦さんのお産は助産師だけで取り上げます。
まさしく院内助産ですね。
ですが、もうそんな時代でもなくなってきましたね。

予め、前回のお産が早かったお母さんには、陣痛が来たら早めに入院することを徹底したり、
場合によっては入院のうえ陣痛を誘発することも有ります。
あるいは、子宮頸管が熟していたら、卵膜剥離という方法で外来で刺激しておくと、
その日の夜に生まれることが多いので、家を出る準備が万端という方法も取りますよ。
それでこの20年間、リスクは最小にしてきたのですね。

ほかにもいろいろ、思い出せば笑い話で済むような話は有ります。
でもね、その時は真剣なのですからね。

妊娠中に貧血の治療はするもの?

2018-09-19 21:27:18 | 産科
写真は、篠山市宇土の莉采(りと)ちゃん、8月8日生まれ。
「明るく元気で、誰にでも優しくできる子になってください。
今回も心地よく過ごせました。
2回目ということで、気軽に話せて何でも相談できました。」

最近は、妊娠して初めて受診されたり、
不妊症で受診されたりした場合、まずは葉酸を含んだマルチビタミンのパンフレットをお渡ししています。
まあ、もらっただけでスルーする方が殆どでしょうけれど。

私自身、わざわざビタミン剤を摂るより、きちんとした食事をする方を好むのですが、
そうは言っても、適当な食事しかしていない方が多いのですよ。
やはり妊娠を考えるなら、ビタミン、とくに葉酸の摂取は必須なのかもしれませんね。

理由は、不足すると赤ちゃんの奇形が増えるためです。
葉酸は胎児の神経系の発育に必要なので、不足すると二分脊椎という病気になることが有ります。
そうなると一生、歩くことができなくなることさえ有るのですよ。
昨年も、タマル産で生まれた赤ちゃんで、そんなことが起こりました。

普通の食事というのは、野菜を十分に摂るということですよ。
レタスをパリパリでは、ちょっと心もとないのですね。
お浸しにするとか、たくさん摂れる方法が良いでしょう。
一番たいせつなのは、吸収を阻害する化学物質を摂っていないかということです。
本人やご主人が喫煙者だと、葉酸が吸収されません。
それで赤ちゃんの奇形が増えるのです。

今月だけでも、さかごの赤ちゃんが2人、帝王切開で生まれます。
経膣的に産んでも良いのですよ。
さかごの原因は赤ちゃんの体重が小さいためで、
頭が大きくならずに、下に下がってこないからです。
さらにその原因は、ご主人がタバコを吸っているからです。
あるいは妊娠初期に本人が吸っていたり。

逆に、健康重視の女性は、妊娠前から葉酸だけでなく、鉄分を摂られていたりします。
ですが、鉄分は過剰摂取はかえって害になりますからね。

妊娠初期、とくに妊娠8週未満では貧血の検査は正確です。
ですが8週以降は、つわりの影響だけでなく、血液の希釈が起こります。
赤血球も頑張って造るのですが、それ以上に血漿という水分もより造ります。
そうすると見かけ上、だんだんと血液が薄くなっていくのですね。

妊娠32週ごろにこの血液の希釈は最大となりますよ。
ですからタマル産では妊娠初期と、妊娠の後期に2回、血液検査をします。
本当は助成券に含まれていない検査なので、タマル産の自腹で検査をしているのです。
他院では自己負担なのでしょうか?

妊娠初期に貧血を指摘されたなら、これは鉄剤を処方します。
それに対して、後期に貧血を指摘されても、あまり治療はしません。
血液が薄い方が胎児の体重が増えるからです。
血液が濃いと、胎児の体重が減るのですよ。
知らなかったでしょう?
ただしヘモグロビン値(Hb)以外に、赤血球の大きさ(MCV)が大きくないことは条件ですが。
赤血球が大きいと鉄欠乏性でなく、葉酸欠乏性の貧血ですからね。

今日、里帰りでタマル産を受診された方も、
大きな病院からで、とても分厚い紹介状を持ってこられたのですが、
貧血の治療と称して、鉄剤を処方されていたのですよ。
そんなことしたら、胎児の発育が遅れるのでしたね?
ここを勘違いしている先生と患者さんが多いのが事実です。

ただしこれは結果論かもしれませんよ。
妊娠高血圧症候群では、血液濃縮が起こります。
この場合は、血漿量が少なくなって、見かけ上、血液が濃くなりますが、
実際は血液量はすごく少なくなっています。
だから血液が濃いと胎児発育遅延が起こるということかもしれません。
ちょっと専門的過ぎましたね。

要するに、妊娠初期から中期にかけては、
葉酸は必須。鉄分は初期から中期のみ、貧血が有れば。
オススメはタマル産で売っているマルチビタミン。
でも医療機関は宣伝してはいけないので、正しいことでも言えないのが無念ですね。


体外受精児は17人に1人と普通のことです

2018-09-14 20:47:40 | 不妊症
写真は、篠山市杉の「ゆい」ちゃん、8月7日 生まれ。
「社交的な子に育ってください。
授乳の方法など、丁寧に教えていただきました。
次も、今回とお同じで大丈夫です。」

初めてのお産でしたからね。
ちゃんと納得して産めたようですね。

ところで、先日、ニュースを見ていたら、
2016年に日本国内で、体外受精で出産した赤ちゃんは、5万4,110人だったようです。
最近は少子化で、1年間に生まれる赤ちゃんは、100万人を割りましたから、
17人に1人だったのですね。

ちょっと前まで、25人に1人と言われていて、
さらにそのちょっと前は40人に1人と言われていましたが、
2018年はもっと多いのでしょう。

その5万4千人ほどのうち、4万4,678人が凍結胚での胚移植だったようです。
率にして8割超でした。
それはどういう意味かと言えば、卵巣を過剰に刺激して、なるべくたくさんの卵を採取します。
採取した周期は、卵巣が腫れるので、受精卵を戻すにはあまり適しているとは言えません。
そこで受精卵はいったん凍結しておいて、
次の周期などの、状態が良い時に受精卵を子宮に戻すことが多い、という意味なのです。

実際、凍結卵の方が着床率が高いのですよ。
いえ、実は本当はそうではなく、新鮮受精卵の方が良いのかもしれませんが、
戻す側の子宮と卵巣の状態が良くないだけかもしれません。
ですが総合的には、採卵した周期ではなく、いったん間を開けた方が妊娠の確率は高いということです。
それで、どこの施設も最近では凍結することが多いのですよ。

ただ、受精卵で、まだ未熟だからとも言えますが、
ヒトが一度凍結されている、というのは、あまり自然なこととは言えませんね。
長期的な予後がどうなるかは、まださらに長期に観察しないといけないでしょう。
最近は、体外受精児は高血圧になる確率が高くなる、などという報告も有りますが、
反対の意見も有りますしね。

凍結しないという意味では、自然周期採卵法という別のやり方も有りますよ。
あまり過剰に卵巣を刺激しないで、卵を1個だけ採卵してきて、
凍結せずに、その周期に戻すというやり方です。
1個だけだったら、凍結して解凍がうまくいかなかったら、治療ができませんからね。
ですがたった1個なので、妊娠の確率が高いとは言えないのが欠点ではあります。

ところで今日は、以前からタマル産の一般不妊外来に来られている患者さんが、
妊娠されて、さらに心拍を確認するところまで行きました。
39歳という決して若くない年齢ですが、ここまで来れて良かったですよ。

最近では、いきなり体外受精を受けられる方も増えてきました。
以前から危惧していたのですが、
まずは一般不妊治療から始められるべきですね。
もちろん年齢にもよりますが、
40歳を過ぎていても検査と治療で2周期くらい、
40歳前では、できれば4周期くらい、
35歳前では、6周期くらいは、保存的な治療を試みられてからでも良いのです。

けっこう、こういう一般不妊治療だけでも妊娠されることが多いのですから。
ここまでならそう費用もかかりませんから、一通り治療してみて、
それでダメだったら高度不妊治療を受けられるというスタンスで良いのですよ。
その間に、不妊治療の勉強もできますからね。

今日は、別の不妊外来の女性から質問を受けたのですが、
排卵後2日しか経っていないのに、妊娠しているかどうか分かりますか、という質問でした。
残念ながら、もちろんまだ分かりませんよ。
うまく受精していても、まだ卵管の膨大部という辺りでしょうから、
超音波や血液検査でも分かりません。

でも、その質問を機会に、ちょっと妊娠の成立のお話をしておきました。
興味が沸けば、自分でも学んでみたくなることでしょう。
できれば高校の生物の授業は、真面目に聞いておかないといけませんね。
授業が無い高校も有るのですか?

かくいう私も、受験校ではなかったので、高校で生物の授業は無かったのですよ。
しかも大手塾にも行っていなかったものですから。
化学と物理が選択で有っただけです。
ですがまた全国的に授業内容も変わるようですから、期待していますからね。
また話が逸れてしまいました。