タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

スポーツと低容量ピルの関係

2018-07-30 21:09:02 | 婦人科
つい先ほど、生まれたばかりの赤ちゃんとお姉ちゃんたちです。
3姉妹になったね。
夏休みの絵日記に描くそうですよ。
しっかりお産に参加できたからね。

今日はもう1組、赤ちゃんが生まれたのですが、
こちらも、上の子たちに囲まれてのお産でしたよ。
タマル産の良いところは、こうして家族で赤ちゃんを迎えられることだと思っています。
実際、我が家でもそうでしたしね。
先日お産した長女も、下の子のお産の時のことはよく口にしますからね。

さて、夏休みですから、スポーツの話題にしましょうか。

試合や海に行ったりで、月経をずらしたいと来られる女性は多いです。
でももっと早めに来院してくださいね。

オリンピックでも目指しているのなら、女性にとっては月経が試合に当たると困りますね。
最近は低容量ピルを飲んでいる女性も多いでしょう?
スポーツ選手でもそうでなくても、月経をコントロールするために、内服しても構わないと思うのですよ。
日本人の2008年のオリンピック出場者で低容量ピルを内服していた女性は、
それでもわずか3%だったそうです。
それに対して、外国人は83%が服用していたそうです。

風邪薬でもドーピングで引っかかのに、と思われるでしょうが、
低容量ピルは、禁止薬物ではありませんから、大丈夫なのですよ。

若い10代でも飲んでよいのか、という質問には、
初経が有れば開始しても良いのです。
以前は早期から飲めば骨の成長が止まって低身長になると考えられていましたが、
低容量ピルは初経後であれば、身長の伸びには関係ないと言われています。

副作用の血栓症を気にする女性も多いですが、
喫煙者でない、しかも若い女性の場合は、まず心配要りません。
むしろ長時間のフライトで、じっと座っているのはよくないでしょうね。
水分は十分に摂って、ときどきトイレまで歩くとか、座ったままでも足の運動をすればね。

女性ホルモン剤は太ると思われている女性も多いでしょうが、
低容量では、体重には影響しません。
ただし服用初期には、むくんで体重が増えるということは有ります。
だから試合の3ヶ月以上前から飲み始めた方が良いのですよ。

あと心配になるのは、怪我をした時の手術でしょうか。
低容量でもピルを内服している場合は、手術の時に出血しやすいので、
4週間前から薬は中止した方が良いと言われていますからね。
むかし子宮筋腫の手術をする時は、低温期の方が好きでしたよ。
高温期は出血が多くなるからです。

アスリートはむしろ、激しい運動をし過ぎて、無月経のことも多いので、
そういう場合も、ためらわずに飲んでも良いのですよ。
中止すれば、すぐからでも妊娠できますからね。
参考になりましたか?

膀胱炎の検査と治療

2018-07-27 21:01:50 | 婦人科
今日は、前回の続きからです。

写真は、今日外来を受診された方の膣のおりものの顕微鏡写真です。
顕微鏡で観ると、こんな感じで、棒状のものとブツブツの部分が見えますね。
これはカンジダという糸状のカビなのです。
ブツブツは胞子(ほうし)と言って、飛んでいってまた増殖する部分です。

毎年なられるのに、懲りられないのですよ。
あれほど風邪に抗生物質は飲んではいけないと言ったのに。
だって、風邪で抗生物質を飲むと早く治るのです、と言われるのです。
いえいえ、飲まなくても治ったのですよ。
飲むから、こんな風にカンジダ膣炎になってしまったのですからね。
前回のブログを読まれた方なら、もう分かりますね。

今日はもう1つ、新しいことを付け加えておきましょう。
膀胱炎のお話です。

女性でも膀胱炎になると、婦人科だけでなく、泌尿器科に行かれることも有ります。
ですが泌尿器科では検査はまずされません。
もちろん内診も無いのです。
抗生物質を処方されて終わりでしょう。
まあ、診察が嫌いだという女性には、それでも良いのかもしれませんが。

膀胱炎の検査では、まず検尿をしますね。
尿蛋白や尿糖、尿潜血だけでは、膀胱炎かどうか分かりません。
できれば尿沈渣と言って、尿を遠心機にかけて、沈殿物を顕微鏡で観るのが確実です。
でも時間がかかりますね。

それで簡易検査としては、尿カタラーゼ検査というのが有ります。
尿に過酸化水素という酸化剤をポトポトと入れると、泡がたってきます。
泡が出れば膀胱炎ですから、これなら誰でもできますよ。
泡の実態は酸素です。
膀胱炎になれば白血球が寄ってきて細菌を食べます。
細菌や白血球はカタラーゼという酵素を持っているので、過酸化酸素によって還元され、
酸素のブクブクを出すという仕組みです。

でもね、このウロバブルテストというキット、販売中止になったのです。
だいたい保険の点数も廃止になったのです。
それでタマル産では、仕方がないので代替の検査として、
カタラーゼテストを試験紙でできる高機能のテステープを使用しています。

紙コップの尿に、テステープを浸けるだけなのですが、
白血球の数やカタラーゼテストが陽性かどうかまで分かりますから、短時間で判明するのですよ。

さらに膀胱や膣には常在菌以外の細菌は居ないのですが、
これを直接検査しておくことも重要です。
性感染症が有ることも多いので、いきなり抗生物質ではなく、
検査しておかないと、彼氏やご主人も治療する機会を失い、
何回でも膀胱炎や膣炎になってしまいますからね。

だから女性が膀胱炎になったら、泌尿器科より婦人科を受診した方が良いのですよ。
覚えておいてくださいね。

それともう1つ、覚えておいていただきたいのは、
膀胱炎に対して今までよく処方されてきた抗菌剤で、
フルオロキノロン系という薬は、効果よりも副作用の方が大きいので、
膀胱炎や気管支炎では使用しないようにと、アメリカのFDAが警告を出したようです。

フルオロキノロン系にはレボフロキサシンやシプロキサシン、オフロキサシンなどが有ります。
副作用としては、低血糖性昏睡や、神経過敏や記憶障害などの精神神経系の症状です。
これで、膀胱炎に使える薬が少なくなりました。
性感染症であるクラミジア頸管炎などにも、よく使われてきた薬なのですが。
これからは耐性菌の問題など、よほどの時だけ使用することにしておきましょう。

風邪に抗生物質?

2018-07-25 21:24:49 | つれづれ
先週、暑い中、夏休みと称して、天橋立まで行ってきましたよ。
もっともタマル産の不妊外来では、舞鶴から通われている方も居られるので、
毎週遠方よりたいへんだと感じます。

私の母方は京都、父方は三重県、そして私は真ん中の滋賀県で生まれました。
小学生の時に家族旅行したのが天橋立だったので、思い出深いのです。
知恵の輪をくぐったら、頭が良くなるとか言われて。
何十年もして、同じことを自分の子供たちにも言ってきましたからね。

最近まで知りませんでしたが、天橋立にはハマナスの群生地が有るのですよね。

ハマナスは野ばらとともに、日本の原種バラの1つです。
日本の気候に合っているということですね。
赤い実はローズヒップティーになりますよ。
今年タマル産に作ったハマナス園は、本家の群生地よりすっかり立派になりましたからね。

さて、今日の話題です。
今年の診療報酬改定で、抗生物質の適正使用が重点対策されたことは以前にお話しました。
日本は世界でも類を見ないほど抗生物質をよく使用する国で、
おかげで耐性菌の増加が問題になっているからです。

もちろん抗生物質がよく効く病気も有るのですよ。
膀胱炎などですね。
ところがただの風邪では、ウィルスが原因のことが多く、
抗生物質は必ずしも必要ないのです。
抗ウィルス薬も、若くて普段健康な方には、必ずしも必要だとも思いませんが。
抗生物質は風邪に効かないばかりか、
女性ではよくカンジダ膣炎の副作用を来したりしますからね。

それで最近ようやく医療機関の方でも、風邪に対しての抗生物質を控えるようになってきています。
それでも抗生物質が好きな先生がまだまだ多いのも事実です。
今年の日本化学療法学会、日本感染症学会合同外来抗菌薬適正使用調査委員会では、
「この種の医師の集団にいかにアプローチするかが、重要な課題」とまで発言しています。
風邪に抗生物質をあまり出さない医師は62%で、よく出す医師は38%だったようです。

それで患者さんへの対応はどうか、と言うと、
抗生物質を出さない旨を説明しても納得しない場合は処方するが50%、
説明して処方しないが33%、
希望通り処方するが13%でした。
つまり2/3の患者さんは、風邪に抗生物質を希望されるようですね。
まだまだ情報不足ですね。

今日の外来では、ある妊婦さんが泣きべそ顔で来院されましたよ。
それに先立ち柏原の耳鼻科から電話で問い合わせが有ったのです。
抗生物質を処方したいが、妊娠中はだいじょうぶか、というものです。
セフェム系はだいじょうぶですが、薬剤の添付文書に情報が載っていますとお答えしたのですよ。
これからのことも有りますしね。
もっとも医師からの電話でなく、受付か看護師さんからのようでしたけれど。
さぞお忙しかったのでしょう。

それでその妊婦さんは結局処方されず、抗生物質だけタマル産でもらうように言われて来院されたというわけです。
たらい回し状態ですか。
耳鼻科では風邪に対しては、たしかに抗生物質を処方することがまだまだ多いのでしょう。
私は、というと、漢方薬のみ処方しておきましたよ。
だって、耳の奥を診察したわけではないのですからね。
もちろん悪化すればやはり耳鼻科に再診するようには指導しましたが。

考えさせられた症例でした。

そうそう柏原でなく、舞鶴で開業している井上耳鼻科さんは、私の同級生ですよ。
娘同士も福知山の同じ高校に通っていた仲です。
ですが舞鶴まで行くのは、ちょっと遠いですよね。





夏の子どもの病気

2018-07-23 21:42:19 | 婦人科
先週生まれた、赤ちゃんとお父さん、それにお婆ちゃんです。
安産で良かったですね。

退院したら、上の子がおたふくかぜだとか。
小さい子が感染すると、ほっぺたがふくらんで、かわいいものです。
でも熱も出ますし、そんなことは言ってられません。
私も幼稚園の時になったのを今でも覚えています。
初めてお隣の家からアイスノンを借りてきて、治してもらいました。
それまでは熱が出ると、ゴムでできた大きな氷枕でしたからね。
氷を砕いて枕に入れるのですが、知らないでしょう?

帰ったら赤ちゃんにうつらないように注意しないといけませんね。
基本的に、妊娠中におたふく(流行性耳下腺炎)になっても、あまり心配は要りません。
少しだけ、流産や早産が増えるとは言われていますが。
先日のトキゾプラズマや風疹と違って、影響は少ないですからね。

ところで今、兵庫県で流行している感染症は何だと思いますか?
断トツに多いのが、感染性胃腸炎です。
妊娠中になると、下痢や嘔吐で始まり、それに刺激されて子宮に張りを覚えます。
今も妊娠34週で、それらしき症状のお母さんが入院されています。
感染力は強いので、トイレは分けていますからね。
1週間もすれば落ち着いてくるでしょうが、今は子宮の収縮抑制剤を点滴しています。

兵庫県で2番目に流行っているのが、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎です。
こちらはウィルスでなく、細菌です。
熱が出て、のどが腫れて、舌も赤く腫れます。
学校も休まないといけないし、クリニックも届出をしないといけません。
でもね、これから夏まっさかりになると、減少していく病気です。


逆に夏休みですからね、夏にだけ増える感染症が有ります。
頻度はまだ多くはないのですが、今急激に増えているのが、
ヘルパンギーナと手足口病と、流行性角結膜炎、それに咽頭結膜熱です。

ヘルパンギーナは夏カゼの1つで、ウィルスによって生じますよ。
数日の潜伏期のあと、熱が出て、のどに水泡ができます。
痛くてものを飲み込めなくなりますね。

手足口病は、手と足と口にブツブツが出ますが、熱はそれほどではないのです。
口のブツブツは、潰れて口内炎になりますよ。

そして流行性角結膜炎は、潜伏期間が1、2週間と長めで、
結膜が充血して、めやにが出ます。
夏休みになると、いろいろと病気をもらってくるのではないですか?

咽頭結膜熱は、流行性角結膜炎と違って、熱から始まり、
結膜炎だけでなく、咽頭炎も起こしますよ。
プール熱と言って、プールでもらってくるのですね。

タマル産は小児科ではないので、これら子どもの病気は診ないのですが、
赤ちゃんの兄弟から感染することは多いものですからね。
赤ちゃんが家に帰ったら、上の子たちとは部屋を別にしますよ。
ドアのぶやトイレのスイッチは、1日1回、アルコールで消毒してあげてください。
トイレの便器や周りは、塩素系の消毒薬が良いですよ。
トイレハイターなどですね。

そして赤ちゃんがかわいくても、病気のお兄ちゃんやお姉ちゃんは、触れないようにね。
病気が治っても、1、2週間は便からウィルスを排出するので、
お母さんも、おむつや手を消毒しないといけませんよ。

それにしても昔と違って、小さな子供にはいろいろな病気が有りますね。
それだけ検査法も進歩したということでしょう。
お母さん方の方が、小児科の実情をよく知っておられるのでしょう。
今日は、教科書的な話になってしまいましたよ。

トーチのTはトキソプラズマ

2018-07-20 21:36:29 | 産科
丹波市春日町の蒼真(そうま)くん、6月15日生まれ。
「大きな夢を持ち、まっすぐ素直な子に育ちますように。
初めてのお産、痛かったけど、わが子を見た瞬間、痛みはふっとびました。
みなさん優しくて、過ごしすかったです。」

里帰りで初めてでしたが、安産でよかったですね。
心が前向きだと、子育てもうまくいくことでしょう。

ところで最近は、ペットを飼っている家庭も多いのではないですか?
私は犬は苦手なのです。
小さい時に噛み付かれた経験が有るからです。
もっと小さなものなら良いのですよ。
グッピーやめだか、カクレミノ、ハムスター、インコ、カメ、昆虫なら飼ったことが有ります。
ただしイソギンチャクはやっぱりダメですよ。

妊娠していても、猫なんか飼っていることも有りますよね。
そういう場合、トキソプラズマ症の検査をしてほしいと言われることが有ります。
だって、妊娠中に罹ってはいけない病気は、TORCH(トーチ)だけでしたね。
Tはトキソプラズマですよ。Rは風疹です。
他は何度かお話していますよ。

妊娠中にトキソプラズマという寄生虫に感染すると、
胎児の脳がやられて、先天性トキソプラズマ症という病気になることが有るのです。
水頭症や小頭症などです。
流産や死産の原因にもなります。
生まれた時に正常でも、大きくなってから、てんかんになったりすることも有ります。

感染経路は、ネコのトイレ掃除だけでなく、
園芸などの土いじり、砂場遊びもよくありません。
園芸では手袋をして、砂場から帰ったらよく手を洗ってください。
他には加熱不十分な食肉や、洗浄不十分な野菜や果物を摂ることも原因になります。
口から入るということですね。

ですが、日本人ではむしろ罹ったことが有る人の方が少ないのですよ。
トキソプラズマの抗体を持っている人が少ないのはそのためです。
だから妊娠中に初めてペットを飼う、などは注意しましょうということです。

西洋人はむしろトキソプラズマの抗体を持っている人の方がずっと多いのです。
若い頃、学会でイタリアに行ったことが有るのですよ。
食事のメニューはもちろんイタリア語なので、
知っている単語の、タルタルというものを頼んでみたのです。
出てきたものはなんと、生肉のハンバーグの素みたいなものでしたよ。
あちらでは皆、生肉を食べるのですね。
どうりで抗体保持者が多いはずです。

妊娠初期の血液検査には、このトキソプラズマ抗体は入っていません。
検査希望者は言ってもらうことになっています。
治療法が有るので、検査しても良いと思うのですよ。
ただし検査してもたいてい、抗体は陰性になるでしょう。
陰性の場合はむしろ食べ物は十分加熱するなどの注意をすれば良いのです。

では陽性の場合は、と言うと、先ほどの西洋人のように、
すでに感染したことが有って、抗体を持っているということになります。
逆に言うと、妊娠中に初めて感染する危険は無いので、むしろ安全かもしれません。

結局、どんな女性が心配になるかと言えば、
初めての妊娠の時などの前回は抗体がなくて、
次の妊娠の時は陽性になっていた、なんていう場合でしょうか。
だって感染しても、あまり症状が出ないからです。
もしくは妊娠初期と中期頃に2度検査するのも有効でしょうね。
こりらは風疹と違って、妊娠後期でも胎児に影響しますから。

もし妊娠中に初めて感染したことが判明すれば、
妊娠中こそ治療をしなければなりません。

今までも、アセチルスピラマイシンや、ファンシダールという薬が有ったのですが、
今回初めて、トキソプラズマに特異的な薬で承認が下りた、という話です。
長い説明でしたか。
その名は、スピラマイシン錠150万単位「サノフィ」と言います。

今までは稀な疾患だと考えられていましたが、意外と多いらしく、
近い将来には妊娠初期のセット検査に組み込まれるかもしれませんよ。