タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

助産師による妊婦指導の中身

2020-07-31 18:46:50 | 産科
ようやく梅雨が明けましたね。
タマル産で今年、5人目を産まれたお母さんから暑中見舞いを頂きましたよ。
花火はバーチャルですが、夏を感じることができるでしょう?
今年はたいへんな年でしたから、きっと私たち医療者を励ましてくださっているのですね。

新型コロナのせいで、妊娠28週までの早産が世界的に減っているらしいのです。
原因は分かっていませんが、仕事を休んで自宅に居るお母さんが増えたことも一因でしょう。
上の子の保育園も休園になって、風邪を持ち帰らなくなったのもその理由かもしれません。
今日、外来を受診されたお母さんは、保育園が再開されてさっそく上の子が風邪をもらってきて、自分もかかってしまったとおっしゃっていましたからね。

ところで明日8月から、丹波篠山市では助産師による指導が始まるようです。
ただ、タマル産では他院よりも頻繁に妊婦指導をしているので、わざわざ市がする必要はないですよ、と言ってきたのです。
そもそも指導だけに1億数千万円も予算をかけるなんてね。
さらにわざわざ助産師を何人も雇用して、今後10年だけでも5千万円はかかるでしょう。
もちろん産後の1ヶ月から4ヶ月健診までは、どこの市でも行っている赤ちゃん訪問は、これまで通り行うべきです。
丹波市の越川(えちがわ)先生が開業されていた頃から、全戸訪問を熱心に市の保健師に説いておられましたからね。
昔は地域の先生の言うことを、市は受け入れたものですよ。

結局、タマル産にかかっている妊婦さんはタマル産の指導を受け、
タマル産にかかっていない妊婦さんが市の指導を受けることになりました。
希望すればどちらからの指導も受けられるように要望しましたよ。
ですが、やはり出産する施設の指導を受けた方が一貫性が有るのは当然です。
同じタマル産の中だけでも、ある産婦さんは、助産師さんによって指導が違った、と言われることも有りましたからね。

タマル産では、開業当初からソフロロジー式分娩教育による指導を取り入れて、なるべく指導を統一化しています。
フランス人の医療者が、日本式の禅と、インド式のヨガを組み合わせて開発した方法なので、日本人には馴染みやすいものなのです。
あのスティーブジョブスでさえ、禅の本を持ち歩いていたのですからね。

簡単に言うと、瞑想トレーニングなのです。
ホームランバッターも、ホームランを打つところをイメージトレーニングするそうです。
何もバットを振り回してさえいれば良いわけではないのですね。

もう1つは、インド式の呼吸法です。
私も京大病院に居る時に、インド人女性に英会話の指導を受けていたのです。
彼女のご主人は京都市長選にも出馬したアメリカ人なのですが、彼女はヨガのインストラクターもされていました。
妊婦さんには主に呼吸法を指導していると言われていましたよ。
ヨガと言うと、ゴム人形のようなポーズを取ると思っている人が多いですけれどね。

妊娠初期、中期、そして後期には毎週の5回の計7回、助産師が30分程度の時間枠で、瞑想トレーニングと教科書的な話をしています。
市の3回よりずっと多いでしょ?
初期と中期は土曜日の午後なので仕事を休まなくても大丈夫だし、
後期は毎週、火曜と水曜の午前に行っているのですが、産休にも入っているし、しかも妊婦健診の合間にするので、それほど苦にはならないはずです。
というか、安心して産むためにするのですからね。
安心できれば、お産も楽にできるのです。

もっともイメージトレーニングだけでも片手落ちで、
実際の痛みも軽減しないといけません。
そこでウォーターベッドの浮力を利用して、陣痛の間、自由に動ける体勢を取れるようにします。
しかも中は温かいお湯なので、お風呂に入っている時のように痛みが緩和されて、リラックスできるのです。
だからタマル産では帝王切開率が世界的に見ても最も低いレベルなわけですよ。

もう1つ案内です。
これから年末年始とお産の予約がたくさん入っているのですが、
基本的に里帰り分娩は中止の方針としていますよ。
以前タマル産で産んでいて、2人目以降の方は相談させていただきます。
ですがなるべくお住まいの地域で産んでくださいね。
里帰りでない近くの方も、立ち合い分娩に不安が有るでしょうけれど、
夫婦はいつも一緒に家に居るわけなので、医療者と他の妊婦さんへの感染を防御さえすれば問題は有りません。
そのためには、ご主人はマスクの着用をしていただければ立ち合い分娩は可能とします。
本人さんは陣痛で呼吸が苦しくなるので、LDRで分娩中はマスクの必要は有りません。
ただし産後にトイレに行くのに廊下を通る時や、育児指導を数人で受けている時などはマスクの着用をお願いします。
タマル産は差額代が無料の全室個室なのですが、
大病院は差額ベット代が1日1万2千円ほどかかるので、大部屋利用の褥婦さんが多いことでしょう。
なのでタマル産での院内感染よりも、他の病院で発症者が出た時に、産婦人科が閉鎖されないかと、そちらの方を心配しています。
突然、タマル産に流れてこられても、受け入れが困難なことも有りますからね。
すでに大病院では新型コロナが怖いと、転院してきている妊婦さんも居られます。




祇園囃子と人波はいずこに

2020-07-17 21:12:59 | つれづれ
今日は祇園祭のはずでしたが、世界は新型コロナのせいですっかり変わってしまいましたね。

私は小学生の時に、初めて自分でレコードを買ったのですが、それが小柳ルミ子さんの祇園囃子でした。
私の母の父方は、京都市内で呉服屋をしていたのです。
その2代前は九州熊本の侍で、久留米藩に仕え、江戸末期に京都に上ってきたようです。
今年は明智光秀の話題で観光が復活するはずだったのですけれどね。
その娘のガラシャの嫁いだ先は細川家で、久留米藩にも縁が有るのですよ。

さて、タマル産の駐車場のラベンダーもピークを過ぎてしまいました。
ブログを更新していると、昨年の同日の投稿が表示されるのですが、昨年の7月17日もラベンダーの写真でしたよ。
まあ、続けることに意味が有るのでしょうね。
毎回、赤ちゃんが生まれるのをお手伝いし続けるのです。それが喜びなのですから。

今日はタマル産では3人目となった妊婦さんに、「先生はいつ寝ているのですか?」と尋ねられました。
よく夜中にお産が有るからでしょうね。
しかもよく昼間にもショッピングに出かけているところを目撃されているらしいのです。
だから寝る暇が無いのだろうと。
1日中クリニックに居ると運動不足になるので、私にとってはカミさんとショッピングに行くのが日課であり、息抜きなのです。
もっともショッピングの半分は本屋さんに居るので、あまり運動にはなっていないかもしれません。

学生時代はボート部とワンダーフォーゲル部を掛け持ちしていて、平日は琵琶湖で朝の5時半から船を浮かべるのです。
もっとも午前中の授業は居眠りの時間ですけれどね。
土日は近くの山に出かけます。
夜は家庭教師2件と、塾の講師をしていましたし、おまけに5回生の時には結婚もしましたよ。
家賃が1万円の市営住宅に住んでいましたが、かぐや姫の「赤ちょうちん」の歌の世界です。
それに比べて今の医学生さんは可哀想ですね。
授業は出欠を取られて身動きも取れません。
私など産婦人科の授業は最初の1時間しか出ずに、あと1年間は欠席しましたけれど、
本だけ読んでテストにさえ受かれば、それで良かった時代ですからね。

研修医ともなれば、お産ですから数日泊まりがけになることも多いのです。
子供の顔は寝顔くらいしか覚えていません。
生後3ヶ月の時に祇園祭に連れて行ったのですが、その夜は大泣きされてしまいました。
「祇園囃子と人波に押されて思わず泣きました」という小柳ルミ子の歌詞が思い出されます。

さらに医師ともなれば、昼間はブラブラしていても、夜中のお産に付き沿うこと数千人、よくやってきたものです。
今の若い先生は、医師も労働時間を守らなければいけないとかで、病院に何日も泊まり込むなんて許されませんよ。
産婦人科も少し前までは病院と言えども、1人か2人で回したものです。
ですが今は大勢の先生で勤務を交替して、休日もしっかり取って、学会にもちゃんと出かけるというのが鉄則です。
私などは天理よろずに居た4年間は、すべてのさかごの主治医をしましたが、今はそんな気概の有る先生は居られないでしょう。

だからみなさんも医者に、何でも期待してはいけません。
新型コロナが流行っても、前線に立って頑張れだとか、
産婦人科医なら休みも取らずにお産をし続けろとか、
お産で医療事故が有れば、それは医者のせいだとか。
時代は変わっているのですよ。
ネットで調べれば自分の病気のことなんてすぐに分かるのです。
治療方針だって自分で調べられます。
結果が悪いと言って、そんな時だけ医療者のせいにしてはいけません。
医療者はただみなさんの手助けをするだけなのです。

先日、医療専門の税理士さんに伺ったところ、
「昔の先生は働き者だ」というのが常識なのだそうです。
ですが、いつまでもそんな善意のボランティアに頼っていてはいけないし、もうそんな時代は過ぎ去ってしまったのですよ。

里帰り分娩の受け入れを一時中止します

2020-07-10 21:09:22 | 産科
写真は、タマル産から歩いて行ける青池の側で、紫陽花の花が咲いているところです。
よく見ると子供の手が作るのは、カタツムリが歩いているところのようですね。

この子の母親が生まれた時に住んでいたのが、京都市伏見区で、近くに御香宮神社(ごこうぐうじんじゃ)という神社が有り、そこは有名な安産の神社なのです。
うちのカミさんの先祖は、その御香宮神社の神主であったので、今だに私の本籍地はここ京都市伏見区から移させてもらえないのです。
そんな訳で、なかなか丹波篠山市に受け入れてもらえないのかもしれません。

それはさておき、日本のお産の歴史を私の知る範囲で記してみましょう。
明治の時代は、助産婦がお産のほとんどを取り扱っていたのです。
それが1945年の敗戦とともに、GHQの指導で施設分娩へと変わっていくのです。
それはアメリカには助産婦制度というのは無くて、みんな施設で産んでいたからですね。

私の生まれたのは1961年なのですが、この時で約半数は施設分娩へと変わっていたのですよ。
ただ私が生まれたのは祖母の家で、残りの半分の方の、助産婦さんに介助してもらってのお産だったのですけれどね。
その後現在では、99%が施設分娩となり、施設分娩と言っても診療所が半分、病院が半分、そして助産院での分娩は1%に過ぎません。

この間、兵庫県ではどうだったのでしょうか。
当時の氷上郡で開業したのは1999年なのですが、この少し前まで、春日の高見先生、氷上の越川先生、田中先生、柏原の上野先生が開業されていたのです。
ですがその後、日赤も分娩を中止され、さらに統廃合して、今では病院が1つだけになってしまいましたね。

ここ丹波篠山ではどうだったでしょう?
こちらに移転してくる前までは、丸尾先生、上田先生、井熊先生が開業されていたのでしょう?
それも今ではタマル産だけになりましたよ。

他の地域はどうでしょうか?
北磻磨地区では、三木市の三木市民病院と、小野市の小野市民病院がお産を中止して、加東市とともに北磻磨総合病院を建てられました。
開業では三木市民の先生が、わかば産婦人科を開業され、今では2人の先生が働いておられますが、お2人ともご高齢なので、間も無く閉められるでしょう。
今春には小野レディースクリニックも分娩取り扱いを中止されたところです。
加西市民病院も分娩を中止されました。
神戸市北区では、今年、開業の先生が2件、産科を閉められました。

これからはすでに小規模な市中病院では産婦人科を維持できなくなり、
先生も5人以上居るような病院だけが生き残れるのですよ。
そして逆に開業医は、今居る医師が居なくなればそれで終了なのです。
もう新しく開業する先生は居ないのですよ。
なぜかと言うと、人が居ないのです。
例えば大学病院の産婦人科に入局する先生はほとんどが女医だからです。
1人で開業できるはずはないのです。家庭が有りますから。
私の同級生で大阪で産婦人科を開業した女医が居るのですが、もちろん彼女は独身で、そこに勤務するのは女医ばかりが大勢です。おまけにすぐ近くの大病院の産婦人科部長も私の同級生ですからね。
そんな形式ならできるかもしれません。

もうお分かりでしょうか?
これからは産婦人科開業医という時代は終わり、大病院で産む時代に入ったのですよ。
あと10年もすれば今の50:50から様変わりするのです。
寂しいような気もしますが、10年ひと昔なのです。

ところでタマル産では、来年1月からの新規の里帰り分娩の受け入れは、しばらく中止とさせていただきます。
とりあえずは、地元の方優先で奉仕させていただきますよ。
新型コロナの影響も有りますからね。
もちろん現在予約されている方は、封鎖されないかぎりは受け入れる方針です。
それと以前タマル産で産まれている方も、受け入れさせていただきます。

産婦人科医は最も裁判を起こされやすい職業です

2020-07-03 11:56:21 | つれづれ
昨日も夜中のうちに赤ちゃんが生まれたので、お昼は孫とのお食事会でした。
この子の母親が生まれる時に、産婦人科医になったのですよ。
孫の顔でも見て、心を落ち着かせないと、みなさんの役にも立てませんしね。

今年の目標はスローライフだったのですが、どうも私の周りは騒がしいのです。
6月29日に市長が記者会見されて、助産所建設のための設計を取り下げられました。
これは市民のみなさんの声が市長に直接届いたからです。
そして7月1日にタマル産に市長が来院され、私の提案した3つの要望への返答に来られたのです。

内容的には、丹波篠山市で産む妊婦さんはタマル産に任せていただけるという話になりました。
市とタマル産で、妊娠中の指導が違っては妊婦さんが混乱しますからね。
妊娠中の健診や指導が有ってこその分娩です。

タマル産で産まないお母さんには市が直接妊婦健診や指導をして、分娩だけ例えば丹波医療センターで産むということになりました。
ですが、助産師さんに超音波検査なんかをしてもらうのでしょうか。
その辺りの説明が欲しいところですね。
それにMy助産師とやらの、その本当の内容も知りたかったところです。

まあ、これで一件落着、あとは医療に専念しようと思っていた矢先、またもや市長から私に対する批判が有りました。

翌日の市長日記、7月2日号(日付は6月29日)には、
「ケアセンター設置について、・・・これは1日も早く市民が安心して出産できる体制を作りたかったため」、と書れてています。
要するにタマル産婦人科は安心して出産できる場所ではないということのようです。
時々、丹波医療センターで産まれるお母さんだって、タマル産で妊婦健診されることも有りますよ。
それさえも認めたくないのですね。

「3月までの状況では、6割以上の方はタマル産婦人科以外で出産されますので市民のことも合わせ検討します」、とも書かれています。ですがそれは兵庫医大さんがお産を取り扱われていた時の話で、4月以降はタマル産での分娩の割合はもっと上がるのではないでしょうか?それを念頭に置かれた発言とは思えません。

6月29日付の市長日記には、「正々堂々と議論を」という題で、私を個人的に批判した記事も有ります。
私が市の政策を否定し、また市の助産師が新聞で市民を違う方向に誘導しようとしていることに対しての批判を私のブログに書いたことに対して、市長は人権侵害であると書かれています。
https://www.city.tambasasayama.lg.jp/gyoseijoho/shichonoheya/shichonikki/2020/6/14221.html
市長日記より。
丹波篠山市は、「人権尊重のあたたかいまちづくり条例」を制定しており、あいさつ、そしてそれぞれ互いの立場を認めあって、あたたかいまちをめざしています。それぞれの意見を、正々堂々と述べ合っていければと思います。」

新聞で市の雇用する助産師が顔写真と共に意見したことに対して、反論することが人権侵害なのでしょうか?
助産師は市の意見を代表し、名前を伏せて意見したことでもないのですから、私も名前を出していますし、正々堂々と意見をしたものです。
これに対して市の助産師が私を「訴えます」とメールして来られました。
別に市から訴えられて困るようなものでもありませんが、意見をされるのが嫌だということでしたから、その部分のブログは削除したものです。
削除した部分を述べますと、助産院を作って分娩を取り扱いたいと言っている助産師は、数年ごとに職を転々としているような人である。そんな人が市の助産院をこれから長期間続けていけるのか、といった内容です。

正々堂々と、と言われても、そもそも会議に招かれていないのですから意見のしようもありません。
しかもその前に同じ丹波新聞への取材で、ちゃんと誌面で意見していますよ。
正々堂々とはどういう意味なのでしょうね。

市長が、市民のために尽くしている一産婦人科医を訴えると言っている市の職員を擁護する、とはいかがなものでしょうか?
産婦人科医は、最も訴えられやすい職業ですが、まさか市長側からとは。
これ以上市民のみなさんが困らないように、市長との戦いは避けようと思っていたのですけれどね。

P.S. その後、市長日記は改変されていて、私への人権侵害発言は、お世話になった安井議員への発言にすり替えられています。ですが当初の目的は一部達せられたので、このブログの役目も終了とさせていただきます。これ以上、市民の皆さんに不安を抱かせてはいけませんからね。