タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

産後の健診の問題点

2017-10-30 21:22:51 | 産科
篠山市吹上の梨奈(りな)ちゃん、9月24日生まれ。
「感謝の気持ちを持って周りの人に優しく、明るい人に育ってください。
お産は、2人目なのでとってもスムーズでびっくりしました。
リフレクソロジーが、とっても気持ち良かったです。」

リフレクソロジーとは、足のマッサージのことですね。
ずーっと、以前からサービスとして施術しているのですよ。

今日は妊婦健診、および産後健診のお話から。

妊婦健診は、14回で、117,890円くらいが標準とされますが、
全国の市町村では、ここまで助成している市町村は少ないのです。
篠山市は、私が市長に直接2回も掛け合いましたから、標準近くまで頑張っていただいています。

丹波市は7万円ほどでしたが、ようやく現在は9万円になりましたから、
本来は3万円ほど、自己負担しないといけないのですね。
でもタマル産では、サービスしています。
たまに丹波市の方で、里帰りで他府県で出産されると、自己負担が発生するのですが、
その理由はもうお分かりですね?
ですが、抗議の電話が掛かってくるのですよ。市でなく、タマル産に。
ちなみに三田市はまだ8万5千円ですよ。もちろん差額はいただけません。

ということで、国は、差額をゼロに近づけるように指導しだしました。
それで先月から神戸市は、兵庫県でも最低の助成だったのですが、満額になりましたよ。

次に、産後の1ヶ月健診、これにはまだ助成が有りませんね。
4ヶ月健診以降は、助成が有って無料になるにも関わらず。
実は産後1ヶ月の健診にも助成の有る市町村が、全国で言えば、14.3%有るようです。

タマル産では、他にもいろいろ頑張っていますよ。
例えば今日も、3人も赤ちゃんが生まれたのですが、
深夜の出産でも追加費用は無料です。
休日も無料。出産前にもう1日かかっても無料とかです。
GBS感染症のお母さんは、分娩時に抗生物質の点滴が必要なのですが、これも無料にしています。
そんなところは全国的にも無いと思いますよ。
市町村が助成しない分、タマル産が、個人的に助成しているというわけですね。

いえいえ、今日のお話のメインはこれからです。
産後の健診、最近取り入れられたものは何でしょう?

それは産褥期の精神疾患の早期発見のための、調査なのです。
最近は、市の職員さんも、1つ覚えのように、エジンバラの産後うつ病の自己問診票というのを重要視されます。

確かに、誰がやっても客観的に結果を残せるという意味では意味が有るのでしょう。
介護を受ける人に、ランク付けをするようなものでしょうか。
ですが何度もテストすると、要領を覚えたりね。慣れが生じるのが1番目の問題点です。

もともとこの点数表は、産後6週目にするように設計されたのですが、
それが日本では産後健診に合わせて1ヶ月になり、
最近では産後2週間でする市町村も有りますよ。
ここが2つ目に問題視されているところです。

3つ目の問題点は、ある点数以上だと、うつ病だと誤診してしまうというものです。
この問診票は、単にスクリーニングテストなので、
ある点数以上だと、医療機関を受診する必要が有る、というライン引きでしか利用してはいけないのです。
受診した人の中から、本当のうつ病の患者さんを見つける、というのが本来の使用方法なのです。
ところが点数が高得点なほど、うつ病の程度が重い、と勘違いされてしまうのです。
それは調査する方もそうであり、受けられた方もそうなのですよ。

使い方を知れば、1つのスクリーニングテストとしては、簡単で便利なのですけれどね。

ニキビの総合治療

2017-10-27 21:15:37 | 美容医療
大阪市の隆介(りゅうすけ)くん、9月22日生まれ。
「明るくて元気な子に育ってください。
お産は痛かったので、2人目はまだ考えられません。
スタッフの方がとても優しくて癒されました。」

初めてのお産は、痛いだけでしたか?
それでも良い思い出になられたのではないでしょうか。

あっという間に秋になってしまって、お肌のお手入れはされていますか?
タマル産では、美容皮膚科もしているのですよ。
今日はとくに、ニキビのお手入れのお話をしてみましょう。
だって、ニキビは、90%の人が経験するとされているからです。

ニキビの治療と言えば、以前は抗菌薬くらいしか無かったのですが、
2008年にアバダレンという塗り薬が保険適応になっています。
商品名で言うと、ディフェリンゲルというものです。
ニキビの早期段階で、目に見えないようなものまで予防できるようになったのですよ。
この薬は、白いニキビや、治療後のニキビの後も、長めに使って予防薬という面も有ります。
タマル産でもけっこう使用されています。
綺麗になってからも長期的に使うと、さらに綺麗になりますからね。
ただし妊娠を希望している女性は使用できません。

ここに昨年から新しい薬が追加されたのですよ。
過酸化ベンゾイル、商品名ベピオゲルという薬なのですが、
消毒作用だけでなく、抗菌作用を併せ持つのが特徴です。
ディフェリンゲルの代わりとして、あるいは併用として使えます。
ついでに混ぜてしまったものも発売されていて、こちらの配合剤はエピデュオゲルと言います。
初めから配合剤の方が良いとも言われますが、その分、刺激感などの副作用も2倍になりますけれどね。

炎症の有る、赤くなったニキビには、それでも抗菌薬が必要です。
ダラシンTゲルや、ゼビアックスローションですが、
後者は1日、1回で済むようになったのですね。
ただし長期に使用してはいけません。
2〜3ヶ月が目安です。
通常は外用薬、ひどい場合は内服薬ですが、外用薬と内服薬は併用はしません。

アメリカではね、標準治療に女性ホルモン剤が有るのですよ。
いわゆる低容量ピルですね。
もちろん内服していると、避妊効果が有るので妊娠しませんよ。
ただし日本の皮膚科医会は敢えてすすめてはいません。
でも効果は有りますし、外国では標準ですよ。

さらにタマル産では、自由診療を併用することもできます。
ピーリング石鹸や、看護師さんによるピーリング治療、
ビタミンCのイオン導入、
さらにIPL光治療です。
フルコースだと、1ヶ月に1回、60分です。

高校生くらいから、とくにニキビは気になりますよね。
私の時代はいろんな薬が無かったので、すっかりアバタになってしまいましたよ。
これからお産が有りそうなので、出動してきますよ。



AMHは無駄な検査です

2017-10-25 20:19:46 | 不妊症
丹波市春日町の泰河(たいが)くん、9月20日生まれ。
「元気な子になってください。
お産は痛かったけど、いい思い出になりました。
みなさんとても優しかったです。お料理、サイコー。」

4人目の赤ちゃんにして、タマル産では初めてのお産でしたが、いかがだったのでしょうか。

さて、今日も不妊症の最近の話題を1つ、してみましょう。
数年前から、不妊症の検査の1つに、AMHというものが加わりました。
高度不妊治療をしているクリニックでは、まずする検査でしょうね。
血液検査で分かるので、どこでもできるのですよ。
タマル産でも希望が有ればもちろんできます。
でもね、敢えてしていないのです。

その理由をお話しましょう。
まずAMHとは、抗ミュラー管ホルモンの略です。
よく、卵巣年齢だとか、卵巣予備能を表すと言われます。
でもね、もともとの測定値の分布のグラフを見たら、いい加減な検査なのですよ。
それこそ統計学的に有意差なんて出ないだろうな、というものなのです。

ところがこの数値が一人歩きして、数値が低ければ卵巣が老いている、
数値が高ければ年齢の割に卵巣が若い、などと言われていたのです。
ですが、たとえば排卵しにくい病気でPCOSという病気があるのですが、その場合は逆に高く出ますしね。
とにかく、この検査はしてしまうとかえって、患者さんを惑わすことになると思って、
おすすめしていなかったのですよ。小さな抵抗ですね。

それが最近の研究で、JAMAという雑誌に今年発表されたものでは、
やはりAMHの値と妊娠との相関関係は否定されたのです。
AMHが低い(0.7ng/mL未満)女性と、AMHが正常値(0.7〜8.4ng/mL)の女性の群との間で、
妊娠率は変わらなかったのです。
やっぱりね。

ということで、もし不妊施設で、この検査をしたことが有る女性は、
この検査のことは忘れてください。
もっと言えば、明日再検査すれば、まったく違った検査結果になりますよ、ということです。
だいたい保険も効きませんしね。
1つ、勉強になりましたか?


体外受精は30代のうちが理想です

2017-10-23 20:45:22 | 不妊症
篠山市矢代新の律(りつ)くん、9月20日生まれ。
「規律正しい、優しく、たくましい子になってください。
お産は思っていたより痛くなく、赤ちゃんが頑張ってくれたなと思います。
みなさん優しくて、良い人ばかりでした。」

初めてのお産でしたが、余裕が有りそうですね。
それでも入院中は、オッパイに苦労されましたか。

昨夜は台風で、ひどい風でしたね。
タマル産では、大きな木がたくさん倒れてしまいました。
明日は、庭師に変身しているかもしれません。
それでも、先ほど赤ちゃんが生まれたことろですよ。

さて今日は、不妊症の話題です。
先月のニュースですが、体外受精の話が載っていました。
体外受精って、昔から有る技術のように思われるでしょうが、
私が京大病院で研修を受けていたわずか30年ほど前に、
初めて日本でも成功例が出たところだったのです。

タマル産でも開業当初の、18年ほど前に、
体外受精での成功例をたくさん出したのですよ。
ですから日本でもかなり開拓期に実施していたのですね。
その頃は、赤ちゃんの40人に1人くらいが体外受精で生まれだしたのです。
でも、まだ人には言えずに、恥ずかしいことだと思われていた時代でしたよ。

それが先日のニュースでは、生まれてくる赤ちゃんの、
20人に1人が体外受精での妊娠だと発表されたのです。
わずかこの30年間の成果というわけですね。
2015年に生まれた赤ちゃんのうちの、5万人ちょっとです。

では実際に、体外受精での成功率って、どれくらいだと思われますか?
体外受精を受ければ、全員妊娠すると思っている方も居られれば、
効果が有るかどうかも分からない治療に、大金をかけられない、と思う女性も居られます。

1回の治療で、出産までいくケースは、30歳では21.5%、
35歳では18.4%、
40歳では9.1%、
42歳では4.5%です。これくらいの年齢が限界ですね。
意外と少ないと思われるでしょうか。
やはり3回くらいの治療は、覚悟しておいた方が良いでしょうね。
もう1つはできれば遅くとも、30代では開始したいですね。
というのも、受ける女性の40%が、40代で受けられているからです。
もっと早く決断しておけば良かったですね。

ちなみに上記は流産をせずに分娩まで至った確率ですが、
うまく妊娠しても流産になってしまうことも多いのです。
30歳では流産率は16.5%、
35歳で20.1%、
40歳で34.6%、
42歳で45.6%です。40歳を過ぎると、半分近くは流産されているのですね。

ここまでが最近のニュースでの話題です。
ですがもっと本質的な話をしておけば、
タマル産の不妊外来に来られるカップルの多くは、
体外受精ではなく、一般不妊治療でこそ妊娠されています。
そして一通り治療しても妊娠しない場合、長くても1年までしか治療はしないのですが、
一部のカップルにだけ、体外受精を勧めているのです。
ちゃんと症例を選ぶのが重要なのですよ。

こうしてタマル産の不妊外来に来られる方は、ほとんどの方が妊娠されています。
これは誇張でも何でもありませんからね。
http://www.tamar.jp/infertility
もっと簡単に言えば、20人のお母さんのうち、
14人は何も治療しないで赤ちゃんができたお母さん、
5人は一般不妊治療で妊娠されたお母さん、
そして20人のうちの1人だけが体外受精で妊娠されたお母さん、というイメージになるでしょう。
ただし将来的には、ますます割合が変わっていきそうですけれどね。

産婦人科はブラックですか

2017-10-20 21:00:10 | つれづれ
篠山市下原山の莉乃(りの)ちゃん、9月20日生まれ。
「かわいらしく、誰からも好かれる優しい人になってください。
2人目はスピード出産でした。
5人重なった日の出産だったのですが、適切な対応していただき、ありがとうございました。
夜勤は2人のスタッフで対応されているのにびっくりしました。
次は、じょうずにいきめたら良いな、と思います。」

今までで一番たいへんな日だったと思います。
あんなに出産が続いたのは、最初で最後だと思いますからね。
それでも不満を抱かれなかったのに、感謝します。

ある記事に、産婦人科の女性の研修医のお礼の手紙が載っていたので紹介してみます。
「この2週間本当にありがとうございました。お産がこんなに楽しいと感じたのはこの2週間が初めてです。
・・・一人前の産婦人科医になったら手伝いに行きます。」
こんな未来の有るお手紙ですよ。

福島県のクリニックで、ベッド数が19です。
タマル産は12ですよ。
産婦人科の先生が2人、非常勤の先生が5人、助産師が10人、看護師が12人、
その他のスタッフが63人だそうです。
それでも夜勤は、3人です。うち助産師1人、看護師2人。

この人数で、年間の分娩数が764人だそうです。
むかしのクリニックは、ベビーラッシュでしたから、これくらいが当たり前だったのですよ。
ちなみにタマル産は最近は200人弱ですから、4倍ほどの規模ですね。
日に2人くらいが生まれるのですね。
それでも夜勤は3人ですよ。

私が開業前に非常勤で働いていたクリニックで、
神戸市北区にマムクリニックというクリニックが有るのですが、
ここではもう少し赤ちゃんを産まれるお母さんも多いのですが、
やはり夜勤は2人です。
福知山のある先輩のクリニックもタマル産より多いのですが、
夜勤はたったの1人で、お産の時は呼び出しですよ。

何が言いたいかと言えば、クリニックでのお産と言えば、こんな感じなのですね。
普通にお産できるお母さんにとっては、医療介入も入りにくいのでメリットが有ります。
逆に、異常分娩になりそうなお母さんにとっては、デメリットな面でも有ります。
最近は高齢の妊婦さんが増えてきたので、お産がたいへんになる傾向にあります。
それに初めて赤ちゃんを産むお母さんの比率が高くなってきたので、手がかかるようになります。
経産婦さんばかりだと、けっこう楽なのですけれどね。

日本の現状では、お産の半分は病院で、半分はクリニックで担当しています。
そして人的資源は病院は莫大に多いのです。
ですが将来的には、クリニックでのお産は減少していくでしょう。
だんだんと病院主体のお産になるのでしょうね。
ただしそうなると、クリニックでは少しのスタッフで回せたものが、今度は回らなくなってくるでしょう。

するとどうなるのでしょうか。
手のかかるお産は、帝王切開になっていくのでしょう。
1人にかける時間が減少していくでしょうからね。
良かれ悪しかれ、そういう時代がくるのです。

前出の若い女医さんですが、一人前になられた頃に、
さて、その福島のクリニックは生き残っているのでしょうか。
院長先生は75歳だそうですからね。
これからの時代、自分の生活を犠牲にして、クリニックに行きたいと思われるかは疑問ですしね。
もちろんタマル産は、みなさんが期待してくださる限り、そして時代が許す限り、
お産を続けていきますからね。

さて、ここからは追記です。

前回のブログのインフルエンザの予防接種の記事ですが、一部訂正いたします。
希望者全員に注射できますよ、とアナウンスしたのですが、
メーカーによると、どうも今年は、シリンジタイプの注射が、あまり作成できなかったようなのです。
ですから、産後の方や不妊症の方まではできなくなりました。
また妊娠中の方も、希望される方は早めに注射してくださいね。
遅くなると、内科で注射していただくことになりそうですから。