タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

赤ちゃんよ、永遠に

2019-11-22 21:45:15 | つれづれ
写真は、丹波市山南町の茉莉愛(まりあ)ちゃん、10月5日生まれ。
「優しく思いやりのある子に育ってください。
無事に生まれて泣き声を聞いた時は感動しました。
お産から入院までとても親切にしていただけて、感謝しています。」

赤ちゃんの名前は、私のあげた花言葉入りの「うぶごえカード」から来ているのでしょうか。
聞こえなくなったら、電池を交換すれば、ずっと聴けますからね。



次の写真は、尼崎市の空翔(そらと)くん、10月10日生まれ。
「いろんなことに興味を持って、元気いっぱい育ってください。
みなさん優しくて何でも相談できて心強かったです。」

尼崎からの里帰りでしたよ。
尼崎はここ数年で、すっかり変貌していますよ。

ところで医師専用のコミュニティーサイトが有ります。
そこでは最近の公立病院の再編計画について兵庫県の医師にアンケートを取ったところ、
賛成している割合が51.5%だったとありました。
とくに丹波市の日赤と県立柏原の統合による県立丹波医療センターや、
小野市と三木市が共同で作った北磻磨総合医療センター、
それに加古川市の例が好評です。

そうなのです、医療者はむしろ日本の人口減少と高度医療に応じた病院の再編は歓迎しているのです。
ところが世間の新聞やニュース、市町村は反対の意見ばかりでしょ?
いつまででも市の境界に縛られていてはいけないのですよ。

昨日の夜中というか、今日に半分かかっていたのですが、
妊娠34週で破水した妊婦さんを済生会兵庫県病院まで救急搬送していました。
もちろん私も一緒に救急車に乗るのですよ、途中で生まれてはいけませんからね。
今日の妊婦さんには素早く遠方まで搬送したことに感謝していただきました。
昨年だったかの妊婦さんには後に、破水したことを責められましたけれどね。

つい数年前までは34週の破水は、早産でもタマル産で産んでもらっていたのですよ。
34週だと2100から2200グラムくらいですからね。
この体重だとたいていは呼吸器を付ける必要も無いのです。
ですが時代も変わってきているし、ご両親も高度医療機関での治療を希望されることも増えたので、
最近では県立柏原病院まで送ることにしていました。
ところがさらにここ半年ほどは、柏原ではよく救急での受入を拒否されるのですよ。
そこで済生会病院まで45分ほどかけて搬送しているのです。
たまに神戸大学や中央市民病院に往復2時間以上かけて行くことも有りますよ。

丹波篠山市では、どうも市内で産まないといけないと勘違いされておられます。
丹波市の妊婦さんはよく丹波篠山市のタマル産で産んでくださるのにね。
兵庫医大がお産の取り扱いを中止しただけで、影響が大きいように思われているのですよね。
ですが多くはタマル産で産まれているのではないですか?
市長は近隣の市町村との連携を拒否されていますから、今や孤立無援ですよ。

それでも私は定期的に済生会の勉強会にも参加して太いパイプを作っています。
柏原は残念ながらセンター病院化しましたが、あと10年もすれば再び問題が出るでしょう。
産婦人科の医師が1人でもやめれば補充が有るかどうか。
未熟児センターも作らなかったので、若い医師には不人気でしょうからね。
先ほどの医師のコミュニティでも、実際に丹波医療センターに働く医師が将来の危機を予告されています。

答えはとてもシンプルです。
医療圏を市の境界で線引きせずに、もっと広域で考えるということです。
私がすべてのお産を引き受けますよ。
仮に10年もして、丹波篠山市で出生する赤ちゃんが100人を切るでしょうから、
その頃になればタマル産でお産を継続することは困難になるかもしれません。
それはこれからの市長の手腕にかかっていることです。
そうなればタマル産で妊婦健診をして、あるいは近隣の病院で健診を受けて、
これから新設されるかもしれない妊婦タクシーで入院すれば良いのですよ。
妊婦救急車までは要らないと思いますけれどね。
だってお金がかかり過ぎますから。
24時間体勢を維持するためには、医師なら1人で済みますが、助産師なら5人は必要ですよ。
いやその倍の10人は必要でしょう。

ところが丹波篠山市長はあと1年半もの間、新しく医師を探すのだそうです。
その間、タマル産では職員を増員することもできません。
したがって、お産の取り扱いを増やすことはやめておきます。
タマル産でこれからもお願いしますとだけ言ってもらえれば、
職員も増員して、より安全なお産を目指すところなのですが、市は分かっていませんね。

そこで市会議員のおおさか維新の会の吉田ともよ氏に電話したのですが、つながらないのです。
どうも丹波篠山市に住んでいないようですね。住所も非公開です。
前にお会いしているのでメールを出しても1週間以上返事も有りません。
長期間ツイートもされていないですね。
これが丹波篠山市の子育て支援をとなえる代表ですよ。

先日は私の提言を丹波新聞の記者に1時間もかけて説明したのですが、
今週の丹波新聞の記事はひどかったですよ。
「病院や診療所で産むとバーストラウマになって、助産所ならそれを解決できる」という猿芝居です。
すぐに抗議の電話をしました。
ですが記者は会が開かれたのは事実だから、と開き直りです。
いえいえ会が開かれたのは事実でも、その内容は事実ではないでしょう。

さらには「人口の42%が分娩継続を求め署名」だそうです。
え?タマル産では分娩したくないということですね。
ひょっとして目に入っていないのかしら。

丹波篠山市には残念ながらとてもがっかりしています。
365日、24時間いつでも救急車に乗っているのに、その努力が認められないとは。
ということで、今日でこのブログも終了とします。





LEPは皆が飲むべき?

2019-11-15 21:27:31 | 婦人科
写真は、神奈川県川崎市の蒼侍(そうすけ)くん、9月13日生まれ。
「元気いっぱいに人を思いやれる優しい子に育ってください。
へその緒が首に2回も巻いて不安でしたが、無事に分娩できて、とても嬉しかったです。
夫も一緒に夜も泊まれ、1週間ずっと一緒に居てもらえて、とてもリラックスできました。」

遠方よりの里帰りでしたからね。
最近は、お産で御主人も産休を取られる方が多くなりました。
タマル産ではダブルベッドなので、ご主人や上の子も宿泊できるのが好評です。
しかも個室料金は無料です。
総合病院では1日7千円すると聞きましたよ。
さらにベッド代の差額には消費税がかかるので、7,700円の7日間ですから、5万円以上もお得ですね。



写真は、最近行なった院内での薬の勉強会です。
裏方はこんな風なのですよ。

テーマは、LEPの第2世代の効能というところでしょうか。
LEPというのは、子宮内膜症や月経前後の精神的に不安定な症状への薬という意味です。
もっとも避妊目的のピルも薬としては同じなのですが、OCと呼ぶのですよね。


LEPには第1世代から第4世代まで有るのですが、
開発された順番であって、第4世代の方が優れているかというと、そうとも限りません。
むしろ第1、第2世代の方が、血栓症という副作用を発症する可能性は低そうです。

よくタマル産の外来で処方しているのは、この第1世代のLEPですよ。
なぜかと言うと安いからです。
みなさんに負担をあまりかけたくないからですね。
ただ、この薬は頭痛の副作用がたまに有るので、そういう場合は第2世代が良いのですって。
あるいは性欲が減退するような場合も。
ただし第2世代は新薬なので、高いのが難点ですね。

ピルと言うと血栓症、と副作用を心配する女性が多いのです。
確かにタバコを吸う女性はやめておいた方が良いですよ。
でもね、妊娠して出産する方が、LEPを飲むよりよっぽどリスクが高いのです。
5年ほど前になるでしょうか、妊娠中期の女性が足の付け根が痛んで歩けないと来院されたのですが、
精密検査で血栓症と分かり治療していただきました。
そう、妊娠、とくに産後はリスクが高いのです。帝王切開の後はさらにですよ。

長く産婦人科をしていると、それでも女性ホルモン剤で血栓症を起こされた方は3人ほど居られます。
昔はエストロゲンの量が多かったというのも原因の1つです。
この勉強会のインターネット中継の先生とところでも、第3世代のLEPで3例の血栓症が起こったそうです。
最近の低容量でもやはり起こるのですね。
だからみなさんに積極的にすすめるかどうかはいまだに未解決な問題です。
私の中の基準では、10代の女性はなるべく漢方薬から始めています。
明らかに子宮内膜症が有る方は、LEPも選択肢でしょうね。

昨日、ちょうど産婦人科の先輩から電話が有って、どんどんLEPを処方していると話されていました。
だって、みんな結婚しないし、子供を産まないから、赤ちゃんが欲しくなった頃には、
子宮内膜症で不妊症になっていることが多いからと言われましたよ。
確かにその通りですね。

鮭が川を登る理由

2019-11-08 20:57:43 | 不妊症
写真は、丹波篠山市大沢新の颯志(そうし)くん、9月12日生まれ。
「優しく思いやりのある子に育ってください。
自分の好きな体勢で陣痛を乗り越え、すぐに生まれてきてくれたので、とても楽でした。
個室で、上の子たちと離れることなく過ごせたので、とても快適でした。」

2人目と3人目はタマル産での出産だったのですよ。
2人目のお産の時からすでに次の出産の方法まで考えておられたようです。
そしてさらに4人目のことまで考えておられるのです。


次の写真は、丹波篠山市泉の果波(かなみ)ちゃん、9月12日生まれ。
「天真爛漫、周りを笑顔にできる子になってください。
心から頼れるお産になりました。
親身になっていただき、すごく心を開けました。」

初めてのお産でしたが、周りに頼るというのも1つの方法かもしれませんね。
もちろん自分でも目標は持っておかなければなりませんが。
他力本願は本来は神様や仏様に頼るという意味なのですが、
最近では消極的だと間違って解釈されているかもしれません。
むしろ理想とする姿勢でしょう。

今日のお話しは鮭(しゃけ)の川登りです。
なぜ鮭は川を登って産卵するのか、と疑問に思いませんか?
天敵が少ないからだとされます。
タイなら1回に3500万個の卵を産み、鮭は数千個の卵しか産みません。
それでも生魚になるのは2匹くらいなのだそうです。
お父さんとお母さんから子供が2匹で、生態系が維持されるわけですね。
2匹の子供を残すという意味では鮭の方が効率は良いわけです。
ですがそこでメスの鮭は生命が途絶えて、稚魚や動物のエサになってしまうのです。

ではヒトはどうでしょう?
卵は1回に1個しか産みませんね。
数年に1回は妊娠できますから2人以上の子供を残すことは可能です。
1回の排卵に対して精子は6千万から1億匹、子宮を登っていくのですよ。
排卵期にだけ子宮の入口から分泌される頸管粘液というものが増えて、
その川の流れを登って行けるのです。
さらに子宮から卵管という細い管を登っていかないと、卵が待っている卵管膨大部に辿り着けません。
ここでも卵管液という液体が流れているのですが、その流れに逆らって登っていくのですよ。
そして卵まで辿り着けるのは、せいぜい10万匹くらいでしょう。

不妊外来ではご主人の精子の運動を顕微鏡で見せてあげるのです。
直接の精液と、ヒューナーテストと言って、子宮に登った精子を回収する方法との2種類でです。
それを見ると、すでに死んでしまった精子、グルグルと同じところを回っている精子、
マラソン選手のように頭が振れる精子、そして真っ直ぐに進む精子を見ることができます。
もちろん形態的には真っ直ぐに進む精子が一番元気が有って、
子宮の入口と精子の入口の2箇所の関門を通り抜けた精子だけが卵に辿り着けるというわけです。
トイ・ストーリー4のデューク・カブーン(キアヌ・リーブス)みたいですね。

実はそんな単純なことが最近まで知られていなかったのですね。
私は以前からそう思っていましたが、アメリカのコーネル大学のアリレザ・アブバスポアラッド博士らの研究で今年、発表されたところです。
結局、弱い精子をブロックして、元気な精子を選別しているわけです。

人工授精は精子を濃縮して、すべての精子を子宮に入れる操作です。
妊娠率が上昇するのは、第一関門の子宮の入口を通過させたからです。
ただし第二関門の卵管の入口は存在しますから、やはり元気な精子が選別はされます。

例えば体外受精は取ってきた卵子に精子を10万匹くらい混ぜるので、
第二関門も飛ばしてしまうのですね。
そういう意味では少しだけ不安が残りますね。

顕微授精という方法でしか妊娠できないカップルも居られます。
人の目で元気そうな精子を1匹だけ選別するので、どうしても受精率は低くなり、
染色体の異常率も上がってしまうわけです。
だからまずは一般不妊治療から始めるべきだという考えですよ。

ところで鮭の話でした。
川を登る理由は何でしょうか?
もう分かりますよね。

これから必要な産科医療とは

2019-11-01 21:53:05 | 産科
写真は、丹波市山南町の音心(おと)ちゃん、9月10日生まれ。
「前向きに、自分なりに楽しみながら、人を思いやってください。
陣痛は長くて、赤ちゃんも頑張っていたんだなあと思いました。
みなさん優しく、心強かったです。」

初めてのお産で、しかも首にへその緒が巻いていると難産になるものです。
つい先ほども、初産の方が吸引分娩でお産されたところです。
やはりへその緒の問題なのですよ。
とてもよく有ることなのです。



次の写真は、丹波篠山市大沢新の、遼成(りょうせい)くん、9月10日生まれ。
「自分の好きなことを見つけて、夢に向かって努力してください。
2回目のお産で、信頼が有って、安心して産めました。
温かく接してくださり、心穏やかな時間が過ごせました。」

そうなのです、初めてのお産はたいへんなものですが、
2人目、3人目とお産はすごく楽になりますからね。
それにお互いに信頼できると、さらに楽なお産ができるということですね。

先週、丹波新聞に私の記事が載りました。
すでに記事はヤフーニュースからは削除されてしまったので、読めませんけれど。
内容は、丹波篠山市の問題の根本は、兵庫医大が撤退することではなく、
少子化でお産する施設の需要が減っていることが問題だとお話ししたのです。
仮に赤ちゃんを市内で産んだとしても、三田市や神戸市に転居して子育てされる方が多いのです。
だから次世代はさらに減少するのでしょうね。

ですがそんなことばかり言わずに、これから必要な政策は、と言えば、
マタニティータクシーだと、市長にも丹波新聞にもお話ししたのです。
町中今では介護のための車が走り回っていますからね。
だけど妊婦さん用の車は無いのです。
妊婦健診でさえ、ご主人の休みの日に送ってもらうしかない妊婦さんも多いです。
ご主人が仕事中に陣痛が来れば、自分で運転するわけにもいけませんからね。
たまに救急車を呼ぶ方も居られますよ。

本来は介護タクシーなのですが、介護タクシーは妊婦さんは乗せてはいけないそうです。
しかも夜中は走りませんからね。
そう提案したら、さっそく今日のヤフーニュースには、丹波篠山市が救急車導入を検討、
と有りましたよ。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191101-00010001-tanba-l28


それは良いのですが、いまだに助産所を4億5千万円かけて建てようとされているのですからね。
いったいいくら無駄なお金を使うつもりなのでしょうか。

丹波新聞の取材の時に言い忘れたことがもう1つ有ります。
産科医療はもっと広域で考えないといけないというところまでは話しました。
兵庫県は五国に分けて丹波圏で1つ周産期センターが有ればよしとしようという意味です。
ただ残念ながら、今年開院した県立丹波医療センターさんにはNICUが無いのです。
だから周産期センターと呼べるような代物ではないのですね。

それで兵庫県の政策を調べてみたら、
五国のうちの四国、神戸阪神三田、播磨、但馬、淡路には、それぞれ周産期センターが有るのですよ。
ところが丹波にだけは予定もされていないのです。
https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf15/documents/perinatal_20191001.pdf
これからも空白地帯なのですね。
どうか兵庫県会議員さんは、頑張ってくださいよ。少し手遅れですけれど。
これからの時代、必要なのは小さな病院をたくさん作ることではなくて、
大きな周産期センターを少し離れてでも1つ持つことなのですよ。
それこそが市民の願いのはずなのですが、どうも市は理解されていないようですね。