タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

これからの子宮頸がん検診の予想

2018-08-20 20:36:25 | 婦人科
先ごろ退院されたばかりのお父さんと赤ちゃんです。
お産ラッシュの時だったので、十分にお世話できたでしょうか?

その頃お産されたお母さんから、退院の時にお手紙を頂きました。
「不妊の相談にタマル産を訪れてから、妊娠期間、出産と産後の入院まで、
長い期間をお世話になっているんだと思い返しています。
赤ちゃんの名前は、人に優しく、思いやりと慈しみを持った人になるように、仁(じん)と名付けました。」
と、続けてスタッフや私への感謝も書かれていましたよ。

初めてのお産で、しかも不妊の時からずっとでしたからね。
こういうところは、タマル産だからこそと自負していますよ。

さて、今年の保険診療改定で改定になった点をもう1つ、お話しておきましょう。

子宮頸がん検診では、正常の場合をNILM(ニルム)と表現します。
それに対して、軽度の異常をASC-US(アスクユーエス)と表現するのです。
もう少し強い異常をLSILなどとするのですよ。

それでASU-USが出た場合は、ヒトパピローマウィルスの検査をします。
それは子宮頸がんの原因の多くが、性行為で感染するウィルスが関係するからです。
とくにヒトパピローマウィルスの16型や18型では、将来、ガンになりやすいのです。
だから何型のウィルスかを検査すると、予後まで予測できるわけですね。

今まではここまでが保険適応だったのですが、
今年から初期の子宮頸がんやそれに近い状態で、子宮頸部を切除した女性も、
このヒトパピローマウィルスの型別の検査ができるようになったのです。
これまでは術後でも、細胞診検査しかできなかったのですが、
ウィルス検査でも良いことになったというわけです。
ただし、細胞診かウィルス検査かのどちらか1つだけが保険の範囲です。

最近行われたアメリカでの1万6千人ほどの調査では、
細胞診よりウイルス検査の方が有効だったという結論でしたよ。
だから子宮頚部切除後は、できればウィルス検査の方を優先したいところですね。

すでに子宮頸部に病変が有った人の追跡調査という意味では、ウィルスの型別検査が良いのでしょうが、
それでは、異常の無い女性の、スクリーニング検査としての子宮頸がん検診では、何が良いのでしょうか?

もちろん今の日本では、細胞診検査が優先されていますよ。
毎年と言わず2年に1回でも良いとされています。
おすすめは毎年ですけれどね。他にも病気が見つかることも有りますし。

では、細胞診検査をせずに、ウィルスの型別検査だけするというのは、どうでしょう?
すでにヨーロッパでは、その方向に有るようですね。
日本ではこれからまだまだ検討されることでしょう。

ですが日本の会社などでは、社員の職場検診で、
女性社員をわざわざ婦人科に受診させるのもコスト増になるらしく、
自己検診で自宅で膣分泌物を採取して、ウィルス型別検査をしているところも増えてきたようですよ。
むかしは自己採取と言っても、細胞診検査であって、
それではとても不正確だったのですが、
最近の自己採取は、いつの間にかウィルス検査になっていたようなのです。
これならはっきり言って、婦人科医なくして、わりと意味が有るようにも思われますね。

さて、これからの子宮頸がん検診は、どういう方向に進むのでしょうね。
どうも科学的な話ばかりで決定されるのではないようですからね。
われわれも商売あがったりになるのでしょうか。
それとも自己検診が進んで病気の発見率が上がって、かえって治療者が増えるということも考えられますね。
その方が、女性にとっても、コスト面でも効果的でしょうね。
だって、進行してから治療すると、とってもコストがかかるのですよ。
もちろん人生も短くなります。

それよりも予防接種が普及するのが理想なのでしょうね。
もっと言えば、性感染症が減少するような、家庭教育をすることが一番ですからね。