タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

診療報酬改悪の間違いはどこか

2016-03-30 21:06:45 | つれづれ
写真は丹波市柏原町の陽太(ようた)くん、2月15日生まれ。
「太陽のように暖かく、明るい子になりますように。
1人目と違って、本当にあっという間でびっくりしました。
スタッフの方みんながとても親切ですごしやすかったです。」

そうなのですよ。
2人目ともなると余裕が出てきますね。
ですが1人目はたいへんなのですよ。

みなさんの意識と医療者の意識には、まだまだ大きな隔たりが有ります。
みなさんは赤ちゃんが普通に生まれて当然と考えておられることでしょう。
ですが現実は、日本では4人に1人が帝王切開で産んでいるのです。
先進国の多くでは、2〜3人に1人が帝王切開で産んでいるのです。
ここが根本的に理解されていないのですよ。

今月タマル産では開業以来、過去最高の数の赤ちゃんが生まれました。
この子たちの中には難産の子もたくさん居たのですよ。
いくらタマル産では、20人に1人くらいしか帝王切開にならないとはいえ、
陣痛までも短くすることはできないのです。
ところがご主人や産婦さんのお母さんが、なかなか生まれないから何とかしてくれ、と言われるのですよ。
そして帝王切開をしてくれとまで、よく言われます。
本人が言うのならともかく、家族が待ちきれずに言われるのですね。

初めてのお産は、とにかく辛抱が必要なのです。
そんな時に、役に立つ家族と邪魔になる家族が居られますね。
できれば付き添うのは、ご主人だけがいいと思っています。
いくら家族だといっても、寝室にまで入って来られては困るでしょう?
お産とは、皆さんが考えておられるよりも、もっと性的なものだからです。

解決策としては、産婦さんのお母さんや姉妹に来院してもらうのは、赤ちゃんが生まれてからからで十分ですよ。
もちろん、それぞれで事情は違うでしょうから、原則でのお話です。

話は変わりますが、今日ようやく4月からの、2年に1回の診療報酬改定の本が届きました。
この分厚い本をわずか2日で理解して、
明後日までにコンピューターの設定を変えないといけないのですからね。

産婦人科関連での話題と言えば、帝王切開の点数が少し揺れ戻されたことでしょうか。
2年前の改定では、帝王切開の点数が大きく削られたのですよ。
理由は統計上、帝王切開の時間が減少しているからだそうです。
より素早く対応しているのに、手術時間が減れば点数が減るとは、皮肉なことですね。
こんなことなら、ゆっくり手術に時間をかけた方がいいのでしょうか。胎児が元気ない時にね。

まあそれは厚生省の言い訳であって、
本音では帝王切開がどんどん増えて、医療費が上がらないようにとの考えからでしょう。
これが2年前の話なのですが、今回は予定での帝王切開は減点されたままで、
なんとか緊急での帝王切開でだけは少し上がりました。それでも2年前には届かないのでしょう?
その代わりに特殊な場合として、例外的に新規に点数が付けられました。
それが、前置胎盤、32週未満の早産、胎児機能不全、常位胎盤早期剥離、前回の帝王切開などです。
これらはそれだけリスクが高いということですね。
これを解説すれば、また長くなりそうなので、またの機会に。

いずれにしても、タマル産では帝王切開が少ないので、あまり収益には関係有りません。
篠山市の医療費もさぞ少なくて済むことでしょう。
もしタマル産で、全国平均並みに帝王切開すれば、医業収益も年に数千万円は増え、
看護師さんや医師も雇用できて、より安全性が高まるとはおかしな話ですね。
帝王切開するより普通に産ませてあげる方が手間がかかるのに、収益は下がる。
帝王切開するにしてもより短い時間でするほど、収益は下がるのですからね。

そうそう、小泉政権の時代から医療費を毎年2000億円削減すると決定されました。
これが間違っていたのですよ。
だから民主党に政権が移ったのは、コンクリートから人へ、というスローガンだったからです。
建築業よりも福祉業にシフトしていこうとしたのですが、残念ながら失敗したのです。

みなさんも老人が増えて医療費が上がると負担が増えて困ると考えておられるかもしれませんが、
それが間違いなのですよ。
医療や福祉に従事している人はますます増えていますから、
医療費が上がれば従事者の給料が増え、内需が刺激されるのです。
そうすると景気がよくなるのです。
いまだに介護職員の給料が上がらずに退職する人が多いというのでは、景気がよくなるはずもないのですよ。

この2年に1回の改定ですが、2年毎に減らすのは大きな間違いで、
2年毎にどんどん上げていかないといけない、ということですよ。
建築業界は、人口が減るのにマンションなんか作っているより、介護施設を作ればいいではないですか。

不育症の多くは原因不明です

2016-03-28 21:03:20 | 不妊症

上の写真は丹波市春日町の蘭香(らんか)ちゃん、2月12日生まれ。
「元気良く、よく笑って、人に優しく、女の子らしく育ってください。
赤ちゃんの声が聞こえた時は、泣きそうでした。
本当によくしてもらって助かりました。優しく何でも教えてもらいました。」

お母さんも笑顔が素敵でしたから、
自分の赤ちゃんにもそうなって欲しいのですね。
自分の子供には、自分の理想を求めてしまうものですからね。
もしも理想とは違ったとしても、それは子供の個性で有るのかもしれませんからね。
余裕を持って、未来を開拓してあげられるといいですね。

さて今日は、不育症のお話にしましょうか。
このブログでは何度も専門的なお話はしているのですが、
あまり専門的にお話しても、興味を引かないかもしれませんね。

先ほども外来で、何度か流産した後に、ヘパリン療法を行っている患者さんが来院されました。
今までは妊娠初期の流産の繰り返しでしたが、今回は妊娠中期まできましたからね。
毎回、ご夫婦で妊婦健診に来られます。
それだけ期待が大きいのでしょう。

ヘパリン療法は数年前にようやく保険適応となった治療法です。
タマル産にも常備してありますからね。
朝と夜に自分で自分に注射する自己注射というものです。
最近の糖尿病のインスリン注射のように簡単なキットにはなっておらず、
注射器に針を付けて、空気を抜くという作業は必要になります。
ヘパリンは血液が固まりにくくする薬なので、
注射部位が青あざになるのが、ちょっと困ったことでしょうか。

他にも先日来院された女性は、タマル産で何度か流産しておられました。
その前にも他院で流産されていました。
その時に染色体の検査等まで検査しているのですが、その後大阪の病院に通われていたようで、
タマル産での標本が借りたいということでしたよ。
もちろんすぐに貸し出しました。ちゃんと整理はできているのです。
他に原因が有ると思われたのでしょうね。

不育症のカップルは、たまに居られるのですが、それほど多いわけではありません。
それで今回、妊娠が順調に経過しているのが、ヘパリンによるものか、
たまたまなのか、それは大きな統計を取らないと分からないことですね。
ですが、流産が続くと、たとえ原因不明でも治療してみたくなるのではないでしょうか。
実際、効果的だと言われていますからね。

ただし本来は、抗リン脂質抗体やプロテインS欠乏症、
血液の凝固因子の1つであるXII因子の欠乏症などの時には効果的なのですが、
不育症の多くは原因不明であって、効果的とは言えないような場合でも使用されているのが現状です。
不育症の原因は検索しても65%は原因不明なのですよ。
それでも一通り原因検索はしますよ。
でも分からないことの方がよっぽど多いのです。
この事実を受け入れなければなりません。

だから原因を見つけて、それに合った治療をするというよりは、
モチベーションを持たせてあげて次の妊娠を試みさせてあげるのが、
医療者としては正解なのだとされています。

ただし私の意見は少し違いますよ。
不育症もやはりタバコが原因のことが多いと考えています。
これはいつもお話していますね。
本人とは限らず、ご主人が喫煙者でも大きく影響します。
その次が年齢です。高齢になるほど流産率は上がります。
そして感染性流産。性感染症が必ずしも陽性にならなくても、
若いのに子宮の入り口にびらんが無く、閉じているような女性も居られますからね。
このあたりは経験的なことからです。

とにかく諦めない、という姿勢が大切でしょうね。


すきっぷ 神戸新聞

2016-03-25 20:58:21 | 産科

上の写真は篠山市今田町の凛生(りお)ちゃん、2月8日生まれ。
「人の痛みなど分かってあげれる、優しい子になってください。
破水から始まり2時間ぐらいで生まれたので、あっという間でした。
上2人の時も今回も、優しく接っしていただけて助かりました。」

そう、あっという間の3人目でしたね。
タマル産も、この春で18年を迎えました。
こちらもあっという間でしたよ。
その間、三千数百 回ものお産に付き合いましたが、
水戸黄門様のように、安心して繰り返されるといいのでしょうね。

さて今日は、アナウンスですよ。
「神戸新聞子育てクラブ、すきっぷ」のです。というのも案内が送られてきましたので。
篠山にもいろいろ子育てクラブが有りますね。
丹波市でもそうでしょう?
ですがもう少し広域での、兵庫県でのお話です。

検索する時は、「すきっぷ 神戸新聞」で検索してくださいね。
もしくは次のリンクから。
http://mintclub.kobe-np.co.jp/skip/

ただ、ベビーカーで行けるイベント情報では、残念ながら阪神間がほとんどのようですね。
そこで子育て相談のページなんかだったら、使ってみてもおもしろいかもしれませんよ。

私も仕事をしながらではありましたが、
ちゃんと5人の子供たちは、子育てしましたよ。
というかまだ子育て中ですけれど。
大病院に勤務している時は、むしろ休みもきっちりと取れますから、
休み毎に家族で遊びに行っていました。
むしろ開業してからの方が、24時間拘束されているので、
それこそベビーカーの範囲でしか動けませんね。

みなさんも、子育てで悩まれているのではないでしょうか。
とくに初めての子は、どう育てていったらいいいか、手探りですからね。
とりあえず今日のところは、神戸新聞の記事を読んで、ストレスを解消してみてはいかがでしょうか。
それではまた来週。


さかなも食べていますか

2016-03-23 21:25:21 | 産科

神戸市北区の湖珀(こはく)ちゃん、2月12日生まれ。
「曇りのない、美しく澄んだ人生になりますように。
すごく早い出産で痛かったけど、とても楽なお産でした。
ちょっとした悩みも話しやすく、みなさん優しかったです。」

3人目になりますね。
初めてのお産はたいへんだけれど、次からはずっと楽になりますからね。
例えが悪いのは承知ですが、ゴム風船なんかも初めて膨らませるには力が要りますが、
次からは簡単に膨らみますからね。

むかしの女性は赤ちゃんをたくさん産んで、さぞたいへんだっただろうと考えますが、
案外、産むこと自体は楽だったかもしれませんね。
育てるのも、上の子が下の子をみたりすることも有ったでしょう。
今は兄弟が居ても、上の子が下の子を見ずに、スマホをいじっていることも多いですしね。

さて、今日は前回の続きのお話を致しましょう。
前回は何だったかと言えば、妊娠中はひじきやほうれん草をたくさん摂ってね、というものでしたよ。
ですが鍋に鉄の卵を入れてみる方が効果的かもしれませんけれどね。

そして今日は魚の話です。
生魚を食べるだけでアレルギーが出るという人も多いですね。
今通われている妊婦さんで、エビやホタテでショックになるという方も居られます。
最近では小学校でも、エピペンなどの食物アレルギーの治療薬が常備されているのではないですか。
でも先生がいきなり注射するなんていうのも、とまどうことでしょうね。
タマル産でも、もちろん注射薬を1階、2階に常備していますよ。

いえ、アレルギーの話をするはずではなくて、
「さかなさかなさかな~、魚を食べると、あたまあたま~頭が良くなる」という歌が耳に付きますね。
そう、妊娠中は魚も食べないといけないのですよ。
当たり前か。

DHAとはドコサヘキサエン酸の略ですよ。
魚の脂に入っているので、魚を摂りなさいと言われますね。
もっとも魚が作っているのではなくて、植物プランクトンに含まれているDHAを魚が食べて、
魚の脂に濃縮されているというだけのことです。それを人が食べる。

DHAが不足すると、うつ病になるらしいのです。
かと言って、DHAをサプリメントとして摂っても、うつ病が治るかというのもまだ疑問のようですが。
産後にうつ病になるのは、胎児にDHAが移行してしまって、産婦さんに不足するからとも考えられています。
最近、産後のうつ病が増えているのは、魚を食べないからだとか、
妊婦さんの年齢が上がったからだとか言われていますね。
それでも西洋人と違って、日本人はもっともうつ病になりにくいのですよ。
ですが、うつ病による自殺者は多いですね。
動物の脂より魚の脂を、というのは日本人的には体験的に知っていますよね。

一方で、クロマグロ、キンメダイ、メカジキなどは水銀も多く含むからと敬遠されがちです。
まあ、料理するなら菜種油で十分。
食べるならお肉より魚、そして野菜でしたね。

ちなみに先日も外来で質問されましたが、野菜に含まれている葉酸が必要なのは妊娠の6週頃まで。
つわりが始まるのが6週頃ですから、つわりが出たらもう遅いのですね。
だから普段から野菜を食べる週間を付けないといけないのです。

いちいち何を食べるか考えるのは難しいので、
学校給食で週間づけをしておいて欲しいものですよね。
でも朝や夕、おやつは、各家庭で違いますしね。
仕方がないから、家庭科の授業で教えてもらっておかなくてはいけませんね。

ひじきはいかが?

2016-03-18 21:26:47 | 産科

丹波市柏原町の花(はな)ちゃん、2月11日生まれ。
「明るく真っすぐに育ち、思いやりを持った子になりますように。
出産はとっても痛くて大変だったけど、我が子を抱いた時とても感動しました。
疑問に思ったことを丁寧に教えていただいて、話しやすかったです。」

初めてのお産でしたね。

今週は今年一番のお産ラッシュのようで、連日赤ちゃんがたくさん生まれていますよ。
今夜も1人、陣痛のお母さんが居られます。
ベッドは満床で、まだ今週予定日の初妊婦さんが2人残っておられますから、どうなることでしょうね。
でも、なんとかなるもんですよ。
明日の午後は両親学級です。春休みで里帰りの方は、病棟見学もできますよ。

さて、今日は食べ物のお話を致しましょう。
最近、これもニュースで見たのですが、「ひじき」の鉄分が減っているそうです。
どれくらい減っているかと言えば、この5年で、100gあたり55mgから6mgだそうです。
それでは「ひじき」の鉄分が抜けたのかと言えば、
そうではなくて、鉄の鍋を使わなくなったからのようです。
今のアルミの鍋ではねぇ。

私の小さい頃は、水道の水なんて鉄の匂いが有るのが当たり前でしたが、
最近の水は匂いもしませんからね。
ましてやペットボトルの水では、鉄の水道管を通るわけでも有りませんし。
ちなみにタマル産のシェフは、ひじきの料理が好きなのですよ。よく出てきますよ。

ひじきばかりか、妊婦さんで鉄分が不足している方には、ほうれん草を食べなさいと指導されますよね。
ほうれん草は短時間しか茹でませんから、
鍋の影響と言うよりは、ほうれん草自体に力がなくなってきていると聞いたことが有りますよ。

妊娠すると、葉酸と鉄分が粒になったサプリメントを摂っている方も居られます。
こうでもしないと鉄分が摂れないとは、少しやるせないではないですか。

妊娠中の鉄分のおさらいをしておきましょうか。
このブログでも、何度かお話しているのですよ。
貧血の検査をすると、ヘモグロビンという項目が有ります。Hbと略されているかな。
女性ではたいてい12g/dLくらいですよ。

妊娠すると、血管の中の水分はどんどん増えていきます。血漿が増えると言います。
すると見かけ上、ヘモグロビンが10g/dL程度に薄まります。
これは貧血どころか、血漿が増えて、血が薄まっているだけですね。
お産に備えているとも言えます。
もちろん、胎盤への酸素や栄養を運ぶという意味合いが強いのです。

ヘモグロビンは結果として低く出ますが、さらさらの血液になるという意味では良いことです。
これを知らないと、鉄のサプリメントを摂り過ぎたり、
病院で処方され過ぎたりしてしまいます。
血がドロドロだと、詰まりやすい、すなわち血栓症になりやすいということですからね。

だから知っておいていただきたいことは、
葉酸はビタミンB群の1つですから、摂り過ぎても尿に流れていくので問題有りません。
ただし鉄は摂りすぎると肝臓などに貯蔵されます。
さらに摂りすぎると、ヘモジデローシスという病気になってしまいます。
まあ、そこまで飲み薬で摂りすぎるということは無いでしょうけれど。
鉄剤は胃に負担がかかるので、注射で投与されることが有ります。
そんな時は注意しておかなくてはならないのですよ。