タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

稀少部位子宮内膜症って?

2018-08-24 21:23:12 | 婦人科
初めての赤ちゃんと、母方のお婆ちゃんです。
それにしても若いお婆ちゃんですね。
まあ、日本人の初めての出産は30代ですから、
インドネシアの女性のお婆ちゃんが若いのは当然ですね。

私も一番下の子ができたのは、38歳の時でしたから、
成人する頃にはすっかり年を取ってしまいますよ。
やはり子育てするのは、若い時の方が楽しいものです。

そうそう、お婆ちゃんはヒジャブを被っておられるので、イスラム教徒なのでしょうね。
出産の時も熱心にお祈りされていましたよ。
私たちが忘れてしまったことばかりではないですか。
篠山にはインドネシアの人はそれほど多くないらしく、
タマル産で産まれたのは、まだ2組目です。
みなさん良い方たちばかりです。
むしろ日本人以上に日本的な方たちばかりですよ。

さて、今日外来を受診された方に、子宮腺筋症と他院で診断されていて、
検診のために受診された方が居られました。

子宮腺筋症とは、聞きなれないでしょうけれど、
子宮内膜症が子宮にできた場合の呼び方です。
それに対して、子宮の周りや卵巣などにできた子宮内膜症のことを、
外性子宮内膜症と言います。単に子宮内膜症と言えば、こちらです。
とくに卵巣にできた場合は、チョコレート囊胞と言います。

医療者でも間違って、チョコレート嚢腫と言う人が居ますが、それは間違いです。
囊胞とは、何かが溜まった状態で、血液が溜まっているので、囊胞なのです。
嚢腫とは、腫瘍のことですからね。良性とか悪性のことが有りますよ。

さらに、子宮の周りだけでなく、結腸や小腸、膀胱や、さらには遠く離れた肺などにもできることが有ります。
これを、稀少部位子宮内膜症と呼ぶのです。
本当は、以前にもこのお話はしています。

直腸にできると、よく直腸癌と間違われて、外科で手術されてしまうことが有りますよ。
膀胱にできると、血尿や排尿痛が出て、やはり泌尿器科の病気と間違われてしまうことも有ります。

肺にできると、毎月、月経期に、吐血することが有ります。
私も、むかし2症例ほど治療した経験が有ります。
肺にできた場合は、80〜90%の人に、肺に穴が開いて、気胸を起こすと言われます。
子宮内膜症が無くても、若い人は突然、気胸になることが有るくらいですからね。

結局、治療としては、通常の子宮内膜症のように、ホルモン療法が第一です。
妊娠したい人で、ホルモン剤でコントロールできない場合は、
手術という選択も有るようですね。

話は違いますが、子宮にできる病気で、絨毛性疾患というものが有ります。
悪性になると、血管の中を流れて肺に転移するのです。
抗がん剤が効くのですが、最終的には肺を部分切除することも有ります。
これは少し辛い治療ですが、むかしそういう治療をしたことが有りますよ。
今思うと、今の私の年齢より若い方でしたよ。
成人した娘さんが居られて、説明するのに苦労しました。

同様に、肺の子宮内膜症も血行を介して肺に転移するのですが、
子宮内膜症は悪性でもなければ、腫瘍でもないので、転移とは言わないのですね。
稀少部位子宮内膜症、ですからね。
今だったら、もし見つけたら、気胸の恐れも有るので、専門病院を紹介することになるでしょう。