タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

もう開業医の時代ではないのでしょうね

2022-04-22 20:24:49 | 産科
写真はレンギョウに似ていますが、雲南黄梅です。今、花盛りですよ。

この春から職員の制服が変わったのには、気付かれましたか?
ブルーの線が入ったのです。分かりませんよね。
開業して23年、ずっと同じ制服だったのですが、もう入荷困難となったので、
あと10年先を見越して大量に仕入れたのです。サイズもバラバラにね。
さらに一昨年からは、空調も段階的に入れ替えているのですよ。お金がかかっています。
それほど、まだまだ頑張ろうと思っていたからです。

最近、困難なお産が続きました。
タマル産では1、2年に1回くらいは輸血する妊婦さんが居られます。
お産ってね、バケツの水をひっくり返すような勢いで出血することが有るのです。
大きい病院では、輸血する妊婦さんはタマル産の数倍の割合なのですよ。

ただ、大きい病院ではその場で輸血できるので、お産のリスクは高いけれど、致死性のリスクは低いとも言えるわけです。
ですがタマル産では、緊急で輸血できる病院を探さないといけません。
今回は済生会病院や神戸大学病院、神戸中央市民病院やこども病院にも帝王切開中ということで断られ、5箇所目にしてやっと搬送先が決まりました。
しかも市の救急車の対応も悪く、クリニックを出るまでに30分ほど費やしてしまったのです。
さらに搬送にも時間がかかってしまいますからね。

今度、三田市民病院が無くなる話はしましたが、
その分、済生会病院はさらに忙しくなって、緊急の受け入れは困難になるでしょう。
近隣では中小病院や開業産婦人科が次々と無くなり、
大きな病院は、低リスクのお産をたくさん受け入れるようになり、
逆に緊急事態に対応できなくなってきているのです。

小児救急はもっと悲惨な状況です。
これまでは済生会兵庫県病院は、妊娠22週の早産から受け入れてもらえたのです。
ところがこの春から、妊娠28週以降でないと受け入れ拒否ですよ。
これは大問題なのです。
六甲山より北側で早産すると、海側まで搬送されるのです。
新生児医療は一刻を争う時間との勝負なのですが、
六甲山より北で、緊急に赤ちゃんを産むのは困難になりつつあるのですよ。

それに加えて、最近は肥満の女性や高齢女性が増えており、性感染症による癒着胎盤、
高齢に伴う子宮筋腫などの合併症の有るお産など、リスクの高いお産が増えてきています。

そろそろ開業医では手に負えない時代になってきたようです。

ヒトパピローマウィルスの予防接種は受けましたか?

2022-04-15 20:50:50 | 婦人科
写真は最近、三田市の千畳寺湖で撮ったものです。
新しくキャンプ用品とカフェの「あぷりこーぜ」という店ができたので、覗いてきました。
私は小さい時から毎日、琵琶湖を見て育ったので、湖を見ると落ち着くのですよ。
大学ではボート部に入っていたのですが、西日本の医学部で優勝したのです。
毎朝5時半から湖に船を浮かべるのですよ。
週末はワンゲルの部長もしていたので、キャンプ用品のようなオモチャではなく、
ピッケルとアイゼンにザイルと、本格的な装備で信州に行っていましたよ。

先日のニュースで信州の大町という町では、65歳の産婦人科医が着任してきて、
久しぶりに産婦人科の分娩が再開するというので、くす玉まで割って、町を上げてのお祝いだったそうです。

妊婦の皆さんは、新型コロナの3回目までのワクチンを済まされましたか?
高齢者と妊婦さんは、とくに推奨されているのですが、なかなかしてもらえないのが現状です。
だいぶ危機感が無くなってきているようですね。
もちろん私たち産婦人科に勤務するものは、4回目の接種も予定していますからね。

それと最近の話題では、中学生のヒトパピローマウィルスの予防接種の推奨も再開されました。
とにかく最近は、子宮頸がんの前がん病変である、異形成という病気が見つかることが多くなっています。
子宮の一部を切除して、妊娠時には子宮の出口を縛る手術をする女性が増えていますよ。

無料でできるのは2種類有るのですが、おすすめはガーダシルという注射で、
初回と2ヶ月後、6ヶ月後の3回、受ける必要が有ります。
高校生以上でも、24歳までは今からしばらくだけ、無料で受けられますからね。
市からワクチン接種券が送られてくるはずです。

では25歳以上は、自費で、1回2万円近くする注射を受けないといけないのでしょうか。
今のところ厚生労働省的には、3回接種がすすめられています。
だから私が言うと問題になるかもしれませんが、
世界保健機構(WHO)の、予防接種に関する戦略的諮問委員会(SAGE)の提唱では、
とりあえず日本やアフリカのような、ワクチン接種が進んでいない国では、
予防接種もコストがかかるので、一部の女性が3回受けるより、全員が1回だけでも受けた方が、
子宮頸がん撲滅が早くなる、ということです。

エイズが流行っている国では3回接種が基本で、その他の国では、
9〜14歳が1回または2回、
15〜20歳が1回または2回、
21歳以上は2ヶ月間隔でなく6ヶ月間隔で2回が推奨されているのです。
日本とはだいぶ違うようですね。

ではどうしたら良いでしょうか?
私なら、25歳を過ぎて自費で受けないといけないとしたら、
3回も受けなくても良いのではないかと言うでしょうね。
ですが年齢が高くても1回くらいは受ければ良いでしょう、と言いますよ。




匿名で小心者のジジーの話

2022-04-08 20:22:19 | つれづれ
2年に1度の診療報酬改定というのが有って、年度末は大忙しでした。
そんな中で今回は、「有床診療所入院基本料1」を取得することができました。
今までは2だったのですが1にバージョンアップですよ。
看護職の人数が増えて、夜間の看護職の人数を1人から2人に増員できたからです。
と言っても1日入院しても821点から917点に960円上がっただけで、1万円もしないのです。
介護施設なんて夜間に看護師が居なくても良いのに、1日1万5千円ほどなのに。
病院なら1日2万円ほどですね。
負担はその3割です。

有床診療所だけ点数が低いのは、厚生労働省は有床診療所は無くそうと考えているからですよ。
ただしタマル産は帝王切開がほとんど無いので、お産で保険を使うお母さんは少なく、
保険点数が上がっても実際のところは何ら変わらないのですけれど。

みなさんは目の前に看護師が1人居るとして、バックには何人居ると思われますか?
昼間だけの無床診療所では1人だけで他に誰も居ませんね。
ですが24時間開いている有床診療所はなんと5人も居る計算です。
1週間は168時間で、1人の勤務時間は40時間ですから交替のために4人は要ります。
それにこれだけの人数になると産休や育休、介護休暇や有休などで予備にもう1人必要なので、
目の前の看護師さん1人を確保するために5人雇用しなければならいのです。
医師なら1人で良いので、看護職5人分の働きに相当しますから、時間単価は一番安いですね。

一昨年に丹波篠山市からの助成が始まって、1500万円入ることになりました。
それでも看護師が500万、助産師が600万円以上年俸が必要ですから、2~3人増員したら消えてしまいますよ。
ですがそのおかげで夜間はこれまでの1人体制から2人体制になったのですよね。
夜中にお産で医師1人、看護師1人で宅直1人では不安でしょう?
それで今回、有床診療所入院基本料1になったというわけです。
一昨年から新しい看護職員が何人も増えているのは気付かれていましたか?

兵庫医大が毎年何億円も貰っているのに、お産から撤退して、
代わりにタマル産に1500万円です。
高齢者医療で儲けている岡本病院や、にしき病院には2千万円です。
産婦人科医療は普通にやれば赤字になってしまうものだから、どこの市町村も助成しているのですよ。

一昨年、兵庫医大の撤退時に丹波篠山市と丹波篠山医師会は、助産所を作ると言い出しましたね。
この時にタマル産は分娩予約を停止しました。
完全にやる気を無くしたからです。
ですが市議会議員の安井議員や、かんなん議員、現教育長の丹後氏などから励ましを受け、
再度頑張ることにしたものです。

助成金は医者の懐に入って儲けすぎていると錯覚している人がさぞ多いのでしょう。
以前、タマル産に税務署職員2人が税務調査に1週間も来たことが有ります。
その時に「たいへんですね」と、逆に同情して帰って行かれましたよ。
それからは2度と税務調査には来られなくなりました。

ここまでが前置きなのですが、
今週、タマル産に怪文書が届きました。
ここでは「匿名で小心者のジジー」とネーミングしておきましょう。
A4用紙3枚にぎっしりと批判が書かれています。
要約すると、「タマル産婦人科と癒着している安井議員を辞めさせろ」というものと、
「タマル産婦人科は助成金を受け取るな」という2点です。

助成金を受け取らないと、また夜勤者が1人体制になります。
安全なお産は難しくなるでしょう。
安井議員はタマル産存続のために尽力してくださっています。
他の市議会議員は、市議会で決まったことなのに、いまだにタマル産への助成に反対している方も多いと聞くのにです。
安井議員は、個人的には母親と妹さんをお産で亡くされているので、特に安全なお産には思い入れが強いようです。
昔からお産は命懸けですからね。
丹波篠山市議会と医師会と、匿名で小心者のジジーたちは、高齢者医療にしか興味が無いようですね。

若いカップルは結婚すると三田市や神戸市北区に引っ越して行かれます。
こんなジジーたちが、自分たちの老後のことにしか興味を持たない町に住み続けられないからです。
私も60歳を過ぎてジジーの仲間入りですけれど。
若い世代が住みやすい町にしなければ市は滅んでしまいますよ。

次回市議会選挙で、安井議員が落選されたり、途中で中傷により辞職されたりするようなことになれば、
私も「お産」から手を引くつもりです。

今週は警察署に行って、被害届を出して来ました。
クリニックに火をつけられては困りますからね。





生殖危機だ

2022-04-01 20:27:46 | 不妊症
孫の写真でごめんなさい。
桜が満開のところも有りますね。

もうすぐ4日連続で赤ちゃんが生まれそうなので、急いで書きますよ。
みなさん初産婦さんです。
むかしは経産婦さんが多かったのです。2人、3人と産まれるからです。
ですが最近は1人しか産まないお母さんが増えているので、リスクの高い初産婦さんばかりになるのです。

それはさておき、「生殖危機」という本をご紹介しましょう。
最近発売されたばかりの新刊です。
世界的に男性の精子が減っているよ、と言う話は以前からされていますね。
もちろん卵子だって、異常が増えているのです。

その原因は「内分泌かく乱物質」いわゆる環境ホルモンを疑っているわけです。
それが最初に言われたのは、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」という本です。
聞かれたことは有りますか?
「奪われし未来」という本も有りましたよ。

ですがもっと単純に言うと、やはりその中でも農薬と殺虫剤なのですよね。
殺虫剤は神経毒ですから、人間が食べ物や皮膚から吸収すると影響するわけです。
最近は小学生で、落ち着きが無かったりすると、精神科受診を勧められて向精神薬を飲む子が増えています。
その原因は母親が摂取した殺虫剤だったりするのですが、
さらにその治療として、神経の発達を阻害する薬を追加で処方されるのですから、困ったものです。

その前に男性の精子も異常や減少を来しているので、不妊症になります。
そしてその治療が体外受精であったりするわけです。
手っ取り早く妊娠するのには、一般不妊治療よりも体外受精と考えるカップルも増えているでしょう。
ですが体外受精は精子と卵子を直接混ぜるだけですので、生存競争が働きません。
しかも受精卵を一度凍らせてしまうのですからね。
受精卵の活性化因子を補填されたりもします。

言い出せばきりがないとも言えますね。
われわれ医療者は治療することばかりを考えてしまうものですが、
やはり原因療法として、環境を改善することを優先しないといけないのです。
例えば性同一性障害に対して、入籍やトイレの問題や制服を改善するのも悪くはないでしょうけれど、
それよりも先にすることが有るのです。

以前、不妊治療の大家を呼んできましたが、男性はブリーフよりもトランクスを履きなさい、と言われていました。
違うのですよ。
自分としてできることは食生活の改善です。
そして公共的には、農薬や殺虫剤の使用を減らしていくことなのです。

こどもでも第1子にはとくに影響が強いのですよ。
2人目、3人目となるほど影響は少なくなります。
母親の毒素を妊娠中に子が吸収してくれるからですね。
イタイイタイ病などでも確認されている事実ですよ。